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    d-cepパートナーインタビュー Vol.4 非製造業の企業でも!プラスチックリサイクルのおすすめ方法

    最終更新日:2024年03月22日

    d-cepパートナーインタビュー Vol.4 製造業の企業でも!プラスチックリサイクルのおすすめ方法

    サーキュラー・エコノミーの循環モデル構築に欠かせないさまざまな分野のトップランナー企業や団体を、電通が中核となってオーガナイズする強力なワンチーム「d-cep(電通サーキュラー・エコノミー・パートナーズ)」。このインタビューシリーズでは、毎回1社のパートナーにフィーチャーし、提供可能なソリューションやサーキュラー・エコノミーへの考えをご紹介してきました。第4回では、国内最大規模のプラスチック専門リサイクルプロデュースカンパニー「株式会社パンテック」の常務取締役・黒木伸亮氏とサーキュラーエコノミー推進部・大野賢氏にご登場いただきます。

    「プラスチックの完全循環」を目指し、再生プラスチック原料の取り扱いのみならず、リサイクルソリューションの提供や循環型スキームの構築サポートなども手掛ける同社。電通グループとは、2022年3月に始動した「で、おわらせないPROJECT」から協業を続けています。今回も対談相手は、電通サステナビリティコンサルティング室の堀田が務めました。

    d-cep

    ※d-cepがお届けするソリューションの概要については、こちらの記事をご参照ください。

    INDEX

    「環プラ」は、株式会社パンテックの登録商標です。

    PROFILE

     
     
     

    減プラ・脱プラと並行し、「環プラ®」も考えていこう

    パンテックさんが創業したのは1996年。まだ環境ビジネスを手掛ける企業が多くなかった時代かと思いますが、どういったきっかけでプラスチックリサイクルに取り組み始めたのでしょうか。

    黒木:創業者である代表の黒木がもともと大手電子部品メーカーに勤めておりまして、西ドイツに駐在していた際、日本と欧州の環境意識のギャップを痛感し「いつかは環境ビジネスを」と考えていたそうです。退社後に海外の知り合いから「リサイクル用に日本のPETフレークを販売してほしい」と依頼を受けてプラスチックリサイクルの事業性に気づき、そこから徐々に販路やパートナーを拡大して今に至ります。当初はリサイクル用プラスチックの輸出が中心でしたが、今ではリサイクルソリューションの提供や循環型スキームの構築支援も事業の主軸となっています。

    事業コンセプトとして「環プラ®」を掲げられていますが、こちらについても詳しく教えてください。

    黒木:皆さんもよく耳にする「脱プラ」や「減プラ」は、プラスチックの使用量を減らすリデュースの考え方ですが、「環プラ®」はプラスチックを資源として循環させることを念頭に置いたリサイクルのコンセプトです。使用量を減らしていくことはもちろん大切ですが、一方で人類にとってプラスチックは不可欠の素材であり、将来の人口増加や衛生面の有用性を考えても需要拡大は避けられません。であれば、「脱プラ・減プラと並行して、プラスチックを燃やさず循環利用することもしっかり考えていこう」というのが当社のスタンスです。

    循環利用はまさにサーキュラー・エコノミーの発想ですね。電通とは、同じくd-cepメンバーであるMaterial ConneXion Tokyoの吉川さんの紹介で出会ったとお聞きしました。

    堀田:そうなんです。本ブログシリーズの第1回にご登場いただいた吉川さんに「面白い人たちがいるよ」と引き合わせていただいて、私もすぐにパンテックさんに興味を持ちました。一般的にリサイクル業は量をたくさん集めたほうが収益性は上がるのに、あえてプラスチックに特化していることがまず珍しくて。裏を返せば、それだけプラスチックリサイクルについての深い技術や知識を持っているということですよね。私はもともとメーカーでプロダクトデザインをしていたのでよくわかるのですが、バージン素材(※一度もリサイクルされていない新品の素材)と再生材とでは素材としての扱い方がまったく異なります。でも再生プラスチックを上手に活かすノウハウは国内にまだあまりないので、ぜひ詳しく知りたいと思いました。

    黒木:ノウハウという点は、我々がファブレス企業だからこそ培うことのできた強みだと思います。一言でプラスチックといっても、その種類や形状が非常に多いため、実は1社だけであらゆる素材のリサイクルに対応することはできません。そこで自前工場を持たないファブレスという形態をとることで、その都度国内外の専門パートナーと協業し、幅広い素材や相談内容に応えられるようにしているのです。培ったノウハウはデータベース化することで社内に蓄積し、最適なスキームの提案やスムーズなリサイクルにつなげています。

    プラスチックをアップサイクルした「で、おわらせないPROJECT」とは?

    そうしたパンテックさんのプラスチックリサイクルスキームと、電通の企画力が組み合わさって生まれた事例が「で、おわらせないPROJECT」ですね。こちらは以前別の記事でも紹介しましたが、まずこのプロジェクトについて改めてご説明いただけますか。

    堀田:「で、おわらせないPROJECT」は、オフィス等で使用しなくなったプラスチック製品を再資源化し、付加価値の高い製品へと生まれ変わらせるアップサイクル・プラットフォームです。これまで2つのプロジェクトを立ち上げていて、第一弾では電通本社で使用しなくなったクリアファイルや防災用ヘルメットから「名刺用凸面点字器 ten・ten(テンテン)」を開発しました。ten・tenがあれば自分で手軽に点字付き名刺を作ることができ、ビジネスコミュニケーションの中でその名刺を使うことで、環境やDEIへの意識を高める狙いもあります。2022年度のグッドデザイン賞も受賞したんですよ。

    クリアファイルや防災用ヘルメットをリサイクルして開発された「名刺用凸面点字器 ten・ten」。
    ケースはクリアファイルを、点字器は防災ヘルメットをそれぞれリサイクルして作られている。

    2023年1月には第2弾として、同じくオフィスで廃棄されたクリアファイルをPPバンドにリサイクルし、カゴやバッグをDIYできるキット「再生PPバンドキットloop+loop(ループリループ)」を発表しました。いずれのプロジェクトも、プラスチックのリサイクルパートでパンテックさんに担当をいただいてます。

    クリアファイルをPPバンドにリサイクルした「再生PPバンドキットloop+loop」。
    ちいさなゴミ箱なら2時間程度で手編みできる。

    大野:堀田さんと出会ってお話するうちに「何かご一緒できるといいですね」ということになり、私たちの持っているリサイクルのスキームをご紹介しました。それがこの「で、おわらせないPROJECT」の原型になっています。ただ、我々は技術的な仕組みなら豊富に持ち合わせていますが、どんなプロダクトを生み出すのか、どんなストーリーで展開するのかといった企画の部分では、当初まだ具体的なアイデアが浮かんでいなくて……。

    堀田:「それなら私たち得意です!」と、ご提示いただいたスキームをベースに電通のほうで企画を膨らませていきました。「オフィスからどんなプラスチックごみがでるだろう?」「どんなプロダクトをつくればDEIの啓発にもつながるプロジェクトになるだろう?」とアイデアを絞り、パンテックさんとは技術面でいろいろと相談しながら、このプラットフォームが完成しました。再生プラスチック素材をつかったプロダクト開発は初めての経験でしたが、やっぱり思った以上に奥深くて大変でしたね。

    継続的に取り組める「で、おわらせないPROJECT」のプラットフォーム

    具体的にどんな難しさがあったのでしょうか?

    堀田:先ほど黒木さんが「一言でプラスチックといっても種類や形状は多様だ」とお話しされましたが、まず回収するプラスチックの種類によって加工方法が変わります。ポリプロピレンなのかPETなのか、ABSなのかポリスチレンなのか。この素材なら射出成形ができるのか、押出成形になるのか、はたまた繊維化できるのか……。リサイクルをする中でいろんなパズルを掛け合わせる必要があって、それによって作ることのできるプロダクトが絞られていくんです。

    大野:さらに細かい話をすると、プラスチックには成形方法や作り出すプロダクトごとに最適な物性があります。再生材の場合、適した物性にするために樹脂や添加剤などを加えて調整する「コンパウンド」という作業を行うのですが、狙い通りの物性にするにはやはりそれなりの経験値や技術力が必要になるんですね。これがまた難しい作業なのですが、今回は我々とネットワークのあるコンパウンダーさんに協業いただくことで、そうした課題を乗り越えていきました。

    なるほど……プラスチックリサイクルではあたりまえのことかもしれませんが、一般の生活者や非製造業の人は想像できない世界ですね。プラスチックにいろんな種類があることは分かっていても、どれが何にリサイクルできるかまでは考えたこともなかったです。

    大野:そうですよね。同じような透明フィルムがあったら、それが実際は異なる種類のプラスチックでも、生活者にはなかなか見分けられないのが普通です。実はこれがプラスチックリサイクルの直面している課題の一つにもつながっていて、細かく分別されないまま回収されてしまうと、その後のリサイクルの難易度が格段に上がってしまうのです。でも、今回の「で、おわらせないPROJECT」の場合は、オフィスから出るプラスチックということである程度素材の種類が限定されるので、その点はスムーズでした。

    開発しておわりじゃない! 循環ループを“体験”することに意味がある

    「で、おわらせないPROJECT」のスキームは、継続的に取り組めるサーキュラー・エコノミーのアクションとして企業向けに提供もされています。このプラットフォームを取り入れるメリットやベネフィットはズバリ、どういったところでしょうか?

    堀田:はい、「アップサイクルのプラットフォーム」という形でご提案しています。どこのオフィスにもあるクリアファイルや防災用ヘルメットなどを材料にしているので、私たち電通のような都市型の非製造業企業でもサーキュラー・エコノミーのクローズドループを構築できることはまず大きなメリットですね。「ten・ten」や「loop+loop」と同じプラットフォームをそのまま導入することもできますし、企業さまごとにどんなプラスチックが回収できるかを調査して、それに合わせてオリジナルのプロダクトを作ることも可能です。もし再生原料が余ったら、国内外のオープンループに乗せ、社外で活用してもらうこともできます。

    黒木:我々は普段、工場などから出るトン単位でのリサイクルばかりを扱っているので、今回のプロジェクトを通じて非製造業企業にリーチできたことは新鮮な経験でした。ここで確立したスキームをさらに横展開させていけば、より多くの方々に、プラスチックリサイクルを身近に感じていただくきっかけになると思います。

    「プラスチックリサイクルを身近に感じる」という点では、プロダクトをつくって終わりではないという継続性や体験価値もこのプロジェクトの醍醐味ですよね。

    堀田:そうなんです! 「ten・ten」なら点字名刺を自分で作ってビジネスシーンで使う、「loop+loop」なら自分の手を動かして仕事で使えるカゴやバッグを編む。こうした“体験”を通じて自分が循環ループの中にいることを実感できることが、「で、おわらせないPROJECT」が一番大切にしていることなんです。社内で「ten・ten」の講習会を開催した時も参加した方々からの反応がとてもよくて、「全社施策としてやった方がいいんじゃないか」なんて声も頂きました。

    大野:それはうれしいですね。私たちは事業を通じてサーキュラー・エコノミーの実現を目指していますが、経済という大きな枠組みを変えるためには、まず生活者一人ひとりが認識を変え、行動を変え、社会の変化につなげていくことが必要です。これがなかなか難しい部分なのですが、今回のように人々の行動までデザインしていくことで、一つのきっかけが作れるんだなあと実感しました。

    プラスチックリサイクルそのものからは少し離れますが、当プロジェクトはDEIの観点から、雇用機会の創出にもつながっている点もユニークです。本当に幅広い方が循環ループに参加しているんだな、という印象を受けました。

    堀田:このプロジェクトでは、クリアファイルの回収を電通の特例子会社「そらり」が担当しています。さらに「loop+loop」では、再生PPバンドキットのアッセンブリーに週20時間未満の超短時間雇用を導入し、長時間の勤務が難しく働く機会が得られなかった方の就労ニーズに応える役割も担っています。きっとこのプロジェクトの規模感やコンセプトが、いろんな人が参加しやすいちょうどいいプラットフォームになっているのだと思います。参加していただく方に対しては、ただ作業を依頼するのではなく、コンセプトをきちんと説明してコミュニケーションを取ることを大切にしています。

    誰もが参加できる“アップサイクル・プラットフォーム”を目指して

    最後に、今回のプロジェクトを経てこれから挑戦していきたいことや、d-cepの活動への抱負などがあればぜひお願いします。

    大野:まずは今回のプラットフォームをどんどん広げていきたいというのが一番ですが、これをきっかけに共創のネットワークもさらに開拓できたらと思いました。実は今日、この対談の前にあるお客さまと打ち合わせをしていて、「衣類を入れる綿製のガーメントバッグが大量に廃棄になっている。なんとかできないか」と相談をいただいたんです。弊社はプラスチック専門なのでそこに対するソリューションは持ち合わせていないのですが、他素材のリサイクラーさんとも手を組めたら、できることがさらに広がるなあと。企業間連携によるシナジーにも大きく期待できると思います。

    黒木:私も、今後はミルクラン(※牧場を巡回する牛乳業者になぞらえた、巡回集荷型の輸送方式の呼び方)の発想が必要かと思っています。企業間の壁や枠組みを取り払い、A社・B社・C社から出る素材を巡回して一度に回収できれば、コストも抑えられて各社にメリットがあります。現在プラスチックリサイクルを取り巻く環境は、世界的な規制強化や燃料費高騰が続き、変化の中で廃業を余儀なくされている事業者も少なくありません。加えて人材不足も深刻化し、循環ループを阻む要因となっています。そうした中でより幅広い人に「環プラ®」やサーキュラー・エコノミーに関心を持っていただき、共創の輪を広げていくことで、環境にとどまらない社会価値を生み出してきたいですね。

    堀田:今まさにお二人が言ってくださったように、私個人としてはこのプロジェクトが「社会のアップサイクル・プラットフォーム」になることを願っています。企業間の壁を取り払うことはもちろん、もっと多様な人たちが気軽に参加できる仕組みを作って、プラスチック以外のプロダクトにも対応できるようになれたら素敵ですね。これを読んでいる皆さんも、ぜひこのプラットフォームに参加していいただけたらと思います!

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