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    d-cepパートナーインタビュー Vol.1 サステナブル素材の探し方 ~循環型のものづくりへ~

    最終更新日:2024年03月22日

    d-cepパートナーインタビュー Vol.1 サステナブル素材の探し方 ~循環型のものづくりへ~

    サーキュラー・エコノミー実現のトータル・サポートに向け、新たに発足した「d-cep(電通サーキュラー・エコノミー・パートナーズ)」。循環モデルの構築に欠かせないさまざまな分野のトップランナー企業・団体を、電通が中核となってオーガナイズする強力なワンチームです。一体どんな人たちが集まって、どんなサポートやソリューションをご提案できるのか? 今回から4回にわたり、インタビューシリーズでご紹介します。

    ※d-cepがお届けするソリューションの概要については、こちらの記事をご参照ください。

    d-cep

    第1回でご紹介するパートナーは、サーキュラー・エコノミーに欠かせないマテリアル素材のコンサルティングを担う「Material ConneXion Tokyo(マテリアルコネクション東京)」です。ニューヨークに本拠地を持ち、世界最大級の素材ライブラリーを運営するコンサルティング専門会社である同社。協業するメリットや、最近注目のサステナブル素材とは、新しい素材と出会う方法やその楽しみまで、同社代表の吉川久美子氏と電通Team SDGsの堀田に編集部がたっぷりお聞きしました。

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    素材の価値をよりクリアに伝えるために

    電通とマテリアルコネクション東京は2018年から協業を開始していますが、そもそもどういったきっかけでタッグを組むことになったのでしょう?

    堀田:当時、私は電通の中で「広告以外の新たなビジネスを作っていく」というミッションを担っていたのですが、それを考えたとき「素材」には大きな可能性があるなと感じていました。例えばパッケージをデザインする際にも、素材からユニークな提案ができたら、もっと新しい価値が提供できる。それで、世界最大級の素材ライブラリーを持つコンサルティング専門会社として有名なマテリアルコネクションさんのオフィスを、コンコンとノックしました。

    吉川:電通と言えば広告代理店のイメージだったので、突然訪問された時は「なんで電通さんがうちに?」とびっくりして(笑)。でも堀田さんのお話を聞いて、新しい関係が築けるのかもと感じました。というのも、私たちはマテリアルの専門家として素材の知識は豊富にあるけれど、その伝え方が足りていないという課題意識を持っていたんです。ものづくり側の人間は、機能の説明はいくらでもできるけれど、それがどう価値につながるのかがなかなか言語化できません。かといって、それをどのような言葉で消費者に伝えるかを考えずに、認識を統一してものづくりを進めるのも難しさがありますし……。

    ものづくりから発信まで協業することで、素材をメーカー企業に提案するだけでなく、生活者にとっての価値も明確に伝えられるようになったのですね。

    吉川:そうですね。マテリアルコネクションでは年に1回、デザイナーとメーカーが組んで新しい価値を生み出すプロジェクトを実施しているのですが、電通の方に参加してもらったときは“言葉の力”をとても感じました。デザイナーやメーカーの人が考えていることを、電通のコピーライターの方が「それってこういうことですか?」と言語化すると、みんな「そうそう、それが言いたかった!」って。

    堀田:住友林業様のプロジェクトでワークショップをしたときに、こんな面白いことがありました。ワークショップの初めに「テーマは木ですね」と私が土から生えている木の絵を描いたら、住友林業の方々から「いや、それは木ではありません」と指摘されたんです。彼らにとって木とは、製材された木材のこと。同じ言葉を使っていても概念が違うことがあるので、コミュニケーションのプロが入り可視化と言語化を同時に行うことで、考えや価値を上手く整理することができます

    吉川:そのプロジェクトでは最終的に「FORESTARIUM」という木材の体感装置をつくったのですが、名前を聞くだけでプラネタリウムみたいな体験がイメージできますし、木の持つ心地よさも伝わる。こうしたネーミングは、ものづくり側だけではなかなか思いつけません。

    サーキュラー・エコノミーの起点であり、難問でもある素材

    新たなビジネスを考える際に“素材”には大きな可能性があるとのことでしたが、今回はd-cepとして「サーキュラー・エコノミーの構築をサポートする」という大目的があります。改めて、サーキュラー・エコノミーにおける素材の重要性を教えていただけますか。

    堀田:サーキュラー・エコノミーには、マテリアルを生み出す素材メーカー、ものづくりを行う製造業者(動脈産業)、実際に使用する生活者、そして回収するリサイクラー(静脈産業)という大きく4つのステークホルダーが存在します。そのどれが欠けても循環は実現できないので、もちろん素材だけが重要というわけではありません。ただ、素材は循環の起点になるものですし、なおかつ変えるのが難しい部分。その意味では、サーキュラー・エコノミーに取り組む上で、どのようにして最適な素材を選ぶのかは、まず避けては通れない問題になります。

    吉川:サーキュラー・エコノミーにおいては、ものづくりをはじめる“前”の段階から「廃棄を生まず長く使えること」を考えなくてはなりません。最近では大手の化学メーカーも、素材開発から再生まで実行しないと使命を全うしたということにならないという意識を持っていて、動脈・静脈産業との連携もますます重視されてきていますね

    素材をつくる側の意識の変化に伴って、素材を使う側のメーカー企業も、やはりサステナブル素材への切り替えにはかなり積極的になっていますか?

    堀田:サステナブル経営やESGの視点から考えても、もはやサーキュラー・エコノミーを前提としたものづくりをやらざるを得ない時代です。でも、実際にはそれで商品の価格が上がったら消費者は買ってくれるだろうかというジレンマもあって……日本企業はまだ、「みんないつやるの?」と様子をうかがっている感じがします。

    吉川:それに比べると、例えばEUは政策がはっきりしていて、企業もその方針に乗りやすいのかもしれません。日本は技術があるのに長い間それが実用化されてこなかったので、欧州に比べると3~5年は取り組みが遅れてしまっています

    堀田:EUが前向きなのは、自分たちがルールメーカーになるんだという気概があるからなんですよね。ルールメイクで稼ぐぞ、という。日本はまだビジネスとしての道筋が見えづらい分、「何から始めるのが正解なのか?」と悩んでいる企業が多いのかもしれませんね。

    素材選びは、アプローチ方法や目的から考えるとスムーズ!

    サーキュラー・エコノミーへの取り組みを始めたいけど、何をすればいいかわからない。そんな企業が多いからこそ、第一歩として素材選びのコンサルティングはとても有益だと思います。マテリアルコネクションならではのコンサルティングの強みについて教えていただけますか。

    吉川:まずはなんといっても、素材に関する知識の豊富さです。六本木にある私たちのマテリアルライブラリーには約3000点の素材がアーカイブされていて、しかも毎月約20~30点の新素材が世界中から届きます。アーカイブする素材は、ニューヨークで「⾰新性/改良性」「⽤途展開可能性」「サステナビリティ性」の基準から厳正に審査されたもの。オンライン上にあるデータベースからはさらに10,000点以上の素材が検索でき、そこから素材メーカーに問い合わせることもできます。日々これだけの素材を扱っているので、私やスタッフはクライアントのご相談を聞くだけで「あの素材で代用できるかも? あの素材が最適かも!」とどんどん妄想が膨らんでしまうほどです(笑)

    堀田:マテリアルコネクションで注目したいのは、それだけの膨大な素材を「サステナブル・マテリアルの14分類」によって整理していることです。「サステナブル」と一言で言っても、なんとなくボヤッとしたイメージしかありませんよね。それが素材のアプローチ別にわかりやすくまとめられていて、非常に理解しやすくなっています。

    吉川:「サステナブル・マテリアルの14分類」は、膨大な素材を独自の4つの観点から分類し、そこからさらに細かくカテゴライズして、アプローチ方法から逆算して素材を探せるよう体系的にまとめたものです。例えば「環境負荷を低減できる材料に置き換える」という観点のもとには「豊富な資源を使っている」「再生可能な材料である」などのサブカテゴリーが設けられていて、それぞれに対応する素材が細かく分類されているのです。

    膨大にある素材の中から闇雲に選ぶのではなく、まずどういった目的で選べばいいかを整理しながら、逆算的に素材を考えていけるのですね。

    吉川:その通りです。先ほども「何をやればいいかわからない企業が多い」という話がありましたが、こうしてアプローチ方法を分類してお伝えすることで、自分たちの課題やビジネスにはどういったやり方が適しているかを考えやすくなりますし、コンサルティングの中でも「今お話ししている素材はこのアプローチに該当しますよ」とご説明すると、素材の特性や活用する意義がぐっと理解されやすくなります。

    堀田:最近は「グリーンウォッシュ」(※環境配慮をしているように見せかけて実態が伴っていないこと)が問題視されることも多いので、企業にとってはこの14分類があることで、自社がサステナブルな取り組みとして何を行えばよいのか、その一つの指針にもなると思います。

    異業種の素材との出会いが、新たなインスピレーションに

    堀田:分類という点で言うと、このライブラリーの展示方法もユニークなんです。使用用途や業界別に並んでいるのではなく、シンプルに素材の特性別になっている。これって実はインスピレーションを得るうえでとても重要で、例えば車の内装に使われる素材の隣に、突然ファッション用の素材が並んでいたりすると、そこでまったく思いがけないアイデアが生まれることがあります。企業のデザイナーや開発担当者は普段忙しすぎて自分たちの業界以外の素材をなかなかリサーチできませんが、ここに来たらきっと新鮮な発見ができるはずです。

    吉川:業界の枠を超えたクロスインダストリーの素材提案は、私たちの大きな特長ですね。よく例に出すのがこのモバイルスピーカーなのですが、金属が使われることが多いスピーカー部分に、オフィスチェア用のメッシュ素材を活用しています。AV機器とオフィス家具は一見遠い業界ですが、ちょうどこの生地の耐久性や音抜け性能が実はスピーカーにぴったりということで採用されました。もちろん、実際に商品として作り込む際には、メッシュの穴の大きさを細かく調整するなど労力がかかりますが、そうした技術面も私たちでサポートすることができます。

    見渡すだけでも本当にたくさんの素材が並んでいて、気になるものがたくさんあるのですが……せっかくなので、最近の“推し素材”をぜひ教えてください!

    吉川:ではまず、レザーのようなこの素材から。「マッシュルームレザー」と言って、その名の通りキノコの菌糸を使って作られています。リサイクル原料から作られた素材や再利用可能な素材はすでにいろいろと出ていますが、最近は「自然環境をより良い状態に再生させる」という「リジェネラティブ(Regenerative)」の発想が増えていて、その一つとして注目されているのがこのキノコ菌糸。生育するときにほとんど水やエネルギーを使用しないので、製造時の環境負荷を大幅に抑えられるという特徴があります。菌糸のバイオポリマーは熱にも強く強度もあって、見た目以上に丈夫なんですよ。

    堀田:見た目も手触りも、まるでエリンギですよね。キノコという身近な存在を使っているので、どこか安心感や信頼感があって、それも消費者受けが良い素材です。マッシュルームレザーはラグジュアリーブランドも採用するなど、ファッションを中心に実用化が進んでいます。

    吉川:こちらの素材は木粉や農産物の廃棄物を細かく粉砕して天然由来樹脂と混ぜたものですが、射出成型できるので容器のキャップ部分などの細かい構造が再現でき、100%植物由来で生分解性があるため堆肥化も可能。仮に海に流れ込んだとしても永続的なマイクロプラスチックを残さずに生分解するので、「マイクロプラスチック・フリー」と呼ばれています。

    堀田:「バイオ(植物性)プラスチック」と呼ぶより、プラスチック・フリーをさらに推し進めたことをイメージできる「マイクロプラスチック・フリー」と呼んだほうが、その素材が“どう良いのか”という価値が伝わりやすい。こうした伝え方って本当に重要ですよね。いかにもエコ感のあるこの見た目も、サステナブルの浸透段階にある今の消費者にとってわかりやすく、選びやすいと思います。

    吉川:最後にもう一つ、こちらのカップも。見た目は普通のポリプロピレンですが、実は単一の素材から出来ています。あまり知られていませんが、パッケージに使われるフィルムやカップは通常、強度や保存性の理由から複数の樹脂が積層されて出来ています。異なる素材が混ざっていると容易にリサイクルできないという欠点があるのですが、単一素材ならリサイクルがしやすくなります。こうした素材への切り替えを「モノマテリアル化」と言い、サステナブル素材においては主流の取り組みの一つです。

    堀田:見た目は違いが分からず少し地味ですが、理由があって複数の樹脂を使っていたものを一つの素材に変えていくのって、技術的にはすごいことなんですよ。

    サステナブル素材と出会うワクワクを、ぜひあなたの企業にも!

    こうして解説を聞きながら実際に一つひとつの素材を見ていくと、クリエイティビティがすごく刺激されますね! こうした体験の場を企業に提供するために、電通とマテリアルコネクションである企画を用意されていると聞きましたが……

    堀田:はい! 最近のサーキュラー・エコノミーに関する法令やトレンド、「サステナブル素材の14分類」について詳しくご紹介する特別セミナーと、マテリアルライブラリーの見学をセットにした「Sustainable Material Study & Tour」を企画しています。凝縮された情報を一度にインプットして流れが把握できるだけでなく、そのあと実際に素材を見て触れることが大きなポイント。セミナーを受けるだけより、サーキュラー・エコノミーへの解像度がグッと上がると思います。企業ごとのご要望に合わせて内容をカスタマイズすることもできますし、きっとご満足いただける内容になるのではないかなと。

    特にこんな企業に参加してほしいというのはありますか?

    吉川:具体的な製品用のサステナブル素材を探されている方はもちろん、まだ特に決まっていない・何かアイデアを探している、という段階の方にもぜひご参加いただきたいですね。素材との出会いは、早ければ早いほどいいものです! よくライブラリーに来られた企業の方々が、その場で「これであんなことできるね」と盛り上がることがあるのですが、実際に素材に触れながら出てくるアイデアは本当に新鮮。ここでのインスピレーションが思いがけないビジネスのきっかけになることもあると思います。ネットでのリサーチに何時間も費やすなら、一度このStudy & Tourに参加して素材に触れて体感いただくことをおすすめします。

    堀田:「何時間でもライブラリーにいられる」「ここに住みたい」なんて言う人もいるくらい、本当にワクワクできる場所です。知識も素材も、知れば知るほどアイデアにつながるもの。みなさんもぜひ「Sustainable Material Study & Tour」で、このワクワクをご体感ください!

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