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    経験者/キャリア人財獲得を成功に導く採用ブランディングとは?

    最終更新日:2025年06月10日

    経験者/キャリア人財獲得を成功に導く採用ブランディングとは?

    日本の就労人口の構造変化や産業構造の変化に伴い、日本型雇用の特徴とされてきた終身雇用制度の枠組みが大きく変わろうとしています。国による人材流動性を促す政策もあいまって、いま企業の経験者(キャリア)採用市場はかつてないほど活況を呈しています。

    こうした状況を踏まえ、多くの企業が経験者(キャリア)採用による即戦力となる人財の獲得に力を入れています。どうすれば過熱する人財獲得競争を勝ち抜いていけるのでしょうか。
    Do! Solutionsでは、これまでのブログで「新卒採用」「理系人財の採用」「地方企業の採用」「高校生人財の採用」など多様なテーマを取り上げ、それぞれのターゲット人財に寄り添った採用ブランディングの重要性をお伝えしてきました。今回は、採用に特化した電通の専門チーム「採用ブランディングエキスパート」をリードする岩邊駿に、最新の経験者採用市場の動向と、企業が取り組むべき具体的な採用ブランディングのポイントについて、じっくりと話を聞きました。

    PROFILE

     

    INDEX

    経験者採用の重要性と市場の変化

    まず、近年の経験者採用市場の現状をどう見ていますか?

    ここ数年でかなり変わってきたなと感じています。企業側が即戦力人財の獲得に本腰を入れるようになっており、新卒よりも経験者採用に注力する企業も増えてきています。

    その背景にどんな社会的な要因があるとお考えですか?

    大きく3つあると思います。
    まず1つは、国の政策です。政府は労働市場の流動性を高めるために、採用ルールの変更、転職支援、雇用保険制度の整備、退職金制度の変更など様々な方針を打ち出し制度に反映させています。それに呼応するかたちで企業の採用戦略も「終身雇用前提での人財確保」から、「経営方針に沿って、企業の成長に必要な人財を適宜採用する」という方向へ、明らかにシフトしてきている実感があります。

    次に、企業の競争環境の大きな変化も見逃せません。たとえば日本経済の成長鈍化に伴って、経営方針や事業ドメインの変革や拡張に取り組む企業も増えています。それらに対応するためには、専門性や新しい知見を持つ人財が必要になります。そのような人財を社内だけで育成することには限界があるため、経験者採用の必要性がぐっと高まっていると言えます。

    3つ目が、若年層を中心としたキャリア観の変化です。今の20代後半から30代くらいの方々は、「一つの会社に長く勤める」よりも「いろんな企業で経験を積んで、自分なりのキャリアを作る」という価値観を強く持っています。転職が前提になっている人が増えることで、採用市場の流動化はさらに加速します。私たちが日々接している現場でも「転職を視野に入れて、会社を選ぶ」「今の自分に合った会社を探す」という空気が広がっていることを感じています。私たち「採用ブランディングエキスパート」が実施した調査「Z世代就活生まるわかり調査2025」では、就活生の37.7%が転職意向ありという結果が出ました。転職を考える理由としては、「スキルを積んだ後、キャリアアップしていきたい」「人生でより多くの経験をしたい」などポジティブな理由が目立ちました。

    ※出典:「Z世代就活生 まるわかり調査2025

    企業が経験者採用で直面する課題

    経験者採用に関して、採用の現場からはどんな悩みの声が届いていますか?

    はい、「思うような人財になかなか出会えない」「経験者採用を適切に進められているか迷いがある」という悩みの声が寄せられています。

    その理由の1つ目は、即戦力の確保が難しいこと。企業側が求めるスキルや経験、たとえば「DXをリードできるエンジニア」「新分野の事業開発を担えるマネージャー層」といった、細やかな条件を満たす人財はそもそも市場に多くありません。たとえ候補者がいても、採用条件や企業の期待値に合わないと見送りになってしまいます。特にIT分野では、優秀な人財はさらに限られており、採用競争が年々厳しくなっています。

    2つ目は採用コストの増加です。「優秀な人財を採るには転職エージェント経由が早い」というお話をよくうかがいます。実際、エージェントを使えば自社が求める人財に効率的にアプローチすることができますが、一人を採用するたびに紹介手数料がかかり、採用人数が増えると全体コストも膨らんでしまいます。しかも、エージェントが持つ母集団の中に、理想に合う人財が必ずいるとは限りません。自発的応募を促し母集団を拡大するためには、エージェントの活用とブランディングに両輪で取り組むことが大切です。

    3つ目はリファラル(社員紹介)採用の仕組みが十分に機能していないことです。「リファラル採用は効果的」と分かってはいるものの、実際には「自社のビジョンや採用方針が社員に伝わっていない」「紹介インセンティブの制度が弱い」「どうやって社員を巻き込むべきかわからない」などの理由で、リファラル経由の応募や採用が伸び悩んでいる企業は多いと思います。ご相談の中でも「うちはリファラルが少ない」「もっと社員が協力してくれれば…」というお話はとても多いですね。

    他にも、採用担当の方から特によく聞くリアルな悩みがあれば教えてください。

    「そもそも自社に合う人財ってどんな人なんだっけ?というところで立ち止まってしまう」「採用したい人物像が曖昧なまま、現場から“いい人いない?”とだけ言われる」といった、根っこにある人財像の要件定義レベルの悩みも増えています。また「どう伝えれば自発的な応募が来るのか分からない」といった、メッセージ発信の段階での壁を感じている声もよく聞きます。

    経験者採用のブランディング 5つのポイント

    上記の課題を踏まえ、企業が実践すべき経験者採用のブランディング施策について、ポイントを教えてください。

    経験者採用においては転職エージェントの活用に加え、企業が主体的に、「この会社に転職したい、応募したい」と求職者に思ってもらえるような活動をすることが大事になってきます。その仕組みをつくるためには、次の5つのポイントを意識することが有効だと思います。

    1. 新卒と経験者で一貫したブランドづくりを

    転職することが当たり前という意識の変化や経験者採用のボリューム増加に伴い、新卒採用時には就活で接したが入社しなかった企業に数年後に転職するといったケースが増えることも考えられます。新卒採用と経験者採用の垣根はなくなりつつあり、企業は新卒と経験者で一貫したブランドをつくる必要があります。新卒と経験者との間で情報発信が分断されてしまうと、採用に強い影響を与えている企業ブランドの一貫性が伝わりません。「会社を知ってもらう」最初のフェーズでは、きちんと共通したキーメッセージを掲げておくことが非常に大切です。その上で、応募者の属性やキャリア志向に合わせて表現や訴求の切り口を使い分けていく。たとえば大手通信インフラ企業では、新卒向けには通信業界の将来性を前面に出しつつ、一方で経験者向けには「地域の課題解決や未来に貢献する働き方」を打ち出すなど、ブランドの骨格は共通しながら具体的に発信する情報やその表現を効果的に分けています。それにより、どのターゲット層にも企業の軸がしっかり伝わるようにしています。

    2. 求める人財像やスキルセットを求職者に具体的に届ける

    経験者採用は「即戦力を採用することが前提」なので、求める人財のイメージやスキルセットをより具体的に明文化しておくことが欠かせません。
    「こういう業務の経験がある方」「こういう志向・価値観を持った方」を歓迎する、という情報をなるべくわかりやすく“言語化”して発信し、応募者との期待値ミスマッチを減らします。
    その際、職種ごと・レイヤーごとに細かく要件を整理することも必要です。私たちがご支援する現場では、本当に「自社が今必要としている人財」がどんな人か、人財要件定義を見直しするケースも増えています。経営方針に沿った、人財のポートフォリオの策定からご支援することもあります。

    3. デジタル×リアルで行動動線を押さえる

    経験者採用は新卒採用とは異なり季節性が無いため、通年で求職者との接点を作っていくことが求められます。求職者は日々情報を収集し、その際に候補企業の採用サイトや就職関連サイト・広告・周囲の評判など様々な情報チャネルを使い分けています。ウェブ上の口コミや評判も大事になるので、きちんと自社の魅力・特徴を企業の採用Webサイトで届ける必要があります

    一方で、リアルな生活動線での情報発信も無視できません。たとえば「工場や製造現場の施設が集約されたエリアの鉄道沿線でOOH(屋外広告・交通広告)を出す」など、社会人が日常的に目にするリアルな接点づくりも重要です。デジタル×リアル両方の接点からターゲット層にリーチすることで、より効果的に会社の“存在感”を記憶に残すことができます。

    4. 転職意向層の情報ニーズを捉えて「リアルな声」で応える

    OpenWorkのような従業員の口コミを集約するサービスが広がり、働く社員の生の声にアクセスしやすい環境が整っていることもあり、転職意向層はリアルな情報を求めています。彼らは「この会社に入ったら自分がどう成長できるのか」「どんな人とどんな働き方ができるのか」といった問いに答えてくれる、具体的でかつ働く人が見える“生の声”を知りたがっています。たとえば、制度や社風、職場の雰囲気など、実際に働く人のリアルな言葉・体験談などがとても重視されます。そのため、「社員インタビュー」「キャリア事例」などのコンテンツを充実させて現場社員の目線・声をダイレクトに届けていくことが、他社との差別化のうえでも有効です。経験者採用の場合は業務経験のある方が対象となるため、電通独自調査では、業務内容のみならず、社員同士の関係や休暇取得率といった、働く環境についての情報を求める傾向が見られました。

    5. インナーブランディングで自社の価値意識を高める

    外向けのブランディングと同じくらい、社内の従業員に企業のビジョンや採用方針(欲しい人財像だけでなく、企業の未来像・将来像も)をきちんと伝え、“自分ごと”化してもらう「インナーブランディング」も大切です。
    たとえば広報チームと連携して、会社の採用方針や社員が採用に関わるメリットを定期的に発信したり、社員紹介制度を強化し、インセンティブの仕組みを社内で分かりやすく周知したりすることで、リファラル採用の活性化が図れます。社員が「自分の会社に誇りを感じる。就職先として勧めたい、紹介したい」と思える状態を作ることが、ひいては安定的な経験者採用の基盤になると思います。

    電通の「採用ブランディング by HR for Growth」

    最後に、採用ブランディングを進める上で電通のチームができるサポートや、ポイントを教えてください。

    私たち「採用ブランディングエキスパート」は、人財像の要件定義やターゲット整理、施策づくり、新卒・経験者採用を一体化した体制づくりまで、採用活動を総合的にご支援しています。「なんとなく理想像はあるけれど、どう言語化し戦略化すべきか分からない」「現場の巻き込み方に悩んでいる」など、どんな段階からでもご相談いただいて大丈夫です。

    採用ブランディングは一部門だけの仕事ではなく、広報や現場、経営層も巻き込む組織横断的な課題です。実際、外部の第三者的な目線があることで、社内では気づきにくい自社の強みやメッセージも発見できます。迷ったらまずは壁打ちでも、アドバイスでも、一歩踏み出していただければと思います。

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