私たち「採用ブランディングエキスパート」は、クライアント企業の人財採用におけるブランディングを支援する電通のコンサルティングチームです。マーケティングメソッドを活用して企業の採用活動を支援する「採用ブランディング」サービスをご提供して、企業の採用活動を支援しています。
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これまで、このブログシリーズでは、「採用ブランディング」とは何か、どのように行うべきかについてご紹介しながら、企業が気になる「Z世代の就活」「理系人財の獲得」に触れてきました。
ここからはさらに一歩進めて、企業が採りたい採用ターゲットに関するテーマ「地方企業の人財採用」「キャリア/経験者採用」「高校生採用」に焦点を当てて、採用ブランディングを進めるうえでのコツやボイントをご紹介していきたいと思います。
本ブログで取り上げるのは「地方企業の人財採用」。地方(※)に本籍を置く企業が応募者を獲得するための採用ブランディングのポイントについて解説します。
※都市・地方:東京・名古屋・大阪圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府)を都市、それ以外の道県を地方と定義。
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地方企業の採用の実情
私たち「採用ブランディングエキスパート」は、日頃から企業の採用ご担当者様とお会いして、直接お悩みをうかがっています。その会話の中で、特に地方企業の方から「最近、上位大学の学生が採用できなくなってきている」「Uターン就職が減少している」という声を多くうかがいます。
その傾向は、私たちが独自で就活生の実態を探った調査「Z世代就活生まるわかり調査2024」(以下、本調査)にも表れており、都市部の大学生のうち地方への就職を志望する割合はわずか5.6%でした。
また、地方の大学に通う学生でも、地方企業への就職を志望する割合は31.9%にとどまり、都市への就職志望の約半数にとどまっています。
このように、日本の多くの大学生が都市にある企業を志望していることがわかっています。
このような現状に対して、政府は、地域活性化雇用創造プロジェクトなどの施策を通じて地方企業の雇用促進を目的とした支援を行っています。また、地方自治体でも、Uターン・Iターン就職支援策の一環として、就職活動助成金や移住助成金を提供するなどの取り組みを行うなど、対策を講じています。しかしながら、統計上では若年層の就職意識は都市志向が非常に強いというのが実情です。
こうした状況の中、こと地方企業の採用活動は「待ちの採用」ではなく、企業自身が自らの価値を発信して学生の認識を変えるための「主体的な活動」が求められています。
では、どうすればこの状況を変えていくことができるのでしょうか。ここからは本調査の結果をもとに、「企業が学生に訴求すべき内容」「企業と学生との重要な接点」の2つの視点から、地方企業の採用活動を進めるうえでの具体的なポイントを探っていきたいと思います。
就活生が入社先を選ぶ決め手は?
就職活動における就活生の志望動機
今、学生が就職活動で企業を選択する際の決め手は何でしょうか。都市企業を志望する学生と地方企業を志望する学生の志望動機を調査から見てみましょう。
都市企業を志望する学生の入社の決め手の上位3つは、「給料の高さ」(47.8%)「業績の安定」(36.7%)「知名度の高さ」(32.0%)です。 一方、地方企業を志望する学生では「業績の安定」(39.0%)、「会社や業界の将来性の高さ」(35.6%)、「夢ややりたいことに近い仕事」(32.2%)が上位に挙がります。
業績の安定を優先することは双方に共通していますが、地方企業を志望する就活生からは「将来性」や「夢ややりたいことに近い仕事」がより上位に挙がってくるのが特徴となっています。
地方企業を選択肢に入れていた学生の価値観を深掘りする
さらに、地方企業への就職を選択肢に入れていた学生の価値観を深掘りするために、追加でウェブ調査(※)を行いました。
※調査対象:全国の大学生/大学院生、調査人数:計316人(地方就職を検討していたが都市企業に就職する学生=147人、地方就職は検討せずに都市企業に就職する学生=169人、対象者条件:キャリア支援NPO法人「エンカレッジ」登録の2024年または25年卒業予定大学生・大学院生。パネルの母体は本調査同様ですが、新たに招集してご回答いただいたため、回答者は同一とは限りません。調査時期:2024年7月19日~7月22日
まず、地方企業への就職を選択肢に入れていた理由として、「人が少なく、静かで落ち着く」(29.3%)「生活費や家賃が安い」(28.6%)「やりたい仕事ができる」(23.1%)「自然が豊かでアウトドアやアクティビティを楽しめる」(17.7%)が上位項目となりました。
地方企業への就職を選択肢に入れる学生は、都市とは違った地方ならではの生活面での魅力や、地方創生など地方だからこそできる仕事の魅力に惹かれていることがわかります。
逆に、地方就職を選択肢に入れていたものの、結局入社を選ばなかった学生に理由を聞いてみると、「生活の利便性が都市の方がいい」(35.4%)、「都市企業の方が将来的に安泰だと感じた」(21.1%)、「恋人や親しい友人と離れたくない」(16.3%)といった理由が上位項目となりました。
地方企業が検討すべき訴求内容とは?
ここまでの結果を踏まえて、就活生に向けて地方企業はどのような訴求内容を検討すべきでしょうか。
地方企業だからこそできる業務の魅力を押し出す
まず、就活生が重視する「夢ややりたいことに近い仕事」という観点と、地方企業への就職検討要因となる「やりたい仕事ができる」という観点から、地方企業だからこそできる業務の魅力や可能性といった側面をポジティブイメージとして前面に押し出していくことが有効と考えられます。
そのうえで、地方企業に対して就活生が抱いているネガティブイメージを払拭する試みを併せて行うことが良いでしょう。公式サイトなどのオウンドメディアを通じて企業の持つファクトを発信していくことで、地方で働く動機を持っていなかった学生が、地方企業を就職先の選択肢に入れるチャンスが生まれるのではないでしょうか。
都市企業志望の学生の固定観念を変える工夫を
例えば、地方は都市と比べて生活コストが高くないため暮らしやすいというメッセージの発信が考えられます。都市企業を志望する学生が重視している「給与」「福利厚生」面において、「社員の給与モデル」や「生活コストとの比較」など、具体的なデータをファクトとして発信することも一手です。
また、「成長機会・キャリアの選択肢の豊富さ」の面で、研修制度やキャリアパスを具体的に提示して「この会社に入ったらどう成長できるか?」を学生目線で伝えることで、「都市企業の方が安泰」という固定観念を変えていくことが考えられます。
さらに、「生活の利便性」の面で、リモートワークの導入や「まずは地方で1年、そのあと都市での勤務も可能」なハイブリッドな働き方を保証するなどの制度的なアプローチも有効かもしれません。
就活生と企業との重要なコンタクトポイントは?
では、検討した訴求内容を発信していくために、具体的に学生とどのように接点を持つことが有効なのでしょうか。4つの視点から解説します。
企業と就活生の接点を戦略的に描く「就活ジャーニーマップ」
採用ブランディングエキスパートでは、人基点のマーケティングメソッドを活用した独自の「就活ジャーニーマップ」を活用しています。
このツールは、就職活動における企業の認知から内定の承諾までの各フェーズにおいて、彼らとの重要な接点(コンタクトポイント)や、そこで有効な訴求メッセージを体系的に描くマップです。各接点で各企業のコミュニケーション課題を発掘することが可能になります。
企業の採用活動に伴走する中で「就活ジャーニーマップ」は、さまざまな成果を生んでいます。マップを活用することで「企業認知率が20%以上拡大」「ターゲットからのエントリーが1.5倍以上拡大」「採用ウェブサイトへの流入が1.5倍以上拡大」「求職者からの企業イメージの変化、就職人気ランキングが200ランク以上向上」など、実績数値に現れる具体的な成果が生まれています。
「就活ジャーニーマップ」に基づき、就活の各フェーズで有効なコンタクトポイントを本調査で明らかにした結果が下記になります。
この結果から、「認知」「理解」「エントリー」までのフェーズにおいて、先輩や同期などの周囲の声の他に「合同企業説明会」や「説明会イベント」などの企業とのリアルな接触、または「採用Webサイト」といったオウンドメディアでの発信がカギとなることがわかります。
地方企業が学生との「接触機会」を増やすには?
地方企業が学生とのリアルな接点を増やすためには、その地方に住む学生だけでなく、居住地域の異なる学生との接触機会を増やすことが必要です。
近年、採用広報の観点では、都市企業がより地方の大学に通う学生を採用すべく、地方でのイベント出展を増やしている例を多く聞くようになっています。また、オフライン・オンライン双方で異なる地域に住む学生に接触する方法も採られています。
一例として、東京を本社とする弊社のオンラインでの接触事例を紹介します。「電通若者研究部(ワカモン)」とキャリア支援NPO法人「エンカレッジ」は、共同運営オンライン複数企業合同インターンシップ「47 INTERNSHIP」という取り組みを、2021年~2022年にかけて行いました。
全国47都道府県から1名ずつ学生を選出して、地域課題の解決などをテーマに学生と企業とでともに議論し、新たなアイデアを創出することを目的として開催したものです。これは、「D&AD Awards 2021」のブランディング部門で「Yellow Pencil」を受賞するなど世界的にも高い評価を獲得することができました。
地方企業が主体となって行う施策案としては、例えば、「お試しワーケーション」と称して都市の大学に通う学生が地方での働き方を実感できる短期~長期インターンシップを実施するなども、ユニークな試みとして話題につながるかもしれません。
選考過程でも、居住地の異なる学生に対する配慮について検討の余地がありそうです。ある時、都市の大手企業の採用担当者の方にヒアリングした際に「移動が必要な地方学生に向けて、地域格差が生まれないように採用期間を長めに設けることを想定している」という話を耳にしました。
地方企業においても同様に、選考の早期化・通年化が急速に進む中で、採用活動を行う期間を長く設けることも、より多くの就活生にアプローチする一手と考えられます。
オウンドメディアの情報拡充も大切に
そして、採用Webサイトや公式SNSといったオウンドメディアの情報を拡充することも同時に必要です。
特に、本調査では、およそ97%の学生が志望企業の採用Webサイトに目を通しており、志望していた会社の採用Webサイトのクオリティや内容の良し悪しによって「志望度に変化があった」と回答した学生が4割以上にものぼりました。
就活生が採用Webサイトで特に注目して閲覧するコンテンツは、「福利厚生」(52.2%)「新入社員のインタビュー(座談会含む)」(50.7%)、「若手社員のインタビュー」(50.2%)、「仕事のプロジェクト事例」(48.2%)が上位項目となり、自社での働き方をリアリティをもって体感できるようなコンテンツを盛り込むことが就活生の就職意向の向上につながります。
電通の横断チームである「採用ブランディングエキスパート」は、国内電通グループ会社と連携し、地方企業様の採用Webサイトの立ち上げやリニューアルをご支援する機会が増えています。
採用Webサイトでは、地域を支える仕事、あるいは地方から日本全国や世界に羽ばたく仕事に生き生きと向き合う従業員の方の姿をリアルに伝えることで、就活生からの深い理解と共感を得ることが可能になります。
中国電力様、三浦工業様の新卒・経験者向けの採用Webサイトのリニューアルでは、私たち採用ブランディングエキスパートと西日本エリアを主に担当する株式会社電通西日本が連携してご支援いたしました。
● 中国電力 新卒採用サイト 中々ヤルぞ。中国電力 中のヒト。
電力会社というフィールドで、電力会社を超えたフィールドで働く「中のヒト」にフォーカスし、就活生向けにわかりやすく魅力的に業務内容とそこで活躍する若手従業員の姿を紹介しています。
● 三浦工業 新卒者採用サイト 「ミズカラ. ミウラカラ. /MIURAction」
「自ら」動くことをキーワードに、業務に従事し輝く先輩社員の姿と多岐にわたる業務内容を紹介しています。また、動画にも力を入れ、大学生にはわかりにくいBtoB企業の業務のリアルを伝えています。
弊社電通でも、2023年の新卒採用サイトで、47都道府県ごとに出身の社員が集まりこたつを囲んで雑談する様子を紹介する「先輩みっけ!」というスペシャルコンテンツを公開し、就活生から「同郷の先輩社員がこんな風に活躍している」という親近感・安心感を持てたと好評を得ました。
その他の施策として、「内定」「承諾」フェーズでは「親や周囲の意見」を意識する就活生が増えるため、採用にあたって誠意や熱量を見せるために「就活生の実家に手紙を送る」といった施策を講じる企業もあるようです。
いずれにせよ、「企業視点」から「就活生視点」の発信活動に転換し、「地方企業だからこそ実現できるキャリア」を明確に伝えていくことが、地方企業の採用活動を前に進めるヒントとなりうると言えます。
全国の電通グループネットワークで地域の「採用ブランディング」をご支援
私たち「採用ブランディングエキスパート」(公式サイトはこちら)は、アスキング調査やデプスインタビューを通じた若者に関する知見をもとに、採用課題の発掘からサポートいたします。
「就活ジャーニーマップ」を活用することで、学生の心理変化に合わせた適切なコンタクトポイントを見つけ、Z世代就活生が求める「働き方」「生き方」「価値観」に寄り添った企業の魅力を伝えるメッセージをご提案いたします。
チームメンバーには、日本各地に本社・支社を持つ地域電通各社からの出向者も在籍しているため、地域電通とのネットワークを生かした密接なプロジェクト進行をさせていただきます。
また、一企業にとどまらず、地域全体の魅力を底上げするブランディング活動と紐づけて採用活動を行うことで、大きなスケールで地方企業の採用難の複合的な課題解決につなげることも可能です。
採用ブランディングエキスパートでは、国・自治体からスタートアップ企業まで幅広いクライアント様の案件で価値創造を行ってきた経験豊富なメンバーが所属する社内横断組織ならではの知見を生かし、多様なステークホルダーを巻き込んだ地域レベルの魅力発信もサポートいたします。
地域の特性を生かして地域課題の解決を支援する電通のソリューション「プレイス・ブランディング」のチームとも協働し、より専門的に課題解決を支援することも可能です。
ご関心を持たれた方は、お気軽にお問い合わせください。
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また、採用にお悩みの企業の皆様に向けて、「採用ブランディング by HR for Growth」サービスをご提供しておりますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせいただけると幸いです。詳しい資料を無料進呈しておりますので、ご関心のある方、ご希望の方は、eBookをぜひダウンロードしてみてください。