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    サステナビリティ経営のガイドツール「サステナブルロードマップ」とは?

    最終更新日:2024年03月22日

    サステナビリティ経営のガイドツール「サステナブルロードマップ」とは?

    近年、多くの企業がサステナビリティを踏まえた経営(SX=サステナビリティ・トランスフォーメーション)への関心を高めています。しかし、その必要性は十分に理解していても、いざ実行するとなるとなかなか取り組みが進められず、苦労している企業も多いというのが実情です。

    そうした課題の解決をお手伝いするため、電通では2023年5月にサステナビリティ経営の推進サポートツール「サステナブルロードマップ」をリリースしました。A3用紙1枚にまとめられ、一見とてもシンプルに見えるこのマップ、実は国内外のサステナビリティ関連トレンドと生活者の価値観・行動変容、そして自社の取り組み計画を「一枚絵」で俯瞰できるという優れもの。企業はこのツールを、具体的にどう活用していけるのでしょうか? 開発の背景を含め、当社サステナビリティコンサルティング室の堀田に編集部が取材しました。

    PROFILE

     

    INDEX

    なかなか進まないSX、その“あるある課題”とは?

    まずは「サステナブルロードマップ」を開発した背景からお聞きしたいのですが、企業のサステナビリティ経営(SX)がなかなか進まないのは一体何が原因なのでしょうか。

    いろいろな要因があるとは思いますが、私が企業の方とお話をする中でよく挙がるお悩みは3つあります。1つは、「いつ始めたらいいのかわからない」。何かアクションを取らなくてはという危機感はあっても、いつアクセルを踏んだらいいのかと迷っている企業がとても多いですね。

    それはやはり「急いでやって失敗したくない」という思いが大きいからでしょうか?

    失敗を恐れるというより、「一番手は避けたいけれど、他社や世間から遅れたくない」という日本企業特有の考えが表れていると思います。サステナビリティ経営へのシフトが進んでいるEU圏では「自分たちが先行事例となってルールメイクをしていくぞ」という考えの企業も多いのですが、同じような意識を持つ日本企業はまだまだ多くはありません。

    日本企業の“あるある課題”かもしれませんね。あと2つのお悩みはなんでしょうか。

    「いつ」の次に多いのは「何からやれば?」、そして「どうやれば?」です。例えばものづくりをサステナブルな方法にシフトするのは、それが企業の主要商品であればあるほどとても大変なこと。どこから手を付けたら上手くいくのか、具体的にはどうすればいいのか、慎重になるのは当然のことです。だから私たちはよく、「商品そのものではなくまずはパッケージから環境配慮型に変えていきませんか」といった提案や、「新規事業で小さくはじめてみませんか」というアドバイスをしています。

    今お聞きした課題は、どれも「まだ国内事例が少ないゆえのお悩み」といった感じがします。

    サステナビリティ経営では「このタイミングでこれをやれば正解」という答えがないので、なおさら実行の決め手に欠けるのだと思います。企業の皆さんは必ず「何か事例はありませんか」とおっしゃられますが、要するに“ガイド”になるものを求めているのだと感じます

    EUと生活者の動向変化が、SXの重要なガイドになる!?

    今「ガイドを求めている」というお話がありましたが、「サステナブルロードマップ」はまさにSXのガイド役として優れたツールだと思います。具体的なツールの中身をご紹介いただけますか。

    「サステナブルロードマップ」は、大きく7つの項目から構成されています。①から④までがマクロトレンド(国内外の動向や法令・規制、技術や素材のトレンド、そしてクライアントごとの業界動向)、⑤⑥が自社の取り組みや製品・サービス、一番下の⑦が今後予測される“生活者の価値観・行動の変化”です。マクロトレンドと生活者視点をある種のガイドとして、その間に自社の取り組みや新たに開発する製品・サービスをプロットすることで、時系列に沿って全体を俯瞰できる1枚のロードマップが完成します。

    <「サステナブルロードマップ」の構成>
    「サステナブルロードマップ」の構成

    <「サステナブルロードマップ」活用の一例>
    「サステナブルロードマップ」活用の一例

    法令や規制などの情報がかなりしっかり盛り込まれていますね。

    サステナビリティに関する動向は、市場の中だけで変化が起こるのではなく、外部要因として法令の影響を大きく受けるという特徴があるからです。中でも注目していただきたいのが、EUの動きですね。EUのサステナブル関連法令は感覚的に日本より3年~5年先行していることが多く、規制ルールも日本に比べてかなり厳しいものになっています。この動きを利益創出のためのビジネスチャンスだと捉えるEU各国や企業も多く、率先してルールメイクしていこうという空気があるので、「事件はEUで起こっている」くらいに認識しておくとよいかと思います。

    例えばプラスチック関連の動向を見比べてみると、EUでは2015年に「サーキュラー・エコノミーパッケージ」、2018年に「欧州プラスチック戦略」、2019年に「使い捨てプラスチック製品禁止法案」、2020年に「サーキュラー・エコノミーアクション」など2010年代後半を皮切りに関連政策が次々と施行されています。それに対し日本では、2019年に「プラスチック資源循環戦略」、2020年に「循環経済ビジョン」が発表されました。ただ、その内容は「努めなければならない」という表現に留まるものが多く、EUに比べるとかなり緩やかでした。この規制の違いが、企業意識の差につながっているのだと思います。

    EUのサステナビリティ動向をウォッチすることで、海外の危機意識の現状や国内規制の将来予測が見えてきますね。

    その通りです。それからこのロードマップでもう一つ注目していただきたいのは、一番下にある“生活者価値観・行動変容”です。ここには、今後10年間で価値観や消費スタイルがどう変化するかが記載されています。電通が独自に行っている生活者調査をベースにしていて、こうしたデータを豊富に持ち合わせているのは私たちの強みの一つです。

    生活者視点はあらゆる経営や事業で大切にすべきものですが、サステナブルな経営にとってとりわけ重要なのはなぜでしょうか。

    サステナビリティ経営というのは、従来のようにモノやサービスを売って終わりではないので、生活者に回収やリサイクルの輪に参加してもらい、「循環の動力」の一つとして行動してもらわないといけないからです。SXに取り組むならば、事業だけでなく顧客との関係もサステナブルにシフトしていくべき。そのためには生活者の価値観や行動をしっかりとらえ、共感を得られる発信をしていくことが欠かせません。その点から考えても、欧米の企業はパーパスやサステナビリティ方針をしっかり打ち出して、生活者から共感を得ている企業が多く、参考になるかと思います。

    潮流把握から戦略策定まで、伴走しながら電通がサポート

    その他に、「サステナブルロードマップ」を開発するうえで工夫したところはどこでしょうか。

    ⑤「自社の取り組み」と⑥「製品・サービス」をあえて空欄にしておき、企業自身が自社情報を棚卸しをして埋められるようにしたことです。つまりこのロードマップは電通から提供して完了ではなく、「器は電通で用意するので、そこに料理を盛り付けたり新たな料理を考えたりするプロセスは、クライアント社内が主体になり一緒にやっていきましょう」というツールなんです。もちろん、そのプロセスにおいても電通がしっかりサポートします。

    なるほど! 一方的に提供するツールではなく、マップをつくるプロセスもしっかり電通がサポートする“伴走型ソリューション”なのですね。それでは「サステナブルロードマップ」の具体的な使い方を教えていただけますか。

    はい。「サステナブルロードマップ」は「①潮流を把握する」「②現状認識する」「③発想する」「④戦略をつくる」という4つの使い方ができます。それぞれにおいて電通がどんなサポートをご提供できるか、過去の実績をもとに簡単にご説明しますね。

    まず「①潮流を把握する」では、サステブルロードマップを見ながら、サステナブル関連の動向やトレンドなどのつながりを時系列で掴んでいただきます。特にトピックとなる項目や興味関心が高い項目については、勉強会を通じてクライアントの方々に深く理解をいただくようにしています。具体的に言うと「サーキュラー・エコノミー勉強会」や「サステナブルマテリアル勉強会」、「生活者の価値変容勉強会」などを開催しています。情報を断片的にインプットするのでなく、時系列に並んだ“潮流”として全体感を把握する、という点を最も大切にしています。

    最初にしっかり潮流を掴んでおくと、自社の取り組みがそこにどう位置づけられるのか、「②現状認識」がよりスムーズになりそうですね。

    そうですね。「②現状認識」では、クライアントご自身が自社の取り組みを棚卸し、マップ上にプロットしていきます。私たちのサポートとしては、プロットされた項目を見ながら、「潮流に沿っているか」「生活者の価値観に適っているか」「何か違和感や気づいた点はないか」などをインタビューして言語化していきます。もし何か課題や議論点が見つかれば、マップ上に記載しておくのもよいでしょう。課題を可視化し、共通認識資料としてまとめておくことが重要です。

    続く「③発想する」と「④戦略をつくる」のフェーズではどんなことができるのでしょうか。

    ここからは具体的な商品やサービスを考えていくのですが、「サステナブルロードマップ」があることで開発の必然性やヒントがとても見つかりやすくなります。例えば「いついつに規制が始まるから、このタイミングで出す商品はリサイクルできる素材を使うべきだよね」「このタイミングまでにはリペアビジネスを始めないと」といったように。④の戦略立てはもう少し大きな話になりますが、時系列で情報が俯瞰できるので長期的な経営戦略も考えやすくなると思います。また、参加する全員で知恵を出し合いつつ、自分たちならではの戦略を手に出来るという部分も大きな価値があると思います。

    サポート方法としては、ワークショップを実施することが多いですね。マップでは情報が言葉によって可視化されていますが、発想フェーズではグラフィックレコーディングの手法も取り入れて、アイデアをイラストなどのビジュアルでさらに可視化していきます。

    合意形成の質を高め、サステナビリティ経営を前に進める!

    これまでのお話をお聞きして、「情報の俯瞰的可視化」と「共通認識の醸成」が、このマップの大きな特長になっているなと感じました。

    そうですね。実際に社内でSXの取り組みを議論する際、「こういう根拠(=サステナブルロードマップ)に基づいて、こういう商品や戦略を考えました」と説明すれば、他部署や経営陣への説得もすごくスムーズになります。その意味で、私は「サステナブルロードマップ」を合意形成ツールと呼んでいます。

    合意形成ツール?

    実はサステナビリティ経営が上手く進まない要因の一つに、「関与者やステークホルダーが多くて合意形成が取りづらい」という大きな問題があります。グローバル部門は世界の動向を見ていても、日本の法令は法務部が調べていて、R&Dは技術トレンドは把握しているけど、生活者情報はマーケティング部が集めていて……こうした情報の分断は、特に大企業では起こりがち。バラバラの情報を見ているから判断基準も異なり、なかなか合意形成が進みません。そして、サーキュラー・エコノミーはサプライチェーン全体に関連するので、これまで以上に関係部署が広がって合意形成が難しくなっています。

    今のお話は、うなずける人がとても多いと思います……

    ですよね! 実は私がこのツールを開発したのも、前職のメーカー勤務時代の経験から「こんなものがあったらいいな」と思ったのが大きなきっかけなんです。さまざまな立場の人が、自分の持っている断片的な視野だけで商品企画や戦略を判断せず、ロジカルかつ俯瞰的に議論できる1枚ものの資料があれば便利だろうな、と。

    確かに合理的な根拠が示せますし、途中で企画が「ひっくり返される」みたいなことは起こりづらくなりそうです。

    はい、合意形成の“質”が深くなると思います。また、社外のステークホルダーを説得したり、協力してくれるパートナーを探したりするときにも活用していただきたいです。サステナビリティに関する取り組みは1社ではできないものばかりですが、「この潮流に乗って一緒にサステナブルを目指していきましょう、それが生活者からも求められています」とロジカルに説明されたら、相手も共感しやすくなりますよね。

    マップの掛け合わせやアレンジも可能。相談会も開催しています

    聞けば聞くほど、このツールの必要性がひしひしと伝わってきました。ちなみに、特にどんな企業の方に使っていただきたいか、イメージはありますか?

    幅広く活用していただければと思いますが……そうですね、サステナビリティ推進の一歩目が踏み出せていない企業の方や、少し停滞しているという自覚がある企業の方には、まずご相談いただきたいと思います。ちなみにこのロードマップは「日用品業界」「食品業界」「住宅業界」「家電業界」など、業界別のフレームを用意していますので、クライアント企業の業界にあわせてフルカスタマイズすることができます。また業界別に加え、「プラスチック関連」「エネルギー関連」のフレームも準備しました。単独での活用もできますし、日用品とプラスチックをかけ合わせてパッケージに特化したフレームを作る、といったアレンジもできますから、本当に幅広い業種の企業にお使いいただけると思います。

    クライアントや業界のニーズに合わせ、知っておくべきトレンドや潮流が的確に把握できるんですね。それはとてもありがたい!

    あとは、細かいことですが、このロードマップに記載している情報について、参照先の一覧もあわせてご提供しています。ときどき、コンサルティング会社から何百ページにもわたる資料を渡されて逆に困ってしまう……なんてこともありますが、このロードマップならA3用紙一枚で、より深い情報も同時に得られるので、そんなところも使いやすさのポイントになると思います。

    本日は「サステナブルロードマップ」の大変詳しいご紹介をありがとうございました。

    今回はロードマップの紹介でしたが、電通のサステナビリティコンサルティング室では、今後もサステナビリティ経営の支援ツールを続々展開していく予定です。ご相談やご質問は随時お受けしていますし、Do! Solutionsのメルマガでは関連するウェビナーについてもご案内していますので、興味のある方はぜひご登録のうえご参加いただければと思います!

    【「サステナブルロードマップ活用相談会」を無料で開催中】
    実際に「サステナブルロードマップ」を使ってみたいという企業さまに向け、相談会を随時開催しています。ロードマップ以外のソリューションもご用意しておりますので、サステナブル経営の推進に課題やお悩みを抱えている方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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