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    d-cepパートナーインタビュー Vol.3 リサイクルの前にリユースを!企業が知っておくべき廃棄の新常識

    最終更新日:2024年03月22日

    d-cepパートナーインタビュー Vol.3 リサイクルの前にリユースを!企業が知っておくべき廃棄の新常識

    サーキュラー・エコノミー実現のトータル・サポートに向け、新たに発足した「d-cep(電通サーキュラー・エコノミー・パートナーズ)」。循環モデルの構築に欠かせないさまざまな分野のトップランナー企業・団体を、電通が中核となってオーガナイズする強力なワンチームです。

    d-cep

    ※d-cepがお届けするソリューションの概要については、こちらの記事をご参照ください。

    このインタビューシリーズでは、毎回1社のパートナーを取り上げ、ご提供可能なソリューションやサーキュラー・エコノミーへの想いをご紹介。第3回では、サーキュラー・エコノミーの静脈産業である総合リサイクル業の立場から、新たな発想でビジネスを展開する「株式会社ナカダイ/株式会社モノファクトリー」の代表取締役・中台澄之氏にご登場いただきます。

    中台氏が手掛けるのは、一般的にイメージされる廃棄物処理とは一線を画す「使い方を創造し、捨て方をデザインする」ビジネスです。リユースの取り組みや、回収網構築の重要性、生活者と一緒に循環サイクルを回すためのポイントなどなど、廃棄物処理の実態を知り尽くす中台氏と、電通サステナビリティコンサルティング室/電通Team SDGsの堀田に編集部がたっぷりお聞きしました。

    INDEX

    PROFILE

     
     

    “やってますアピール”は、そろそろやめませんか

    中台さんは企業の環境面におけるビジネスパートナーとして、リサイクル率の向上や循環ビジネスの構築など幅広くコンサルティングされています。廃棄物処理の現状を知り尽くした立場だからこそ感じる、企業の環境への取り組みにおける課題はありますか?

    中台:それはもう、いっぱいありますね。めちゃくちゃいっぱいあるのですが……そろそろ「“やっている感”を出すのはやめよう」が一番でしょうか。

    “やっている感”と言いますと……

    中台:リサイクル素材を何パーセント使っていますとか、再生ペットボトルを使っていますとか、そうしたアピールはそろそろお腹いっぱいです。「環境に配慮したものづくりが重要なのはわかった。実際にこれだけ取り組んでいる。で、次は何したらいいの?」というのが今の課題だと思います。企業側も次のフェーズに行かなくちゃいけない焦りはあるけれど、何をしたらいいかわからない。ここ2,3年は当社へのそうした相談も顕著に増えています。

    作りっぱなし・使いっぱなしでは、環境ビジネスをやっているとは言えないということですね。

    中台:製品を作る段階の環境配慮だけでなく、そこから出る廃棄物の処理や削減において、今どんな課題があるのか。循環型のビジネスを構築するために、そこを企業が隠さずパートナーや消費者と共有して、共助するためのコミュニケーションを始めるタイミングだと思います。もちろん廃棄に関する情報には機密情報も多く含まれますし、公に出せないことも多々あることは承知していますが。

    そもそも「廃棄物」というと一般的にマイナスのイメージがあるので、なかなか企業もオープンにすることに抵抗がありそうです。意識の問題も大きいかもしれません。

    中台:そこにはメディアの責任もあると思っています。ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが「MOTTAINAI」を提唱した2000年代、メディアが大きくそれを発信しました。「もったいない」自体は大事な価値観ですが、その結果「捨てること=悪」というイメージがだいぶ強化されてしまいました。今もレジ袋やプラスチックストローが一斉に廃止され、「プラスチック=悪」という単純な図式ができあがっていますよね。そうすると、例えば製造時の廃棄物や在庫処分品がどう処分されていくのか企業は表に出さず、廃棄物処理業の閉じられた世界の中で処理されていく。完全にオープンにするのは難しくても、もう少し「廃棄=悪」という意識が減れば、社会みんなでその課題をシェアして考えていきましょうという流れもできると思います。

    捨てたその先、エンド・オブ・ライフを考えよう

    意識を変えていくために、具体的にはどんなアクションが必要でしょうか?

    堀田:モノの「エンド・オブ・ライフ」についてもっと語られることが重要なのだと思います。「この製品はバイオプラスチックを何パーセント使っているが、じゃあ、使い終わった後はどうなるのか?」 それが見えてくると、消費者が商品を選ぶ新たな判断軸にもなるし、使い終わった後どうするのかという行動にもつながります。
    「エンド・オブ・ライフ」ということでいうと、私が中台さんと最初にお話しした時に印象的だったのは「リサイクルよりまずリユースをする」というお話なんです。日本はすぐリサイクルしようとするけれど、使えるものは何もせずそのままリユースするのが一番環境負荷が低いんだと教えていただいて「そうかぁ」と納得しました。

    中台さんは著書の中で「モノの延命」という言い方をされていますね。

    中台:今から20年くらい前、いろんな企業のリサイクルを請け負う中で、高級ブランドの在庫品が廃棄処理のために持ち込まれることもよくありました。そうすると、当時は二次利用を避けるために、例えば新品の革張りの椅子にカッターナイフで大きくバツを入れ、使えないようにしていたんです。リサイクルするために分解や解体が必要だから、人形やぬいぐるみも全部切ったり破壊したりして。それを毎日何十、何百とやっていると、もう精神的にたまらなくなりますよ。当時は在庫管理や廃棄物処理のシステムが未熟で仕方がなかったとはいえ、あれは環境云々というより、仕事としてやってはいけない行為。私たちのモノの選択、使い方、捨て方の選択を考えるとき、「モノの延命」を軸に考えることで取るべき行動が見えてくると思います。

    堀田:ナカダイ・モノファクトリーがすごいのは、モノを回収したあと、リユースとして売り出す仕組みを作り上げていることです。たとえば2021年にモノファクトリーさんとブックオフコーポレーションさんがコラボレーションして立ち上げた「REMARKET」は、まさにリユースのセレクトショップ。BtoBで回収したものを、手間と目をかけセレクトし、BtoC事業として一般消費者に気持ちよく買ってもらえる仕組みができあがっています。前橋の店舗にも行きましたが、まさにアパレルや雑貨のセレクトショップのようにおしゃれなんです。


    ブックオフコーポレーションと共同で立ち上げた新ブランド“REMARKET”の 1号店(群馬県前橋市)。廃材を使った商品やレトロな商品、マテリアルなどを展示販売するほか、ワークショップや廃材を再利用したオフィス設計等の相談受付も行っている。

    堀田さんがおっしゃったように、手間と目をかけて捨てられたものに再び“価値”をつけているのも興味深いです。

    中台:『REMARKET』はBtoCの事業ですが、BtoBでもそのひと手間をかける意義が必ずあるんですよ。たとえば製造用のプラスチックパーツだと、リサイクル用に1トン売っても数万円という金額です。でもそのパーツ一つひとつを1個50円の素材としてリユース販売できれば、1トンの価値が大幅に上がる。手間を惜しむなら全部一括で壊してリサイクルすればいいけれど、それでは従来のリサイクルの延長にしかなりません。価値のスケールアップに挑戦できるのは、1トンの廃棄物を持っている者だけの特権です。だって普通、何トンものプラスチックパーツを入手するなんてできないでしょう?


    「モノファクトリー」のショールーム(品川区)には、さまざまな業界の廃棄物から取り出した再利用可能な部品がずらりと並ぶ。デザイナーや美大生が素材探しに訪れることも多いという。

    廃棄物は、ゴミではなく素材! 活かすには「回収」を

    今のお話を聞くと、廃棄物をただゴミとして考えるのではなく、素材と捉えてしっかり回収する意義が非常によく分かります。

    中台:僕は、企業がこれからやるべきことの答えはほぼ見えていると思っています。究極的にはこれ以上モノを生み出さないのが環境にとって一番だけど、人間が生きるうえでそうはいかない。ならば省資源・長寿命化を考えるしかなくて、そのためには自分たちが商品に使った素材をもう一度回収して使うしかない。つまり、自社商品を回収するフェーズからはどうやっても逃げられないので、回収網を構築して、商品を正しく解体できるリサイクラーを捕まえる。これしかないんです。逆にそれをせず今後もビジネスを続けていくのは、僕には相当リスキーなことに思えます。

    堀田:しかもそれを1社でやるのではなく、パートナーと複数で協業するのが重要ですよね。日本は自前主義というか、1社完結を目指す企業が多い傾向がありますが、回収網の構築を1社だけでやるのはコスト的にもかなり厳しいのが現実です。さらにBtoC向け商品なら、そこに消費者も加わる。最初に話したように、コミュニケーションをとりながら共助していかないと、循環システムは回りはじめません。

    消費者を巻き込むという点で、コツと言いますか、気をつけるべきことはありますか?

    中台:僕が考えるのは、顧客全員を対象に100%回収を目指すのではなく、考えに共感する数割の顧客から協力を得られるようにすることです。サステナブルな考え方に共感する顧客が2割いるなら、その2割に向けたマーケットをつくる。自社顧客だけで考えるとたった2割ですが、考え方に共感する他社顧客の2割も同じマーケットに組み込むことができるかもしれません。そうやってシェアを拡大していくことが大事なのかと思います。

    堀田:そのターゲットの狙い方は非常に重要ですよね。電通では今、実際に企業のサステナブルな考えに賛同し、価格が高くても環境によいモノを選ぶ行動してくれる生活者がどれくらいいるのか、調査を通じて可視化しようとしています。そうした生活者を仮に「サステナブルカスタマー」と読んでいるのですが、思想への共感があることから、その人たちは継続的な購入をしてくれる「ロイヤルカスタマー」であるとも言えます。実際にそのボリュームがどれくらいなのか、世代や業界によって差があるのか……そうしたデータが分かれば、次のマーケティングコミュニケーションに非常に活かせると思います。

    中台:回収においてもう一つ大事なのは、情報を一緒に回すこと。今はまだ、モノを製造する動脈産業と回収・リサイクルする静脈産業とで、適切な情報の共有がなされていません。この素材がどの商品のどの部分に使われていたかはわかっても、我々が知りたいのは肝心の素材の種類。わかりやすく人材採用でたとえるなら、こちらは求職者のスキルや何ができるかが知りたいのに、卒業した大学名しか教えてもらえないような現状なんです。

    堀田:そうした情報をDXによってデータでつなぐことができれば、循環ループもますます回りやすくなりますね。モノと情報を一緒に回すこと、そして、そこに生活者に継続して参加して貰えることが大事だと思います。まさにそれは、「サーキュラー・エコノミーのDX」ですね。

    現場を見て、他社と協業する。d-cepはそのつなぎ役になれる

    ところで少し話が変わりますが、家業である廃棄物処理業を継いだ中台さんが、今のような「捨て方をデザインする」というビジネスモデルに転換するのは容易なことではなかっただろうと思います。

    堀田:私もずっとそれを聞きたいと思っていました! どういうきっかけや思いがあったのですか?

    中台:廃棄物処理の営業は、「御社のゴミをください」と言うことだから、それがものすごく嫌でしたね。そんな営業あるか、と。しかもうちが廃棄物処理の改善を提案して、リサイクル率が上がれば、「ナカダイさんのおかげで廃棄量が減りました」と感謝されるけど当社の売り上げは下がるわけです。ゴミが多いほど利益が上がるのに、ゴミは減らさなくちゃならない。社会の是と我々の是がイコールでない、それは仕事として最悪です。それで、先ほどから出ている「使い方を創造し、捨て方をデザインする」という事業にシフトしました。僕らはそれを造語で「リマーケティング・ビジネス」と呼んでいます。
    でも事業シフトの一番の理由は結構シンプルで、とにかく毎日何十トンものゴミが工場に運び込まれるのを現場で目にしていれば、誰だって「なんとかしなきゃ」と考えると思いますよ。


    1日約60トンもの廃棄物が搬入されるナカダイの工場。丁寧な分別・解体作業により、埋め立て処理の比率を1%以下に維持している。つまり99%をリユース・リサイクルしていることになる。

    実際に廃棄物処理の現場を見る、という点では、ナカダイでは前橋の工場見学なども行っていますね。

    堀田:実は私も中台さんの本を読んで感銘を受け、すぐに長い感想メールを送って前橋の工場に行かせてもらいました。焼却施設は見学したことがあってもゴミの分別を行う工場を見たのは初めてだったので、「ここまでやるんだ、これで救える素材があるのか」と衝撃でしたね。私は前職でメーカーのプロダクトデザインをしていましたが、メーカーでは、工場で組み立てをする際にできるだけ簡単にできるように配慮した設計はしますが、廃棄した後の分解までは考えて設計をしてません。これからは分解のしやすさも伝え方次第で商品価値になるのだと、工場を見て実感しました。


    中台氏の著書『捨て方をデザインする循環ビジネス』(株式会社誠文堂新光社)は、企業が廃棄物処理や環境問題を考えるうえでの必読書。ちなみに対談場所となった「モノファクトリー」のショールームのテーブルは、ソーラーパネルをリユースしたもの。

    中台:メーカーの方々は、自社商品の数年後の集合体を見たことがないことが多いので、ぜひ実際に自分の目で見てほしいですね。「サーキュラー・エコノミーに向けて何ができそうか、とりあえず廃棄の現場を見てから考える」と言って工場に来られる企業も多いです。でもわざわざ前橋の工場まで来てくれる企業は、やっぱり意識が高い。そんな同じ意識や危機感を持つ異業種の企業たちを、我々がつなげていけたらいいなと思いますね

    それこそ、まさにd-cepとして活動する意義がありますね!

    中台:電通の方々も我々と同じく、多様な業界の方々とお付き合いされてコネクションをお持ちです。企業とはちょっと異なる視点やベクトルから物事を見られるのも強みですし、生活者の調査や発信力もある。業種を超えた企業や生活者とのつなぎ役となって、日本の産業構造や文化に合わせたサーキュラー・エコノミーを一緒に構築していきたいと思います。

    堀田:中台さん、ぜひd-cepで工場見学会をやりましょうよ! 業界の垣根を超えていろんな人に参加してもらえたら、そこから新たなパートナーシップが広がるかもしれません。

    中台:ゆくゆくはそんなこともできるといいですね。これを読んで循環ビジネスや廃棄物課題に興味を持った企業の方は、ぜひ一度私たちにご相談いただければと思います。

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