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      サーキュラー・エコノミー注目事例! 紙コップから野菜へ完全循環

      サーキュラー・エコノミー注目事例! 紙コップから野菜へ完全循環

      日本でも徐々に認知が広まる「サーキュラー・エコノミー」。その概要はなんとなく理解できたけど、どんな事例があるか気になっている方も多いしょう。サーキュラー・エコノミーはヨーロッパを中心に推進されてきた考え方なので、事例も海外やグローバル企業のものが取り上げられがち。でも実は、日本国内でも注目したい取り組みが増えています

      その一つが、今回ご紹介するサッカースタジアムを起点とした地域食品資源循環型システムの実証実験です。2021年8月、Jリーグサッカークラブのギラヴァンツ北九州が開催した「ギラヴァンツサマーフェスティバル2021」において、スポーツを介してCO2削減と同時にフードロス問題にアプローチする取り組みが行われました。当プロジェクトを主動したNTTビジネスソリューションズの宮奥健人氏、三菱ケミカルの小林哲也氏をお招きし、同じくプロジェクトに参加した電通Team SDGsのSDGsコンサルタント・堀田とともに注目ポイントや今後の展開をお話いただきます。

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      PROFILE

       
       
       

      「食品資源循環型システム実証実験」とは

      今回行われたのは、生分解性紙コップを食物残渣と一緒に堆肥化することを軸とした食品資源循環型システムの実証実験です。まず三菱ケミカルが開発した生分解性樹脂「BioPBS™️」が使われた紙コップをスタジアムの飲料提供に使用し、飲み終わったら専用ボックスで回収。回収された使用済み紙コップは、NTTビジネスソリューションズ社およびウエルクリエイト社が提供する「食品残渣発酵分解装置(フォースターズ)」を使って、堆肥へと分解します。その後、堆肥の一部を地元の高校で野菜の栽培に活用し、さらに収穫された野菜をスタジアムで販売する(2022年夏予定)という循環サイクルを構築します。

      通常の紙コップは内側に石油由来の非生分解性樹脂「ポリエチレン」がコーティングされていますが、今回の紙コップは自然界の微生物によって水と二酸化炭素に分解される「BioPBS™ (※)」を使用しています。紙コップを飲み残しなどと一緒に装置に入れてまるごと堆肥へ分解できるというメリットがあり、環境負荷の低減はもちろん分別などの手間がかからない点も特長です。

      イベント当日、スタジアムでは紙コップを回収するボックスが各所に設置され、会場に集まった参加者たちは楽しみながらプロジェクトに参加。2日間合計で約3600個の紙コップが回収され、翌日には食品残渣発酵分解装置のある北九州市のリサイクルセンターに送られました。現在は福岡県立行橋高等学校で、リサイクルした堆肥を使った野菜づくりが行われています。

      ※BioPBS™(バイオPBS)は、三菱ケミカルが開発、基本特許を有する植物由来の生分解性樹脂。自然界の微生物によって水と二酸化炭素に分解されるため、自然環境への負荷が少ないのが特長。また、他の生分解性樹脂に比べ、低温ヒートシール性・耐熱性・柔軟性などで優れた性能を有する。紙コップの内側のラミネート材料にBioPBS™を用いることで、紙コップ全体がコンポスト設備や土壌で分解可能となる。

      各担当者から見たプロジェクトの注目ポイント

      今回のプロジェクトで、特に注目してもらいたいポイントはありますか?

      小林:やはりなんといっても、小規模ながら完全循環型システムを実現していることです。もともと私たち三菱ケミカルは、素材メーカーとしてプラスチックの3R(※)や軽量化、原料の植物由来化等に取り組み続けてきました。ただ、メーカーだとどうしても「素材をいかに環境配慮型にするか」という話で止まってしまい、その先の循環まで実際に描くことが課題だったのです。また、生分解性樹脂を使用しているのに、廃棄され焼却されてしまうことも課題でした。今回の「BioPBS™️」の紙コップは、環境負荷を低減できる生分解性プロダクトとして使っていただけるだけでなく、食べ残しなどの生ゴミや調理クズと一緒に堆肥化できたことで循環サイクルが回せるようになりました。我々のような素材メーカーが、フードロス削減への協力ができたという点もおもしろいと思います。

      ※「リユース」「リデュース」「リサイクル」の3つを指す。これに対しサーキュラー・エコノミーでは、「リフューズ」「リペア」の2つの概念を追加した「5R」が必要とされている。詳しくはこちらの記事を参照。

      宮奥:その完全循環型システムが、サッカーイベントを起点に行われているのもユニークですよね。NTTビジネスソリューションズでは、地域社会の発展に貢献する活動の一環として、2019年から地域食品資源循環ソリューションを開始しました。今回のプロジェクトでも使われた「食品残渣発酵分解装置(フォースターズ)」をサブスクリプションサービスとして提供し、食品残渣を堆肥化し、地元の契約農家に堆肥を提供するという仕組みです。大規模な工場などではすでに取り組みが進んできましたが、一方、小規模の飲食店やイベント会場での活用はまだまだで、それが今回、サッカースタジアムでのイベントという形で実現できたのはあらたな一歩です。

      なぜ小規模店舗やイベントでは導入が難しかったのでしょう?

      宮奥:理由は大きく二つあって、まず食品残渣物を堆肥化するとき、分解できない成分が混ざっていると堆肥として使えません。プラスチックが入った容器などは分別する手間が必要ですから、小規模店舗やイベント会場ではなかなか対応が難しいのです。もう一つは消費者の意識の問題で、サーキュラー・エコノミーやSDGsへの認知や理解が高まらないと、なかなか行動に結びつきません。でも今回のプロジェクトでは、前者の課題を三菱ケミカルさんの生分解性紙コップで、後者を電通さんの発信力で解決できました。

      自社だけでは難しかった課題を、他社と協業したからこそ解決できたのですね

      宮奥:まさにその通りです。最初に話を聞いたときは、「サッカースタジアムで? なんで?」と思ったんです。でも考えてみると、抱えていた課題を合理的に解決できるとすぐに気づきました。自社からは絶対に出なかった企画ですね。

      多くの人が楽しんで参加できる「スポーツ×社会貢献」の可能性

      そもそもどうしてこの3社が出会ったのでしょうか?

      小林:NTTビジネスソリューションズさんとは、生分解性樹脂の堆肥化への取り組みで以前から協力関係にありました。そこに堀田さんが興味を持ち、連絡をくれたのがきっかけです。

      堀田:SDGsやサーキュラー・エコノミー施策に取り組む中で、生分解性の素材を色々調べていたとき、三菱ケミカルさんのことを知りました。その時のプレゼン資料の1ページに、生分解性素材を堆肥化する仕組みが書かれていて。生分解性素材を使うだけじゃなく、その後どう循環させるかについても考えられていて、「こんなのあるんだ!」と驚きました。あのときその1Pを見つけていなければ、たぶんこの座組は実現しなかったですね(笑)。

      スポーツ×社会課題解決というのもユニークな点ですよね

      堀田:電通はスポーツやエンターテイメント、イベント分野でのコンタクトポイント創出やブランディングに強みがありますが、その現業にプラスして、社会課題の解決にさらに貢献していこうという方針を打ち出しています。今回のサッカーイベントのように、多くの人を巻き込める分野でサーキュラー・エコノミーの基盤をつくれたことは、意義があったと思います。

      小林:プロジェクトに参加したギラヴァンツ北九州も、Jリーグの中ではSDGsにかなり力を入れているチームです。北九州は、昔から工業が盛んだったことから環境問題が身近なテーマになっており、こうした取り組みが受け入れられやすいという背景もあります。各社の社会意識や土地柄など、さまざまな偶然や出会いによって実現できたプロジェクトでしたね。旗振り役は私たち三菱ケミカルが務めましたが、最終的には15もの企業・団体が参加してくれました。

      興味・関心を集める発信のコツとは

      先ほど「(消費者への意識付けの課題に)電通の発信力が貢献した」というお話がありましたが、具体的には何をされましたか?

      堀田:主に力を入れたのはメディア誘致と発信の工夫です。たとえ意義のある活動でも、単に「こんな取り組みをしました」と伝えるだけではなかなか興味を持ってもらえません。そこで今回は、リリース文書に「コレクティブインパクト」という新しいキーワードを入れて注目を引きました。コレクティブインパクトとは、多様な企業・自治体との連携を意味する言葉です。メーカー企業、スポーツ団体、高校など、たくさんの人たちを巻き込んだムーブメントとしてのサーキュラー・エコノミー構築をアピールしました

      小林:こうした発信は、我々メーカーがあまり得意ではない部分です。プロジェクトのあと、さまざまな媒体で取り組みを発表したり、ウェビナーを開催したりすることもないので、そうした対外発信が今回とても勉強になりました。それから、素材単体ではなくサーキュラー・エコノミーという循環全体をブランディングすることの重要性も改めて実感しました。素材はもちろん、そこから育った野菜など、循環を支えるあらゆるものやサービスの価値が高まりますから。

      宮奥:それは本当に大切な視点ですね。私たちの堆肥化ソリューションにしても、サーキュラー・エコノミーの重要性が消費者に伝わり、少し高くても野菜がちゃんと売れる市場をつくり、同時に農家の方にも利益が出なければ、結局循環は続いていきません。その市場をつくるには、やはりマスへの発信や啓発が不可欠で、それはメーカーだけではできない部分です。

      コンポスト(堆肥化)文化が当たり前になる時代に向けて

      今回の事例を経て、次はどんなことを考えていますか?

      小林:プロジェクトで活用したような紙コップだけでなく、最近では生分解性素材を使ったゴミ袋も展開しています。これも実際に大手町にある「OOTEMORI(オーテモリ)」の飲食店で利用されているのですが、これまでは分解装置に食べ残しを入れる際、わざわざごみ袋から出さないといけませんでした。一般的なポリエチレン製の袋は分解できませんから、どうしても分別が必要です。でもそれでは、従業員の方々の労力がかかってしまう。まるごと分解できるこのゴミ袋に変えたことで、リサイクルの手間や生ごみ処理に対するネガティブなイメージも低減できると思います。


      堆肥化装置で分解できる生分解性樹脂を使ったゴミ袋

      宮奥:当社では、食品残渣物の堆肥化に加えて、最近は「バイオ炭」による地域食品資源循環ソリューションを開始しました。これは微生物分解ができない有機廃棄物を対象にしたソリューションで、有機廃棄物をバイオ炭化窯で処理することで「バイオ炭」と呼ばれる土壌添加材を生成します。それを土壌改良材として農地に散布し、野菜づくりへと活かす仕組みです。ポイントは、バイオ炭の炭素含有率などに基づいて、国が認証するJ-クレジットが取得できること。自治体と連携してJ-クレジットを獲得し、カーボンオフセットに取り組む地元企業に還元していく、そんな新しい地域貢献の形に挑戦していきます。

      堀田:日本はまだまだコンポスト(堆肥化)文化が根付いていませんが、例えばパリは2025年までに市内にあるすべての建物内にコンポスト用のごみ箱を設置するという計画を掲げていて、海外では生活に身近なものです。日本もいずれコンポストが当たり前の時代が来ると思うので、ちょっと大げさではありますが、私たちの取り組みがそこに向けての後押しになることを願ってます。また子どもたちにとっても、こうしたイベントは生きた教材になると思います。今やSDGsは小中学校の必修テーマ。電通もクリエイティブ力を活かして分かりやすい教育ツールを提供し、知識と体験が結び付くような機会を提供していきたいですね。

      今回のプロジェクトや各社のこれまでの経験から、サーキュラー・エコノミーの実践に向けて必要な視点や役立つノウハウが浮かび上がってきました。「実践アドバイス編」として4つのポイントにまとめましたので、ぜひそちらもあわせてご覧ください。

      注目事例の担当者が語る、サーキュラー・エコノミー実践のコツとは?

      Do! Solutionsでは、この他にもサーキュラー・エコノミーに関する役立つ情報を発信しています。

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      さらなる情報やサポートにご興味のある方は、ぜひ一度電通にご相談いただければと思います。
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      ※マスク着用にて取材を行いました。写真撮影時のみ、外しております。

      [ Check! ] サーキュラー・エコノミーの注目事例を動画で紹介

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