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ファンマーケティングとは?実践のために知っておきたい基礎知識

作成者: D-sol|Apr 27, 2023 1:00:00 AM

このブログ記事を訪れられた方は、日頃、ファンマーケティングにご関心をお持ちの方だと思います。では、あなたはなぜ「ファンマーケティング」が気になったのでしょうか?
ファンマーケティングに取り組むことで、自社が抱えている課題を解決できるのではと感じていらっしゃるからではないでしょうか。

「ファンと交流してみたい」
「ファンを増やしたい」
「ファンの声を活用して新商品を開発してみたい」
ファンマーケティングはこのようなことを実現でき、課題の解決にきっと役立ちます。

ファンは、そもそも自社の商品やブランドに既に好意を持ってくれている存在です。
だから、ファン相手のマーケティングは通常のマーケティング手法と比べて効率よく取り組めるのでは、と期待される方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、実際には「ファン相手だからこそ」知っておくべきマーケティングの流儀があるのです。

そこで本ブログでは、ファンマーケティングを始める前に知っておきたい基礎知識について解説していきたいと思います。商品やブランド、企業のファンを一人でも増やしたい。そう願っている方にとって、本ブログがその実践的なガイドとなれば幸いです。

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ファンマーケティングとは

ファンマーケティングとは、商品やブランドに対して愛着を持ったファンを増やすことで、中長期的に売上を拡大させるマーケティング手法です。

企業やブランドのファンとなった消費者は、継続的な顧客として商品やブランドを支え続けてくれます。例えば、昨今の商品価格の高騰により、消費者心理に冷え込みが起きた時でも、ファンは離れることなく愛顧し続けてくれます。
だからこそ、近年、ファンマーケティングに注目が集まっているのです。

ファンマーケティングが注目されている背景

商品やブランドに対して愛着を感じ、企業やブランドが大切にしている価値を支持してくれるファン。そのような理由から、これまでも重要視をされてきたファンですが、近年、以前にもまして注目されるようになっているのはどうしてなのでしょうか?

(1)新規顧客の獲得が難しくなってきているから
少子高齢化が進み、市場の縮小が加速しています。特に、消費者人口の全体が減少する中でも、消費行動がアクティブな若年層が顕著に減少しています。これにより、企業やブランドにとっては、新規の顧客の獲得が難しい状況となりつつあります。継続的に商品やブランドを購入し続けてくれるファンの育成が、マーケティングにおける成功のカギとなっているのです。

(2)CtoC(クチコミ)コミュニケーションが消費行動に大きな影響を与えているから
インターネットやSNSが普及することで、「実際に買った人、体験した人のつぶやきや投稿」に簡単に触れることができるようになりました。今や多くの消費者がそれらの「つぶやきや投稿」に耳を澄まし、それを参考にして商品を選択、購入しています。それらの影響力は他のクチコミよりも大きく、さらに企業から発信される情報よりも大きいともいわれています。

※出典:[AMN調査リリース] SNSのクチコミが 生活者の購入・来店に与える影響を調査

(3)“情報過多”環境下でもブランド情報を自分ゴトとして受け止めてくれるから
米国の調査会社IDCによると、全世界で生成・消費されるデジタルデータの総量は、2025年には175ゼタバイト(1ゼタバイト=1兆ギガバイト)まで増えると予想されています。1ゼタバイトは「世界中に存在する砂浜の砂の数」とも言われているので、膨大な量であることがわかります。

※出典:Data Age 2025, sponsored by Seagate with data from IDC Global DataSphere, May 2020

このような“情報過多”の環境の中では、自社の商品やブランドの情報を見つけ出してもらうことは容易でありません。さらに、探し出した情報を自分ゴトとして受け止めてもらうことは至難のワザといえます。しかし、自社のファンであれば、数多の情報に囲まれていても、自社の情報を能動的に探し出し、自分ゴト化してもらえ、さらには周囲の人々へ推奨さえしてくれるのです。

ファンマーケティングの手法

「ファンを増やす」ために市場に働きかける(=ファンマーケティングを実践する)には様々な手法があります。

いずれもファンを「集める」「交流する」「広める」ための仕掛けです。「ファンを増やす」ための最適な手法は、商品・ブランドごとに異なります。さらには、その企業が抱えるマーケティング課題が何かによっても異なります。大事なことは、どの手法が自社の課題解決へと最も結びつくのか、という視点です。

ファンマーケティングのメリット

ファンマーケティングは、どのようなマーケティング課題を解決できるのでしょうか。一般ユーザーでもなく、未購買層でもなく、未認知層でもなく、「ファン」にアプローチするメリットを考えてみましょう。

※一般ユーザー:1回でも商品を購入してくれた消費者
※未購買層:購入実績はないが、商品・ブランド名くらいは知っている消費者
※未認知層:購入実績はなく、商品・ブランド名も知らない消費者

ファンはLTVを向上させる

LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)とは、顧客から生涯にわたって得られる利益のことです。つまり、1回の取引で得られる利益だけではなく、2回目以降の継続的な取引により得られる利益に重点を置くものです。

成長市場では、新規顧客を増やすことで売上を伸ばすことができます。しかし成熟市場(多くの類似商品があり商品が飽和している市場)では、新規需要を喚起することは容易ではありません。そこで重要になるのが既存顧客=ファンが生み出す需要です

ファンは商品を1回だけでなく2回、3回と購入してくれる存在です。LTVの底上げにはファンの存在は欠かせません。

消費者目線に立った新商品・サービス開発を行うことができる

ファンの声を、新商品・サービス開発において活用することができます。例えば、商品やサービスに関わる「アイデア出し」。ファンは、企業ですら気づかない商品・ブランドの提供価値を見出していることがあります。その他にも、以下のような取り組みがあります。

「共創」(=ファンが企業とともに新商品・サービスを開発する取り組み)
「モニター」(=開発段階でできたプロトタイプ等を、ファンに評価してもらう取り組み)

ファンは、自らがファンである企業の世に出る前の商品・ブランドの開発に関わることに積極的です。これらの取り組みは、ファンではない消費者を対象に行うこともできますが、ファンと一緒に行うことで得られるような効果は期待できないでしょう。ファンマーケティングであれば、「ファンの熱い想いを反映した開発」をすることができるのです

クチコミ力が強化される

ファンは、商品やブランドに「好き」(=好きなところ)を感じています。商品やブランドについて、自ら「好き」を具体的に語ることができるのです。
ファンは自分の「好き」を語ることにも積極的です。なので、ファン同士が会うと、共通する「好き」によって会話が弾むことになります。それにより、新たな人のつながりを生むことになります。
こうして「好き」の「輪」ができるわけです。クチコミによってこの「輪」が広がることで、ファン層はさらに広がりやすくなるのです。

新規顧客を獲得する

ここまで、既存顧客についての効果を中心に見てきましたが、そのような効果の結果としてファンマーケティングには新規顧客を獲得する力もあります。
ファンは、SNSなどを通じて積極的に商品やサービスについて情報を発信します。先に触れたように、消費者は企業が発信する情報よりも、他の消費者のクチコミに、より敏感に反応する傾向があります。このような投稿を見た未購買層が、「へぇ〜これ良さそうね」と共感し商品購入することで、新規顧客の獲得につなげることができるのです。

ファンマーケティング実践の注意点

ファンマーケティングに取り組むといっても、どこから始めればいいか見当がつかないと感じることはありませんか。それは、一言で「ファンを増やす」と言っても簡単なことではないからです。ここでは、ファンマーケティングの実践においての注意すべきことを2つ、解説します。

「たくさん買う人=ファン」ではない

そもそも「ファン」とは、どのような人を指すのでしょうか?

一消費者が商品・ブランドに愛着を感じファンに変わるには、「きっかけ」と「歴史」が必要です。商品・ブランドとの出会いを体験し(=きっかけ)、愛情が深まるような交流を積み重ねる(=歴史)。そうすることで、消費者は商品・ブランドを自分ゴト化するようになり、ファンとなるわけです。

ですので、「へビーユーザー」は必ずしも「ファン」とは限りません。リピート購入しているけれども、愛着の無い「へビーユーザー」も数多くいます

「よく行くお店に置いてあるから」、「リーズナブルだから」、「買うことが習慣になっているから」、特に理由はないけどなんとなくリピート購入している消費者はファンとはいえないでしょう。

「ファン」とは、購入頻度や購入回数といったデータだけによって発見される人ではありません。「どのくらい商品・ブランドに愛着を持っているか」を測るデータによって初めて、ファンとして認められる存在となるのです。

「ファン同士の場づくり」にコミットする

ファンマーケティングを成功させるには、ファン同士がお互いに交流し、対話できる場をつくることが必要です。この時に注意しなければいけないのは、「ファン同士の交流や会話を野放しにしてはいけない」ということです

ファンの会話は、時に思わぬネガティブな方向にいってしまうことがあるからです。

例えば、熱狂的なファンが他者に対して「排除的」な態度を示すことがあります。コミュニティに新たに参加したメンバーに、高圧的な接し方をすることで「場」が荒れたり、新たなメンバーが参加しづらくなる雰囲気となるケースが見受けられます。

ファンが交流する場は単なる寄り合いの場ではなく、企業としての目的に沿ってつくられる場であるべきです。ファン間の交流はできるだけ自由に風通し良くした方がいいものの、企業はファン間のコミュニケーションをファシリテートするなど「場づくり」にコミットすることが必要です

ファンマーケティングの成功事例

ファンマーケティングの実践はこうした注意点はあるものの、しっかりと対応することができれば、企業のマーケティング課題への大きな貢献が期待できます。ここで、その一例をご紹介します。

自動車メーカーのA社は、特定車種の既存オーナーと未オーナー(=購入検討している人や興味関心がある人含む)両者が参加し、互いに交流できるファンコミュニティを開設しました。開設以来2年経ち、ファンコミュニティ登録者数は3万人を超えています。

コミュニティの参加者から生み出される「好き(=ブランドへの深い理解や共感)」を市場に展開することで、新規ファンを獲得したいと考えたからです。結果的に、市場から多くの未オーナーをファンコミュニティに呼び込み「ファン化」することに成功しました。

自動車メーカーA社は、どのような施策を行ったのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

ファンコミュニティで「好き」を生み出す

A社は、ファンコミュニティ開設後、コミュニティ参加者に企業の情報を発信しました。例えば、商品・ブランドの開発秘話などの、参加者がこれまで知らなかった情報です。

すると、
「その開発の考え方、最高ですっ」
「そうやってこのクルマは誕生したんですね。ますます好きになっちゃった」
といった投稿が参加者から寄せられます。

そして今度は参加者から、
「知っているのは私だけ?このクルマのこんなかわいいところ」
「旅好きな私の相棒のクルマと、ドライブした思い出の場所」
など、自身の体験を語った投稿が発信されていきます。

ファンコミュニティ内でこのような投稿が増えてくると、参加者同士や企業と参加者の間に「自然な会話」が増えてきます。この「自然な会話」を通じて「好き(=ブランドへの深い理解や共感)」が、参加者の間で生み出され醸成されていくのです。

生み出された「好き」をSNS上で展開する

続いて自動車メーカーA社は、ファンコミュニティ参加者が発した投稿内容をもとにしたコンテンツ(四コマ漫画)を制作し、そのコンテンツをSNS上で展開しました。具体的に見ていきましょう。

コミュニティでは、既存オーナー同士では「ゆったり広めの車内空間」のネタで盛り上がっていました。「お父さんは小学校バスケのコーチ。チームみんなのボールを車内に積んで会場に行きます」とか「クロスバイクで旅行中、クロスバイクがパンクして。この自動車で親が迎えに来てくれて。クロスバイクを車に積んでそのまま親とキャンプに行きました(笑)」などなど。

そこでA社は、このようなエピソードをもとにいくつもの四コマ漫画を制作。それを企業アカウントのSNS上で投稿しました。エピソードに共感した方々が「いいね!」したり、コメントを残してくれたり。中には「ゆったり車内空間って役に立つね」とつぶやく人も。さらには、四コマ漫画の投稿に貼っていたファンコミュニティへのリンクから、コミュニティに参加する人も現れました。

オーナーが発した情報やエピソードなどによる投稿を、UGC(User Generated Content)と言います。UGCは未オーナーをファンにするために有効なコンテンツですが、UGCをそのまま市場に向けて発信しても未オーナーにはその面白さや楽しさが伝わりづらいことが多々あります

そこで未オーナーでも楽しめたり関心を示したりしてもらえるように、UGCをもとに四コマ漫画や動画などを制作(=コンテンツ化)して発信してみます。すると、未オーナーの反応を誘発しやすくなり、コミュニティに参加するような未オーナーが現れるようになるわけです。

コミュニティに参加した未オーナーのファン化

未オーナーが、コミュニティに参加して参加者間の対話に触れることで、商品やブランドに対する意識変化が生じます。具体的に見ていきましょう。

未オーナーはファンコミュニティに参加することで「商品情報以外で自身の求めている情報」を入手することができます。例えば、他の参加者が奨める「家族でいくと楽しい場所」、「気分転換に行くとよい場所」、他の参加者が実践している「どうすると、安全に運転できるのか」など。

情報を入手するために何度かコミュニティに足を運ぶようになった未オーナーは、やがて同じような環境で、同じような悩みを持っている他の参加者と交流するようになります。交流が深まるにつれて、ファンコミュニティ参加者は「分かち合える喜び」を感じるようになったのです。

実際ファンコミュニティでは「私と同じファンの方に出会えてよかった」「コミュニティに参加するみんなが楽しそうにクルマに乗っているのを見て、自分もハッピーな気持ちになりました」という内容の投稿を数多く見ることができました。

こうしたファンコミュニティの中で行われる交流によって生じた「分かち合える喜び」が、未オーナーの商品やブランドに対する愛着や信頼を強化し、ファン化が促されるわけです

ファンマーケティング成功のポイント

ここまで、自動車会社A社の事例をご紹介してきましたが、そこでの成功のポイントは何だったのでしょうか?

A社が取り組んだファンを超えたファンマーケティング展開の成功ポイントは、ファンとファン未満の人、そして企業が一堂に集まって対話できる場を作ったことにあります

商品やブランドの「好き」に共感することもさることながら、コミュニティの参加者同士で「分かち合える喜び」を感じあう、心を通わせた関係構築こそがファンマーケティングを成功に導いたのです。そして、それを実現したのが「ファンコミュニティ」だったのです。

「ファンコミュニティ」でできること

では、ファンコミュニティをつくる中で、どのような活動を行なえばファンマーケティングを成功に導けるのでしょうか?ここでは4つポイントを、ご紹介します。

(1)「ファンの声」を傾聴する
ファンは、企業や商品・ブランドが大切にしている価値を支持してくれる貴重な存在です。コミュニティ参加者が発信する「ファンの声」を傾聴することで、企業のマーケティング活動に資する多くの気づきを得ることができます。

(2)ファンと共創する
ファンは、企業でも気づいていない商品の提供価値を見出すことがあります。企業は、そのような気づきを商品・サービスの開発やマーケティングに活用することができ、またファンにとっては、商品・サービスの開発に携わることで、さらに商品・ブランドへの愛着が高まることになります。

(3)ファンの満足度向上によりLTVを上げる
ファンの満足度を向上させることは、商品の購入頻度の向上やアップセルやクロスセルによる購入単価のUPにつながります。その結果、ファンのLTVが向上します。

※アップセル:より高額な商品を勧める営業手法
※クロスセル:関連商品をセットにして勧める営業手法

(4)新たなファンを獲得する
一般ユーザーをファンコミュニティに誘引することで「一般ユーザーのファン化」を促します。また、新たな参加者が、コミュニティ内にフレッシュな空気を持ち込むことでコミュニティの活性化も期待することができます。

ここまで、ファンマーケティングの成功のポイントをご紹介してきました。その代表的な手法であるファンコミュニティには、様々なメリットがあり大きな効果が期待できる一方、実践するのが難しいというデメリットもあります。例えば、「ファンが集まらない、増えない」「コミュニティの盛り上がりが持続しない」などです。

そこで、ファンマーケティングを実践していく難しさを解消するために、電通とクオン株式会社は、ファンコミュニティを活用により、マーケティング課題の解決を目指す「PDMファンコミュニティクラウド」というソリューションを開発しました

本ソリューションでは、年間1万人のコミュニティ参加を保証するコミュニティプラットフォームを活用することで、「集客の難しさ」を解消することができます。また、コミュニティ参加者の行動データ分析や広告クリエイターによるUGC制作を通じて、「コミュニティの盛り上がり」を持続可能なものにします。

以下のコンテンツも展開していますので、ぜひご参照ください。

<ファンコミュニティを実践してみたい方におすすめ>
ファンコミュニティ、何から始める?「始め方」と「育て方」を解説
ファンを増やすために。コミュニティの外に目を向けてみよう!
ファンコミュニティを市場につなげる−LINE公式アカウント連携

<ファンコミュニティ開発者の考えていることを知りたい方におすすめ>
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