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    「8がけ社会」の大学・企業・自治体戦略とは?大学2026年問題から考える、地域が選ばれる時代への構造転換

    最終更新日:2026年07月27日

    「8がけ社会」の大学・企業・自治体戦略とは?大学2026年問題から考える、地域が選ばれる時代への構造転換

    2040年に向けて、日本では労働人口や消費人口が現在のおよそ8割規模へと縮小していくと予測されています。本シリーズでは、「8がけ社会」のもとで、企業やブランド、組織が人口減少という構造変化にどう向き合うべきかを考えてきました。

    第1回:「8がけ社会」の企業戦略とは?①縮小×分散時代におけるブランド起点の成長戦略
    第2回:「8がけ社会」の企業戦略とは?②顧客と長くつながる関係性設計とファン育成の実践
    第3回:「8がけ社会」の企業戦略とは?③なぜ採用が上手くいかないのか~応募数ではなく“人が会社を選ぶ構造”で考える人財戦略

    そして今、その変化は大学にも大きな転換をもたらそうとしています。2026年は、18歳人口の減少に加え、大学進学率の伸びが頭打ちとなることで、人口減少の影響が大学経営に直接的に表れる節目になるといわれています。これまでのように大学間の競争だけでなく、人口減少という社会全体の変化を前提に考えることが求められる時代へ移りつつあります。

    本記事では、「8がけ社会」と「大学2026年問題」の関係を整理し、大学だけでなく、地域企業や自治体にとっても避けて通れない構造変化として捉え直します。そのうえで、大学・企業・自治体が一体となって地域の価値を育てるという視点から、これからの大学と地域のあり方を考えます。

     ※朝日新聞でも提起されている、2040年に向けて労働人口・消費人口が約8割に縮小していくという社会構造の変化。この見通しは、公的な将来推計においても示されている。
    参考:朝日新聞「8がけ社会」連載
    参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」総務省統計局「労働力調査」
    参考:急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について(文部科学省) 

    PROFILE

     

    INDEX

    8がけ社会と大学2026年問題

    まず、「8がけ社会」「大学2026年問題」とは何かを整理し、両者はどんな関係で、今どのような視点が求められているのかを見てみましょう。

    8がけ社会とは何か

    「8がけ社会」とは、2040年頃に向けて労働人口や消費人口など、社会を支える基盤がおよそ8割規模へ縮小していく社会を指します。人口が減ることそのものが問題なのではなく、企業活動や地域経済、行政サービス、教育など、これまで当然と考えられてきた社会の前提が変わることを意味しています。

    大学2026年問題とは何か

    大学2026年問題とは、18歳人口の減少に加え、大学進学率の伸びが横ばいとなることで、人口減少の影響が大学経営により直接的に表れるようになる転換点を指します。これまで大学進学率の上昇によって学生数は一定程度維持され、多くの大学では「学生をどう獲得するか」という競争の視点で経営課題を捉えることができましたが、今後は進学率の伸びだけでは補えなくなるため、新たな大学経営の視点が必要になっています。

    今、求められている視点とは

    8がけ社会では、「地域人口が減る中でどう競争に勝つか」ではなく、「この地域だから学びたい、働きたい」と思われる理由をどう育てるかが問われます。大学経営においても、「より多くの人を集める」という発想ではなく、地域や大学が、「誰から、なぜ選ばれるのか」という視点で、自らの価値を設計し直すことが必要になります。その意味で、8がけ社会における大学2026年問題とは、大学だけでなく、地域全体のあり方を問い直す転換点といえるでしょう。

    大学2026年問題は、「大学を増やすべきか、減らすべきか」という問題でも「学生募集が難しくなる」という大学経営だけの問題でもありません。8がけ社会において、大学間の競争だけでは解決できない、社会全体の構造変化への対応を、地域と共にどう解決していくかという議論です。それぞれの地域がどのような価値を育み、その中で大学がどのような役割を果たすのかという視点が求められているのです。

    大学2026年問題は地域全体の課題

    大学を地域という視点で捉え直すと、この問題の本質が見えてきます。
    8がけ社会では、大学は教育機関という役割を超え、地域に人材や知識、経済活動を循環させる社会インフラとしての存在感をより強く持つようになります。以下のような3つのポイントがあります。

    大学は若者が集まるインフラである

    大学は、教育を提供する場所であると同時に、多くの若者が地域に集い、暮らし、学ぶ拠点でもあります。学生は数年間その地域で生活し、消費やアルバイト、人との交流を通じて地域と関わります。また、オープンキャンパスや入学式、卒業式などを通じて保護者や家族も地域を訪れ、新たな関係人口を生み出しています。

    さらに、大学には研究者や教職員、企業との共同研究など、多様な人材や知識が集積しています。こうした人と知の集積は、地域に新たな価値を生み出す基盤となります。
    つまり大学は、教育の場であるだけでなく、人や知を地域へ呼び込み、新たなつながりや価値を生み出す拠点でもあるのです。

    大学の縮小は地元企業の経営にも影響する

    大学を起点とした人の流れが変化すれば、その影響は地域企業にも及びます。地元企業にとって大学は、採用の重要な接点であり、学生数の減少は採用母集団の縮小につながります。

    また、大学は研究開発や産学連携を通じて、新たな技術やアイデアを生み出す拠点でもあります。共同研究や人材交流が縮小すれば、地域全体のイノベーション創出にも影響を及ぼしかねません。
    もちろん、すべての企業が地元大学に依存しているわけではありません。しかし、人材循環や産学連携の基盤として大学が果たす役割は、今後ますます重要になるでしょう。

    地域経済への影響も無視できない

    大学は地域経済を支える存在でもあります。学生による日常的な消費や賃貸需要、飲食店や商業施設の利用、地域産業を支えるアルバイトなど、大学は地域経済のさまざまな場面に関わっています。こうした人の流れが変化すれば、地域経済だけでなく、卒業後に地域で働き、暮らす人材も減少し、将来的な地域活力にも影響を及ぼす可能性があります。

    つまり、大学2026年問題とは、「学生を集められるか」という大学個別の課題ではなく、「地域としてどのような魅力を育み、人を惹きつけ続けるのか」という、地域を巻き込んだ構造的な視点で捉えるべき課題なのです。大学という存在を、地域全体で「学びたい」「働きたい」「暮らしたい」と思われる価値を育て、形づくるための中核的な機能として捉えることが求められます。

    大学単体の発想から脱却する

    ではこれからどのような取り組みを行っていけばよいのでしょうか。今求められているのは、大学単体の魅力を磨くだけでなく、地域全体の価値と結び付けながら、「なぜこの地域で学ぶのか」という理由を育てていく視点です。

    学部・学科を増やすだけでは、選ばれる理由になりにくい

    新たな学びの機会を提供することは、大学の魅力向上につながります。しかし、学びの選択肢が増えた現在では、「どういう知識が得られるか」だけで大学を選ぶ時代ではなくなりつつあります。地域企業とのプロジェクトや地域課題をテーマにした学び、卒業後も地域と関わり続けられる環境など、大学キャンパスから外へ広がっていく学びの体験そのものが、大学選びの価値になっています。これからは、大学単体の特色だけでなく、地域全体でどのような学びの価値を提供できるかが、大学選びを左右する要素になっていくでしょう。

    「学生を集める」から「選ばれる地域をつくる」へ

    これまでの大学経営は、「どうすれば学生に選ばれるか」という視点が中心でした。しかし、8がけ社会では、その視点だけでは十分ではありません。
    学ぶ場所を選ぶことは、数年間暮らす地域を選ぶことでもあります。だからこそ、大学だけでなく企業や自治体も連携し、「この地域で学ぶことにはどんな価値があるのか」を社会に伝えていくことが重要になります。
    大学2026年問題は、大学間の競争ではなく、人口減少を前提に大学と地域がともに選ばれる理由をどう育てるかを問いかけるテーマへと変わりつつあるのです。

    必要なのは「選ばれる地域」の設計

    学生や研究者、企業、卒業生らから「ここで学び、働き、挑戦したい」と思われる地域の価値を育てていくには、大学・企業・自治体がそれぞれの役割を果たしながら、地域の「選ばれる理由」を一体となって育てていくことが大切です。
    そこには3つの視点があります。

    大学を地域と一体の「プレイス(場)」として捉え直す

    キャンパスは、授業を受ける場所というだけではありません。学生が学び、人と出会い、地域と関わる場であり、企業や自治体、地域住民との交流を通じて、新たな挑戦や共創が生まれる拠点でもあります。これからのキャンパスは、「大学の敷地」という発想を超え、地域全体とつながるプレイス(場)として捉えることが重要です。キャンパスでの学びと、地域での暮らしや仕事、文化がつながることで、「ここだからこそ得られる経験」が生まれ、それが大学と地域双方の価値につながります。

    大学・企業・自治体が、それぞれの価値をつなぐ

    「選ばれる地域」は、一つの組織だけでつくることはできません。大学は教育・研究、企業は実践やキャリア形成、自治体は暮らしやまちづくりと、それぞれ異なる価値を担っています。重要なのは、それらを個別に提供するのではなく、「学生が地域で学び、企業と出会い、地域との関係を深める」という一連の体験としてつなげることです。地域企業との共同プロジェクトや長期インターンシップ、地域課題をテーマにした授業、地域イベントへの参画など、その接点は数多く考えられます。

    個々の施策ではなく、「この地域で学ぶ意味」が伝わる一つのストーリーとしてつながっていることが、地域ならではの魅力につながるのです。

    学生との関係は、卒業で終わらせない

    人口減少が進む時代には、「何人入学したか」という入口だけでなく、「卒業後もどのような関係が続くのか」という視点が重要になります。地域で就職する人はもちろん、他地域へ進んだ卒業生も、共同研究や地域イベント、コミュニティ活動などを通じて地域と関わり続けることができます。学生を「一定期間だけ地域に滞在する存在」ではなく、地域と長く関わる仲間として捉えることは、人材還流や地域活性にもつながるでしょう。8がけ社会では、大学・企業・自治体が連携し、「この地域だから学びたい」「働きたい」「暮らしたい」と思われる価値を共に育てることが重要になります。そのためには、大学単体ではなく、地域全体を一つのキャンパスとして捉える発想が求められるのです。

    8がけ社会で問われること

    大学2026年問題は、「大学をどう維持するか」という議論だけでは語りきれません。
    だからこそ重要なのは、それぞれが個別に魅力を発信するのではなく、地域全体として一つの価値を育てていく視点です。

    問われているのは大学の数ではなく、地域の価値である

    大学2026年問題をめぐる議論では、大学の統廃合や定員確保に注目が集まりがちです。しかし、8がけ社会という視点で見ると、本質的な問いはそこではありません。
    重要なのは、「この地域だから学びたい」「この地域で挑戦したい」と思われる価値を、地域全体でどう育てていくかということです。大学は、その価値を支える重要な存在であり、地域の魅力を高めることが、結果として大学の価値にもつながります。

    企業にも、地域を語る視点が求められる

    この変化は、大学だけのものではありません。企業も、人材採用や産学連携、地域との共創を進めるなかで、「自社が何をしているか」だけでなく、「この地域でどのような価値を生み出しているか」を伝えることが重要になります。大学・企業・自治体が連携し、それぞれの取り組みを地域のストーリーとして発信することは、学生や若い世代に地域の魅力を伝える大きな力になります。8がけ社会では、「選ばれる企業」「選ばれる大学」「選ばれる地域」は、それぞれを切り離して考えるのではなく、一体となって価値を育てていく関係へと変わっていくのです。

    「Campus-Bridge」という新しい発想

    こうした時代だからこそ必要になるのが、大学・企業・自治体をつなぎ、「選ばれる地域」を共につくるための実践的なアプローチです。

    電通には、マーケティング・ブランディングの専門知識をもつメンバーを中心に、行政・企業・住民など様々なプレーヤーとの協働により地域の課題解決を目指す専門チーム「電通 abic project」があります。このチームは、地域活性化プログラム「プレイス・ブランディング」の1メニューとして、地域を舞台に学生と地域とともに価値創出を図る共創型プログラム「Campus-Bridge」を提供しています。

    Campus-Bridgeは、大学を地域と一体の「キャンパス」と捉え、教育、産学連携、人材育成、地域活性を一つの構想として結び付ける考え方です。大学・企業・自治体それぞれの強みを生かし、「ここで学びたい」「ここで働きたい」「ここで暮らしたい」と思われる地域づくりを目指します。

    人口減少は、一つの大学や企業だけで解決できる課題ではありません。8がけ社会では、「競争すること」だけでなく、地域全体で価値を育てることが重要になります。
    Campus-Bridgeは、その実現に向けた一つのアプローチです。人口減少を大学だけの課題ではなく、地域全体で向き合うことが、8がけ社会における新しい成長の出発点になるのではないでしょうか。

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