
「最近、顧客の獲得が思うように進まない」
「リピートやファン化の施策を増やしても、成果が安定しない」
そんな違和感を覚える場面が増えていませんか。
こうした現象は、単なる一時的な不調ではありません。
人口減少による市場の縮小、そして顧客の価値観や情報接触の分散によって、
従来の「新規獲得中心」の成長モデルが、通用しなくなりつつあります。
「8がけ社会」(※)をキーワードにした第1回ブログ『8がけ社会』の企業戦略とは?①縮小×分散時代におけるブランド起点の成長戦略」では、人口減少と分散化による構造的な変化の中で、「誰に、なぜ選ばれるのか」、そして「どう選ばれ続けるのか」という新しい成長戦略の前提を整理しました。
※朝日新聞でも提起されている、2040年に向けて労働人口・消費人口が約8割に縮小していくという社会構造の変化。この見通しは、公的な将来推計においても示されている。
参考:朝日新聞「8がけ社会」連載
参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」/総務省統計局「労働力調査」
今回の第2回では、顧客数が減り、価値観や情報が分散する時代において、企業が「顧客と長くつながる」ための具体的な成長モデルや、ファン育成・関係性設計の実践について読み解いていきます。
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8がけ社会は「顧客減少」ではなく、成長前提が変わる時代へ
今、企業を取り巻く市場環境は大きく様変わりしています。
人口減少による市場の縮小に加え、顧客の価値観や情報接触の分散が急速に進行し、従来の成長モデルが通用しなくなりつつあります。
人口減少がもたらす顧客数の制約
人口減少は今後も続くことが予想されています。「消費する人」の母数が減少するため、顧客の減少はあらゆる業界が直面する課題となります。これまでのように新規顧客を取り続けることで売上を伸ばすモデルは成立しにくくなり、地方に限らず都市部でもその影響は顕在化し始めています。
つまり企業は、「顧客が減っていく市場」を前提に、いかに成長するかを考えねばならなくなったのです。
同時に進む「価値観」と「情報接触」の分散
しかし、8がけ社会の本質は市場縮小だけではありません。同時に、顧客の価値観や情報接触が大きく分散している点にあります。
現代の消費者の判断基準は、健康志向やエシカル消費、個性重視など多様化し、さらにSNSや動画プラットフォーム、口コミサイト、特化型メディアといった情報接点の爆発的拡張により、顧客の関心や行動は細分化しています。
その結果、企業のメッセージは「広く届ける」だけでは届かず、同じ施策でも顧客ごとに受け取り方が異なる状況が生まれています。つまり、顧客が減るだけでなく、「従来のやり方では届かない」構造に変わっているのです。
「広く獲る」から「関係」「LTV」を重視したモデルへの転換
市場が縮小し、顧客が分散する中で、企業はどう立ち向かうべきか。ここで重要なのが、発想の転換です。分散という変化をネガティブに捉えるのではなく、「特定の価値観で強くつながれるチャンス」と再定義することです。
分散環境を逆手に取る「界隈」と「共感」の設計
情報接触が多様化し、価値観が細分化された世界では、一方で「共通の関心や価値観を持つ人々」がコミュニティを形成しやすくなっています。いわゆる「界隈」や「ファンダム」と呼ばれる現象がこの象徴です。
デジタルプラットフォームの普及により、企業やブランドへの好意を起点としたつながりや共感は、以前よりも強く、そして可視化されやすくなりました。これは、社会全体が縮小していても、特定の価値や関心を軸にした“関係性の領域”は拡張可能であるということです。この変化は、企業にとって重要な示唆を含んでいます。
顧客を単なる「数」として捉えるのではなく、関係性や共感を軸にした“広がり”として捉え直す――。これこそが、8がけ社会における生存戦略の重要な一歩といえるでしょう。
新規獲得コストの高騰と効率低下――LTV(顧客生涯価値)重視へのシフト
市場の縮小や分散化が進むと、新規顧客の獲得競争が激化し、従来の施策だけではコストに見合った成果が出にくくなります。ターゲット層が減少する中では、同じ予算を投じてもリーチできる人数は減り、獲得単価は上昇。やがては企業の収益構造にも大きな影響を与えます。
こうした環境変化の中では、これまで以上に「顧客と長くつながる」ことが事業成長の鍵になっていきます。リピート購入やアップセル、クロスセルの仕組みを強化するなど、顧客一人ひとりの生涯価値(LTV=ライフタイムバリュー)を最大化し、限られた顧客から安定した収益を得ることが、事業の持続的な成長につながります。
関係性設計で成長モデルを再構築する
こうした環境では、顧客との関係性を起点に、価値の広がりを設計していく視点が重要になります。顧客との関係性を深め、選ばれ続ける仕組みをつくること。すなわち「関係性設計」による成長モデルへの転換が、8がけ社会で企業が生き残るための新しい戦略です。
意味ある接点を積み重ね、信頼を育てる
まず取り組むべきは、一回きりで終わっていた顧客との接点を、継続的な関係に育てていくことです。 顧客との関係性を深め、信頼や共感を育てる取り組みが求められます。
例えば、購入後のアフターサービスやパーソナライズされたフォローアップ、会員制度やイベントなどの 購入後のコミュニケーションや体験は、顧客との絆を深めることに役立ちます。また、顧客の声を真摯に聞き、それを商品やサービスの改善に素早くフィードバックする循環をつくることも、関係性設計の重要な要素です。
「選ばれ続ける理由」を積み重ねる
さらに、顧客が「またこのブランドを選びたい」と思う理由を積み重ねて、リピートや支持を生み出す施策も大切です。 「また選びたい」と思う理由は、商品やサービスの品質だけではありません。ブランドの世界観やストーリー、企業の姿勢や価値観など、顧客が共感できる要素も含まれます。
「なぜこの企業を選ぶのか」「なぜこのブランドに共感するのか」――その理由を明確にし、顧客自身が納得し、誇りを持てる状態をつくることが、選ばれ続けるための条件です。
例えば、ブランドの理念や社会的な取り組みを発信することで、顧客の共感や支持を得る企業などはその一例です。
推奨の好循環を生む「ファンマーケティング」
そして、ファン同士の交流や情報共有、ブランドとの共創などにつながる「ファンマーケティング」にまで育てると、顧客のロイヤルティや支持がさらに高まります。 例えば、ブランドのイベントやオンラインコミュニティを通じて、顧客同士がつながり、ブランドへの愛着が深まる事例も増えています。
さらに、商品やサービスに愛着を持ち、かつ行動力のあるファンは、SNSや口コミでブランドの魅力を発信してくれるようになります。この「ファンによる推奨」は広告以上に信頼性の高い情報として、新たな顧客を呼び込みます。つまり、ファンとの関係を大切にすることが、結果として最も効率・品質の良い「新規獲得」へとつながる好循環を生むのです。
ファンやコミュニティの存在は、企業と顧客の関係性を強化し、持続的な成長を支えます。
企業は、単なる取引相手としてではなく、共感や共創のパートナーとして顧客とつながることで、これからの成長の鍵を手に入れることができます。
8がけ社会における成功のカギ: 「ファン育成」「ファンマーケティング」

8がけ社会とは、量ではなく「関係性」の時代です。企業と顧客との関係性の質を高める「ファン育成」の仕組みづくりは、8がけ社会における成長戦略の有力な選択肢です。
8がけ社会の注意点:既存ファンの維持だけでは足りない
ここで注意が必要なのは、8がけ社会では「既存ファンの維持だけでは、いずれジリ貧になっていく」という厳しい現実です。市場全体が縮小する中では、ファンの母数そのものも時間とともに減少していくためです。
だからこそ重要になるのが、「ポテンシャルファン(これからファンになる可能性のある人)」の存在です。今はまだ深い関係性には至っていないものの、自社の価値観に共感してくれる可能性が高い層、将来的にファンになり得る層を確度高く特定・発掘し、しっかりと育成していくこと。既存ファンの深化と、次世代のファン候補の発見・育成を同時に進める「二段構え」の戦略をいかに設計できるかが、持続的な成長のカギとなります。
ファン育成を実現するソリューション「Fan Farming CX」
こうした高度な関係性設計やファン育成を、勘や経験に頼らず、再現性をもって実現するためには、データとテクノロジーの活用が欠かせません。その有力な解決策として、電通では、ファンを育てる実践的なサービス「Fan Farming CX(ファン・ファーミング・シーエックス)」を提供しています。
このプログラムは、データやデジタル技術を活用しながら、顧客一人ひとりの体験や感情に寄り添い、企業と顧客の接点を「関係性」に変え、ポテンシャルファンの育成から企業と顧客の絆の強化まで、LTVの最大化やファンマーケティングの形成を支援します。
● ポテンシャルファンの特定
顧客データや行動ログを統合・分析し、将来的にファン化する可能性の高い顧客セグメントを可視化。優先的にアプローチすべき対象を明確化します。
● 関係性の質の向上
顧客一人ひとりの関心や行動に応じたコミュニケーション設計により、接点を「体験」に進化。継続的な接触を通じて、共感や信頼を段階的に醸成します。
● LTVの最大化
購買・体験・共創のプロセスを一体で設計し、リピート・推奨・参加を生む関係性を構築。顧客とともにブランド価値を高め、長期的な収益基盤を強化します。
ファン育成の新しい成長モデルを実現したい方は、ぜひ「Fan Farming CX」の詳細をご覧ください。
まとめ──量ではなく「質」と「関係」の時代を生き抜く
8がけ社会において、企業が追求すべきは量ではなく「関係性」の質です。
新規獲得に依存するモデルから脱却し、LTVを最大化させ、そしてファンやコミュニティを育てること。単なる「消費者」「取引相手」としてではなく、共感や共創の「パートナー」として顧客につながる企業こそが、これからの厳しい時代において選ばれ続け、社会に価値を提供し続けることができます。
顧客一人ひとりとの深い絆を基盤とした、新しい成長モデルへの転換。今、その一歩を踏み出してみませんか。



