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    「8がけ社会」の企業戦略とは?③なぜ採用が上手くいかないのか~応募数ではなく“人が会社を選ぶ構造”で考える人財戦略

    最終更新日:2026年07月02日

    「8がけ社会」の企業戦略とは?③なぜ採用が上手くいかないのか~応募数ではなく“人が会社を選ぶ構造”で考える人財戦略

    「応募が集まらない」「内定を出しても辞退される」「採用しても辞めてしまう」──今、多くの企業では、人財採用においてこうした問題が“同時に”起こっています。
    これらの問題は短期的には、課題の切り分けと重点対策として「応募数を増やす」「内定フォローを強化する」「定着施策を見直す」というように、一つひとつ解決していくことは重要です。しかし、もしその背景に、あるひとつの原因があるとしたらどうでしょうか。その対処の仕方も考えなければなりません。

    今、企業を悩ませる問題の背景、それは「8がけ社会」──労働人口そのものが減少していく不可逆な構造変化──の到来です。人が減る時代において、人財の採用・承諾・定着の施策を別々に扱うことは、実はあまり有効ではない可能性があります。

    Do! Solutionsでは、これまで 「8がけ社会」(※)をキーワードにしたシリーズをお届けしてきました。第1回ブログ『「8がけ社会」の企業戦略とは?①縮小×分散時代におけるブランド起点の成長戦略』では、人口減少と分散化による構造的な変化の中で、「誰に、なぜ選ばれるのか」「どう選ばれ続けるのか」という新しい成長戦略の前提を整理しました。続く第2回『顧客と長くつながる関係性設計とファン育成の実践』では、その実践編として、顧客との継続的な関係性を築き、ファンを育成しながらLTV(顧客生涯価値)を高めるための考え方とアプローチについて解説しています。

    ※朝日新聞でも提起されている、2040年に向けて労働人口・消費人口が約8割に縮小していくという社会構造の変化。この見通しは、公的な将来推計においても示されている。
    参考:朝日新聞「8がけ社会」連載
    参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」総務省統計局「労働力調査」

    今回第3回では、なぜ採用がうまくいかないのかを構造的に整理しながら、これからの時代に機能する人財戦略の考え方を紐解いていきます。 

    PROFILE

     

    INDEX

    なぜ今、採用はうまくいかないのか

    今、企業を取り巻く市場環境は大きく様変わりしています。
    人口減少による市場の縮小に加え、顧客の価値観や情報接触の分散が急速に進行し、従来の成長モデルが通用しなくなりつつあります。

    8がけ社会は不可逆的な構造変化

    これまでの人財戦略の課題は、「どう採用するか」「どう育てるか」といったオペレーション上の問題として語られがちでした。人財は市場に十分に存在する、という暗黙の前提を置いていたからです。

    しかし、労働人口そのものが減少する中で、企業は「人が足りない状態」を前提に経営を考えなければならなくなっています。これは一時的に売り手市場が生じているのではなく、不可逆な構造変化であり、根本的な変化です。

    つまり、企業の人財不足はオペレーションによって“解決すべき問題”ではなく、構造変化として受け入れるべき“前提条件”へと変わりつつあるのです。

    「応募者を増やす」発想の限界

    多くの企業が最初に考えがちなのは「応募者を増やしたい」という発想です。企業の採用担当者の方々との実際の会話でも、「母集団を増やさないと話が始まらない」という声は少なくありません。この発想の背景にあるのは、「多くの応募者を集め、その中から選びたい」という、量を前提とした採用モデルです。

    しかし、8がけ社会ではこのモデルの前提が崩れ始めています。そもそも対象となる人財が減っているうえに、彼ら/彼女らの価値観や志向が分散しており、その中で企業間の応募者獲得競争が激化しているからです。

    こうした状況では、応募者数だけを追いかけて企業認知を高めても、「母集団が集まらない」、「集まっても自社に合わない層が増える」、「選考効率が下がる」といった問題が生じやすくなります。

    なぜ認知拡大だけでは解決しないのか

    応募者数を増やすためには、確かに企業認知度の向上が大切ですが、しかし、それだけではこれからの人財採用の課題は解決しません。
    例えば、認知度の向上が単に「有名な会社になること」を意味している場合、そこに集まるのは「条件が良さそうだから」「大きな会社だから」といった理由で関心を持つ層になりがちです。その結果、企業の実態や価値観とは異なる期待を持った人財が集まり、入社後のギャップに悩んだり、早期離職につながるケースも少なくありません。

    さらに重要なのは、たとえ認知が高まり、いわゆる“優秀な人財”が応募してくれる状態になったとしても、それだけでは、「内定辞退」や「早期離職」の問題は解決しないという点です。
    むしろ、選択肢を多く持つ人財ほど、「自分に合っているか」「ここで働く意味があるか」をシビアに見極めます。
    そのため、企業の実態や価値観とのズレがあれば、内定辞退や離職という形で、より早く表面化することになります。
    つまり、認知拡大や優秀人財の獲得だけでは、採用の本質的な課題は解決しないのです

    これからの採用は何が変わるのか

    従来の採用と、これからの採用の違い

    観点 従来の採用 これからの採用
    前提 人財は十分にいる 人財は減少している
    基本発想 多く集めて選ぶ 意思決定の理由をつくる
    判断軸 優秀かどうかを見極める 価値観・文化との適合性を見極める
    施策 母集団形成・認知拡大 価値観の明確化・体験設計
    成果指標 応募数・採用数 承諾率・定着率

    求められるのは、「優秀な人財を見極める」ことではなく、「その企業で働く意味が、採用候補者本人の中で成立する状態をつくる」ことです。

    「選ぶ戦略」から「選ばれる理由をつくる戦略」へ 

    つまり、これからの採用戦略とは、「企業が人財を見極める活動」から「企業のあり方そのものが、採用候補者の意思決定の理由として機能する状態をつくる活動」へと捉え直すことです。価値観や働き方の志向が多様化する中で、彼ら/彼女らに「なぜこの会社で働くのか」という理由を明確に示し、意思決定の選択肢に入る戦略が求められています。

    どんな人に来てほしいのか、どんな価値観を共有するのか、採用候補者にとってこの組織で働く意味とは何かといった“組織の意味”を設計することが、これからの採用戦略の起点になります。

    本質的な“意味”の設計が採用・承諾・定着をつなぐ

    内定辞退と離職の原因は共通している

    “組織の意味”を設計できるかどうかは、内定辞退や早期離職の問題にもつながります。

    現在の採用市場では、多くの就職希望者が複数の内定を持つことが一般的であり、企業は比較の中で意思決定される存在です。ここで選択の可否を分けるのは、採用条件や入社後の待遇だけではありません。「この会社で働く意味があるか」「この組織に共感できるか」といった本質的な意味が感じられるかどうかです。

    この点は入社直前の内定辞退や入社後の早期離職の問題につながります。「思っていた会社と違う」というズレは、内定を辞退させたりや早期に退職を決意させたりする根本原因になりやすいからです。

    内定辞退と早期離職は別の問題に見えますが、その原因は共通していることが多いものです。逆に言えば、組織の本質的な”意味”を設計し理解してもらうことは、採用・内定承諾・定着という複数の問題をひとつにつなぎ、解決するための柱になるのです。

    採用・定着をつなぐ「関係性設計」

    組織の本質的な意味は、組織価値観や組織文化から生まれます。これを起点に採用活動を設計すると、採用候補者との関係性が変わり、意思決定の質そのものが変わります。
    組織の価値観や文化を正しく伝えることができれば、その考えに合わないと感じる人は応募しない一方で、組織の意味の理解を前提に判断を行い、納得感を持って意思決定する人が増えます。
    その結果として内定承諾率が高まり、入社後のミスマッチも減少し、離職率の低下にもつながります。

    これからの採用戦略には、自社の本質、候補者との関係性、候補者の意思決定の質をどう設計するかという視点が求められます。

    「伝える」だけではなく「組織自体が変わる」必要性

    採用広報だけでは解決しない理由

    組織の意味を伝える上で、採用広報やコミュニケーションの工夫は重要ですが、それだけでは不十分です。
    組織の意味が組織価値観や組織文化に根差したものであるがゆえに、どれだけ上手く伝えても、本質的な中身が伴っていなければズレは必ず生まれます。そしてそのズレは、辞退や離職という形で顕在化します。

    つまり「何を言うか」を考える前提として、「どんな組織であるか」そのものを考え、変えていく必要があるということです。

    組織文化はどうすれば変わるのか

    ではどうすれば、「どんな組織であるか」について考え、変えていくことができるのでしょうか。

    組織は、言葉だけでは変わりません。
    経営の意思、評価制度、日々の意思決定、そして行動の積み重ねが揃ってはじめて、文化は実態として機能します。

    その企業が大切にしている価値観が、評価や報酬に反映されているか。挑戦を促すと言いながら、実際には無難な成果だけが評価されていないか。
    さらに、企業として目指す姿を体現する取り組みが存在しているか。新規事業やプロジェクト、発信を通じて、「この会社は本当にそういう方向に進んでいる」と実感できるか。

    こうした要素が揃ったとき、組織文化ははじめて“機能するもの”になります。

    “らしさ”が、社員の意思決定を変える・揃える

    「機能する組織文化」とはどういうものでしょうか。

    組織文化が根づいた組織では、意思決定の方向が揃っていきます。
    判断に迷う場面でも、「この会社はこういう価値観を大切にしている」という共通認識があることで、自然と同じ方向を向いた意思決定がなされるようになります。
    それはルールではなく、“らしさ”として自然に共有される状態です。

    さらに言えば、その価値観に基づいた行動を、社員自身が「それが自分たちらしさだ」と自然に受け入れ、誇りを持って体現できる状態になること。
    それは、「やらされる組織」ではなく、「自分たちで判断できる組織」へ転換することを意味します。

    組織文化が本当に機能する「自分たちで判断できる組織」では、従業員は義務感だけで動いていません。「こっちのほうが自分たちらしい」「そのほうが面白い」「その挑戦をしてみたい」。そうした感覚が自然と共有され、組織が前向きなエネルギーを持って動き始めます。
    つまり、組織文化が、行動を縛るルールではなく、人や組織を前向きに動かす推進力にとして機能しているのです。

    こうした変化は、人財の定着や採用にとどまらず、本業の意思決定の質やスピードにも影響を与え、取引先との関係性や企業としての評価にも波及していきます。

    「企業文化の変革」、そして「採用ブランディング」という選択肢

    組織の意味を考え、組織を変えていく。一見するとこれらは採用施策ではないように見えます。なぜなら企業のあり方そのものを設計し直す取り組みだからです。しかし、これからの「8がけ社会」で勝ち抜く人財戦略を考える上では、決して避けては通れない課題なのではないでしょうか。

    電通では、こうした課題が寄せられることが増えており、ご要望にお応えするために、企業文化変革を支援するプログラム「Culture For Growth」というサービスをご提供しています。具体的には、企業の組織価値観や組織文化を言語化・可視化し、それを組織の制度や実践行動にまで落とし込み、実態として機能する状態をつくる支援を行うサービスです。

    そして、組織文化や組織価値観を、採用の接点においてどのように伝え、どのように体験させるかを設計し実施する「採用ブランディング」プログラムをご提供しています。

    企業の内側と外側を分けるのではなく、一体として設計すること。
    それが、これからの採用における本質的なアプローチだと考えています。

    まとめ

    8がけ社会において、採用・承諾・定着は、ひとつの課題に起因する、つながった構造を持っている可能性があります。応募者数を増やすことだけでは、この問題構造を変えることはできません。8がけ社会がさらに進んだ将来、必要になるのは、企業の価値観や文化が「ここで働く理由」として成立する状態をつくることです。

    採用は人を集める活動ですが、企業のあり方が問われる領域へと変わりつつあります。自社が「なぜ選ばれるのか」を問い直し、その価値観や文化を体現する組織づくりと、それを軸とした採用のあり方に取り組んでみてはいかがでしょうか。

    8がけ社会で、人財に選ばれる組織とは
    8がけ社会において、採用課題の背景には、企業の価値観や文化が十分に伝わっていないという構造的な問題があります。電通の「Culture For Growth」は、組織価値観や企業文化を言語化・可視化し、人財に選ばれる組織づくりを支援します。まずは資料で、その考え方をご覧ください。
    8がけ社会で、採用は「選ぶ」から「選ばれる」へ
    労働人口が減少する8がけ社会では、多く集めて選ぶ採用モデルは限界を迎えています。電通の「採用ブランディング」は、組織の価値観や文化を軸に、応募・承諾・定着までを見据えた採用戦略を支援します。まずは資料で、そのアプローチをご覧ください。

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