ビジネス課題を解決する情報ポータル
[ドゥ・ソリューションズ]

    サーキュラー・エコノミー実現のカギを握る「サステナブルカスタマー」とは?

    最終更新日:2024年03月22日

    サーキュラー・エコノミー実現のカギを握る「サステナブルカスタマー」とは?

    2023年6月、電通グループは「回収・リサイクル」と「販促」を合わせた仕組みでサーキュラー・エコノミーを実現する循環プラットフォームの開発を開始しました。このプラットフォームにおいて重要となるのが、使い終わった商品の回収に参加する“顧客”の存在です。

    実際に回収に参加してくれるのは、どのような価値観を持つ人たちなのか? その人たちが回収に参加しやすくするには、どのようなプラットフォームが必要か? 生活者を新たな視点から捉え直すことで見えてきた「サステナブルカスタマー」という顧客群と、その方々に気持ちよく回収に参加してもらうための仕組みづくりについて、当社サステナビリティコンサルティング室の堀田に編集部が取材しました。

    PROFILE

     

    INDEX

    サステナビリティの中心にいるのは“顧客”だった

    サステナビリティ経営やサーキュラー・エコノミーの構築において、堀田さんは以前から「顧客に参加してもらうこと」の必要性をお話しされていました。その点について、あらためて教えていただけますか。

    これまでも企業はさまざまな社会貢献活動を行ってきましたが、その多くはいわゆるCSRの範囲にとどまるものでした。しかし今のサステナビリティ経営において重視されているのは、社会貢献性と事業性の両立。つまり事業モデルそのものを社会貢献性のあるものに変えていく必要があるのですが、そこで重要となるのが「企業と顧客の関係性」です

    例えばサーキュラー・エコノミーを図式化してみると、生活者(顧客)の重要性がよく分かります。従来の事業は、企業が商品を製造し、それを生活者に販売するという右側のピンクの範囲。一方でサーキュラー・エコノミー型の事業では、それを回収してリサイクルに回す、左側の青色の範囲も不可欠になります。両側をつないで循環をまわす結節点とも言えるのが、まさに生活者なのです

    確かにこの図を見ると、実際に使い終わった商品を回収にまわす生活者がいなければ、製品を生み出す動脈産業と、廃棄物を再生・再利用する静脈産業の連携も成り立たないことが分かります。産業構造の中心に生活者が存在するとも言えそうです。

    そうなんです。だから生活者に対するマーケティングにおいても、これからは購入してもらうことだけをゴールとするのではなく、一緒にサステナブルな事業を実現していける「パートナー」としての関係づくりが必要だと考えています。産業としての企業側のルールを一方的に押し付けるのではなく、「みなさんの力が必要です。一緒に社会を変えていきましょう、そのために私たちも変わります」というメッセージとともに、行動を促す仕組みもしっかりと築いていく。それはマーケティングコミュニケーションを得意とする電通グループとしても、新しい挑戦になります。

    とはいえ、すべての生活者に対していきなり行動変容を促していくのは、なかなかハードルが高いですよね……

    私たちも「回収に参加してくれるのは一体どんな人たちなんだろう?」ということをずっと考えていました。そこで、実際に生活者を対象とした調査を行い、サステナビリティ実現のパートナーになり得る顧客群がどれくらい存在するかを独自に調べてみました。すると、今までの顧客階層からは見えてこなかった「サステナブルカスタマー」という顧客群を発見できたのです。

    いま注目すべき次世代顧客群「サステナブルカスタマー」とは?

    調査からわかった「サステナブルカスタマー」とは、具体的にどんな顧客群でしょうか?

    従来は、購入や推奨行動に基づき見込客からロイヤルカスタマーまでピラミッド型に顧客を捉えることが一般的でした。今回の調査では、そのロイヤルティ軸を縦に残したまま、新たに「回収・リサイクル活動軸」という横軸を設け、顧客を4タイプに類型化しました。そのうち、購入継続率も高く、なおかつ回収・リサイクルにも参加する右上の顧客群が「サステナブルカスタマー」です

    全体における割合としては、どれくらいのボリュームになるのですか?

    これは私も驚いたのですが、調査対象者全体の約2割にサステナブルカスタマーが存在することが分かりました。若年層はSDGs教育などの影響もあって割合が高いことは予想できましたが、どの世代を見ても概ね2割は存在していたのです。「あ、思った以上にいるな!」というのが正直な感想。しかも、回収・リサイクルへの“参加意欲がある”だけではなく、“すでに参加している”というのが重要なポイントです。

    確かに最近、ファストファッションの店頭や駅でも回収ボックスを見かけることが多くなりました。回収に積極的な人がすでに2割も存在しているという事実は、サステナブルシフトに取り組む企業にとって安心材料にもなりますね!

    はい。この方々をターゲティングしていけば、ビジネスとして成立する可能性が十分あります。5人に1人が回収・リサイクルに参加することになるので、社会を変えることができる数字ですよね

    さらにもう一つ注目すべきサステナブルカスタマーの特徴は、「価格が高くても環境に良いものを買う」という比率が他のセグメントよりも明らかに高いことです。ただでさえ原料価格が高騰する今、更に再生プラスチックやバイオプラスチックを取り入れるなどサステナブルシフトをするとある程度の値上げはやむなしですが、その社会的意味さえきちんと伝えれば受け入れていただける。そんな顧客が2割も存在するのは驚くべきことです。

    「メッセージ」×「仕組み」の提供で行動変容を促す

    サステナブルカスタマーに向けたマーケティングコミュニケーションの方法についてもお聞きしていきたいのですが、どういったアプローチが効果的でしょうか?

    まずは企業として「自分たちはどのようなサステナビリティを目指しているか・そのためにどう取り組んでいきたいのか」という本質的な部分をしっかり伝え、共感してもらうことがとても大事ですね。いきなり協力を促すのではなく、その前段の説明と共感がないと、持続的なパートナー関係は築いていけません

    その共感醸成がフェーズ1だとして、フェーズ2では「あなたの助けが必要です、一緒に参加してください」と行動変容を促します。そしてフェーズ3ではサステナブルカスタマーとの関係性を持続できるようコミュニティを構築し、他セグメントの顧客群をサステナブルカスタマーに引き上げながら「あなたと共に変わっていきましょう」というナーチャリングを目指していきます。

    次世代顧客群「サステナブルカスタマー」との関係性の作り方

    段階ごとに明確なメッセージを発信していくのですね。

    はい。ただしフェーズ2,3で特に重要なのは、言葉だけでなく「仕組み」もセットで提供していくこと。サステナブルを踏まえた顧客体験(CX)の設計と提供を、メッセージングと同時に行うことで、購入から回収、そしてリピートへと気持ちよく行動していただくことが理想的です。

    実は電通も、これまではコミュニケーションによる概念の提示に留まることが多かったのですが、それではサステナブルカスタマーに対するマーケティングソリューションとしては不十分です。そこで電通プロモーションプラスと一緒に、「循環プラットフォーム」の開発を始めました。先ほど言ったように、私たち電通グループにとっての新たな挑戦の一つです。

    回収と販促をつなぐ新たなCX「循環プラットフォーム」

    電通グループが開発を手掛ける「循環プラットフォーム」、 その詳細を教えてください。

    まだ実証実験段階ではあるのですが、空容器などの「回収・リサイクルCX」にクーポン・ポイントなどの「販促CX」を組み合わせた、循環型のCXプラットフォームになります。

    循環プラットフォームが目指すCX

    具体的には、流通業企業様の店舗に回収ボックスを設置させていただき、利用者がアプリで空容器のJANコードをスキャンすると、使われている素材ごとに何番のボックスに分別したらよいかが表示されます。投函するとアプリ上に回収物や回収履歴に応じたクーポンが表示され、そのまま店頭ですぐに次の商品をお得に購入できる…といった仕組みです。

    循環プラットフォームの仕組み

    店頭を起点として、回収CXと販促CXがつながるんですね。回収する商品は、特定の企業の商品だけですか?

    いえ、一つの循環プラットフォームに複数企業が相乗りし、各企業の対象商品を一括で回収します。企業別ではなく、素材別で回収する点がポイントですね。企業は自前で回収網を構築する必要がないので、回収やオペレーションにかかるコストをぐっと抑えられる可能性があります。また、従来の店頭回収は非常にアナログなやり方でしたが、この循環プラットフォームではデジタルシステムを活用しているので、モノも情報もあわせて回収できるというメリットもあります。

    1か所でいろいろな商品を回収してもらえて、しかもクーポンもその場で使える。顧客にとっても利便性が高そうです!

    よくレシートと一緒に「次のお買い物が〇〇%オフ」などのクーポンをもらうことがありますが、それだと次の買い物のときに忘れてしまうことが多いですよね。どんなクーポンを出すかは個別にカスタマイズできるので、シャンプー容器を回収したら同じシャンプーのクーポンを出して、継続購入を促すことはもちろん、コンディショナーのクーポンを出すことでクロスセルや、ワンランク上のプレミアムシャンプーのクーポンがもらえるアップセルなど、目的ごとに変えられます。

    ちなみに、こうした金銭的インセンティブは販促としてよく使われる手段ですが、実は社会貢献性を重視するサステナブルカスタマーは「非金銭インセンティブでも動く傾向が高い」という特徴があります。割引オファーだけでなく、もらったクーポンの割引額を寄付にまわすことができたり、回収量やCO₂削減効果を可視化して提示したり、あるいは「あなたはランキング○位です!」といったことを表したりと、金銭的インセンティブに頼らず次につなげていく方法はいろいろ考えられそうです。

    回収やリサイクルにこれから取り組む皆さまは、ぜひ私たちとご一緒に!

    回収の効率化やコスト合理性、そして販促との連動性などベネフィットの多い「循環プラットフォーム」ですが、どういった企業におすすめでしょうか。

    システム開発やオペレーションの負担を抑えて循環型ビジネスを始められるので、これから回収を始めたいという企業には絶好の機会になると思います。なんといってもこれからの時代、回収やリサイクルはやらなくてはならないこと。お客様に気持ちよく回収に参加していただく仕組みづくりの実験として、活用していただきたいです。

    今は回収対象として日用品関連を主に想定していますが、家具やアパレルなど他の業種にも展開できる発展性の高いプラットフォームを構想しています。“モノと情報を同時に回収する”という点からもさまざまな可能性が考えられますので、これから多様な企業の方々が乗り合うことができる仕組みづくりに挑戦していけたらと思います。

    現在は実証実験段階とのことでしたが、興味のある企業の方は今からでも参加できますか?

    実証実験を経て、来年本格的にサービスのローンチができればと思っていますので、本格ローンチに向けての参加のご相談をいただければと思います。 また、この循環プラットフォームへの参加だけでなく、サステナブルカスタマーをターゲットにしたマーケティングやプロモーションのご相談なども随時承っていますので、興味を持った方はこちらもぜひご相談ください。

    【「サステナブルカスタマー相談会」無料で開催中!】
    今回ご紹介した「サステナブルカスタマー」にご興味のある皆さまに向け、マーケティング施策やコミュニケーション方法を知りたいなどのご要望に幅広くお応えする相談会を随時実施しています。ぜひお気軽にお問合せください。

    <お問い合わせ方法>
    下記のバナーをクリックし、フォームへとお進みいただき、「お問い合わせの目的」で「サーキュラー・エコノミーに関するご相談」→メニューから「サステナブルカスタマー相談会」を選択し、必要事項をご記入の上、お問い合わせください。

    サステナブルロードマップ活用相談会

    調査結果を基に「サステナブルカスタマー」をさらに詳しく
    購入者からパートナーへ。「サステナブルカスタマー」がビジネスを変える!

    まずはeBookのダウンロードから
    サーキュラー・エコノミー eBook ダウンロードページへ

    サーキュラー・エコノミーの課題解決のためのソリューションは、こちら
    サーキューラー・エコノミーの課題とは?実践に向けたソリューション5選!

    サステナビリティ経営の推進でお悩みの方は、ぜひこちらも
    サステナビリティ経営のガイドツール「サステナブルロードマップ」とは?

    電通グループがご提供する
    関連ソリューション

    電通SDGsビジネスソリューション「サーキュラー・エコノミー」

    循環する経済とは?SDGsゴール、カーボンニュートラル目標の達成に向けて、企業が取り組むべき環境負荷低減と事業成長の両立を実現するビジネスソリューションをご紹介します。

    詳しくはこちらをチェック!
    サーキュラー・エコノミーの始め方
    サステナブルカスタマー調査ダイジェストレポート
    このページをシェア Facebookでシェア Twitterでシェア LINEでシェア リンクでシェア URLをコピーしました

    関連ブログ記事

    登録無料

    mail magazine

    ビジネス課題を解決する
    ソリューション情報を
    メールでお届けします!