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    「パーパス」ミッション・ビジョン・バリューとの違いを解説 「パーパス・デザイン」が企業/ブランドを強くする #2

    最終更新日:2024年07月02日

    「パーパス」ミッション・ビジョン・バリューとの違いを解説 「パーパス・デザイン」が企業/ブランドを強くする #2

    INDEX

    前回のブログでは、近年パーパスが注目されてきた背景、企業・ブランドに与える影響や価値、一過性のブームでは終わらないであろう、といったことについて解説しました。

    今回は、パーパスのどのような特長が企業経営者やマーケターを惹きつけたのか?---パーパスが企業・ブランドにもたらした新しい「視点」や「発想」について、私たちの考察をご紹介します。

    本論に入る前に、まずは、既存の企業理念体系とパーパスとの関係について触れてみたいと思います。

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    “ミッション・ビジョン・バリュー”とどう違うのか?

    実は「定説」は存在しない

    “ミッション・ビジョン・バリュー”とどう違うのか。
    パーパスについて調べ始めた最初の頃、私自身もこの点がとても気になり、欧米のパーパスに関する情報を探しまわりました。

    そこでわかったことは、様々な専門家がそれぞれの観点から自説を展開しているが、そこに必ずしも定説のようなものがあるわけではないということでした。しばしば見かけるのは、パーパスはWHYでありミッションはWHATであるといった説明で、それらは確かにわかりやすく参考にもなります。が、実際に考えていくとそう簡単に整理できるものではない上、定義の違いにこだわるあまり、本質を見失う危険性もあると感じています。

    現に“パーパス・ドリブン”であるとして、世界的に有名な企業・ブランドを見ても、“パーパス”という名称を用いて考え方を定義している企業もあれば、“ミッション”、場合によっては“ビジョン”と定義している内容を自社のパーパスとして語っていることもあります。

    概念そのものではなく、そこで提唱された「視点」や「発想」に新しさがあった

    そもそも企業にとって「存在意義」「志」といった概念は、そう目新しいものではありません。実はパーパスも、従来の企業理念の中に、以前から部分的に含まれていた概念だったのです。

    ではなぜ“パーパス”という言葉がここまでスポットライトを浴びるに至ったのか。前回のブログでご説明した社会背景に加え、私たちは、そこで提唱された視点や発想にこれまでにない、新しさがあったからだと考えます。
    経営者やマーケターを魅了した新たな「視点」や「発想」について、改めて整理してみました。

    パーパスがもたらした新しい「視点」や「発想」

    ① 視座の高さ:顧客価値から社会価値の視座へ

    パーパスは「社会の視点」が色濃く注入されている点がポイントです。

    「社会の視点」自体は、従来の“存在意義”や“ミッション”にも含まれていたかもしれません。が、今までのケースを見ると、それらはどちらかというと、ステークホルダーや社会への影響に配慮し適切な企業・ブランド運営を行っていくこと(社会的責任、社会との関係構築など)に比重が置かれていたように思います。視座自体は社会ではなくあくまでも顧客への提供価値に据えられ、その事業を持続可能な形で推進していくために社会にも配慮する、といった旧来のCSRに近い考え方です。
    それに対して、パーパスは、自社・ブランドの視座自体を顧客価値から社会価値の次元に引き上げることが特徴です。例えば、このような社会を実現したい、このような社会の状況を打開すべきだといった考え方がまず存在し、それに基づきビジネスモデルを(再)構築し、そこから価値を提供すべき相手、商取引を行う相手などが特定されていくといったイメージです。このような発想に基づくと、ごく自然に、事業や提供する商品・サービスそのものを通じて社会価値が実現されるようになっていきます。
    もちろん、どちらかの考え方がより優れている、といったことではありません。企業・ブランドにはいずれの考え方も必要です。が、パーパスの考え方を導入し、企業・ブランドの視座が高まると、それが新たな事業機会の発見、ひいては事業ドメインの再定義にもつながるわけで、この点がパーパスに注目が集まった大きな要因です。

    さらにこの考え方は、その企業の“事業全体”をCSV(共有価値の創造)の方向に転換する働きがあります。CSVはここ十年以上、頻繁に語られてきた経営の考え方ですが、日本ではともすると「ビジネスで社会課題を解決する」「ビジネス化できる社会貢献活動」といった具合に、企業活動のごく一部で試行される“個別の施策”、といった印象をもつ人が多かったのではないかと思います。
    パーパスが経営・ブランドに導入されると、経営・事業の最上位に、つまり事業活動全体に「社会の視点」が浸透することになるので、既存の事業も社会視点で見直されることになります。結果的に全事業がCSVの方向に転換されていきます。既存事業が持つ社会価値についても改めて見つめなおし、どうしたらより一層その価値が高まるかを考えぬく、そういったプロセスもまた新しい発想やイノベーションを生み出していくわけです。

    ちなみに、時々ご指摘のあるパーパスとCSR理念との類似と違いについては、本ブログの最後にまとめてみましたのでご参照ください(※)

    ② 想いの共鳴:「個人の志」と「企業・ブランドの志」の二重構造

    前回のブログで「何のために働いていますか」という一人ひとりへの問いかけや、リーマンショックを受け就職に悩んだ欧米の若者たちに対してパーパスの考え方が響いた、という話をご紹介しました。このようにパーパスは「個人の志」の文脈でもよく取り上げられます。「meaningful(意味がある)か」という表現を欧米でよく見かけます。企業のパーパスが従業員のやりがいや価値観と共鳴する内容になっており、それに基づき実践される各業務には「意味がある」と感じられなければ、パーパスの力は十分発揮されないでしょう。

    以前電通が行った調査では、企業のパーパスと従業員個々人のパーパスが同じ方向を向いている時、従業員のモチベーションが高まるといったことがわかっています。従来の企業理念には上位下達的なニュアンスがあったことに対し、このような共鳴構造を上手に作るといったことも、パーパスがもたらした新たな発想であったと言えます。

    ③ 社会との共創:外に開き、共有(シェア)する

    欧米の話ばかりで恐縮ですが、“Shared Purpose”という言葉もよく目にします。企業(および従業員)と社会(ステークホルダー)が共通の目的(志)を共有する、という考え方です。

    パーパスを社外に開き、共有していくことで、外部からも共感者を得て、共創する関係を生み出す、という発想です。パーパスを起点に、従業員と社会(ステークホルダー)がフラットな形で結ばれ、新たな絆を構築していくことが可能となります。(私たちはこれを「同志型ブランディング」と呼んでいます)。

    日本でも企業間連携などの文脈で「この指とまれ」といった表現がよく使われますが、パーパスこそ「この指とまれ」を社外に呼びかけ、賛同者を集めていく原動力となります。コレクティブインパクトが叫ばれる昨今、社外とのコラボレーションやオープンイノベーションを促進する役割も果たすということです。

    ④ 変革:生み出す変化こそが存在意義

    「事業を通じて社会に貢献します」といった表現をよく日本企業の理念で見ることがありますが、このような表現では具体性が乏しく、企業の「意思」を感じることができません。
    今、世の中にどのような課題があると認識し、それをどう解決し社会を「変革」していくのか、その具体的な道筋が意思となって表明されているとパーパスはより強いものになります。パーパス(目的)は、自社が社会に貢献する際のベクトルを指し示すことでもあります。そのベクトルは、さらにより具体的なイメ―ジに落とし込まれていることで、すぐにでもアクションにつながる指針として機能していくのです。

    ⑤ 実態化:具現化されて初めて評価される

    ソーシャルメディアなどを通じ、企業の振る舞いが細部に至るまで社外の目にさらされる昨今の環境下で、「その志は本物か」が常に社会から問われ、ある意味で監視される時代になっています。グリーンウォッシュ、SDGsウォッシュという言葉と同様に、パーパスウォッシュ(うわべだけの、見せかけのパーパス)というような表現も今や日本でも使われるようになっています。

    志は「具現化してなんぼ」、です。言いっぱなしは、逆効果にすらなりかねません。パーパスは、志を掲げるだけでなくそれが具現化されているか、もしくは具現化の道筋を真剣に考え実行に移そうとしているのかといった実態と常にセットで評価されるものだと考えておくことが必要です。

    パーパスを起点にしたパーパス・ブランディングも、実態あるいは具体的な構想を伴った「ファクツ」を通して発信していくことが重要です。

    こういったことから、パーパスを定義すると、「志を掲げる(スローガン策定やコミュニケーション)」だけではなく、それを経営・事業に確実に組み込み、新規事業やイノベーション、社外とのパートナーシップ構築など、「志を具現化していく施策を実際に生み出していくこと」になります。パーパスが、今までの企業理念以上に、企業・ブランドにとって変革の力強い推進力となっていくのはまさにこの理由からです。

    以上、5つの視点と発想についてご説明しました。成功していると言われるパーパス経営企業・ブランドの多くは、これらの視点・発想を驚くほど上手に取り入れることで、自らの企業・ブランドを強くしています。一度これらの視点から、自社のパーパスを振り返ってみることも有効かもしれません。

    次回は、パーパスをいかに強さにつなげるか、その切り口について、ご紹介します。

    第1回:パーパスとは?その意味と企業・ブランドを強くする方法を解説
    第2回:「パーパス」ミッション・ビジョン・バリューとの違いを解説
    第3回:「パーパス」企業・ブランドの成功事例にみる「8つの効果」を紹介
    第4回:今、企業が策定すべきパーパスとは?電通パーパス・デザイン

    このような考え方を踏まえて開発した「電通パーパス・デザイン」については、こちらでご紹介をしています。ぜひご覧ください。

    ※パーパスとCSR理念との類似と違いについて
    パーパスの捉え方は一様ではないのが現状で、 “ミッション・ビジョン・バリュー”とは別にパーパスが規定されているケースもよく目にします。そして、そういった企業のパーパスにはCSRや社会貢献の理念とほぼ同義であるかのような印象を与えるものもあり、結果的に、パーパスとCSR理念との混同や混乱が生まれている現状もあります。

    もちろん、企業それぞれの思想や事情がありますので、そういった理念体系自体が否定されるべきものでは決してありません。が、「社会の視点」が色濃く注入されたパーパスが、従来のCSR理念に近い位置に据えられ、それとは別に、事業の指針となる理念としてミッションやビジョンが規定されている場合、パーパスは事業の本流とは別系統のものと扱われ、先にご説明した“事業全体をCSV(共有価値の創造)化する”という効果が限定的になってしまう危険性があります。

    昨今は、社会視点をふまえた上で事業全体への指針となるパーパス(名称としてはミッションである場合もある)を経営の最上位に据え、その下に、それを実現するビジョンやサステナビリティ戦略を策定するという形がより一般的になってきているようです。理念要素を数多く並列させるのでなく、できる限り絞りこみ、体系をシンプルにすることは、社内浸透を図る際にも有効であると考えられます。

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