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    パーパスとは?その意味と企業・ブランドを強くする方法を解説 「パーパス・デザイン」が企業/ブランドを強くする #1

    最終更新日:2024年07月02日

    パーパスとは?その意味と企業・ブランドを強くする方法を解説 「パーパス・デザイン」が企業/ブランドを強くする #1

    INDEX

    近年、ビジネスをめぐるあらゆる場面で耳にする「パーパス」。社会から存在意義を感じられる企業/ブランドであり続けるために、その重要性が指摘されてきました。 パーパスには、社会的存在意義を感じられるようにするのみならず、その企業/ブランドの競争力そのものを直接高める力もあります。その点からもここ数年多くの企業で導入が進められています。

    一方、パーパスの考え方を導入しただけで良い結果が得られるとは限りません。パーパスを策定したものの、そこで動きが止まってしまったり、パーパスがその企業/ブランドの“強さ”につながらず、結果的に形骸化してしまうことも多く発生しています。

    「どうすれば、パーパスを企業やブランドの“強さ”につなげることができるのか?」
    この連載では、私たちのパーパスに対する考え方や、そこから生まれた、パーパス策定・再定義、パーパスを強さにつなげる各種運用のソリューションをまとめた『電通パーパス・デザイン』について、これから4回に分けて、ご紹介していきたいと思います。

    第1回:パーパスとは?その意味と企業・ブランドを強くする方法を解説
    第2回:「パーパス」ミッション・ビジョン・バリューとの違いを解説
    第3回:「パーパス」企業・ブランドの成功事例にみる「8つの効果」を紹介
    第4回:今、企業が策定すべきパーパスとは?電通パーパス・デザイン

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    パーパスとは?その意味と価値

    パーパスは「社会に対する志」

    パーパスの定義としては、以下のような表現がよく見られます。

    パーパス(Purpose)とは、企業/ブランドの「高い目的意識」
    根本的な存在理由、存在する目的
    企業/ブランドの「WHY」
    「社会に対する志」もしくは「社会的存在意義」

    近年、SDGsなど、地球環境や社会の「サステナビリティ(持続可能性)」への取り組みが求められる中、企業はその経営やマーケティングの目的の中に「社会に対してどのような価値を生み出し、貢献するのか」といった社会に対する姿勢や、「どのような未来社会を創っていくのか」といった、より視座の高い意思を込めるようになってきています。
    そのような流れも受け、私たちはパーパスを「社会に対する志」もしくは「社会的存在意義」と定義しています

    パーパスは十数年以上前から欧米で、そして近年は日本でも、多くの企業の注目を集めるようになった概念です。例えば、世界で最も有名だと思われるパーパスの一つに、ユニリーバ社の「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”にする」があります。このパーパスは、同社のサステナビリティ経営やサステナブル・マーケティングの指針となると共に、提供する各商品それぞれのブランディングのベースとしても位置付けられ、事業の成功を導くものとなりました。(※1)

    そのような事例もある中、理想的な経営、もしくはブランディングの要として、期待を集めてきたパーパスですが、昨今、その実践が決して簡単なものではないことに気づかされる事象も増えています。そこで、今改めて、パーパスの考え方の原点に立ち返り、パーパスの本質的価値や、企業/ブランドにとってどのような示唆があるのかを見ていきたいと思います。

    パーパスは私たちに自問自答を迫る

    『みなさんは何のために働いていますか?』『明日、〇〇(ご自身の会社/ご担当のブランド)がなくなったとして、世の中にとって何か問題はあるでしょうか?』『生活のためや、家族のため以外に、あなたを今日、職場に向かわせたものは一体何でしょうか?』・・・それがパーパス(目的)です。

    これは、私がパーパスについて説明をする際、最初にお話してきたことです。私はこのフレーズを最初に、ある書籍の中で見つけました(※2)。その後、経営論やブランド論の中でパーパスに関する多くの情報に目を通して来ましたが、最終的に立ち戻るべきは、やはりこの問いかけなのだろうと今も思っています。

    パーパスは、このように私たちに自問自答を迫ります。
    WHY(何のために)。
    この、問いを絶えずつきつけていく働きこそ、パーパスが企業にもたらす最大の価値ではないかと私は考えます。

    そして、パーパスを新たに策定したり、従来のものを再定義したりすることは、企業やブランドに、新しい志(目的意識)を埋め込み、自身を変革していくことに他なりません。

    パーパスが注目される背景にあるもの

    パーパスをめぐる世界的潮流

    ここで、パーパスをめぐる潮流を簡単にレビューしてみたいと思います。過去の経緯を理解することで、パーパスの本質や企業にとっての示唆が見えてくるからです。

    欧米でパーパスへの関心に火をつけたのは、リーマンショックでした。利益の追求を最優先に求められる営利企業は、果たして社会に真に役立つ存在たり得るのだろうか・・・そういった疑問が、当時米国で就職先を考えていた若者達を悩ませたとのこと。また、企業経営者もこれをきっかけに新しい経営の在り方を模索し始めたといいます。

    「企業は社会の役に立てるのだ」と、そこに働く人々のプライドを奮い立たせ、企業を新たな目的意識のもと変革へと向かわせたのが、パーパスでした。

    さらに、その頃から徐々に大きな潮流となっていた「サステナビリティ(持続可能性)」へのシフトが、パーパスに新たな役割を与えました。社会の視点をより取り入れて新たに策定された各社のパーパスは、企業/ブランドをサステナビリティ経営/ブランディングへと導いていったのです。

    生活者の消費行動の面でも、市場の中核を占めるようになっていたミレニアル世代やZ世代の社会意識の高さがブランド選択を左右し始めました。社会の視点が希薄な企業/ブランドはそもそも存在意義が感じられなくなってきたという危機感が、新しい形の、パーパスに基づくマーケティングやブランディングへのシフトを加速させました。同時に、パーパスを起点にした新たなイノベーション(パーパス・ドリブン・イノベーション)も注目されていきます。

    そして、2020年に世界を襲ったコロナ禍が、企業/ブランドのパーパスへの関心を再び熱くしました。「確固たるパーパスを持つ企業は、非常時においても社会との向き合い方にぶれがない」とか、「パーパスは企業/ブランドのレジリエンス(困難からの回復力、しなやかさ)を高める働きを持つ」といったことが各所で指摘されたのもこの頃です。

    世の中は価値観の大転換期を迎え、資本主義のあり方自体を問い直す議論も起こり、そこでパーパスに基づく企業経営にはさらなる期待が集まりました。 一人の人間にとっては「何のために働いているか」を、企業/ブランドとしては改めて「何のために存在するのか」を再定義すべき時期がきたわけです。そしてその状況は今も変わらず続いています。

    パーパスが注目される三つの文脈 そして企業への示唆

    パーパスが企業の注目を集めるに至った背景には、以下の三つの文脈があるといえます。

    1. 組織経営の文脈:
    若者の社会意識の高まりや仕事に対する価値観変化をふまえた人材確保
     イノベーションの加速化(パーパス・ドリブン・イノベーション)

    2. サステナビリティの文脈:
    サステナビリティ経営への社会的要請やESG投資の高まりへの対応
    新しい資本主義のあり方を模索する議論や、ステークホルダー資本主義への流れを反映した経営へのシフト
    消費者の社会意識の変化への対応(ミレニアル世代、Z世代

    3. ブランドの文脈:
    パーパスを起点に社会価値とクリエイティビティが融合する新しい形のブランド・エンゲージメント(パーパス・ブランディング

    ここに企業にとって二つの示唆があると私たちは考えます。

    一つは、パーパスは一つの領域にとどまる概念ではないということ。
    組織経営、サステナビリティ、ブランドなど、多様な文脈がある中、どれか一つの方向からだけ見てパーパスを理解したつもりになってしまうと、パーパスの考え方を取り入れる効果が半減する可能性がある、ということです。
    パーパスを導入すべき理由は、その企業/ブランドが抱える課題によって異なります。それを丁寧に見極めながら、自社/ブランドに最もふさわしいパーパスのあり方を考えることが重要だということに改めて気づかされます。

    もう一つの示唆は、パーパスが注目されてきたのは、企業にとってそれがどの文脈であるにせよ、自社/ブランドにとって多大なプラスの効果があったからだ、ということ。

    パーパスの導入は、ともするとそれ自体が目的化されてしまうことがあります。が、企業/ブランドがパーパスを策定する際は、その先のことを考えながら検討することが、当然のことながら必要です。
    社会に貢献する意識を新たにするのはもちろんのこと、それだけにとどまらず、自社/ブランドがパーパスの考え方をとり入れる狙い(自社にとってどういう効果を期待するのか。どのように自社/ブランドを強くしていきたいのか)を十分意識しながら、検討を進めていくことが肝要となります。もし現在、パーパスを導入したものの、それを起点とした経営やマーケティングに悩みを抱えている方がいらっしゃるとしたら、この部分を再確認することが有効かもしれません。

    パーパスと、企業/ブランドの未来

    パーパスへの注目は、社会の大きな地殻変動

    「パーパスという考え方、あるいはパーパス・ブランディングは、日本でも定着するでしょうか?」
    日本でパーパスという言葉がまださほど普及していなかった頃、企業の方々とお話をする機会や取材の場で、このような質問を受けることがありました。

    グローバルな視点から言うと、当時欧米では、パーパスを重視するトレンドが既に十年以上続いており、企業の経営やブランディングの大前提として定着していました。また、先にご紹介した、パーパスが注目される三つの文脈を見ても、組織経営の文脈、サステナビリティの文脈については、いずれも多くの日本企業が抱えている課題だったことから、日本でも欧米と同じ道筋をたどることが予想される、というのがその時の私の結論でした。

    そして今、企業各社の取り組みを見る限り、パーパスは日本でも定着した、と言えるのではないでしょうか。(もちろん、各社がパーパスという英語名称をそのまま用いているか否かはさほど重要なことではありません。)

    そしてこれからは、定着の次のステージに移行していきます。「どうすれば、パーパスを企業やブランドの“強さ”につなげることができるのか?」のステージです。実はこの領域で先行してきた欧米企業も、今の日本企業と同じ岐路にたっているとの話も聞きます。企業それぞれの信念の強さと戦略性と胆力が試されるステージだと言えるでしょう。

    パーパスをどう受け止めるかで、企業/ブランドの未来は変わる

    さて、ブランディングの文脈についてはどうでしょうか。商品ブランドのマーケティング担当者が最も迷うのは、パーパス・ブランディングが今後日本で評価されていくのか、ということかもしれません。

    パーパス・ブランディングは、パーパスを起点にそのブランドと社会・顧客との関係を強化していくブランディング手法です。先行する欧米で様々な事例が登場し、日本でも注目を集めてきました。が、文化的背景が異なることもあり、欧米のアプローチをそのまま日本に持ち込んでも必ずしも成功するとは限らない、として日本では躊躇する声も聞かれます。

    また、欧米、日本を問わず全般的に「パーパス・ブランディング=ソーシャル・グッドなキャンペーン」と短絡的に捉える傾向が見受けられますが、そのような捉え方が、特に日本でのパーパス・ブランディングの可能性を狭めてしまっていることも考えられます。(注:ソーシャル・グッドな施策自体はすばらしいものであり、ここでそれを否定する意図はありません)

    が、そもそもパーパス・ブランディングは、国や文化に関わらず、生活者一人ひとりが人間として抱くごく自然な感覚に基づくブランディングです。社会の一員として生きる生活者の心のツボを丁寧に探り当て、そのツボの押し方を慎重に調整しながら、共感を得る。それを通じて、生活者と企業/ブランドが人間対人間の深い関係を構築する---パーパス・ブランディングは人の心の機微への理解と、その人が暮らす社会の現状や課題に対する深い洞察をかけあわせ、緻密な戦略設計を行う、プランニングノウハウの塊です。成功すれば、これほど生活者の心に響くアプローチはないといえます。

    パーパス・ブランディングは今後ブランディングの基盤として定着していくものだと捉え、能動的に挑戦を続けることが、その企業やブランドへの社会的評価と顧客からの共感や愛着へとつながっていく、そう考えた方がよいのではないでしょうか。

    パーパスという考え方の登場は、資本主義、企業経営、マーケティング、いずれの位相においても、大きな地殻変動の始まりと見るべきだと私たちは考えています。数年程度の間隔で、注目度合いの変化や揺り戻しなどはあるでしょうが、長いスパンで振り返った時に「ああ、あの時、潮目が変わったよね」と語られるであろう時代の分水嶺、それが今ではないかと思います。

    次回の「パーパス」ミッション・ビジョン・バリューとの違いを解説では、パーパスが企業/ブランドにもたらす新しい視点や発想について、ご紹介したいと思います。

    なお、このような考え方を踏まえて開発した『電通パーパス・デザイン』については、こちらでご紹介をしておりますので、ぜひご覧ください。

    出典
    ※1:ユニリーバ・ジャパン「会社情報」
    ※2:ジム・ステンゲル著『本当のブランド理念について語ろう』(阪急コミュニケーションズ刊行 2013年)

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