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    思想への共感がPRMのカギに HubSpotが実践するパートナープログラムとは

    最終更新日:2023年06月19日

    思想への共感がPRMのカギに HubSpotが実践するパートナープログラムとは

    INDEX

    HubSpot は、「インバウンド」の思想に基づいたマーケティング・営業・カスタマーサービスを支援するクラウド型CRMプラットフォームを提供するグローバル企業です。2016年の日本法人HubSpot Japan設立をきっかけに、国内でもシェアを拡大。その背景には、PRM(Partner Relationship Management)にもつながる、優れたパートナープログラムの存在がありました。HubSpot Japanはどのようにパートナー開拓を進めて来たのでしょうか。また、パートナー開拓成功のポイントはどこにあるのでしょうか。HubSpot Japanのパートナープログラム責任者を務める、杉江昂さんに聞きました。

    連載第1回第2回はこちら

    PROFILE

     
     

    日本市場におけるニーズ多様化に合わせてパートナー制度も変化

    梅木:まず、HubSpot Japanの現パートナープログラム誕生の経緯を教えてください。

    杉江:現在、日本では「Solutions Partnerプログラム」を展開しています。元々は「Agency Partnerプログラム」という名前で2010年から2020年まで展開していたものです。

    Solutions Partnerプログラム

    当初、HubSpotでは「Marketing Hub」というMA(マーケティングオートメーション)ツールのみを展開していました。したがって、「Agency Partnerプログラム」もエンドユーザー様にツールを使いこなしていただくことを目的とした、マーケティングエージェンシーの方々に向けたパートナー制度になっていたんです。

    ところが最近では、エンドユーザー様のニーズがマーケティング領域にとどまらなくなってきました。それに伴い、弊社サービスの領域も、CRM(マーケティング・営業・カスタマーサービス)全体にまで広がっていきました。

    エンドユーザー様がこうしたサービスを求めるようになったため、2020年から現在の「Solutions Partnerプログラム」に名称を変更し、それまでのマーケティングエージェンシーの方々にとどまらず、システムインテグレーターをはじめ、さまざまな業種の企業様もパートナーとして迎え入れられる体制に変わったという流れです。

    営業のバッティングが起きない仕組み

    パートナープログラムについて、パートナーからどういった声が寄せられていますか。

    杉江:非常に嬉しいことにポジティブなお声をいただくケースが多いです。パートナー様は、取引期間を通して20%のコミッションを得られるほか、専任担当者による技術面およびビジネス面の支援といった特典を受けられます。制度自体にお褒めの言葉をいただくこともありますし、サポート体制に対していただくこともあります。

    また、弊社の販売チャネルは、弊社直販とパートナー様経由に分けられますが、直販とのスムーズな連携、つまり営業の「すみ分け」に好意的なフィードバックをいただくことも多いです。

    営業の「すみ分け」について、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。

    杉江:一般に、パートナープログラムで問題になりがちなのが、パートナー様と直販の営業担当者とのバッティングです。HubSpotでは、エンドユーザー様に良い購買体験が提供できるよう、この事象が可能な限り起きないような仕組みを作っています。
    具体的には「リード登録」という仕組みを通じて、誰が主に営業活動を進めるのかを決めています。

    パートナー様がお持ちのHubSpotアカウント内から営業先のリード情報を登録し申請をしていただくのですが、そのリードに直販の営業担当者がついていない場合には、申請したパートナー様が営業担当として登録されます。したがって、直販の営業担当者は営業活動ができなくなります。
    一方、もし直販の担当者が既についている場合、パートナー様はリードの登録ができません。その際にはパートナー様から弊社のパートナー営業担当者に連絡をいただき、社内で直販担当者と商談状況を確認し、その後の進め方を決めています。

    エンドユーザー様がどういう進め方を希望されているか、どういう形が最適なのかによって判断しているため、直販で商談が進んでいる場合であってもその後のプロセスを全てパートナー様にお任せすることもありますし、共同で提案をすることもあります。

    販売と管理の二面でパートナーを評価

    梅木:どうすればパートナーになれるのでしょうか。

    杉江:「Solutions Partnerパッケージ」をご購入いただき、条件を満たすことでパートナーとして加盟できるようになっています。条件は、パートナー様自身によるHubSpotソフトウェアのProfessional以上のプランご契約で、これとは別にオンボーディング(教育・訓練プログラム)の費用も必要となります。

    梅木:パートナーのランクはどうやって決まるのでしょうか。

    杉江:2つの軸で基準を設けています。一つはパートナー様に直近12か月間で販売していただいたHubSpotライセンスの合計金額です。もう一つは、そのパートナー様が管理されているアカウントの総額を評価基準として設けています。つまり、販売+管理の金額でランクを決定しています。

    梅木:販売と管理の二つのうち、割合的にはどちらを重視されているのでしょうか。

    杉江:パートナープログラムのランクは、「ソリューションパートナー」「ゴールドパートナー」「プラチナパートナー」「ダイヤモンドパートナー」「エリートパートナー」の5段階です。販売と管理の両方の基準をクリアしないと、ランクが獲得できない仕組みです。どちらかが突出していても、片方が足りなければランクがつきません。販売と管理の双方を重視している形です。

    パートナープログラムのランクは「ソリューションパートナー」「ゴールドパートナー」などの5段階

    梅木:パートナーがランクを獲得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

    杉江:弊社のマーケティングブログに優先的に掲載させていただいたり、イベントに優先的に案内させていただいたりといった特典が受けられます。

    しかしながら、これら以外のメリットも大きいと考えています。たとえば営業プロセスにおいて、パートナー様がどのランクにいるのかという点も、結果に影響を及ぼすでしょう。

    また、パートナー様から売上や従業員が増えたという声をいただくこともあります。ランク獲得は、パートナー様の自社ビジネスの成長に繋がり得るものだと考えます。

    「キックオフコール」でゴールを設定

    梅木:パートナーはHubSpotについてどうやって学ぶのでしょうか。

    杉江: HubSpotの考え方や概念、製品の細かいコンセプトや概要に関しては「HubSpotアカデミー」というオンラインで受講できる無料のコースを用意しています。現時点では日本語で提供できているコースは限られますが、これをご自身で学んでいただくというのが一つの方法になります。

    HubSpotアカデミーのトップページ

    また、運用面やお客様への提案など、より具体的な話については、弊社の営業とサービス担当が支援させていただいています。具体的には、直接トレーニングや勉強会、事前のすり合わせも含めたミーティングなどです。

    梅木:オンボーディングプロセスにおいて大事にしている部分はどういったところでしょうか。

    杉江:最初のゴール設定を大事にしています。オンボーディングプロセスについては、我々が重視する「キックオフコール」の中で決定します。キックオフコールは、HubSpotのパートナーとして、具体的にどういう目標があって今後どうしていきたいのかを、最初の段階ですり合わせる機会です。

    最初にお互いゴールを決めて、そこからオンボーディングプロセスを細分化していきます。ゴールについて共通認識がなければオンボーディングはうまくいきません。ゴール設定がカギになるのです。

    思想への共感が成功のポイント

    梅木:パートナー開拓成功のポイントを教えてください。

    杉江:大きく2つあります。まず、弊社のカルチャーコード「SOLVE FOR THE CUSTOMER」の共有です。単なる顧客満足度の枠を超えて、顧客を喜ばせるために努力するという弊社のカルチャーを表したものです。エンドユーザー様にとってのメリットは、パートナー様にとってのメリットにつながり、結果としてHubSpotにとってもプラスになると考えています。最終目標がエンドユーザー様の成功であるという共通認識がなければ、パートナープログラムもうまく回らなくなるのです。

    HubSpotが提唱する「インバウンド」の概念図

    次に、弊社の思想に共感してもらうことです。弊社はソフトウェア会社なので、ソフトの販売に取り組んでいるわけですが、単にツールを導入することをユーザーにお勧めしているのではありません。インバウンドという思想を提唱し、その思想を実現するために最適なソフトウェアがHubSpotであるというスタンスなのです。

    したがって、HubSpotが会社として何を実現しようとしているのか、パートナー様にはその方向性を明確にお伝えすることを意識しています。共感してくださったパートナーの皆様は、自信を持ってエンドユーザー様に提案できます。すると結果にもつながってくるのです。思想への共感は、パートナープログラムの核となる、非常に重要な部分だと思います。

    梅木:最後に、パートナープログラムはHubSpotになくてはならないものでしょうか。

    杉江:間違いなくそうですね。この数年間で製品のラインナップが増えました。それに伴って、エンドユーザー様の要望も増えてきており、プロダクトの機能追加などを進めています。営業や導入プロセスについて、パートナー様がいなかったらうまく進められなかったであろうケースも増えています。こうしたケースは今後も増えるでしょう。これからもパートナー様とともに、エンドユーザー様の成功に貢献していきたいです。

    取材後記

    「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という近江商人の精神「三方よし」に、「パートナーよし」を加えて「四方よし」という言葉が頭に浮かんだ取材でした。これまでに事業主、代理店、メディア、コンサル、プラットフォーマーなど様々な業種の取材をしてきましたが、HubSpot杉江さんのお話にあった「パートナー様と自社の直販の営業チームとのバッティング」については、販売パートナーと連携をすることが多いB2B企業の事業課題としてよく話題になるテーマです。

    パートナーとの連携がしっかりと仕組み化されておらず、フェアな協業関係ができてない場合、必ずと言っていいほどこの問題にぶつかります。すると、パートナーは積極的に販売することをやめてしまいます。今回、HubSpotのパートナープログラムの仕組みをうかがって、とてもフェアで納得できる「エコシステム」が実現できていることに感銘を受けました。マーケティングオートメーションというDXツールは、買収合併を含めた統廃合のサイクルが非常にスピーディーな業界です。

    そんな中にあって、HubSpotがなぜ世界でシェアナンバーワンを維持し続けているのか。それは、販売パートナーを大事にするという思想が、仕組みだけではなく、HubSpotという会社を構成する社員の根底にあるからだと感じます。取材をさせていただいた杉江さんの笑顔での受け答えが、とても印象に残っています。心からパートナーを大事にしていることが伝わってくる取材でした。ありがとうございました。

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    ※出典:https://www.datanyze.com/market-share/marketing-automation--3

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