近年、マーケティング施策におけるデータ活用の重要性が大きくなる中、大手プラットフォーム事業者が提供するデータ分析環境「データクリーンルーム」に注目が集まっています。
電通グループでは他社に先駆けいち早くこの仕組みに注目し、大手プラットフォーム事業者各社のデータクリーンルームを「横断」して分析することができる独自のソリューション「TOBIRAS(トビラス)」を開発・提供しています。
本ブログでは、「TOBIRAS」のご説明とともに、その活用事例をご紹介します。
PROFILE
INDEX
そもそもデータクリーンルームとは?
プライバシー保護とデータ活用を両立する“無菌室”
本題に入る前に、「そもそもデータクリーンルームって何?」という方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にご説明します。
データクリーンルームとは、プラットフォーム事業者が提供するクラウド環境で、自社データとプラットフォーム事業者や第三者企業が持つマーケティングデータを安全に連携しながら、「顧客分析」「広告配信」「効果測定」を行う仕組みです。購買データなど多様なデータと組み合わせることができ、個人情報を特定しない形で分析を進められる点が特徴です。その名の通り、データを扱う“無菌室”のような環境を提供し、プライバシー保護とデータ活用を両立します。
近年、ユーザーのプライバシー保護意識の高まりを受け、各国で個人情報保護のルールを厳格化する動きが進んでいます。並行して、GoogleやAppleをはじめとしたプラットフォーム事業者も、Cookieやモバイル広告IDといった、従来利用されてきた個人識別子の利用制限を開始しました。そのような背景の中で、「プライバシー保護」と「マーケティングROI」の両立を支援するソリューションとして、データクリーンルームに注目が集まっています。
データクリーンルームについて、もう少し詳しい情報を知りたい方はウェブ電通報のこちらの記事もあわせてご確認ください。
データクリーンルームの活用における3つの課題
そんなデータクリーンルームですが、実際に活用しようとしたときに、プラットフォーム事業者ごとに仕様が異なっているため、集計・分析作業の過程で以下3つの課題がありました。
① データ連携を実行する際に、会社や組織をまたぐため、安全に一元管理することが難しい
② 異なるデータ環境をつないで統合分析を行うため、作業負荷が大きい
③ プラットフォーム事業者ごとに分析定義が異なるので、横並びで比較することが難しい
これらの課題を解決するために電通グループが開発したソリューションが「TOBIRAS(トビラス)」です。
独自のデータクリーンルームソリューション「TOBIRAS」
複数のデータクリーンルームを横断した分析・活用が可能に
「TOBIRAS」は、複数のデータクリーンルームの横断分析を可能にすることで、顧客分析から広告配信、効果測定まで、「ID(人)単位の統合マーケティング」の実現をワンストップで支援するソリューションです。
データクリーンルームという高い専門性を必要とする環境に、安全性と技術力を持つ「扉」をつけることで、新たなマーケティングの可能性を広げたいという思いを込めて開発しました。
複数のプラットフォーム事業者が持つデータクリーンルームに対して、データの転送・集計を行うことができる独自の業務システム「TOBIRAS CONNECT(トビラス コネクト)」を通じて、データの分析を一元的に「安全」かつ「迅速」に実行。
さらに、データクリーンルーム取扱いの先行者である電通ならではの豊富な実践知による「補正ロジック」を提供することで、各データクリーンルームの分析結果を横並びで比較・活用することを可能にしました。
※HAKONIWAはデータクリーンルームではなくLINEヤフー株式会社との業務委託契約に基づいた共同分析プロジェクトです
あらゆる課題に対応する支援体制と豊富な実績
TOBIRASの強みはこれだけではありません。
● 多彩な「関連プロダクト」
電通グループでは、TOBIRASを通じてご提供するデータクリーンルームソリューションを、「TOBIRAS関連プロダクト」としてご提供しており、自社のマーケティングの目的や課題に合わせて活用できるソリューションをご用意しております。
● 「専門性の高い人財」による支援
電通グループには、データサイエンスとデータ・エシックス(倫理)の専門性を兼ね備えた「認定アナリスト」が400名以上在籍しています。統計や機械学習に関するデータサイエンスの専門知識や実務経験に加え、法令順守の視点や、データ利活用が生活者にとって有益な内容となっているかを見極める顧客体験の視点などの専門性を兼ね備えた認定アナリストが、貴社のマーケティング変革をご支援いたします。
● 豊富な「実績」
電通グループは、欧米でCookieの活用が制限され始めた2016年からデータクリーンルームに着眼し、世界に先駆けて各プラットフォーム事業者のデータクリーンルームの「先行開発パートナー」として、利用ライセンスを獲得しています。これまで、2,000件以上の分析結果やソリューションを企業のみなさまにご提供しており、それらの実績に裏付けされた盤石なシステムと各プラットフォーム事業者との間に築き上げた信頼関係は大きな強みとなっています。
グローバルの対応も推進中
2024年11月には、グローバルでのサービス提供内容について公式に発表いたしました。(広報リリース「電通、データクリーンルーム活用ソリューションをグローバルでも提供開始」)現在、「TOBIRAS global」の開発(β版をEMEA、APAC、US地域にてローンチ)、各エリアに合わせた個別のデータクリーンルーム活用コンサルティングのご提供、OEMサービスの準備を進めております。
これらのサービスは、2026年までに順次提供を行っていきますので、グローバルでのご活用もぜひご相談ください。
「TOBIRAS」の詳しい情報はぜひeBookで!
まだまだお伝えしたいポイントはございますが、活用のメリットなどより詳しい内容は、既に公開しているeBook「事業成長を支援するID単位の統合マーケティング基盤 TOBIRAS」でご紹介しております。関連プロダクトの詳細についても解説しておりますので、ぜひあわせてご一読ください。
「TOBIRAS」活用事例
ここからは、TOBIRASを活用して、課題解決・事業成長につながった事例を2つほどご紹介します。自社でのご活用イメージにつながれば幸いです。
金融系クライアント様:媒体横断の意識指標分析
ある金融系クライアント様は、テレビ、デジタルOOH、Meta(Facebook、Instagram)、TVer、YouTube……と、オンとオフにまたがる多数の媒体に広告出稿していました。そのような中で、特に、生活者の意識変化を捉える指標を横並びで評価できていないという課題がありました。
そこで、TOBIRAS関連プロダクトである「態度変容・好意度リフト分析」を活用し、「ターゲット含有率」「意識指標リフト」の2つを効果測定の指標に設定し、横並びで評価を行いました。
まず、アスキング調査でKPIとなる指標項目を聴取後、TOBIRASを活用し各媒体の広告接触者データと突合。そこから、調査で定義したターゲットの含有率と、広告施策による意識指標リフトを算出し、媒体横並びで効果を可視化しました。
結果として、効果の高い「キーメディア」の選定ができ、どのタイミングでどの訴求の表現にするかという、より詳細な打ち手の検討に時間をかけることが可能となり、成果の拡大につなげることができました。
飲料メーカー様:「実購買」指標での施策評価
ある飲料メーカー様は、複数のクリエイティブを使い、媒体横断でデジタル広告を展開していたのですが、それらが「実購買」につながっているのか、効果を明らかにしたいという課題がありました。
そこで、TOBIRAS関連プロダクトである「購買リフト分析」を活用し、TOBIRASの環境下で「Ponta」の購買データと各データクリーンルームを突合。広告接触者と非接触者の購買リフト率と、クリエイティブ別の購買率の2軸で分析しました。
結果として、広告による購買リフトの寄与がデータで明らかになり、またコンテンツタイアップ型のクリエイティブの表現が購買率の向上に寄与していたことがわかりました。それにより、訴求タイミングに合わせた広告予算の強化や、コンテンツタイアップ施策の継続判断につながり、メディアプラニングの最適化が実現できました。
「事例集」では8つの活用事例を「図」も交えてご紹介
以上、2つの事例をご紹介させていただきましたが、「テキストだけだとなかなか仕組みがイメージしづらかった……」「もっとたくさん活用事例を知りたい……」という方もいらっしゃるかと思います。そんな方には「TOBIRAS関連プロダクト活用事例集」をご用意しています。
ぜひダウンロードしてみてください!
活用事例集では、上記2つの事例を含めた計8つの活用事例を、わかりやすい図も交えて解説しています。課題・業種別のINDEXもご用意していますので、近しい課題や業種から事例を探していただくこともできます。
データマーケティングの重要性がますます高まる中、扱うべきデータは増え続け、より複雑になっています。マーケティング施策の効率化や効果検証でお悩みの際には、ぜひ一度「TOBIRAS」の活用をご検討いただけますと幸いです。気になる点やご不明点がありましたら、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。