「サステナビリティ」という言葉が、環境問題に限らず経済や企業活動を語るうえでも当たり前のように使われる昨今。ビジネスへの実装をどう進めていけばよいか、お悩みの企業も多いのではないでしょうか。その大きな足がかりとなるのが、「サステナブルカスタマー」という新たな顧客セグメントに着目したマーケティングです。「サステナブルカスタマー」とはどんな人たち? マーケティングにどう活用する?電通ライブのサーキュラー・エコノミー統括の堀田がお話しします。
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サステナビリティの実現に、マーケティング視点がますます重要に
ビジネス実装、考えるのは誰の仕事?
「サステナビリティのビジネス実装」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか? リサイクル素材やバイオ素材の活用、製造工程におけるエネルギーやCO2排出量の削減、素材のロスや廃棄物の削減……。こうした取り組みによって既存のビジネスモデルの環境負荷を減らすことは、サステナブルな事業実践の基本です。それに加え、製品を廃棄することなく回収してリサイクルするサーキュラー・エコノミーを構築し、製品を売るだけにとどまらない“サービス型のビジネスモデル”へとダイナミックに転換を図る方法もあります。
これらは一見、R&Dや商品開発担当、あるいはサステナビリティの専任組織や経営戦略領域を担当する方々が中心になって担う仕事のように思えます。しかしサステナビリティのビジネス実装において決して疎かにできないのが、実はマーケティングの役割です。具体的に言うと、「適切なセグメンテーションとターゲティングを行い、深い顧客理解に基づき人々の心と行動を動かすこと」がとても重要になります。
顧客理解なくして、サステナビリティは成立しない
その理由は、サステナビリティのビジネス実装が生活者の意識行動変容なくして成り立たないからです。素材や工程の切り替えによりコストが上昇した場合、生活者の強い納得や共感がなければ継続購入していただくことは難しいですし、サーキュラー・エコノミーは生活者の回収活動への参加がなければ循環しません。どうしたら市場や人の心が動き、行動につながるのか。マーケティングの原点とも言えるこの視点が、サステナビリティのビジネス実装の成否を左右するのです。
では、そんなサステナビリティのビジネス実装において、マーケターが注目すべき顧客セグメントとは一体どういったものでしょうか? その答えとして、電通では「サステナブルカスタマー」という顧客セグメントに大きく注目しています。
マーケティングの鍵を握る「サステナブルカスタマー」とは?
ロイヤルティと回収・リサイクル参加意欲を併せ持つ、新たな顧客セグメント
サステナブルカスタマーとは、電通が一般生活者を対象に実施している調査データから導き出した、SX(サステナブル・トランスフォーメーション)時代を象徴する顧客セグメントです。下図のように「購入継続性」と「回収・リサイクル参加」という2つの軸で顧客をセグメンテーションした際、購入継続性が高く、回収・リサイクルにも積極的に参加するセグメントをサステナブルカスタマーと定義しています。
「再生プラスチック使用」は、サステナブルカスタマーにとって大きな価値
私たちが2023年から定期的に行っている「サステナブルカスタマー調査」では、サステナブルカスタマーは市場全体の約2割を占め、「価格が高くても環境に良い商品を選ぶ」傾向が他の顧客セグメントよりも強いことが明らかになっています。
例えば最新の調査(※)では、サステナブルカスタマーの過半数(53.7%)が「再生プラスチックが使用されていることが商品購入の後押しとなる」と考え、これは全体(36.6%)より17.1ポイント高い結果です。コストアップの要因になりかねない「再生プラスチック」も、サステナブルカスタマーにとっては“価値”になる。つまり、サステナブルカスタマーに向けて上手くアプローチできれば、コストアップで商品価格もアップしたとしても継続的に購入してもらえる要因になり得るということです。
※第3回「サステナブルカスタマー調査」(2024年10月実施)より
電通、第3回「サステナブルカスタマー調査」を実施 - News(ニュース) - 電通ウェブサイト
また、リサイクル活動・回収活動への参加動機に関する質問では、全体では「共通ポイント」「商品クーポン」といった金銭的インセンティブが上位となる中、サステナブルカスタマーは「回収結果」「CO2削減量」「寄付」といった社会貢献を実感できる非金銭的インセンティブも重視する傾向が見られました。
このように、リサイクル活動・回収活動への積極的な参加と継続的な購入という社会貢献性と事業性の両立に貢献する、高いポテンシャルを秘めたサステナブルカスタマー。この顧客セグメントにフォーカスしたマーケティングを実施し、意識と行動をさらに高めていくことは、サステナビリティのビジネス実装をドライブさせる大きな力になるはずです。
【必読】サステナビリティ経営&サステナブルカスタマーまるわかり解説
サステナブルカスタマー調査データeBook
ビジネス実装のカギ「サステナビリティ・マーケティング」
サステナビリティをビジネスに実装する マーケター3つの切り口
では、企業のマーケティングやプロモーションの担当者にとって、具体的にどのような打ち手が考えられるでしょうか。私たち電通グループでは3つの切り口があると考えています。
その3つとは、「マーケティング戦略に取り入れて実行する」こと、「顧客体験を設計して企画に活かす」こと、そして「プラットフォーム構築を促進する施策に取り組む」ことです。
切り口1 【マーケティング戦略策定に取り入れて、実行する】
ひとつめは、マーケティング戦略を立案する際に、各市場におけるサステナブルカスタマーの実態やニーズをしっかりと分析し、戦略策定に取り入れるという切り口です。サステナブルカスタマーの獲得・育成・コミュニティ形成を通じて、持続可能な関係性強化を図る戦略を考えることができますし、自社独自のポジショニングやKPIの策定も可能になります。
電通グループでは、こうした取り組みを支援するために「CE(サーキュラー・エコノミー)マーケティングプログラム」と名付けたサービスをご用意しています。上記の切り口から企業や商品のマーケティング戦略策定に伴走するとともに、具体的な商品開発やビジネスモデル転換までご支援することが可能になっています。戦略策定から実行まで、一気通貫で支援する統合プログラムです。
切り口2 【顧客体験を設計して、企画に活かす】
2つめの切り口は、イベントやプロモーションなどの企画を考える際に、サステナブルカスタマーの創造や育成を狙った施策を立案・実施して、自社のファンを増やしながらサステナビリティをビジネスに実装していく方法です。
データに基づいてサステナブルカスタマーのインサイトを浮かび上がらせ、顧客がサステナビリティ活動に参加しやすくするための体験設計や、参加を促進するためのインセンティブ設計など、意識や行動を変容させる具体的な企画を立案・実施します。成果測定やフィードバックを繰り返すことで、より効果が持続するモデルを確立することができるようになります。
電通グループでは、この取り組みを支援するサービスとして「CEエクスペリエンスプログラム」をご用意しています。電通の独自調査から浮かび上がったサステナブルカスタマーのインサイトに基づいて、イベントやプロモーション体験設計、インセンティブ設計を行い、その実行・検証まで伴走します。
切り口3 【プラットフォームの構築を促進する施策に取り込む】
3つめは、企業と消費者をつなぐ回収・リサイクルのプラットフォームの構築につなげる切り口です。上記の1や2の切り口を実践しながら行うことがより効果的ですが、回収物や顧客行動をトラッキングし、「モノ」と「情報」が同時に循環する、サーキュラー・エコノミーを軌道に乗せる施策やしくみづくりに取り組みます。
電通グループでは、この取り組みを「CEプラットフォームプログラム」で支援しています。デジタル技術を活用して回収物や顧客行動をトラッキングし、「モノ」と「情報」が同時に循環する、サーキュラー・エコノミーを軌道に乗せる施策に伴走しています。
3つの切り口に共通しているのは、サステナブルカスタマーを精査し、その結果から得られたファクトや洞察をもとに、深い顧客理解に基づいて、彼らの意識行動変容の促進を図っていること。これはまさに「サステナビリティ・マーケティング」と呼ぶべき仕事です。広義のマーケター(マーケティングやプロモーションを担当する方々)が起案し実行する仕事そのものが、事業性と社会性を両立するサステナビリティのビジネス実装のカギになっていると言えるでしょう。
上記でご紹介した当社独自の各プログラムの詳しい内容は、無料のeBookでもご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
「サステナビリティコンサルティング室」にぜひご相談を!
ご支援にあたるのは、電通の「サステナビリティコンサルティング室」のメンバーです。マーケティングはもちろん、広告クリエイティブ、PR、デジタル・システム領域などさまざまな分野の知見を持つメンバーが集まった組織で、グループ内や社外の多様なネットワークも活かしながら幅広いフェーズで支援をご提供します。私が所属する電通ライブも密に連携しており、一貫したサービスをご提供いたします。
上記のプログラム以外にも、「まずは勉強会から始めたい」「長期的なアクションプランを策定したい」「一体何から手をつければ?」などさまざまなお悩みにお応えいたしますので、サステナビリティに関することならなんでもご相談いただければと思います。
時代ごとの生活者のインサイトや消費行動を調査し、向き合い続けてきた私たち電通だからこそ、ご支援できるマーケティングがあります。深い顧客理解と関係構築がますます求められるサステナビリティのビジネス実装に、ぜひ私たちの力をお役立てください。