
企業が取り組む事業変革において、昨今大きな潮流となっているのが「ソリューション企業への転換」です。企業の事業変革を支援する「Branding For Growth」チームメンバーが様々な企業にヒアリングを重ねる中でも、事業のソリューション化が大きなキーワードとして挙げられます。
この背景には、ただ物を売るだけでなく、顧客の課題に深く踏み込んだ価値提供が求められるようになったという市場変化があります。しかし変革への挑戦はしているものの、取り組みを事業成長へ結びつけられていないとお悩みの企業も少なくありません。
これまで6回にわたり「事業変革のためのブランディング」という考え方を整理してきた当連載。連載第7回の今回は、「ソリューション企業化」に向けた課題や道筋を整理しながら、その実装をご支援する「Branding For Growth」の体系的アプローチをご紹介します。
前回の2編はこちらからお読みいただけます。
→事業変革にブランディングの力を!⑤ ~どのような局面でどのように取り組むか(前編)|必要になる4つの局面とは
→事業変革にブランディングの力を!⑥ 〜どのような局面でどのように取り組むか (後編) |成功企業が実践する4つの型
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なぜ今、ソリューション企業への転換が必要なのか
そもそも「ソリューション型事業」とは何か?
近年、長きにわたり市場を牽引してきた老舗大企業を中心に、「既存事業だけでは持続的な成長が難しい」という危機感に立ち、単に製品やサービスを売るだけのビジネスから、顧客の課題解決を目指す「ソリューション型事業」への転換が模索されはじめています。
このソリューション型事業とは、実際にはどのようなものなのでしょうか。例として、ソリューション企業化に成功した2つの事例を見てみましょう。
設備販売を主力としていたある企業は、「生産効率の向上」という顧客成果に着目し、稼働データ分析や保守サービスを組み合わせた継続的な支援へと事業を拡張し、販売会社からソリューション提供企業へと進化しました。別の素材メーカーは、製品スペックで競争するのではなく、顧客の商品開発や研究開発プロセスに入り込むことで、「新たな価値創出」を支援するパートナーへの転換を果たしました。
両社に共通するのは、製品やサービスの先にある、生産効率向上や価値創出といった「顧客成果」に着目した点です。ここから言えるのは「ソリューション企業化とは、自社事業を、顧客が本当に達成したい成果の実現に責任を持つビジネスへと進化させていくことだ」ということです。

ソリューション型事業が求められる背景:3つの構造変化
こうしたソリューション型事業が求められる背景には、大きく3つの構造変化があります。
1. 市場そのものが「製品価値」だけでは差別化できなくなっている
技術進化やグローバル競争の加速によって、品質や機能は短期間で均質化し、多くの業界で、単体の商品価値だけでは競争優位を維持しづらくなっています。その結果、品質や機能の先にある「顧客はどのような課題解決に対価を支払うのか」という次元で、自社事業の価値を考えるようになってきているのです。
2. 業界構造が「単独競争」から「エコシステム競争」へ移行している
顧客課題が複雑化する中、単一製品だけで解決できるテーマは減少の一途です。また、スタートアップやプラットフォーマーが業界の垣根を越えて市場に参入し、競争相手も多様になっています。
こうした環境では、1社単独で顧客課題を囲い込むことは困難となり、他社の製品やサービスとの連携が重要になります。そのため、自ずと「顧客課題をどう解決するか」を起点に競争優位を考える必要が生じ、他社や外部パートナーを含めたソリューション設計力が求められるようになりました。
3. 既存事業の延長線だけでは成長が難しくなっている
構造変化は市場や競争環境だけではなく、企業内部にも及んでいます。特に老舗大企業では、長年成長を支えてきた既存事業が成熟期を迎え、需要の鈍化や組織の硬直化、過去の成功モデルへの依存といった課題が顕著になっています。これまでが「自分たちの売りたいものを売る」というビジネスだった企業は、停滞打破の活路を、「顧客の課題解決」という視点に立って模索するようになったのです。
ソリューション企業化を阻むもの
変革現場で発生しがちな失敗ケースとは
ソリューション企業を目指しても、製品に付加サービスを組み合わせるだけ、ソリューション事業部を立ち上げるだけ、PoCで終わってしまう…など、部分最適な取り組みに留まり、事業変革につながらないケースが少なくありません。
失敗ケース① 製品提案の延長線から抜け出せない
「ソリューション提案」を掲げながらも、実態は従来製品やサービスの抱き合わせ提案に留まっているケースです。根本的なところで「自分たちが売りたいものを売る」という発想から脱却できていないのです。
失敗ケース② 現場が疲弊し、変革疲れが起こる
経営層は変革を掲げる一方で、現場には従来型の売上目標も同時に課されます。結果として、現場は既存業務と新しい取り組みの両方を求められ、「何のために変わるのか」が見えないまま疲弊してしまいます。
失敗ケース③ 新事業部を立ち上げただけで終わる
「ソリューション事業部」を銘打った新組織や専門部署を立ち上げたものの、既存事業との接続が弱く、結果として社内で孤立してしまうケースもあります。組織を作ること自体が目的化し、顧客成果との接続が弱いため、事業として広がりません。
顧客成果起点を、組織の仕組みに落とし込む
これらすべてのケースに共通する根本的な原因は、「ソリューション型事業が何のために存在しているのかという点が曖昧なため、いつのまにか自社アセット起点で事業を設計してしまう」ことにあると我々は考えます。
まず「顧客成果起点」という視点について、「顧客成果」と「ソリューション」「サービス」といった言葉の関係を整理する中で改めて理解することが重要です。
また、営業、組織、KPI、評価制度、組織文化などが従来のままでは、現場は元の行動に戻ってしまい、事業のソリューション化が進みません。ソリューション企業化では、顧客成果起点という視点を、会社全体の仕組みへ実装することも必要になります。
顧客成果起点を、事業変革につなげる
顧客はドリルではなく穴が欲しい。では、何のために?
「顧客成果起点」ということを改めて理解するために、ここではセオドア・レビット博士のよく知られた「顧客はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しいのだ」という示唆から考えてみたいと思います。
顧客がドリルを買いに来たとして、顧客が真に求めているのはドリルではなく「穴をあけること」という結果・便益だ、というのがこの示唆の主旨です。
ここで「プロダクト」はもちろんドリルです。では「穴をあけること」は「ソリューション」でしょうか。ここで「何のために穴をあけたいのか?」「穴をあけることで何を達成したいのか?」を考えてみましょう。

ドリルで穴をあけることで顧客が本当に実現したいのは、「お気に入りの絵を飾る」あるいは「自分らしい空間をつくる」、「家族との思い出を感じられる場所を整える」ということかもしれません。私たちが言う「顧客成果」とは、「穴」の先にある、顧客が本当に実現したい変化や状態を指しています。
その状態(成果)を目指すなら、もはや「穴」すら手段の一つにすぎず、「穴」をあけなくても希望の変化や状態が実現できるかもしれません。つまり「穴をあけること」の支援は、「サービス」のレベルである、ということです。この違い・・・「成果」に対する、「サービス」と「ソリューション」との位置関係を正しく理解していないと、「成果」の実現ではなく、「成果を実現する手段の一つ」でしかないサービスを売ることが目的化してしまいます。知らず知らずのうちに「自分たちの売りたいサービスを売る」という従来型の姿勢に戻ってしまうのです。
「顧客成果起点」を会社全体に実装するための3レイヤー
次に、顧客成果を実現する企業になるためには、どんな成果を提供する企業になるのか(方向性)、その成果をどう事業として実現するのか(事業)、それを組織としてどう実践するのか(組織)という3つを一体で変えていく必要があります。ソリューション企業化とは、製品やサービスを増やすことではなく、この3つをつなぐ事業変革なのです。
電通が提供する「Branding For Growth」プログラム では、「価値定義」「事業設計」「組織実装」という3つのレイヤーで事業変革を進めることを提案しています。

① 方向性の再定義:ブランドアーキテクチャー
まず必要なのは、「何を売る会社か」ではなく、「どのような成果を生み出す存在なのか」を定義することです。製品の機能的価値の先にある、顧客や社会にもたらす変化を見つめなおし、自社ならではの存在意義として言語化していきます。
② 事業構造の再設計:事業価値デザイン
次に必要なのは、その価値を事業として成立する形に設計することです。
顧客が求める成果は、決して一つではありません。生産性向上、商品開発力向上、人手不足解消、脱炭素推進など、顧客が求める成果は多様。しかしそれらすべてに応えようとソリューションを闇雲に増やしても、かえって事業のまとまりを失うだけです。
「顧客のどの成果に責任を持つのか」を絞り込むことで、必要なサービス、パートナー、収益モデルが明確になります。ソリューション事業とは、製品やサービスの足し算ではなく、その成果を継続的に実現する仕組みとして設計されるべきものなのです。
③ 行動や文化の転換:習慣アクティベーション
どれだけ優れた価値定義や事業設計を行っても、現場の行動が変わらなければ変革は定着しません。顧客成果と組織行動が結びついて初めて、ソリューション事業は構想から実装へと進み始めます。
そして組織の行動を変えていくには、何を目指して行動するか、つまりKPIや評価制度の設計が非常に重要です。多くの日本企業では、評価制度やKPIは従来の売上中心のまま、というケースが少なくありません。新しい価値づくりに取り組むより、既存の商品・サービスを売った方が評価されるのであれば、現場が従来型の行動に戻るのは自然なことです。ここでもやはり、取り入れるべきは「顧客成果起点」。「望む成果をもたらすにはどのような組織や行動が必要か?」という視点から、組織・KPI・評価制度を再設計します。
ソリューション企業への変革を、Branding For Growthがご支援
ソリューション企業化のポイントまとめ
ここまで見てきたように、ソリューション企業への変革とは、単に製品にサービスを付加して販売することでもなければ、社内に新しいスローガンを掲げたり、組織や制度を変えた「ソリューション企業を目指す」という掛け声だけで実現するものでもありません。それは「方向性」「事業」「組織」を一体で変革していく取り組みです。だからこそ、部分的な施策ではなく、全体をつなぐ変革設計が重要になります。
定義・設計・運用まで、一気通貫で伴走
Branding For Growthでは、この考え方を「方向性の再定義」「事業構造の再設計」「行動や文化の転換」という変革プロセスとして体系化しています。構想を描くだけでなく、事業設計から組織への実装まで一気通貫で伴走し、ソリューション企業への変革を持続的な事業成長へとつなげます。
変革というと、社内に新しいスローガンを掲げたり、組織や制度を変えたりすることから着手しがちです。しかし、その前段での「顧客成果起点での価値定義」こそが、変革の成功を大きく左右します。
私たち電通Branding For Growthが得意とするのは、「定義・設計・運用」が一体となった伴走支援です。これまでとは異なる「顧客成果」視点から、自社の価値を捉え直し、事業と組織の在り方を一人ひとりの行動から変えていく。そのために必要なブランドマネジメントやアクションを、企業とともに考え、実行していきます。
事業変革を駆動しビジネス成長につなぐ、Branding For Growth 3つのプロセス

ソリューション企業への変革を構想で終わらせないために、Branding For Growthにぜひご相談ください。




