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      B2Bマーケティングの組織の課題と解決策とは?[後編]

      マーケティング後進国と言われる日本。特にB2Bにおいては、既存顧客からの売上が大きく安定しているので営業部が強く、マーケティング活動がおろそかになりがちでした。最近は、MA(Marketing Automation)などデジタルマーケティング技術の発展に伴い、B2Bマーケティングの役割が注目されるようになったものの、まだまだ根付いているとは言い難い状況です。現在のB2Bマーケティングの課題と、その貢献を最大化するためのソリューションについて、株式会社 Nexal 上島 千鶴氏に、株式会社電通 梅木 俊成がうかがいました。

      PROFILE

       
       

      マーケターはまずは営業部門で事業を知る必要あり

      梅木:前半では、B2Bマーケティングの現状を整理し、「マーケティング組織5世代モデル©」についてお話いただきました。さて、マーケティング部門から営業にリードを渡しているのに使ってくれない、営業から見るとマーケティング部門から渡されるリードが商談に使えない、というように2部門の間に壁があるということから、引き続きお話を伺いたいと思います。

      上島:巷では「営業とマーケティングの仲が悪い」と揶揄されますが、B2B企業の場合、喧嘩にもなっていない状況がほとんどですよ。喧嘩って同じ土俵に立って意見をぶつけ合うものですが、多くの企業のマーケは、営業や事業部長の指示で動く間接部門として見られ、社内での発言力が弱いのが実態です。

      また、B2Bマーケティングをテーマに講演する方も増えましたが、一部はデジタルマーケター向けのイロハの話であって、ビジネスマーケター相手ではないですよね。つまり、デジタルには詳しいけれど、現場でお客さまと直に折衝して、意思決定プロセスが複雑なモノやソリューションを売った経験がない人がB2Bマーケティングを語っている。WebマーケティングをB2Bマーケティングに置き換えただけでは、成果は出ません。

      数字責任を背負い、営業叩き上げの事業部長から見れば、机上の空論(デジタルだけ)で商材が売れるわけがない、という意識になってしまうのは普通の反応です。

      営業は長年売ってきた経験則から、このパターンは横展開できる、裏のキーパーソンはこのタイプだ、というような、ある意味右脳的な勘や感覚で動くところがあります。実績を積む営業は科学的にはうまく説明できないけれど、感覚として必ず「自分の型」や「習慣」を持ち合わせています。調査するとロジカルシンキングで驚くこともあります。

      一方でマーケターは理論やデータから入りますので、1か0の左脳的な発想に近くなります。マーケがデジタル脳なら、営業はフィジカル脳です。どちらがいい悪いではなく、両方掛け合わせると化学反応が起きます。

      梅木:僕はマーケティングの人と話すときに、営業の立場になってホットリード、MQL(Marketing Qualified Lead、営業に引き渡せる案件見込みリード)、SQL(Sales Qualified Lead、商談につながるリード)を考えましょう、と話しています。むしろ営業にどういうリードが商談化するのか、教えてもらうためにも、営業とマーケで新しいチームを作って一緒に動くと、リードの引き渡しがうまくいくと思います。

      商材にもよりますが、高単価で説明が複雑なものである商材であるほどコンテンツやホワイトペーパーだけで契約が決まることはありません。営業マンの説明があってはじめてクローズする商材であれば、この関係はなおさら必要です。マーケティングは、営業にインターンで入って何をやっているのかを学ぶくらいの覚悟が必要だと思っています。そしてこのDX(Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーションをやり切るために役員クラスの旗振りも重要ですね。

      上島:営業から見ると、商談化するか商談が進むかどうかはタイミングによっても違います。同じペインポイント(経営課題や業務課題)を持っているリードでも、決算期が近いのか、今期の業績見通しはどうか、人事異動があったのか、出資関係に動きがあるかなどで受注確度が変わります。商習慣を知らないと、営業にヒアリングしても上手に聞き出せないので、マーケティング部門に営業センスがある人が加わると、MQLが増えると思います。

      目標は売上の10%をマーケティングが獲得したリードから得ること

      梅木:上島さんの経験では、マーケティング部門のリードがどれくらいまで商談化すれば成功と判断できると考えていますか?

      上島:リードが商談化する転換率や割合は、リードの質やターゲティングの粒度にもよりますので、事業貢献度でお話しますね。企業の組織体制や仕組みによって変わりますが、あまり成果が出ていないという企業でも、展示会出展、セミナー、メルマガなどをアカウント単位で分析すると、およそ全体の1-2%の事業貢献は必ずあります。

      戦略を練ってデジタルでしっかり接点を作り、リードと関係を醸成してパイプライン管理すると、取組み3年目にしてマーケティング貢献度10%が平均値です。仮に10億円の目標を持つ事業体があれば、3年目にして1億円の受注に貢献できていなかったら、どこかに問題があるということです。

      梅木:実際の複数案件をベースに分析されていることからもマーケティング部門の売上全体の貢献度の指標として考えるのに参考になりますね。

      上島:経営層を説得するときにも、3年目に10%、10億円のうちの1億円の貢献といえば、DX議題として話を通しやすくなります。

      商材によってはMQLから受注に至るまで3−4年かかったり、出荷が伴うとERP(Enterprise Resource Planning、社内基幹システム)に入るのでマーケティング部門からは受注になったか判別できなかったり、ということもあります。そういう場合は、リードが営業に引き渡されて商談化したタイミングで、受注したらどれくらいになるのか換算するとよいです。商材単価が高いほど、検討期間が年度をまたぐことが多いので、MQLを金額換算するとおおよその売上の予測が可能になります。

      実務をシミュレーションする「リードビジネスゲーム」

      梅木:組織にB2Bマーケティングの理解がないとこのようなDXは推進が難しいです。またMAを導入したけれども、コンテンツの作り方がわからないというご相談は今も非常に多くいただくことがあります。つまり、ステムなどの「仕組み」を用意したけど、「誰に対してどのようなコンテンツを伝えるか」または「何を目的にどの部門のデータをどの部門のデータとつなぎ合わせるか」といった「仕掛け」がつくれない。言い換えると、手段と目的が逆転していることは本当に多いです。このような課題に対して適切な対策方法についてはどのようにお考えですか?

      上島:この図は一般的にも使われるラーニングピラミッドですが、B2Bマーケティングの場合、書籍、セミナー、人によってはビジネススクールなどを通して、知識は持っている人は多いんですよ。

      ラーニングピラミッド

      B2Bマーケティングでは、講義、読書、視聴覚を通して知識のある人は多い
      図参考:ラーニングピラミッドにおけるアクティブラーニングの効果

      しかし「自ら体験する」部分が不足しています。Nexalでも実践の場として伴走支援していますが、担当者にノウハウが溜まって「アハ体験」が生まれるまで、実際には1年くらいのプロジェクト期間がかかります。

      現在、クライアント各社で起きている状況として、上層部から「DXの一貫でデジタルマーケティングに取り組め!」という指示があり、マーケティング戦略など練ったことがない担当者だけで、いきなり実行しなければならないというケースが非常に増えています。

      しかし、全容が見えない中でスタートをすることは、車の構造や仕組みを教本で習って、いきなり路上で運転するようなもの。本来ならば、路上に出る前に運転のシミュレーションをする必要があると感じています。このシミュレーションする部分、つまり体験できる部分を1年間の伴走をせずに、担当者に知見を共有する方法がないかと、ずっと考えてきました。

      梅木:なるほど。このような状況に対してワークショップ型の実践プログラムを開発したということをお聞きしましたが、ご説明頂けますでしょうか。

      上島:はい。例えば、「前編」で紹介した「マーケティング組織5世代モデル©」の第一世代、第二世代から、MAツールを導入したけれど成果が出ないという相談を多く受けます。しかし、ツール以前に何をしないといけないのか、マーケティング全体の戦略を考え、ゴールに向けて施策を組み合わせて実行するという意識改革が必要です。Web、展示会、広告など、単体施策で考えるのではなく、限られたリソースで同じゴールに向けて何を優先させて実行計画を練るか、という意識を持っていないと、いつの間にか手段が目的化して成果が出ません。

      この意識改革に繋がる実践の場を再現したのがB2Bマーケティング実践プログラム「リードビジネスゲーム™」です。

      ロールプレイングゲームは参加者のレベルにあわせて「Basic」「Professional」の2種類のプログラムがあります。「マーケティング組織5世代モデル©」でいうところの第一世代、第二世代の方にはBasicが対象になります。

      BtoBマーケティング実践プログラム リードビジネスゲームTM

      BasicとProfessionalの2つがある

      Basicでは参加者は全員マーケティング責任者となり、限られたリソース(予算・人員)で、マーケティングの打ち手(施策)を組み合わせ、MQLの最大化を目指します。このロールプレイングの体験があれば、実務でも施策の優先順位付け、予算割当がわかるようになります。

      ゲームでは失敗してもいいので、自らの方針や施策をシミュレーションできるようにしました。Basicの場合は、MQLを創り上げるデマンドジェネレーション(見込み案件の創出活動)のプロセスを学ぶことに主眼を置いていますので、MQLの質までは問いません。

      どの施策(カード)をどのタイミングで、どういう組み合わせで打てば、リードやMQLが創出できるのかを体験してもらうもので、これからマーケティングを始める人、営業や事業部の人におすすめしています。

      Professionalは、「マーケティング組織5世代モデル©」でいう第三世代、第四世代向けで、参加者は事業責任者となり、限られたリソースでマーケティングを実行し、どのタイミングで MQLを誰に引き渡すかを考えて、売上最大化を目指します。ほぼ現場や実務と同じシミュレーションが可能になります。

      グローバル全業界平均 (iProspect調べ)

      リードビジネスゲームのプレイ風景

      一つ上の視点からマーケティングを俯瞰してみるために

      梅木:参加した人からは、どのような感想がありましたか?

      上島:「限られたリソースの中で、やるべきことの優先順位が見えた」「縦割り組織でも、全員が同じゴールを目指す意識が芽生え、社内の議論が活発になった」「マーケが何をしようとしているのか事業部(営業)の理解が進み、協力してもらえるようになった」といった感想をもらっています。

      大手企業になるほど、展示会担当、Web担当、MA担当というように、それぞれ担当が分かれていて、展示会あとの誘導シナリオがなかったり、広告配信して獲得したリードをいつ誰に引き渡すのかが不明確だったり、と連携できていないことが多くあります。その要因としては、自身の担当部分の最適化はできていても、チームで同じゴールへ向っているという意識が低いので、全体最適しようという視点が抜け落ちてしまうためです。

      そこで、今の業務から離れてロールプレイングゲームを体験すると、一つ上の視点に立って全体を俯瞰的に見渡し、同じゴールを目指せるようになります。マーケティング以外の事業部でも、ゲームを通してマーケが何をしているのか理解できますし、MQLを作るという共通言語で、同じゴールを目指していけるようになります。

      リードビジネスゲームで得られる成果は何か?

      梅木:私もゲームに参加しましたが、生きた研修プログラムだと感じましたし、何より楽しいのがいいですね。MAを導入するだけでなく、施策と施策をつなげて成果が得られることが疑似体験できました。事業部長クラスの方も参加されていて実施しようとすることの大変さを知ってもらうためにも非常に効果的なプログラムと感じました。電通としても、B2Bマーケティングの盛り上がりにともなって、支援の問い合わせが増えているので、リードビジネスゲームをより多くの人に知ってもらえるように、リセラーとしてご協力させていただきたいと思います。

      電通は、広告・ブランディングのイメージが強いですが、現在は事業支援の観点からB2B企業の業績向上のための組織構築支援やデジタルツール導入・運用支援など広告領域以外も含めてDXに力を入れています。Nexalの立場から、電通に期待することはありますか?

      上島:Nexalは、ファシリテーション型のコンサルティング会社であり、あくまで黒子として「私たちの知見を共有するので、社内で強い組織を作ってください」というスタンスです。長年の取引は考えておらず、学校と同じように3年間みっちりコーチとしてつきますが、3年後には卒業してもらう想定でプロジェクトに伴走しています。

      その3年間の中で、いろいろな方針策定、実行計画、シミュレーションを行い、それにかかわる教育や支援業務が発生します。社内人材で実行できない部分は、MA設定代行はこのベンダー、コンテンツはこの制作会社というように、業務ごとに外部パートナーに依頼しているのですが、このやり方だと窓口がバラバラになり、社内のマネージャーの業務負荷が高くなります。電通がプロデューサーの業務も含めて一緒にプロジェクトを推進してくれると、とても頼りになります。また裾野を広げるB2Bブランディングという視点では、方針は作れても私たちはソリューションを持っていませんので、電通の長年に渡る知見には非常に期待しています。

      梅木:電通は国内外に拠点があり、外資系B2Bの国内進出、日本国内B2B企業の海外進出などの実績もありますがブランディングという切り口が大半だったと思います。しかし国内外でのB2BのDX案件も増加する中、上島さんのような大手B2B企業のコンサルティング業務を経験されている方とB2Bマーケティング領域でタッグが組めることは非常に心強いです。

      上島さん、本日はありがとうございました。

      ※当記事は2020年7月15日時点の情報を元に記事を執筆しております。

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