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    ハイパフォーマーと人事戦略を考える|元リクナビNEXT編集長に聞くポストコロナ時代の採用のあり方とは?[後編]

    最終更新日:2023年06月19日

    INDEX

    ポストコロナ時代の採用はどのように行うべきか。
    前編に引き続き、電通でB2B企業のリクルーティング案件を手掛ける、梅木 俊成(うめき・としなり)が、「リクナビNEXT」の元編集長で、現在はルーセントドアーズ株式会社代表取締役の黒田真行氏に、採用市場の現状、ポストコロナ時代の採用について伺いました。
    後編は、ジョブディスクリプションについて、さらに深く追求していきます。

    前編はこちら

    PROFILE

     
     

    欲しい人材と出会う機会を生み出すためのオウンドメディアリクルーティングと、その基礎となる人事戦略。今回は、経営戦略と人事戦略のつながりのなかでジョブディスクリプションについて考えていきます。あわせて優秀人材が、職場や仕事に対して、どんな心理的な魅力因子に動かされるのかも探求したいと思います。

    経営を取り巻く外部環境変化

    バブル崩壊から30年余りが経ち、様々な「環境」が大きく変化している日本。ですが、日本企業の『経営』という面では根本的に手を付けられないままでした。近年テクノロジー革命の洗礼を受けて、ようやく変化せざるを得ない段階に入ってきています。

    特に大きな要素は、

    ●グローバル化
    ●デジタルテクノロジーの進化
    ●少子高齢化の加速

    の3つの変化です。

    これにより経営の観点では、

    ・海外市場におけるシェア獲得
    ・グローバルな人事組織制度の構築
    ・自社の競争力や優位性の再検証
    ・テクノロジーの進化への対応
    ・人口構成の変化への対応
    ・人生100年化に合わせた個人のキャリア支援

    などの再強化が求められています。

    これに連動する形で、人材戦略の優先課題も以下のようになってきています。

    ・グローバル成長を牽引する次世代リーダー人材の確保・育成
    ・それらの人材に期待するミッションの整理
    ・職務要件定義の再定義とジョブディスクリプションの作成
    ・イノベーション創出をリードする人材の獲得・育成

    これらの課題を、「採用・配置・育成・評価・報酬・代謝」という人事プロセスにどう織り込んでいくのか。経営戦略にもとづく求める人材像の設定や、ジョブディスクリプションへの反映も急がなければなりません。その前提として、人事戦略の舵を大きく切り直す必要が生まれています。

    人事戦略をいかに再構築するか

    人事戦略の立案について、従来、日本においては“守り”を軸に置いた戦略作りがなされてきました。

    個人の業績をもとに給与、賞与、昇格などを査定し、人材配置や労務管理を合わせて行うのが人事の主な業務で、定型的な業務も多かったことから、経営と切り離されて考えられることが多かった領域です。しかし、スピード感を持って経営戦略を肉付けしていくために、これからの人事のミッションは以下の3点に力点が置かれることになります。

    ・経営戦略実現に貢献する優秀人材の職務要件定義と人材像の言語化
    ・優秀人材の確保・育成のための手法開発
    ・経営戦略に紐づいた人事戦略実現のためのプロセスの磨き込み

    人事戦略の要は、「従業員全員が経営戦略の実現に向け最大限の力を発揮できること」が目的となります。それによって、「従業員の能力を活かせる仕事は何か」という観点に、人事の業務が集中していくことになり、経営戦略を実現するために人材をフル活用することにつながっていくはずです。

    人事戦略の構築パターンは個社性が強いものです。企業理念をあらためて明確化し、流行の方法論や他社の事例に惑わされないようにしながら進めていくのが王道です。人事戦略を機能的に運用するには、経営陣が企業としての中長期目標や経営戦略を全ての従業員に分かりやすく示す必要があります。企業目標が曖昧だと、どんな人材が会社に必要なのかが見えてこないからです。

    加えて、優秀な人材確保のために使える労働分配率の在り方、ニューノーマル時代の働き方や待遇、育成環境の整備など現行制度も検証しておくことをお勧めします。

    そして、これらすべてのことをジョブディスクリプションや、会社としての考え方、在り方を示すシェアードバリューコンテンツに反映していく必要があります。オウンドメディアを介した採用活動は、単なる人材募集ではなく、会社が目指している方向性やそこに向かうための戦略、また、従業員への考え方を、未来の従業員に開示するステイトメントの役割も担い始めています。

    外発的モチベーションの限界

    日本の企業ではこれまで、「給料が上がること」「上司から評価されること」「昇進・昇格」などのモチベーション刺激策をマネジメント上の重要ツールとして活用してきました。これらは会社の仕組みという外部からの刺激によって生み出されるものとして、「外発的モチベーション」と呼ばれています。

    しかし、外部からの刺激だけに依存することの限界も指摘され始めています。給料が上がった瞬間には当然、承認欲求が満たされ、「もっとがんばってさらに上を目指すぞ」という意欲の源泉になります。しかし、会社の業績がひとたび停滞し始めたり、本人がスランプに陥ったりなどした時には、給料が上がらないことが不満の種になり、仕事へのモチベーションが低下するリスクが高まります。給料を上げて新しい刺激を与え続けなければ、いつまでも不満がくすぶり退職の原因にさえなってしまいます。外部からの刺激は慣れてしまうと効果が希薄化し、さらに強い刺激を与えなければ満足できなくなってしまうのです。

    また、人間には一般的に、他人から指示されたり、束縛されたりすることを嫌う性質があります。逆に、自分の自由意思で行動を決めることができると思えると、自己効力感を実感し、モチベーションが強まります。こうした達成感や充足感からの喜びは、自主的な「内発的モチベーション」と呼ばれています。自己決定感とも呼ばれるこの刺激は、強い当事者意識を生むので強靭なものになりやすい傾向があります。

    内発的モチベーションから生まれた行動に対して外的報酬が与えられると、「好きだからやっている」という気持ちを阻害することになり、内発的モチベーションが弱まってしまうこともあるそうです。

    内発的モチベーションと外発的モチベーションをバランスよく発揮してもらえる人材をどう集め、成果につなげてもらえるかということも、ジョブディスクリプションの作成段階からスタートしています。

    心理的報酬を形成する「働きごこち」の魅力因子とは

    採用支援サービスは、エンジニアやスペシャリストなどを除くと、基本的には「買い手市場」の構造を基本に発展してきました。結果的に、メディアが企業の求めるターゲットに対して分類され、大量の採用情報がわかりやすいインデックスで検索できるように求職者に提供され、その求人に手を挙げた応募者群のなかから企業が候補者をピックアップしていくという考え方です。

    その際に提供されてきた情報コンテンツは、

    ・企業が求める職種
    ・企業が求める学歴・年齢
    ・企業が求める経験・スキル
    ・企業が与え得る給与・待遇
    ・企業が与え得る予定のポジション

    などの企業目線の情報が中心でした。

    しかし時代の変化とともに、求職者側の選職行動が変容し、可視化された金銭的報酬や、経験・スキルだけではなく、内発的モチベーションを刺激する心理的報酬を重視する傾向が強まってきました。この心理的報酬は、これまでかなり大雑把に「やりがい」という言葉で表現されてきたものと似ていますが、個々人の価値観や志向を分析していくと、非常に多様なものであることがわかってきました。

    2005年に行われた株式会社リクルート(現在の株式会社リクルートホールディングス)の調査によれば、個人が働くことに対して感じる「魅力因子」は、大きく分けて「仕事・職務についての魅力因子」と「組織・職場についての魅力因子」に分類され、それぞれ32項目、全64項目で構成されています。

    仕事・職務についての魅力因子

    組織・職場についての魅力因子

    大雑把に「仕事にやりがいがある」というだけではなく、さらに一歩踏み込んだ「働きごこちの魅力因子」を、職種別・配属組織別にジョブディスクリプションに反映することでさらに深いマッチングを目指すことが可能になります。

    ハイパフォーマーの魅力因子からジョブディスクリプションを言語化

    では、実際に、この魅力因子をどのようにジョブディスクリプションに反映させればいいのでしょうか。魅力因子を活用できる分野は幅広いのですが、ジョブディスクリプション作成において活用するには、社内で実際に好業績を生み出して活躍している好業績社員がカギになります。

    好業績社員の定義は、業界や職種、企業の価値観ごとに違いがありますが、自社の各部門において定義づけを行った後に、そのモノサシで上位に該当するハイパフォーマーを抽出し、まずは属性や経験・スキルなど可視化されうる共通点を把握した上で、その人たちへのインタビューを実施します。

    インタビューで得たい回答は大枠、以下の3つの観点です。

    ・仕事や職場に対して、どのような魅力因子を求めているのか
    ・仕事や職場において、どのような魅力因子を得られているのか
    ・その魅力因子は、どのような事実から生まれているのか

    これらを明確化させることで、マッチングのために「心理的報酬」を想起させる情報として活用しうる材料を入手します。

    好業績社員が求める魅力に対して充足度が高い項目は、まさにその仕事や職場の「働きごこち」の強み因子となり、それに紐づく事実をジョブディスクリプションに表記することで、よりマッチングの精度をベストに近づけることが可能になります。

    逆に、好業績社員が求める魅力に対して、充足度が低い項目は、仕事や職場の改善すべきテーマとなりえます。

    ほかにも、好業績社員がもともとは求めていなかったが仕事を通じて得られている項目は、意識していなかったが存在する魅力因子です。これは採用広報上の武器となるので、紐づく事実をもとに追加すべきコンテンツとして活用することも考えられます。

    報酬や学歴、経験、スキルといった可視化しやすい情報だけではなく、これまで目に見えにくかった、仕事や職場で得られる「働きごこち」の魅力因子を言語化し、事実情報と紐づけていく演繹的な方法は、多くの企業で実績を生み出しています。

    ぜひ進化系ジョブディスクリプションとして、豊かな情報でマッチングの精度向上を実現する参考にしていただければ幸いです。

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