「最近の若者は分からない」——そう感じる場面が、社内コミュニケーションやマーケティングの現場で増えていないでしょうか。
電通若者研究部「ワカモン」は、若者を単なる“世代”ではなく、「新しい価値観で行動する人たち」と捉えています。若者の価値観を読み解くことは、単なる若年層マーケティングではなく、“半歩先の未来”を理解することにもつながるのです。
本記事では、2026年4月22日に開催されたウェビナー「『イマドキの若者』が企業の未来を握る! ~関係構築のカギと未来仮説アプローチを徹底解説~」の内容を採録形式でお届けします。
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本当に、若者は難しい存在なのか?
「最近の若者は分からない」「価値観が違いすぎる」——そんな感覚はなぜ生まれるのか。ウェビナーの第1部は、社内・マーケティング現場で起きている“ズレ”の実態を解説するところからスタートしました。
独自調査から見えた“世代間ギャップ”
上運天:まず最初に、私たち「ワカモン」が2025年に行った若者意識調査の結果をご紹介します。
みなさんは、次のような問いに対して、どちらが今の若者の多数派だと思いますか?
Q1:若者は「平均点」と「飛び抜けた強み」、どちらを求めるのか?
A:すべてにおいて平均点以上の評価がほしい(仕事のスキル、人間関係、成果など)
B:1つだけでもいいから飛び抜けて評価されたい(仕事のスキル、人間関係、成果など)
Q2:若者は「成長機会」と「心の安定」、どちらを重視するのか?
A:成長はそこそこでも心の安定が保てる仕事を与えて欲しい
B:多少追い込まれても大きく成長できる仕事を与えて欲しい
Q3:若者は「本音を伝えたい」のか「状況に応じて本音を使い分ける」のか
A:相手から誤解されるぐらいなら自分の「本音」とは違う答えを伝える方がいい
B:相手から誤解されても自分の「本音」をちゃんと伝える方がいい
実はこうした設問に対して、多くの若者が「A」と答えています。私たちが継続して行っている若者調査でも、この“心の安定重視”や“状況に応じて本音が変わる”傾向は、継続的に見られており、特に“心の安定”は、今の若者を理解するうえでとても重要なキーワードになっています。
こうした意識を持つ若者たちと私たちの間で、どのような意識のギャップが生じているのか。それをつかむために、私たちワカモンは「先輩社員と若手社員の認識ギャップ」に関する調査を行いました。
すると、先輩社員側は、
「ハラスメントになるのが怖いので、できるだけ指導しないようにしている」
と思っている人が多い一方で、若手社員側は、
「必要な指導をもっとしてほしい」
「人生の先輩としての学びを教えてほしい」
と感じていることがわかりました。
お互いに気を遣いすぎてしまって、結果的に共に“物足りなさ”を感じている。そんな意識のズレが垣間見えます。
社内にもマーケティングにも存在する“認識のズレ”
中島:こうした“ズレ”は、社内コミュニケーションだけでなく、マーケティングの現場でも起きています。
例えば、「若者に効率良く情報を伝えるには、SNS広告を出せば良い」と考えてしまいがちですが、「若者にとって広告は“ノイズ”である」という前提を見過ごしてしまうと、単に情報が届いているだけ、という状態になってしまいます。また、PR施策については、「フォロワー数が多い」から信頼できるのではなく、「忖度がない」「正直なレビューである」といった、内容の“リアルさ”や“その人の熱量”が重視されています。
このように、マーケティングでは、若者にまつわる表層的なトレンドをもとに「若者はこういうものが好きなのだろう」と決めつけるのではなく、思い込みを排除して“本音は何なのか”を丁寧に見ていくことがとても大切になっています。
私たちは「若者ターゲットがどこにいるか」だけでなく、彼ら/彼女らをより深く理解し、「どういうアプローチなら受け入れられるのか」を考えていく必要があります。
「氷山の一角」を見るだけでは、若者は理解できない
工藤:若者を理解する上で、私たちが普段見聞きしている若者の言動は、水面上に見えている“氷山の一角”に過ぎません。その言動の背景には、
◯ 若者の価値観
◯ 成長背景
◯ 社会環境
◯ 情報接触体験
といった、さまざまな文脈があります。
にもかかわらず、私たちは表出している言動だけを見て、「最近の若者は分からない」と感じてしまっているケースが多いのではないでしょうか。
特に、若者価値観の理解において重要なポイントのひとつは、「本音が状況によって変化する」という視点です。例えば、環境問題への意識調査では、若者の関心度は高い結果になることが多いです。その一方で、実際の行動では「無理をしない範囲で」が本音になることも少なくありません。
これは決して嘘をついているわけではなく、「環境意識はあったほうが良い、実際にゼロではないし」と「こう答えた方がよさそう」という回答を用意してしまうからです。
若者を断片的な言動だけで理解してしまうとズレが生まれます。そのズレを乗り越えるためには、価値観や育ってきた時代背景まで含めて、彼ら/彼女らの“文脈を構造的に読み解くこと”が大切です。そして、断片的でない日常的な関係性の中で彼らの本当の本音をつかむことが大切です。
なぜ今、「若者の価値観」を紐解くことに価値があるのか?
第二部では、若者の価値観が社会全体へ波及していく構造や、“半歩先の未来”を読み解く視点について、若者価値観の理解が、単なる“若年層マーケティング”のためだけのものではないことを語りました。
若者は“未来の価値観”を先取りする存在
工藤:「若者価値観の理解」と聞くと、「若者向けの商品やサービスを扱う企業の話」と捉えられることも少なくありません。しかし、私たちは若者を単なる“世代”として捉えたり、“若者向けマーケティングのターゲット”として捉えるだけではなく、視点を変えることができればあらゆる企業にとって大きなチャンスを生むことができると考えます。
私たちは、若者を「新しい価値観で行動する人たち」として捉えています。
若者の中で起きている価値観の変化が、その変化ののち、他の世代や社会全体へ波及していくケースは数多くあります。私たちは、長年にわたる若者研究の中で、若者特有だと思われていた価値観や行動が、数年後に社会全体へ広がっていく変化を何度も見てきました。だからこそ、若者価値観の理解とは、単なる“若者向け施策”のためではなく、“未来の生活者理解”につながるものだと考えています。若者の価値観を読み解くことは、単なる若者施策ではなく、企業や社会の未来をアップデートすることにつながります。
“タイパ”に見る、若者価値観の社会への波及
山口:その代表例が、「タイパ(タイムパフォーマンス)」現象です。
SNSネイティブで、無限にコンテンツが流れてくる環境で育った若者たちは、「情報は取捨選択するもの」という感覚を持っています。
その中で、「限られた時間をどう使うか」という意識が強まり、
◯ ネタバレや口コミを見てから映画やドラマを見る
◯ 動画を倍速視聴する
◯ “ながら”で情報収集する
といった行動が広がっていきました。
当初は若者特有の価値観として語られていましたが、コロナ禍を経て、今では世代を超えた行動様式として広がっています。リモートワークの普及によって家事や仕事を並行して進める機会が増えたことで、「限られた時間を効率的に使いたい」という感覚は、多くの人に共通する価値観になっています。
今では、
◯ 家事代行サービス
◯ 要約コンテンツ
◯ 生成AIによる情報整理
などのサービスが、“タイパ意識”を前提に広がっています。
このように、若者の価値観は、一時的なトレンドではなく、時間差で社会全体へ波及し、“未来のスタンダード”になっていくケースが多いのです。言い換えれば、若者は「半歩先の未来」を見せてくれる存在なのです。
「感情汚染を避けたい」──半歩先の未来価値観とは
中島:ここで、今の若者を象徴する新たな価値観としてご紹介したいのが、「感情汚染を避けたい」という感覚です。これは、電通ワカモンが実施した大規模調査「若者まるわかり調査2025」から導き出した独自の定義で、日常のさまざまな場面で、“感情の起伏による心の負担”をできるだけ減らしたい、という考え方を指します。
※電通報:「感情汚染回避」と「人間回帰」。若者の新たな行動価値観を読み解く
特徴的なのは、「自分の感情」だけでなく、「他人の感情」の起伏負担にも配慮しているという点です。
今の若者は、多様性尊重が当たり前の環境で育ち、幼少期からネット炎上など様々な”他人の失敗”を見ながら成長してきました。そのため、「これを言ったらどう思われるか」「相手を傷つけないか」「炎上しないか」を無意識に考え続けています。結果として、“人に配慮し続けること”に疲弊している状態が生まれているのではないかと推察されます。
実際に、調査では「人前で褒めないでほしい」という若者の声が挙がっています。これは、今の若者が「自分が褒められることで、周囲が嫌な気持ちになるかもしれない」というところまで想像しているためです。
こうした感覚は彼ら/彼女らのキャリア観にも表れます。 “感情の起伏による心の負担” を避けたいため、若者は「多少追い込まれてでも成長したい」という意識よりも、「心の安定を保ちながら働きたい」という気持ちを強く持っています。「成長したくない」のではなく、「無理なく続けたい」という感覚を持っているのです。
さらにこの意識は、若者のコンテンツ消費行動にも影響を与えています。
最近では、
◯ 何も考えずに眺められる動画
◯ 感情を大きく揺さぶられないコンテンツ
◯ 没頭できる作業系趣味
などが支持されています。
自分の感情を自分でコントロールできない環境に長くいた結果生じた「感情汚染を避けたい」という若者の価値観やそこから生まれる行動は、今後、他の世代へ広がっていく可能性があると考えています。
若者価値観の活用どころ ~企業の未来設計にも活用できる
工藤:今後、他の世代へ広がっていく可能性がある若者の価値観の活用対象は、「若者向け施策」の範囲にとどまりません。もちろん、現在の若者獲得マーケティングに活用することも重要ですが、それだけではなく、
◯ 3〜5年後の企業やブランドの価値設計
◯10〜20年後の企業やブランドの価値設計
◯将来の生活者理解
にもつながっていきます。
今の若者は、数年後には社会の中心的な生活者になります。だからこそ、若者の価値観を読み解くことは、“未来の当たり前”を先回りして理解することでもあります。若者価値観の理解は、単なる世代研究ではなく、企業やブランドの持続可能性を考えるための重要な視点になっていきます。
若者施策を超え、“未来”を設計する
第三部では若者インサイトを起点に未来を設計するプランニング手法「フォーサイトプランニング」が紹介されました。
未来を起点に考える「フォーサイトプランニング」
山口:私たち電通ワカモンが提供している「フォーサイトプランニング」とは、若者の価値観を起点に未来を設計するためのプランニング手法です。
従来のマーケティングでは、
◯ 現在の課題を見つける
◯ 原因を分析する
◯ 施策を考える
という、“現在起点”のアプローチが主流です。
一方、フォーサイトプランニングでは、「これから生活者の価値観はどう変化していくのか」「未来の当たり前はどう変わるのか」を起点に考えていきます。つまり、“未来から逆算する”バックキャスト型のアプローチです。
若者の中で起きている価値観の変化を読み解き、その先にある未来仮説を立てながら、今のブランドやサービスのあり方を再設計していく。
それが、私たちが考えるフォーサイトプランニングの特徴です。
若者インサイトから未来仮説を導くステップイメージ
工藤:実際のプロジェクトでは、若者の現状把握を起点に、課題に応じてスコープを柔軟に設計しながら、未来仮説構築や施策につなげていきます。
若者価値観の“共通認識”をつくる
プロジェクト開始にあたってはプロジェクトメンバー全体で「今の若者や若者の価値観をどう捉えるか」という共通認識を持つことを重視しています。
そのため、必要に応じて「若者まるわかり勉強会」「若者メディア勉強会」「インナーCOM勉強会」などを実施し、若者価値観の理解や若者との関わり方を整理し、認識をそろえていきます。
● STEP1|リアルな若者の生態を把握する ~「フラっとグループトーク」~
若者のリアルな本音や行動実態を把握するためのアプローチの一つが、ファミレスで雑談するようなフランクな環境での実態調査「フラっとグループトーク」です。友達同士で会話するような形で、検索行動やオンライン行動も含めて観察することで、定量調査だけでは見えにくい“無加工・無調整”の価値観を捉えていきます。
● STEP2|“半歩先の兆し”を発見する ~「ツギクル」~
若者の価値観や行動変化から“半歩先の未来”を探るアプローチとして、現役大学生自身がフィールドサーチを行う「未来の兆し発見プログラム『ツギクル』」を活用しています。「次に来る〇〇の形とは?」といったテーマを設定し、若者ならではの視点から、未来につながる兆しを読み解いていきます。
● STEP3|“半歩先の未来”のアイデアを発想する ~「アイディエーションワークショップ」~
収集した兆しをもとに、“半歩先の未来”をテーマにしたアイディエーションワークショップの実施も行うことができます。若者自身に商品やプロモーションアイデアを考えてもらい、その発想プロセスから、未来の生活者視点を読み解いていきます。
● STEP4|仮説を検証する ~「サークルアップ調査」~
仮説検証の場面では、「サークルアップ調査」を活用し、定量・定性の両面から確からしさを確認します。
「サークルアップ調査」は、全国の大学生ネットワークを活用したクイック調査です。変化の早い若者価値観を継続的に捉えるプラットフォームを活用して仮説を検証、企業やブランドの未来設計へとつなげていきます。
電通ワカモンの支援サービス ~若者価値観の理解を起点に、“企業と社会の未来”を考える~
私たちワカモンは、「若年層獲得」や「持続的なブランド/サービスであり続ける」ための、若者価値観を起点にしたソリューションをご提案しています。
例えば、
◯ 既存ブランドが若者の未来価値観とマッチしていない場合は、「リブランディング」
◯ 既存サービスが若者の消費行動や検索行動とマッチしていない場合は、「既存サービスの一部改
善」
◯ 既存コミュニケーションだけでは若者との接点が不足している場合は、「統合コミュニケーショ
ンプランニング」
こうしたかたちで、課題に応じたご提案を行っています。ただ、これらはあくまで一例です。
重要なのは、表面的に“若者向け施策”を追加することではなく、「自社ならでは」の価値や課題を整理したうえで、未来の生活者との関係性をどう設計するかだと考えます。
若者価値観を読み解くことは、自社企業やブランドの未来を見つめ直し、考えることにつながっていくのです。
まとめ|若者価値観の理解は、“未来の生活者理解”につながる
若者の価値観や行動を読み解くことは、これから社会全体へ広がっていく“半歩先の未来”を捉えることでもあります。
本ウェビナーでは、
◯ 若者との間に生まれている価値観ギャップの今
◯ 「感情汚染を避けたい」といった、半歩先の未来につながる新しい価値観
◯ 若者インサイトを起点に未来を設計する考え方とステップ
◯ 若者との共創によるリアルな兆し発見 の方法
など、多面的な視点から「若者価値観の理解」の重要性が語られました。
電通ワカモンでは、定量・定性データだけでなく、若者との継続的なコミュニケーションや共創を通じて、“リアルな感覚”や“未来の兆し”を捉えています。そして、そうした若者価値観の理解をもとに、
◯ ブランド戦略
◯ コミュニケーション設計
◯ 商品・サービス開発
◯ 新価値創造
など、さまざまなテーマに取り組んでいます。関心のある方はぜひご活用ください。



















