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      大手企業B2Bマーケティングの最適解:インバウンド型のABM[後編]

      インバウンド手法を提唱し、その思想を実現するツール群を提供するHubSpot社。

      そのインバウンド手法がますます重要視されている理由は? 大手のB2B企業、B2C企業のB2B部門でインバウンド手法を実践する場合に必要な考え方とは、どんなものなのか?

      HubSpot Japan伊佐 裕也氏に、株式会社電通 梅木 俊成がうかがいました。

      PROFILE

       
       

      インサイドセールスは大手企業に必要か?

      梅木:前半」では、日本の従来の営業のやり方に「デジタルセンサー」を加えることで、マーケティング、営業、カスタマーサービスも新しい戦い方ができるようになること、インバウンド型のABMが有効であることをお話しました。今や、ユーザー(買い手)のほうが賢いので、ユーザーがどういうふうに情報を入手しているのかを知って、それに合わせて企業側が情報を提供していくことになりますね。

      こうした中、マーケティングが獲得した見込客との関係を深めるインサイドセールスがにわかに注目されていますね。すでに、サブスクリプションサービス事業者などではインサイドセールスを担うチームを設置する事例がありますが、製造業などのB2B企業、あるいはB2C企業のB2B部門などでも、必要でしょうか?

      伊佐:Googleトレンドでインサイドセールスの検索ボリュームを調べると、国内ではここ数年右肩上がりですね。アメリカの企業ではすでに47%がインサイドセールスを導入していますが、日本ではまだ11%にとどまるので、これから増えていくと予測しています(※)
      出典:https://www.insidesales.com/wp-content/uploads/2017/09/State-of-Sales-9_15_17-Exec-Summary.pdfhttps://www.hubspot.jp/inside-sales

      マーケティングオートメーションと
      インサイドセールスの検索ボリュームの推移(2020年7月27日)

      インサイドセールスの役割は、見込み客との信頼関係を構築して購買意欲を醸成することです。営業の外勤、内勤の違いと表現されることがありますが、働く場所ではなく役割の違いと見ることが重要です。

      裏を返せば、マーケティングが見込み客を作る仕組みがなければ、インサイドセールスは効果を発揮できません。

      マーケティング施策でリードを獲得すると、システムがオンラインの行動やオフラインである展示会等での行動をスコアリングして、リードの品質を判断します。しかし、そのまま営業に渡しても「見込み客側の購買意欲が低くて受注につながらない」と言われてしまうことが多いんです。そこでマーケティングと営業の間にインサイドセールスという人が入ることで、リードの購買意欲を醸成し、適切なタイミングで営業につなぐことができるのです。受注確度を確認するクッションともいえます。

      営業はインサイドセールスから渡されたリードに対して提案して、クロージングします。特に高単価で説明が複雑な商材を扱う大手企業の場合、提案とクロージングに訪問営業(フィールドセールス)が必要なことは変わりません。そのような商材を購入する側にとっては、訪問も交えて提案を受けたほうが意思決定がスムーズになることが多いからです。

      ファネルを進化させた「フライホイール」の考え方

      梅木:つまりインサイドセールスの役割は、見込み客との関係を深めると同時に、スコアリングの精度を高めて受注確度の高いリードを適切なタイミングで営業に渡すことですね。

      マーケティングや営業の世界では、リード獲得からクロージングまでの流れを、ファネルとして捉えていることが多いですよね。HubSpotでは、いかがでしょうか?

      伊佐:HubSpotでも、以前はバイヤージャーニーをシンプルにできるので、ファネルで考えていました。しかしファネルの場合、顧客が生まれた時点がゴールになることに違和感を持つようになりました。顧客化はゴールではなく、その後のサービスや製品の利用で顧客に満足してもらい、さらに次の顧客を連れてきてもらうことも重要だと気づいたのです。また、自分たちの視点ではなく、顧客を中心とした視点を重視したいということから、ファネルの考え方を進化させた、「フライホイール」の考え方を提唱しています。

      ファネルからフライホイールへ

      ファネルからフライホイールへ

      フライホイールでは、顧客に対してアトラクト(惹きつける)、エンゲージ(信頼関係を築く)、デライト(満足してもらう)というステップを繰り返します。重要なのが、アトラクトがマーケティング、エンゲージがセールス、デライトがカスタマーサポートと分かれるのではなく、各部署がこの3つに責任を持つことです。営業担当も、見込み客に有益な情報を提供してアトラクトできますし、購買体験をすばらしいものにして、ディライトさせることができます。そしてマーケティングでも見込み客をデライトさせるために何ができるか、それぞれの役割で考えることになります。

      フライホイールは各部署でも回していく

      全員がこの3つすべてを考えて、組織としても連携して活動することがフライホイールの考え方です。実際の運用においてはそれぞれの役割ごとに、アトラクト、エンゲージ、デライトに当てはまるKPIを設計し、計測しながら回し続けていきます。

      梅木:全員(全部門)がフライホイールを回すことができれば、顧客体験が格段にあがりますね。

      顧客をより深く理解するためには、顧客の体験を統一的に管理できる仕組みが必要

      梅木:フライホイールは顧客を中心にした素晴らしいモデルです。しかし、フライホイールを現場で実践しようとするには、全員が見込み客を同じデータで見ていけるようにしないといけませんよね。統一されていないと、誰がどうアプローチしたのか、それを受けて次はどんな情報提供するか、連携して考えられないからです。部署が変わっても見込み客のIDを追っていけるために、CRM(Customer Relationship Management、顧客管理システム)が必要ですが、HubSpotにはCRMの機能はありますか?

      伊佐:はい、HubSpotのCRMは100万件まで無料でご利用いただけます。その先のメール配信、営業管理なども一部無料でご利用いただけます。無料で提供している理由は、HubSpot自身も「Providing value before extracting value」の精神を実践しているからです。もちろん試してもらえれば、ツールの良さが伝わるという自負もあります。

      梅木さんがおっしゃるように、IDの統一は非常に重要で、マーケティング、セールス、カスタマーサービスが同じシステムで同じデータを見ることで、より顧客中心のコミュニケーションができます。見込み客にとっては、担当者が変わっても、自分が以前に話した内容、もらった情報をもとに会話をしてくれるので「この会社は自分のことをわかってくれている」という心地よい体験になりますし、それこそがインバウンドが目指す姿です。

      梅木:HubSpotは、マーケティング、セールス、カスタマーサービスが使うツールがワンパッケージ化して提供されているので組織横断で使いやすいですし、組織の思想とツールが一致していると感じます。さまざまなMAが存在する中で、HubSpotの特徴と言えますね。というのも、システムの世界では「こんな機能つけられますか?」とベンダーに相談すると、ほぼ100%「できます」という回答がきます。ただし、その後の「追加で別途お見積りが必要ですが」という言葉ともれなくセットで。

      HubSpotは、CRM機能が無料提供されているだけでなく、MA機能であるMarketing Hubを購入すれば、SFA(営業支援)機能であるSales Hubの無料版もセットで使える点も利用側からは魅力的ですね。その意味では、HubSpotをMAというプラットフォームでカテゴライズするのは適切ではないですね(笑)。

      伊佐:信念とするインバウンドの思想を実現するための最適なツールを提供しており、導入企業と顧客双方にとっての成長プラットフォームですから。もちろん、Salesforceなど他社の提供するCRMやSFAなどと組み合わせることもできるので、必要な機能のみをご利用いただくこともできます。

      スモールスタートではなく、スモールサクセス

      梅木:前半で、導入する時にはスモールサクセスが必要というお話がありましたね。私たちが企業の導入支援を行う中でも、まずは一部の事業部で導入して成果を出すことが組織で浸透させるために重要と痛感しています。

      なお、インバウンド手法やABMといった新たな思想・戦略を導入することは、組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)につながります。クライアントからB2B戦略の相談をいただく際に、この話をしっかりとするのですが、ここに落とし穴があります。それは予算確保のための社内稟議で話が大きくなり収拾がつかなくなるということです。

      たとえば、一事業部でまずはスタートして、状況を見て段階的に他部署、複数部署、全社と拡げていく計画で稟議を上げているにも関わらず、スモールサクセスを目指している意図を理解してない役員の一言でいきなり全社(場合によってはグループ会社まで)で実行せよ、となることです。特に人数規模が大きな大手企業でこうなってしまうと、どんなに大きな予算があっても失敗することがほとんどですね。

      一方でスモールスタートはしたものの、成功を何とするか?というゴール設計がなされないままに、「MAをまず入れてみる!」ことがスタートと捉えた進め方も失敗するパターンです。目指す具体的な成果として10件の商談を生み出すと決める、そのためには確度の高い商談を20件入れる……と逆算をして目標をたてて、手段と目的の逆転をまねかないことが重要だと思います。

      伊佐:確かに大手企業では組織全体で導入しようとすると、部門ごとの足並みを揃えるのに時間がかかります。まずは事業部単位など小規模に導入して、そこで成果をあげること、その成果を次の部署に伝えて広めていくというアプローチが適していますね。

      HubSpotと電通がコラボレーションしたら何ができるのか?

      梅木:HubSpotの立場から、HubSpotと電通がコラボレーションすることにどのような期待をしていますか?

      伊佐:3つあると考えています。

      一つはコンテンツ制作です。インバウンド手法では見込み客が求める品質の高いコンテンツが用意されていることが前提です。特に大手企業が必要とする高品質のコンテンツを電通がオンラインだけでなくオフラインも含めて制作支援をすることは、導入企業にとっても大きな手助けになるでしょう。

      二つ目は、電通は導入から運用にあたってクライアントに必要な手厚いサポートを一気通貫で対応いただけるということです。HubSpotの強みは専門知識がなくても使えることではありますが、「こういう時はどうすればいいのか」「こんなことはできるのか」と、さらに深めた使い方をしたい時に、きめ細やかな対応をしてもらえることは、顧客のデライトにもつながります。

      三つ目は、経験、でしょう。大手企業の場合、インバウンド手法を実現するには、組織を横断したビジネス改革が必要です。新しくマーケティング組織を立ち上げるなら営業組織との連携が必要ですし、マーケティング組織があってさらにインサイドセールスを立ち上げるなら、マーケティング、営業双方との調整、役割分担が必要です。大きな組織ならではの課題ですが、大手企業との取引実績が豊富で知見のある電通にパートナーになっていただけることに、非常に大きな期待をしています。

      梅木:デジタルによって変化した買い手に対して、製品サービスを提供する側も組織改革が重要ですよね。広告枠だけではB2B事業の課題解決にはならないと改めて認識しました。HubSpotのインバウンド手法の考えを理解し、よりよいサービスを提供していきたいです。

      伊佐:インバウンド手法を実践する時は、このやり方が顧客の役に立っているか、インバウンドの思想に反していないか、常にディスカッションしながら進めてほしいと思っています。HubSpot社内でも常に議論していますし、みんなが各々考えることで、インバウンドの考え方が広まっていくと期待しています。

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