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      大手企業B2Bマーケティングの最適解:インバウンド型のABM[前編]

      インバウンド手法を提唱し、その思想を実現するツール群を提供するHubSpot社。

      そのインバウンド手法がますます重要視されている理由は? 大手のB2B企業、B2C企業のB2B部門でインバウンドマーケティングを実践する場合に必要な考え方とは、どんなものなのか?

      HubSpot Japan伊佐 裕也氏に、株式会社電通 梅木 俊成がうかがいました。

      PROFILE

       
       

      先に価値を提供することから始まるインバウンドの思想

      梅木:あらためて、インバウンドマーケティングのインバウンドとは何を指しているのか、というところから話を始めたいと思います。

      伊佐:はい、インバウンドの根幹にあるのは「Providing value before extracting value」という考え方です。日本語にすると「相手から価値を引き出す前に、こちらから価値を与えよう」というような意味合いですね。

      まずはターゲットが抱える課題、ニーズに合わせて、価値あるコンテンツを提供する。コンテンツでターゲットを惹きつけて満足してもらい、信頼関係を築く。言うならば見込み客の助けとなりながらビジネスを成長させる思想が、インバウンドです。

      言いかえれば、まずはターゲットの悩みに対して何ができるか、どのチャネルで提供するか、とことん相手の目線で考えることから始まります。「インバウンドマーケティング」という言葉から広く知られるようになりましたが、現在HubSpotではマーケティングに限らず、営業やカスタマーサービスを含め企業の全部門に「インバウンド」の意識を持っていただきたいという思いから、マーケティングに限らない文脈であれば「インバウンド手法(Inbound Methodology)」という言葉を使うこともあります。

      梅木:先に価値を提供して、相手から近づいてきてもらう手法ですね。

      どのチャネルで提供するか、ということですが、インバウンドマーケティングというとブログなどのオンラインコンテンツがまっ先に頭に浮かびます。一方でマスメディアやオフラインのコンテンツは一方向だから、インバウンドではないという考えもあります。伊佐さんの考えを教えてください。

      伊佐:インバウンドの根底には徹底した顧客目線があるので、全員に同じコンテンツを届けるというやり方はインバウンドではないと思います。しかし、マスメディアでも特定の業界、業種の人が関心を持っているメディアで、その人たちの役に立つ情報をとどけたら、それはインバウンドといえます。

      もう少し言えば、マスメディアで情報を届けた後、関心を持った人はオンラインで調べることになりますよね。その時の受け皿として満足できる着地点としてコンテンツを用意できていることがインバウンド手法にとっては重要です。

      買い手の情報収集環境の変化がインバウンドを加速する

      梅木:その、「オンラインで調べる」というお話も重要だと思います。インバウンド手法が注目される背景には、情報収集環境が変化して、自ら情報を探すことが当たり前になったことがありますよね。営業が初めてお客さん(買い手)と会うというタイミングで、従来は営業が提供していた全体の半分以上の情報を見込み客がすでに持っている(※)、という調査データもあります。
      ※出典:書籍 The Invisible Sale(2013)、B2B Data-Driven Marketing(2015)

      Self-educated buyer(自ら学ぶ購入者)買い手は営業が接触する時にはすでに57%の情報を収集している

      伊佐:その通りですね。買い手は検討している段階でさまざまな情報を集めていますし、第三者の評判、レビューなどからもたくさんのことを感じとっています。だからこそ、日頃から買い手(見込み客)にとって価値ある情報を発信していくことが重要です。

      インバウンドの考え方が注目される背景にもう一つ、売り手側の働き方の環境変化もあります。以前は、手当り次第にDMを送る、電話帳で順番に電話をして営業するという手法がありました。当然ながら、非常に効率が悪いですよね。私たちの調査では、「働く時間の25.5%はムダ」(※)と営業担当者が回答したという結果もあります。
      ※出典:https://www.hubspot.jp/company-information/inside-sales2019

      多くの企業が労働力不足に悩んでいる中、買い手が必要な情報を売り手が提供して、興味を持ってくれた人にアプローチする、お互いにとって効率的な手法であるインバウンドが注目されているという側面もあるのです。

      梅木:少人数で生産性の高いマーケティングと営業活動をするのに、インバウンドがマッチしたんですね。今現在のことを言えば、新型コロナウイルスの感染拡大で、打ち合わせや商談もオンラインミーティングになり、変化が加速していると感じます。

      伊佐:HubSpotは世界で7万8千社に使っていただいていますが、そのデータ(https://www.hubspot.com/covid-data?category=total&topic=website-traffic&subTopic=&drilldown=null)を分析すると、新型コロナウイルスの影響でウェブサイトのトラフィックが増えていることや、企業からのメール配信もかなり増加していること、そしてその開封率も増加していることがわかります。世の中が変わっても、見込み客にとって価値のある情報を届けるというインバウンドの姿勢には変わりませんし、ユーザーが情報を求めている中、オンラインでの情報提供がより重要になっています。

      コンテンツマーケティングに注力するB2B企業のマーケター

      梅木:その、価値のある情報、というお話に移ります。インバウンド手法の一部がコンテンツマーケティングだと思います。2020年、B2B企業のマーケターが注力したい活動として、コンテンツマーケティングと回答した割合が78%という調査結果があります。HubSpotでは古くからこのコンテンツマーケティングを提唱していましたね。

      2020年 B2Bマーケターが注力する戦略

      出典:https://www.marketingcharts.com/industries/business-to-business-113543
      2020年、B2Bマーケターが注力したい1位はコンテンツマーケティング

      伊佐:コンテンツマーケティングは、ターゲットとするユーザーが抱えている課題を踏まえたコンテンツを用意する取り組みで、MAはそのコンテンツに関心がある人にいいタイミングで提供するための手段です。なお、ツールを導入しても、その後に成果が生まれなければ価値がありません。マーケティングだけでなく、その後に続く営業、サポートも含めて、ツールを通して一緒に小さな成功をつかむスモールサクセスが大切です。

      大手企業のB2B戦略は「インバウンド型のABM」が定着する

      梅木:日本の営業については、義理・人情・接待を通して取引先と仲良くなり、契約を受注して成長してきた経緯があり、まだまだ根強いと思います。私は頭文字からGNSと呼んでいるのですが、このやり方は大きく変わることなく存続し、プラスオンで「デジタルセンサー」を付けることが今後必要だと考えています。つまり、取引先のオンラインの行動から、対面や電話では言葉にしない興味関心度合いを感じられるようにする/または見える化する、ということです。ここで重要になるのがマーケティング部門による営業支援です。

      しかし、日本のB2B企業、あるいはB2Cが主力の企業のB2B部門では、そもそもマーケティングの概念、またはマーケティング専任部署が浸透していないことが少なくありません。その背景に営業主導、または良い製品を生み出せば自然に売れるという発想が根底にあるのではないかと感じます。

      伊佐:私たちHubSpot Japanの調査でも、マーケティング専任部署がある企業は日本全体の約4%、他業務と兼務でマーケティングを担当する場合をあわせても約40%(※)という結果でした。マーケティングが浸透していないというのは同意ですね。
      ※出典:https://www.hubspot.jp/inside-sales

      梅木:こうした状態では、急にデジタルマーケティングの様々な知識を要するインバウンドマーケティングを実践するのはハードルが高いです。だから従来のABM(Account-based marketing、特定の顧客にあわせてマーケティング、営業する手法)を踏まえた「インバウンド型のABM」が根付くと考えています。電通としてはこのようにインバウンド手法を適用して行うABMのことを「インバウンド型ABM」と呼んでいます。

      伊佐:そうですね、「New Normal」と言われるこれからの時代は、従来のマーケティング、営業方法を見直すきっかけかもしれません。売り手の企業としても、インバウンドの考え方をプラスオンすることでより効果的な営業方法に発展しますし、自分で情報を調べたい買い手にとっても、価値あるコンテンツが得られるようになります。

      インバウンドの「Providing value before extracting value」の考えは、企業規模を問わず有効ですが、それぞれ実践方法は変わるでしょう。中堅企業の製品・サービスを売る場合は一対一の商談が多く、決裁者と営業担当が直接話すことができます。しかし、大手企業の場合は組織と組織の関係です。組織全体の意思決定をサポートするマーケティング、営業の仕組みが必要で、それがインバウンド手法を適用したABMという形になるでしょう。

      インバウンド手法の適用インバウンド手法を適用したABMの流れ

      個人ではなく、組織や部署などのアカウントベースで優先順位を付けたリストを用意し、必要なコンテンツを作る、メールや広告で適切なタイミングに情報提供する。こうした活動を通してアカウントを惹きつけ関係を構築し、買い手組織にとっての最適な購買体験を構築することがまさにABMへのインバウンド手法の適用で、大手企業に適しています。

      梅木:大手企業の場合、すでにたくさんの見込み客の名刺情報を持っているため、新しくリードを獲得しなくても、保有しているリストからABMをスタートできますよね。その上でMAを導入して、インバウンド手法でアプローチするやり方がいいのではないでしょうか。

      というのもABMを始めてみたものの、メールに載せるコンテンツそのものの考え方が確立してないまま社内セミナーや新製品情報を送り続けてしまい、結果として迷惑メールフォルダに入れられてしまう、ということが現場では多発しています。実際にこのようなABMの取り組みをしてきたB2B企業にインバウンド型のABMを導入させて頂いたところ劇的に商談化率の向上につながりました。インバウンドとABMの考え方は実は相性がよく成果が早く出せると考えています。

      日本らしいインバウンド手法のためにそれぞれの立場で考えよう

      梅木:HubSpotは現在世界で最もシェアが高く、日本国内ではNo2のシェアを誇るMAツール(※)ですが、国内のインバウンド手法はどのように定着していくと思いますか?
      出典:https://www.datanyze.com/market-share/marketing-automation--3https://www.datanyze.com/market-share/marketing-automation--3/Japan

      伊佐:インバウンド手法の根幹は変わりませんが、日本独自の形になって定着していくと予想しています。日本の大手企業、中堅企業、スタートアップなど、それぞれどういうやり方がマッチするのか、みんなで考えて議論を行うことで、日本らしいインバウンドが根付くと思います。

      梅木さんがGNSと呼ぶような従来の営業手法はなくならないでしょう。ただ、訪問営業でないと提供できない価値を一度棚卸ししてみて、それ以外のやり方でも提供できる価値がないか見直してみると良いと思います。たとえば、もしインサイドセールスの体制を作ったら、お客様にどんな新しい価値を提供できるか。大手企業ではチャットはあまり利用されていませんが、もし導入したらメールや電話にはないどんな価値を提供できるか。……こうしたさまざまな視点から考えていくことで、日本の現状にあったインバウンド手法の実践例が増えていくと思います。

      梅木:今までのやり方を見直すのは大事ですね。後半ではHubSpotが提唱する、インバウンド手法を加速するフライホイールについてお話をうかがいます。

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