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    営業前に負けている?MAでできる捕捉率を上げるための仕組みづくり[前編]

    最終更新日:2023年06月19日

    INDEX

    営業プロセスを可視化する「The Model」を提唱し、マーケティング、インサイドセールス、営業が連携して取り組むことを推奨するセールスフォース・ドットコム。今、B2B企業、B2C企業のB2B部門が知っておくべき、営業、マーケティングのあり方について、株式会社セールスフォース・ドットコム ソリューション営業本部 Pardot営業部 副部長 広瀬 佑貴氏に、株式会社電通 梅木 俊成がうかがいました。

    PROFILE

     
     

    営業プロセスを可視化する「The Model」

    梅木:セールスフォース・ドットコムでは、マーケティング活動からカスタマーサクセスまでのプロセスを切り分け、各段階での情報を数値化、可視化する「The Model(ザ・モデル)」を提唱していますね。広瀬さんは、MA(Marketing Automation、マーケティングオートメーション)ツールである「Pardot」の営業部の数字に責任を負う立場として、The Modelをどのように捉えていますか?

    広瀬:The Modelは集客、リード獲得、リード育成、営業活動、受注後のカスタマーサクセスなど、一連のプロセスのKPIを数値化し、分業体制をとりながらもそれぞれの部門が連携して売上の最大化をはかる考え方です。たとえば、受注数が減ったという状況に陥った場合、プロセスごとに指標が数値で管理されていれば、原因がマーケティングのリード獲得件数にあったのか、それとも営業の受注率にあったのか、正しく判断することができます。それぞれの部門の役割、ミッションの視点で数値を確認できるのが特徴です。

    The Model セールスフォース・ドットコムの成長を実現している 組織営業のベストプラクティスモデルThe Modelの考え方

    私は2016年にPardotの営業チーム立ち上げのミッションでセールスフォース・ドットコムに入社したのですが、当時はできたばかりの組織だったのでPardotのビジネス状況を把握するレポートやダッシュボードなどはもちろんありませんでした。しかし分析に必要なデータはすべてSalesforceに蓄積されていましたので、そのデータから、どう営業するか、どこがボトルネックなのか、営業担当者のパフォーマンスはどうか、といったことはすぐに可視化できたんです。そのときに、現状を事実ベースでデータ管理していくことは、戦略策定、リソース配分などにも有効だなと改めて実感しました。

    MAのオンライントラッキングは営業にとっての革命

    梅木:確か1996年ごろ、第一次ブームとしてSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)が日本で注目された時は、管理職が担当者の行動を管理するためのツールとネガティブにとらえられて、担当者のモチベーションを下げることになってしまい、普及には至らなかったという過去がありますよね。そして2000年代半ばが第二次ブームだったと思いますが、ここでも国内では一部の普及に留まったという過去があると思います。オンプレミス型の高額なシステムであったことも要因としてはあるのではないかと思います。

    しかし、2014年ごろから国内でMAが注目された時には、営業が管理されるのではなく、受注確度の高いリードや既存顧客の新しいニーズなどが営業に渡されるツールとして、徐々に認識されはじめたと思います。クラウド型の登場によって低コストで利用できるようになったことも起因しているかと。第三次ブームと言えるのではないかと思います。

    SFAもMAも期待と幻滅を繰り返していますが、再びこの2020年に期待値が上がっていると思います。その理由をどのように捉えていますか?

    広瀬:梅木さんのおっしゃる通り、過去を振り返ればSFAが営業のためのツールではなく、経営者やマネジメント側の“管理のための”ツールと捉えられてしまい、現場に定着しなかったケースはあったと思います。

    それと比較すると、MAが注目を浴びてきた背景には営業にとってメリットが明確にあることが挙げられると思います。MAを使うと見込客のオンラインの行動をトラッキングできるので、「昨日商談に行って、予算がないと言っていた見込客が、今日になって料金ページを見ている、送った見積もりを開いている!」という情報がリアルタイムでわかるようになります。営業にとっては革命的ですよね。そのような情報があれば、今期は見送っていた見込客に対してすぐに次のアプローチができるんですから。

    もうひとつ、オンラインのトラッキングは見込客のニーズ、本音を捉えられるというメリットもあります。わかりやすい例では、不動産店で「15万円くらいの1LDK」を希望しているお客様が、実はオンラインでは10万円の部屋を見ている、というシチュエーションです。本人は見栄もあって言いづらい本当の予算をオンラインの行動から把握できれば、営業担当者はさりげなくその希望にあった物件を提案することができます。B2Bでも同様に、見込客の見ているコンテンツからニーズや本音を探ることで、見込客が求めている勘所のいい提案ができるようになります。まさに究極のおもてなし営業ですね。

    2020年になり再びMAへの期待値が上がっているという点では、テレワークの推進によりマーケティングのDXも必須となってきたことが挙げられます。これまでDXは、どちらかというと働き方改革が議論の中心になることが多かったですが、同時に、デジタルマーケティングへの変革が求められているのは、どの企業でも同様だと思います。

    梅木:購入検討期間が長い商材にMAは有効という意味で住宅メーカーでも積極的に活用されていますよね。では、MAが持つ「自動化」という価値についてはどうでしょうか?

    広瀬:欧米では、メール配信など手作業でやっていた実務をMAがユーザーの行動にあわせて自動化してくれるので大きなメリットがありました。一方で、日本は欧米に比べてマーケティングが10年遅れているとも言われていますが、自動化して見込み客に送り届けるための魅力的なコンテンツが十分にないケースも多いと思います。自動化の機能を最大限活用するためには、見込客にとって価値あるコンテンツ、ホワイトペーパー、ランディングページ、そして最も重要な見込み客リストの整備も同時に必要になってきますよね。よくMAを魔法のツール、何でもやってくれるツールと勘違いされている方もいますが、コンテンツを自動で生成してくれるわけではないので。

    受注率は高いのに売上が下がる。気づかぬうちに戦いが終わっているケースも

    梅木:以前のB2Bの取引では、営業担当者からの説明を受けて導入を決めることがほとんどでしたが、最近は見込客自身がオンラインで情報を調べて、競合比較も済ませた上で、問い合わせをすることが増えていると実感します。初めて営業担当者が接触する時には57%の情報収集が終わっているというデータもあります。
    出典:The Invisible Sale(2013)、B2B Data-Driven Marketing(2015)

    下図の「Self-educated buyer(自ら学ぶ購入者)」という言葉にあるように、売り手側が買い手側の学習を前提にコンテンツを用意して、案件創出(デマンドジェネレーション)につなげるように変わっていますよね。

    Self-educated buyer(自ら学ぶ購入者)買い手は営業が接触する時にはすでに57%の情報を収集している

    広瀬:その通りですね。反対に言えば、オンラインでの情報提供ができていない場合、「戦わずに負ける」ケースが増えているとも言えます。

    梅木:どういうことでしょうか?

    広瀬:営業の現場では営業をして「受注した(戦って勝った)」、「受注できなかった(戦って負けた)」割合を受注率/失注率として、勝ちを増やすための施策を考えてきました。しかし最近では、受注率が上がっているのに売上が下がっているというケースがあるのです。これは、実は数字には現れていないけれど、「営業せずに負けた(戦わずして負けた)」ケースが増えていて、そもそも戦いの土俵に上がれていない、ということが原因である可能性が高いです。つまり、見込客が自ら情報収集して候補を選別してしまうので、売り手は知らない間にふるいにかけられているということなんです。

    戦わずして負けた商談が増えている営業せずに負けたケースが増えている

    私はこれを「捕捉率」、つまり市場のニーズの合計に対して 自社が把握しているニーズの割合(= 市場のニーズに対する自社の商談数の割合)というKPIで説明をしています。

    売り先が決まっている業種における売上の方程式捕捉率の計算の例。60件にも及ぶ機会を逃している

    日本のモノづくりでは、「いいものを作れば売れる」「使ってもらえば良さがわかる」という信念がいまだに根強く残っています。しかし、見込客が事前に情報収集しているのですから、早い段階で製品の良さを伝えておかないと、土俵に上がることすらできないのです。

    B2Bの営業ではこれまでと変わらず、リードからの案件化率、商談化率、受注率、継続率などが指標として重要ですが、その前にある捕捉率を上げなければ、全体の売上は上がりません。この捕捉率を改善するためにMAが再度注目されているのだと考えています。

    梅木:気づかぬうちに戦わずして負けてしまっている、という「捕捉率」は見落としやすい観点ですね。ここが低いと、後の指標を改善してもなかなか成果が上がらなくなりますね。

    捕捉率を上げていくには、オンラインのコンテンツマーケティングももちろん有効ですが、電通のような企業の業務領域でもある従来のオフラインの展示会、メディアを使ったブランド施策なども有効ではないでしょうか。

    一般的にB2B商材は見込み客の購入検討期間が長くなりますが、オフラインの施策を組み合わせることで検討期間が短くなります。The Modelの考え方やセールスフォースが提供する各種MA/SFA/DMP(Data Management Platform、データ管理プラットフォーム)/BI(Business Intelligence、ビジネス・インテリジェンス)等の様々なツールとオフラインの施策が合わさることで、B2Bの新しい戦い方を提供できると思っています。

    広瀬:B2Bのビジネスであっても、やはり人対人であることは変わりません。人の心をどう動かすかを考えるのは、B2Cのマーケティング戦略と同様です。B2Bマーケティングにおいても、ブランド施策やコンテンツ制作はますます重要になるでしょう。

    梅木:確かに。B2B商材は社内での購買意思決定プロセスが客観的(合理的)判断を元に行われると言われますが、実はそれだけではありません。意思決定に関わる人達を、商材選定のためのスペックや品質等の知識水準や購買選定への関与度で整理すると、役職レベル、特に上層部に対してブランドイメージが有効的であることがわかっています。

    実際にその商材を使う人(現場の開発担当や生産担当)は知識水準と購買選定の関与度が高いため客観的(合理的/機能的)判断をする傾向にあり、ブランドイメージだけに影響されにくいです。一方、決裁を最終的に行うキーマン(役員等の上層部)は、知識水準や購買選定の関与度が低いためスペックや品質等の客観的データを処理できず、主観的判断(情緒的判断)をする傾向が強く周辺情報であるブランドイメージに影響されやすいです。

    また初めての購買か、修正を伴う再購買か、修正を伴わない再購買かといった購買シーンによってもブランドが影響することがわかっています。この傾向はソフト系のIT系商材かハード系の非IT系商材かによっても異なるため商材ごとの適切なブランド施策を設計する必要があります。

    後半では、MAの導入のポイントや組織体制について、さらに深掘りしていきます。

    ※当記事は2020年7月15日時点の情報を元に記事を執筆しております。

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