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    The Model と フライホイールを組み合わせる。成長する組織は知っているプロセス改善の方法

    最終更新日:2023年06月19日

    INDEX

    マーケティング、営業などにたずさわる方の中には、The Model(ザ・モデル)という考え方を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。2019年に発売された書籍「THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」(翔泳社)は、大きな話題にもなりました。

    一方、フライホイールは、HubSpotが提唱する考え方です。フライホイールとは、回転エネルギーを蓄積できる機械部品、弾み⾞のことです。エネルギーを加えると回転を始め、与えるエネルギーが⼤きいほど、回転するスピードも速くなるという特徴があります。これを考え方としてビジネスに取り入れると、どのようになるのでしょうか。

    ここでは、それぞれの考え方を説明し、この2つを組み合わせて成果を上げる方法について紹介します。

    PROFILE

     

    The Model(ザ・モデル)とは

    The Modelは、セールスフォース・ドットコムが提唱した営業プロセスモデルであり、マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスまでの各段階での一連のプロセスを数値化し、それぞれの部署のKPIを定め、売上を最大化するための取り組みです。

    以下の図は、The ModelのKPIを簡易化したモデルです。

    The Model セールスフォース・ドットコムの成長を実現している 組織営業のベストプラクティスモデル

    参考リンク紹介:https://www.d-sol.jp/blog/improve-the-capture-rate-with-ma-1

    各プロセスの数値化においては、それぞれのプロセスごとにさらに細かく、数値化、可視化していくことができます。

    以下は、インサイドセールスのプロセスをさらに詳細化した例です。有効商談数、受注数は営業プロセスの数値になりますが、インサイドセールスでもこれらの数値を追跡していくことで、自分たちの活動が最終的な成果(受注)につながっているかを評価できます。

    The Modelはどんな組織に必要なのか

    The Modelは、マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスが部門ごとにわかれていてそれぞれ業務を行っているような組織であれば、すぐに取り入れられる考え方です。一方、マーケティング、インサイドセールスが組織として独立しておらず、営業がそれらの業務も担っているような組織であっても、有効な考え方となっています。
    なぜならば、売上目標が未達で 、その原因がどのプロセスにあるのかわからない、というような場合、一旦プロセスを分解して、そのプロセスごとの数値を可視化することで、どこがボトルネックになっているか把握できるからです。

    The Modelを取り入れていない場合、よくある課題として次のような状況があります。

    ・営業はマーケティングの施策を把握していない。
    ・組織が分断されていて、数値を共有していない。
    ・マーケティングから営業に渡されたリードの情報が不足している。

    このような状況では、マーケティングが創出したMQL(Marketing Qualified Lead)を営業に引き渡したとしても、営業側がそのリードを活用しきれない場合があります。MQLにホットリードがあっても、確度の低いリードと混ざってしまっていては、見極めが難しく、効率的な営業活動ができなくなります。

    The Modelを取り入れていれば、マーケティングは、営業に引き渡したリードが受注につながっているかを数値で共有できます。受注につながらなければ、「確度の高いリードのみ引き渡す」、「営業に共有するべきデータ(従業員規模、地域、興味のある製品)を確認し、それをインサイドセールスで聞き出してから引き渡す」、といった改善ができるようになります。ボトルネックだけに原因を求めるのではなく、その前のプロセスを見直すことで、成果を最大化できるようになります

    例:ガラス製品を扱う事業部の活動にThe Modelを取り入れると… 

    住宅向けや自動車向けなど様々な用途のガラス製品を取り扱う事業部で、自動車用のガラスの売上げアップが求められている場合、マーケティング部門では自動車業界紙、メディアに広告費を投入します。

    その結果得られた100件のリードに対して、営業部門と調整の上、リードの抽出条件を従業員規模が1,000人以上、関東地域のB2B企業の製造業、自動車関連のEbookをダウンロード済みにして、40件(有効見込み率40%)のリードを営業部門に引き渡します。営業部門はこのうち30件(有効商談率75%)を商談につなげられ、最終的に10件(契約率33%)の案件を受注しました。

    それぞれの数値を可視化、追跡することで、どの施策が次のプロセスにどう影響しているかを客観的に判断できます。

    ファネルからフライホイールへ

    ファネルの考え方は、マーケティング、営業の世界ではおなじみでしょう。ファネルは上から下にステップを進んでいくので、上から入る人が多いほど、下に進む人も増えるというモデルです。できるだけたくさんの⼈に⾃社の存在を認識してもらい、そのうちの⼀部と関係を構築し、そのまた⼀部が実際に購⼊に⾄るということになります。

    しかし、このファネルの考え⽅には1つの⼤きな問題点があります。それは、上から下への一方向の流れになっているということです。上からさらに新しく人を入れなければ、何も起こりません。また、ファネルの下に到達した人が、これからファネルに⼊ろうとしているもの人に影響を与えることはできませんし、新しく入る人は下にいる存在に気づきません。

    しかし、実際のビジネスでは、ファネルの最下層にたどり着いた顧客が、ファネルの最上層にいる⼈たちに⼤きな影響を与える可能性があります。顧客が製品やサービスに満足すれば、知⼈にも勧めてくれるようになるかもしれませんし、その逆に、製品を購⼊した際の対応が不⼗分で不快な思いをさせられた顧客は、そのことを周りの知⼈に伝えるでしょう。つまり、ファネルの最下層にたどり着いた人がこれから入る人に直接的な影響を与えることがあるということです。

    そこで、フライホイールという考え方が登場します。HubSpotでは、顧客を中心とした視点を重視したいということから、この考え方を採用しています。フライホイールはエネルギーを加えると回転を始めますが、顧客の満足度がエネルギーとなり、ビジネスの成長を加速させるという考えです。顧客の満足度が低ければエネルギーが小さくなり、ビジネスの成長につながりません。

    フライホイールは、顧客が抱える課題の解決に役⽴つことで顧客をアトラクトし(惹きつける)、相⼿の都合に合わせてエンゲージし(信頼関係を構築)、バイヤーズジャーニーの各段階で顧客をデライトさせる(満⾜してもらう)というステップを繰り返します。また各部署がこの3つのステップ全部に責任を持ちます。最終的に、顧客になった人がさらに、他の見込み客に推奨したくなるくらいのエンゲージメントを上げることを目指します。

    なお、機械のフライホイールは摩擦が加わると回転スピードが落ちてしまいます。ここでのフライホイールでも同様に、摩擦が働かないようにしなければなりません。部門間のコミュニケーション不足は、特に摩擦を引き起こす原因になりやすいので、早急に対応するべきです。契約に至らなかった顧客、解約した顧客などに対して、その要因を知り部門間連携で解決できることはないか、顧客の都合よりも自社の都合を押し付けていなかったか、顧客のニーズを正しく理解できていたか、といったことを振り返ります。

    なお、ファネルの考え方はなくなるわけではなく、細かいプロセスにおいてはファネルでの管理が必要です。社内の各部署を⼀体のものとして考えるフライホイールに対し、ファネルは社内のさまざまな業務の成果を⽰すためのものとして有効に活⽤できます。つまり、ファネルはフライホイールの一部になっているといえます。重要なのは、ファネルを活⽤して、フライホイールの回転スピードに勢いを与え続けること、つまり顧客の満足度を上げ続けることです。

    フライホイールはどのような組織に必要なのか

    フライホイールも、どの組織でも適用できる考え方です。ポイントは、顧客を中心に置いてバイヤーズジャーニーをサポートすることです。

    顧客の環境や心情、ニーズは日々進化しています。営業まで進んでいた案件の担当者が変わったということであれば、営業がアポをとるよりも、再度マーケティング部門から必要なコンテンツを送ったり、インサイドセールスで、要望を聞き直すといった取り組みのほうが有効な場合があります。あるいは、リモートワークになり、面談が難しくなったのであれば、オンライン会議、チャットツールなど、顧客が望む方法でコミュニケーションするようにします。コミュニケーションツールが変わっても、ヒアリングした内容などを記録して共有できるようにしておけば、部門が変わっても最新の情報を元にコミュニケーションできます。顧客からみれば、部門が変わってもまるで同じ人に対応してもらっているような安心感、信頼感があるでしょう。顧客を中心としたこうした取り組みは、すべてフライホイールを回す活動となります。

    例:ガラス製品を扱う事業部の活動にフライホイールを取り入れると…

    先ほどのガラス事業部の事例ではマーケティング部門では条件抽出したリード40件を営業部門に引き渡しましたが、10件は商談に至りませんでした。マーケティング部門では、顧客との関係を築くことを重視して、この40件のリードに対してパーソナライズしたEメール送信、メール開封後のWebサイト訪問の有無などを通して、コミュニケーションのタイミングを見計らいます。インサイドセールスから、顧客が望むチャネル(チャット、電話、Eメールなど)で連絡し、ヒアリングを行い、必要に応じてサンプル製品の提供を行い、サンプルのフィードバックを聞くなど相手との信頼関係を構築しておきます。

    The Model と フライホイールの考え方を組み合わせる

    ここまでThe Model と フライホイールの考え方を説明してきましたが、この2つは対立するものではなく、共存できるものです。

    The Modelは各部門でのプロセスをファネルの考え方で成果を見える化し、管理する手法です。各部門のKPIを達成するまでの流れをファネルで管理して、量(件数)と質(掛け率)の双方をみていくことで、どこがボトルネックとなっているかがわかります。各部門で数値を引き継ぐので、部門を通しても成果とボトルネックが数値に表れるため、改善ポイントがわかりやすいのが特徴です。

    一方でフライホイールは、それぞれのプロセスのなかでの顧客とのエンゲージメントを重視しており、そのエンゲージメントが上がると、顧客満足度があがり、回転のスピードが上がりビジネスの成長が加速するという考え方です。

    各部署のプロセスの管理にはファネル、The Modelを活用しつつ、各プロセスはフライホイールの一部であることを意識して、次のプロセスにつないでいきます。例えば、The Modelの変数である営業の案件数はその前のプロセスの成果であり、受注率を上げるには営業部門でのフライホイールが必要で、それがカスタマーサクセスに引き継がれます。

    まとめ:The Model と フライホイールは表裏一体

    The Modelは組織の中からお客様との関係を管理するためのもの、フライホイールはお客様の側からアトラクト(惹きつける)、エンゲージ(信頼関係を築く)、デライト(満足してもらう)を考えて、業務を推進するものです。

    社内の個別の業務プロセスを管理するThe Modelを、より広い枠組みを表すフライホイールと組み合わせて解釈することで、部⾨間の連携を促すチャンスが見つかります

    例えば、顧客が営業担当者との商談に⼊る前に、マーケティング担当者があらかじめ商談についての期待を顧客に持たせておくことで、成約後の顧客の満⾜度が向上することがあります。前のプロセスの部門は、次の部門の成果を上げるためにより質の高い仕事を目指しますし、部門間で課題解決のために議論したり、サポートしたりといったことも行われるでしょう。

    ファネルそれぞれの成果を改善するだけではなく、社内全体が⼀体となってフライホイールの回転速度を引き上げていくことで、これまで思いもよらなかったプロセスの改善が実現できるはずです。

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