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    「暮らしたい未来」を生活者と共に創造する方法〜未来アイデア発想支援メソッド② ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング〜

    最終更新日:2024年04月24日

    私たち未来予測支援ラボは、ポスト2020の社会や人、生活の変化を見据え、新規ビジネス開発、新商品開発、講演・ワークショップなど、企業の「未来」に関する様々な課題解決を幅広くお手伝いしています。

    前回の記事では、「未来アイデア発想支援メソッド」の導入部分「未来ファクトカード」をご紹介しました。(第2回はコチラ) 今回は一歩進めて、「ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング」という考え方と、そのカギとなる「未来ライフピース・メソッド」をご紹介します。

    1. 未来に向けて「イノベーション」が加速し始めた

    世界の企業やテクノロジーの潮流を調べて見ると、すでに多くの企業が、未来「予測」のステージを過ぎ、具体的な「行動」を迫られている感があります。

    未来予測に関する新刊書では、もはや「IoT」「AI」「ブロックチェーン」などのテクノロジー用語ではなく、「建築」「医療」「教育」など個別業界が主題の書籍が増えています。もはやテクノロジーに関する抽象論ではなく、「何ができるか」の具体論と実践の段階に来ています。

    そして、今後は更に最新テクノロジーの掛け算によってイノベーションが加速すると言われています。

    例えば、最近急速に現実化しつつあるeVTOL(空飛ぶクルマ)も、AI・IoT・センサー・5G・3Dプリンターなど複数のテクノロジーの最新の技術の掛け算の結果です。今後は広範な領域で、eVTOLのような最新テクノロジーの掛け算によるイノベーションが進むと見られています。

    また、2020年のコロナ下でもGAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)の株価は上昇を続け、巨額な資金による次のイノベーション投資がどこに向かうか注目されています。健康や教育等、様々な領域で、GAFAによる暮らしのイノベーションは更に加速するでしょう。

    2021年の今、企業は従来に無く、未来に向けたアップデートを迫られる時代にいるのです。

    2. 「イノベーション」から「未来創造」へ ~カギは生活者インサイト~

    しかし、国や企業による未来予測の資料では、テクノロジーが中心の未来予測が多く、生活者不在であることが気になります。

    テクノロジーにより様々な社会や個人の課題から解放された未来図、例えば「eVTOL(空飛ぶクルマ)の自動運転でどこでも安全・安価に移動できる」とか、「オンラインで自宅に居ながら海外のMBAも取得できる」等の未来図が描かれています。

    しかし、eVTOLを使って「飛んで行きたい場所」や「会いたい人」は誰なのでしょうか?自宅で何でも学べるとき、「学びたいこと」は何なのでしょうか?

    eVTOL事業は、「飛んで行く」人が誰か、行く先と理由がわかって初めて事業計画を立てることができます。「学ぶ」についても、誰が何をどのような目的で、どのような場で学びたいのかが重要です。生活者インサイト不在では、未来の具体的な事業の計画に繋がらない、絵空事に留まってしまう危険があります。

    つまり、企業が2030年代の未来における事業や在り方を考えるとしたら、テクノロジーの未来に加えて、今はまだ見ることができない2030年代の生活者と暮らしぶりを予測し、それに寄り添って事業を開発するなどの未来創造が必要になるのではないでしょうか。

    3. 生活者起点の「ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング」

    企業が未来を創るためには、2030年代の生活者の暮らしを予測することが必須です。しかしそれは必要なことの端緒にすぎません。企業はそこを起点に逆算して、2021年の現時点ですべきアクションは何かを考える事が必要になります。

    すなわち、生活者を起点とした、「ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング」の視点が必要になってくるのです。

    「ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング」とは、図のようにⅠ~Ⅴの5つのフェーズで表すことができます。

    ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング

    Ⅰ 現在 入手可能な未来予測情報(テクノロジー・社会環境他)の収集・把握

    世に発信されている未来予測に関わる広範な領域のデータを、俯瞰的に把握し、かつビジネスの知識創造や意思決定の現場で役立つ形に編集整理するフェーズです。

    Ⅱ 2030年代のテクノロジー 社会環境を予測(フォアキャスティング)

    次いで未来に実装されているテクノロジーやその状況下の社会環境を具体的に予測します。現時点での先進的な未来予測資料の多くはこのフェーズの情報です。

    Ⅲ 2030年代のライフスタイル 生活/社会関係/価値観を予測

    Ⅱの予測情報を基に、生活者がどんな生活、社会関係、価値観のもとで生活しているかを予測するフェーズです。未来における「重要な価値観・技術・キーワード」「個人や組織・暮らし・社会の変化」、さらには「有望な新市場や新事業領域」までに及ぶ予測情報を創造します。

    Ⅳ 「2030年代の世界と人の在りたい姿」と、その中で「2030年代の自社の在りたい姿/すべきこと」を洞察

    未来のライフスタイルに関わる情報がⅢで多数発想された後、それらを起点にその企業が目指すべき未来の世界と人の在りたい姿を洞察していくフェーズです。その過程で、その企業が目指す世界や対処すべき未来の課題を明確化していきます。

    Ⅴ 2030年代に向けて自社がいま実施・推進すべきことを策定(バックキャスティング)

    企業が未来に向けて目指すべき目標を明確にし、その企業が2021年の今、行うべきアクションを定めるフェーズです。

    ちなみに、新商品開発、事業開発、経営ビジョン策定、経営計画策定等のいずれであっても、このⅠ~Ⅴのフェーズが必要です。

    3. 「ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング」の進め方

    さて、この「ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング」ですが、具体的にどのように進めていけばよいのでしょうか。ご参考として、私たちが行っているワークセッションやコンサルテーションの進め方を順にご紹介します。

    ① 高速学習

    まず、未来を高速学習します。「世界」「日本社会」「テクノロジー」「新しい価値観」…等々、多岐にわたる領域の未来の情報をアイデア発想などに使いやすいように編集、イシュー化された状態でインプットします。私たちはここで、第2回の記事でご紹介した「未来ファクトカード」を用います。

    ② 発想刺激

    次いで参加者に未来のテクノロジーや社会、未来のライフスタイルを発想するためのヒントを提供します。複数のテクノロジーの組み合わせや、社会課題とテクノロジーの組み合わせ、さらにはテクノロジーの趨勢、例えば技術の「見えない化」「自動・先回り化」「複合越境化」等により、参加者の発想を刺激します。

    また、未来を先取りし発想をインスパイアさせるような、世界各地のテクノロジーやライフスタイル、社会イノベーションの最新の事例を提示することもよいでしょう。

    ③ 「未来ライフピース」の発想拡散

    未来の暮らしのシーンを「数多く」「いきいきと」描くことを、私たちは「未来ライフピース」と呼んでいます。テーマやターゲット層を指定したり(「余暇・仕事」「地方のシニア」など)、複数のアイデアを結合させたり、基本的な欲求から発想するなど、多様な切り口から「未来ライフピース」を発想します。また、未来の生活者との対話のシミュレートをするために、若者・主婦などに生活者代表として参加していただきます。

    このステップでは、後述の「未来ライフピース・メソッド」を用います。

    ④洞察

    「未来ライフピース」を起点に、その企業が対峙すべき「未来の生活者・社会の姿」の全体像を洞察していきます。それと共に、その未来において「その企業の在りたい姿、すべきこと」、達成すべきゴールを洞察します。

    ⑤ 収束

    洞察された、未来のゴールから逆算してその企業が2021年の今行うべきアクションをバックキャストし、新商品開発、事業開発、経営ビジョン策定、経営計画策定等の形にまとめ上げていきます。

    4. 「未来ライフピース」で「暮らしたい未来」を描き出す

    「ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング」のプロセスにおいて、③の「未来ライフピース」の発想拡散のステップは、企業と未来の生活者の関係をシミュレートする上でとても重要ですが、実際に行うのはなかなか大変です。

    例えば、未来予測のテーマが「余暇・仕事」であったとしましょう。海外旅行や冒険などの趣味を極めたい、でも都会的な仕事のやりがいも欲しい、そんな価値観を持つ人が、2030年にはどんな行動や体験をしているでしょうか? どんな望みや欲求を叶えられているでしょうか? これを発想するのはなかなか難しいものです。

    私たちはこのステップを支援するために、未来予測支援メソッドの中のひとつ、
    「未来ライフピース・メソッド」を用いています。

    「未来ライフピース・メソッド」とは、多様なファクトやビジュアルのもとで未来の暮らしのシーンを数多く発想し、A4一枚のカードにまとめていくワークセッションです。

    ワークセッションではまず、第2回記事でご紹介した「未来ファクトカード」を用いて、テーマに関連する未来の環境を想定します。

    先の例でいえば、働き方改革とテレワーク化で働く場所と時間が個人でコントロールできる / 旅行や冒険もテクノロジーが下支えしてくれる / 仲間のコミュニティやAIが必要な情報やサポートを提供してくれる、などの環境です。

    その環境のもと、どんな人が? どんな場所で? どんな行動や体験をしているか、その時に、その人のどんな望みや欲求が叶えられているか? 未来の暮らしのシーンを生き生きと描いてもらいます。

    そして、その人の価値観や人となり、シーンの具体的な雰囲気、ディティールまでを、「未来ライフピース」として、指定のフォーマットに描きこんでいきます。

    さらにその上で、表出された未来ライフピースを、未来生活のシーンにイラスト化して、ビジネスアイデアにまで至るよう発想を促していきます。

    「未来アイデア発想支援メソッド」の考え方

    このワークセッションでは、「生活者と共創する」プロセスを疑似的に体験できるようにしています。参加者がそのプロセスを実感して、未来の暮らしを考え、身体化していけるように工夫しています。

    5. 未来を考えることは、企業の在り方を変えていく

    未来を考えることをきっかけに、自分自身の在り方を変える企業も現れ始めました。
    「ヒューマン・オリエンテッド・バックキャスティング」の考え方や「未来ライフピース・メソッド」のプロセスもまた、企業の存在、その在り方を、以下のように豊かに変えていくきっかけになるのではと思っています。

    ・生活者に「暮らしたい未来」の姿を提案し、魅力を感じてもらい生活者を誘う存在となる
    ・生活者と共に対話しながら、未来の共創を積極的に促す存在となる
    ・生活者との対話の中で、企業が提供するベネフィットや社会的役割、意義が明確化され、更に生活者に必要とされる企業として進化を遂げていくようになる。

    「未来予測」「未来創造」は、企業の在りたい姿を考える事、企業の在り方を変えるきっかけともなるものです。単に便益を提供する存在を超えて、企業の意思を追求する存在となり、ひいては企業の社会的存在意義に繋がっていくと思います。

    ご興味のある方はぜひ、電通未来予測支援ラボにお問い合わせください。私たちはみなさまの「未来創造」を支援させて頂きたいと思います。

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