
第1回から3回にかけて、「事業戦略とブランド戦略を両輪で回すこと」の重要性をお伝えしてきた当ブログシリーズ。第1回では、事業変革に向けたブランディングに関する独自の調査結果をご紹介しました。
その後1年。企業の意識や取り組み状況は、どのように変化しているでしょうか。第4回のブログでは、新たに実施した最新の調査結果を紐解きながら、事業変革に向けたブランディングの新たな課題とその解決の鍵をご紹介します。キーワードは「インナーブランディング」。語り手は、企業のビジネス変革支援に取り組む電通ビジネス・トランスフォーメーション局(BX局)のグロース・ブランディング部長の伊神と山口、電通コンサルティング執行役員・パートナーの田中が務めます。
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最新調査が示す、ブランディングの新たな課題とは
事業変革に向けたブランディングは、依然として「経営アジェンダ」
今回、1年ぶりに行った調査では、一般企業(社員数100名以上の企業規模)の現場社員から経営層まで2,000名の方を対象に、事業変革を取り巻く課題感や取り組み状況をお聞きしました(※)。
※「企業の事業変革を実現するためのブランディングプログラムに向けた自主調査」 調査方法:Web調査 サンプルサイズ:2,000ss 調査期間:2025年11月25日(火)~ 11月27日(木) 調査エリア:全国
調査結果としてまず注目したのは、事業変革におけるブランディングの必要性を感じている企業が、前回同様8割近くにのぼっている点です。特に経営層や部長クラスにおいては、「とてもそう思う」「そう思う」と回答している人の割合が前回より高くなっており、ブランディングの重要性が増していることがわかります。
また、事業変革の必要性を感じている企業のうち、実際に何らかの取り組みを行っている企業も7割を占め、ブランディングは依然として経営アジェンダであることがわかりました。


浮かび上がった「インナーブランディング」の必要性
多くの企業で経営アジェンダとして位置づけられているブランディングですが、今回の調査でとりわけ強く感じられたのは、「インナーブランディング」の必要性の高まりです。
それが顕著に表れているのが、事業を行う上での課題認識についての回答です。経営層の回答傾向をみると、社内の動きに関する課題感が昨年よりも強まっていることがわかりました。
● 事業が多角化した結果、自社がどのような企業であるかが曖昧になっている
● ブランディング推進における新たなアクションが組織内に浸透せず、長続きしない
● 新しく画期的なカテゴリを創出できていない

この背景には、近年進むビジネスの多角化や複雑化があると考えられます。多くの企業で新規事業への取り組みが進み、社員一人ひとりもまた、従来の領域を超えた業務を担うケースが多くなりました。その結果、自社らしさの再定義や、インナーの行動をどのように定着させるかという点が、より意識されるようになっているのではないでしょうか。
SNSの普及や企業の社会的責任などが重視されるに伴い、企業や社員の行動そのものが社会や顧客から評価され、インナーの行動がアウターブランディングにも影響することや、アウターブランディングで発信していることと企業活動の実態(例えば社員の振る舞いなど)に差があると、それが思わぬリスクや、製品やサービスがよくても選ばれない状況につながりやすくなることも、インナーブランディングが注目される背景にあります。
実際に、私たちへご相談くださる企業様も、「アウターブランディングだけでなくインナーブランディングもセットで」、あるいは「まず、インナーブランディングから」ご相談いただくケースが多くなっており、事業変革に向けたインナーブランディングの必要性が高まっていることを肌で感じます。
「これまでのインナーブランディング」は、期待するほど効果をあげていない
では、事業変革に向けたブランディングを進める中で、実際に行われている「インナーブランディング」はどれほどの効果を上げているのでしょうか。
事業変革のためのブランディングにおいて、期待することと、成果を実感していることのギャップが大きい項目の上位には、「売上」「市場シェア」「購買意向」の向上といったビジネス成果に関する項目があがってきます。ですが、それに続く項目の多くは、実は「インナーブランディング」に関する項目なのです。すなわち、「従業員の満足度の向上」「社員の離職率の低下」「社内チームワークの強化」「自社に対する愛着意識の強化」といった、社員の意識に関わる項目で、期待と実感のギャップがあることが示されています。(★印)

事業変革のためのブランディングの必要性を感じ、取り組んでいるにも関わらず、期待した成果があがっていない「インナーブランディング」。なぜうまくいかないのでしょうか。私たちは、事業変革のためのブランディングにおいて、この「インナーブランディング」をどのように捉えるべきでしょうか。
「インナーブランディング」がうまくいかない理由とは?
事業変革のために「インナーブランディング」を捉え直す必要がある
ブランディングを進めているのに、「インナーブランディング」で望ましい効果がなかなか感じられない———今回の調査から明らかになったこの注目のファクト、原因は一体どこにあるのでしょうか。
このブログシリーズの第3回では、ブランディング×事業変革戦略を実現するための有効な戦略として捉え、「ブランドアーキテクチャー」「事業価値デザイン」「習慣アクティベーション」という3つのプロセスをご紹介しました。

多くの場合、インナーブランディングというと、社員に対する浸透コミュニケーション施策にのみ焦点を当てがちです。しかし実はインナーブランディングの取り組みは、ありたい姿を社内で理解・納得し(ブランドアーキテクチャー)、日々の業務活動に落とし込む設計(事業価値デザイン)を行うステージからすでに始まっています。
3つめの「習慣アクティベーション」とは、この設計された内容のアクションを社員に対して実践し、社員が日々の業務で繰り返し実践できるように支援し、事業成果に結びつけていく取り組みです。
事業変革のためのブランディングにおける「インナーブランディング」とは、この3つをしっかりと連動させて、事業変革の行動を喚起し習慣化にまで落とし込むことを表しています。
下記に示すように、調査結果では「社員一人ひとりの行動や判断が、ブランドの目指す方向性や“らしさ”とずれていると感じる」「社員に顧客やステークホルダー視点が不足」「変化のために、何をどう変えればよいのかが、社員にとって分かりにくい」といった課題が上位にあがっていました。こうした、ブランドの方針をどう理解してどう業務に活かせばよいかといった、“具体的なアクションへの迷い”をなくすために、3つが連動した「インナーブランディング」を行うことが大切になっています。

「伝わっている」と「動いている」は別問題
一般的なブランディングでは、事業や組織の「ありたい姿」を定義し、それをストーリー化して社内外へと伝達し、ブランド認知や愛着の向上、そして購買へとつなげていきます。とりわけ「BANIの時代※」と呼ばれる現代では、人への共感や寄り添いがより大切になっており、ブランディングにおいてもまた、論理的な戦略設計だけでなく感情や共感を伴うストーリーを社内外のステークホルダーに丁寧に伝えることが重視されます。
※脆弱(Brittle)、不安(Anxious)、非線形(Nonlinear)、不可解(Incomprehensible)という4つの要素で特徴づけられる、不安定でカオスな世界
確かにブランディングに真摯に取り組む企業は、この「伝える(=Say)」部分をしっかりと意識しています。しかしそれでもパーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)などのメッセージまではつくるが、社員への浸透が不十分で、その先の行動にまで落とし込めていない場合が多くあります。パーパスを掲げながらも実際の企業活動が伴っていない場合は、「パーパスウォッシュ」と言われ、批判を受けるリスクすら含んでいます。
「インナーブランディング」を成功させるには、メッセージを伝えたうえで、さらに「動かす(=Do)」という発想が不可欠なのです。先ほどの調査結果で「行動」に関する課題が目立ったのは、まさにこの「Do」が不足している、ということになります。
つまり、
ブランディングのメッセージを、「事業成果に結びつく」「社員一人ひとりの」「日々の業務での」「意思決定・行動にまで落とし込む」こと。
そして、行動変容→定着→成果という事業変革の好循環(習慣化)を生み出すこと。
すなわち、SayにDoが伴って、初めて「インナーブランディング」は成功するのです。
SayとDoを両輪で回すインナーブランディングを!
「インナーブランディング」のSayとDoを再定義する
インナーブランディングにおける「Say」と「Do」を改めて整理すると、次のようになります。
| Say (=コミュニケーション) |
Do (=ファクトづくり) |
|---|---|
| ● ありたい姿を描き ● ストーリーとして伝え ● 期待と共感をつくる |
● 日々の業務行動にまで落とし込み ● 社員が自分の日々の業務行動として実践し ● 続けることでファクトをつくる |
ブランディングにおいてはSayのメッセージングにばかり注力し、習慣化のDoを支える設計が弱いことがしばしば問題になります。Doを生み出し、実行していくには、
● 行動変容を促すきっかけをつくる
● 一人ひとりの日々の業務につながるところまで落とし込む
● 定着化・習慣化に向けて、「どうやればできるか」「やり続けられるか」(Doing)の仕組みをつくる
という視点をもち、事業変革のためのブランディング活動全体の戦略設計を立てていくことが求められます。
SayとDoは両輪で回す
そして何より重要な観点は、SayとDoを分けて考えないことです。行動(Do)を活性化するためには、期待と共感の醸成(Say)が不可欠ですし、せっかく描いたありたい姿を空文化させないためには、行動によるファクトづくりが必要です。両輪がバランスよく回ることで、インナー満足度が高まり、良い行動が連鎖し、事業成長につなげることができるのです。

「Branding For Growth」: インナーの習慣化に至るまでブランディングを支援する
今回、追跡調査を実施したことにより、事業変革のためのブランディングにおいて、「インナーブランディング」の重要性がより一層高まっていることが明らかになりました。
電通グループが提供するブランディングプログラム「Branding For Growth」は、まさにこのインナーブランディングまでを重視したプログラムとして設計されています。単なる社内浸透コミュニケーションにとどまらず、コンセプトや事業価値の設計・構築から支援し、事業成果に直結する社員の日々の業務の変革行動に落とし込む。そして、意識・行動の変化、定着、そしてその「習慣化」まで、一気通貫でご支援しています。

ブランディングは、未来像を語ることだけがゴールではありません。その未来像が、社員一人ひとりの日々の行動に宿ったとき、初めて事業を前に進める力になります。SayとDoを両輪で回す循環型のブランディングに向け、ぜひ「Branding For Growth」にご相談ください。また、今回の調査結果についてご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。




