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    サステナビリティ経営とは?取り組む意義や事例、SDGsとの違いを解説

    最終更新日:2024年02月26日

    サステナビリティ経営とは?取り組む意義や事例、SDGsとの違いを解説

    企業の社会的な責任が問われる時代。SDGsやESGの取り組みが加速する中で、「企業の社会的責任」と「ビジネスの持続可能性」の両立は、重要な経営課題となっています。

    そのような背景の中、企業の成長戦略に新たな変化をもたらす「サステナビリティ経営」という考え方に注目が集まっています

    この記事では、「サステナビリティ経営」の概要や、その意義や期待される効果、さらに具体的なプロセスを分かりやすく解説します。

    INDEX

    サステナビリティ経営とは?


    サステナビリティ経営とは、企業が環境保護、社会貢献、経済成長を同時に達成し、「企業の社会的責任」と「ビジネスの持続可能性」を両立させるための戦略的な経営手法です。企業は環境への負担を軽減し、社会的責任を果たしながら事業の成長を目指します。

    サステナビリティ経営の3つの観点

    サステナビリティ経営は「環境・社会・経済」の3つの観点で、持続可能な状態を目指す経営の取り組みです。それぞれは相互に影響しあうため、成功のためには総合的な経営アプローチが必要になります

    環境
    企業は環境への影響を最小限に抑える努力が求められています。再生可能エネルギーの使用、廃棄物の削減、持続可能な資源の利用など、環境に配慮したビジネスモデルの構築が重要になります。

    社会
    企業は従業員、顧客、地域社会との関係を重視し、公正な労働条件、多様性と包摂性の促進、地域コミュニティへの貢献など、多様なステークホルダーに対して社会的な責任を果たすことが求められます。

    経済
    企業は生産性の向上や、経済成長への貢献が重要です。良好な労働環境の整備や、社会保障の拡充、長期的なビジネスモデルの開発、貧困問題の解決といったことが求められます。

    サステナビリティ経営が必要とされる背景

    ・ 深刻な環境問題への対応
    ・ 社会的責任の高まり
    ・ 法律や規制の遵守
    ・ 統合的な企業経営の必要性

    サステナビリティ経営が必要とされている背景には、環境問題の深刻化、社会的責任の高まり、法律や規制への対応といった複数の企業課題があります。これらの課題への対応は、企業の存続と競争力を高めるために不可欠であり、ビジネスと社会の共生を目指す上でも非常に重要であるため、事業と一体となった経営戦略が必要となっています。

    深刻な環境問題への対応
    気候変動、資源枯渇、生態系の損失などの環境問題は広く認知されるようになりました。これらの問題はビジネスに悪影響を及ぼす可能性があるため、企業がその活動によって環境保全に貢献することが期待されています。

    社会的責任の高まり
    消費者や投資家、金融機関などのステークホルダーは、環境や社会に対して責任ある行動をとる企業を高く評価します。ステークホルダーからの信頼と支持を得て、企業のブランド価値や市場競争力の向上につなげることが求められています。

    法律や規制の遵守
    環境保護や社会福祉を目的とした法律や規制が強化される中、企業はこれらの規則に適応し、遵守する必要があります。法規制の遵守を確保しながら、ビジネスの成長と革新を推進することが求められています。

    統合的な企業経営の必要性
    上記の課題背景を含めた企業を取り巻く「環境・社会・経済」の課題に対して、個別に対応するだけでなく、事業活動と一体になって統合的に解決していくことが求められています。

    サステナビリティ経営とGRIスタンダード

    サステナビリティ経営は、上記で述べたように「環境・社会・経済」という3つの観点から取り組まれる企業活動です。そのため、ややもするとそれぞれの観点から行われた個別の取り組みをそれぞれの基準で評価してしまうという懸念があり、企業経営全体として統一性のある評価基準の設定が期待されていました。

    これを踏まえて、現在、The Global Reporting Initiative(GRI)という組織が、サステナビリティ評価の国際基準となるGRIスタンダードを設定しています

    GRIスタンダードは3つのカテゴリで構成されています。
    ・ 全ての組織に共通する「GRI共通スタンダード」
    ・ 特定の業界に特化した「GRIセクター別スタンダード」
    ・ 特定のテーマに焦点を当てた「GRI項目別スタンダード」

    最新のスタンダードは、GRIのウェブサイトからダウンロード(PDFファイル)が可能です。

    SDGsやESG、CSRとの違い

    サステナビリティ経営、SDGs、ESG、そしてCSRは、共に企業の環境保護や社会的責任を示す概念です。一方で、それぞれの焦点やアプローチには違いがあります。

    SDGs(Sustainable Development Goals)は国連が定めた17の持続可能な開発目標です。企業にはこれらの目標達成に貢献する活動が期待されています。

    ESGは環境保護(Environment)、社会的責任(Social)、良好な企業統治(Governance)といった観点から企業を評価するための基準です。特に投資の分野で用いられます。

    CSR(Corporate Social Responsibility)は企業の社会的責任を意味し、地域社会への貢献や倫理的なビジネス慣行を指します。

    サステナビリティ経営は、環境・社会・経済のバランスに焦点を当てて、経営戦略全体において持続可能性を重視したアプローチを行います。

    サステナビリティ経営との共通点

    ・ 環境や社会の課題に対応
    ・ 持続可能な成長の推進
    ・ 長期的な戦略

    サステナビリティ経営とSDGs、ESG、CSRへの取り組みには多くの共通点があります。いずれも、企業が環境や社会に対して責任を持つ点や、持続可能な開発を促進することを目指すという点で共通しています

    また、長期的な取り組みであるという点も同じです。環境改善や地域・社会との信頼構築はすぐに達成できるものではありません。環境の変化や地域・社会の歴史をしっかりと理解し、健全で必要とされる経営を続けていくという姿勢において共通しています。

    サステナビリティ経営との相違点

    •    評価基準
    •    取り組みの主体
    •    利益目標

    サステナビリティ経営は、経営戦略全体で持続可能性を実現することを目指します。一方、SDGsは特定の国際目標に、ESGは投資家の評価基準に、CSRは社会的責任の具体的な行動に重点を置いています

    また、主体という観点では、サステナビリティ経営の主体が企業であるのに対し、SDGsでは企業を含めた社会や国全体が主体となります。さらに、サステナビリティ経営の目標が、サステナビリティの実現とともに、事業としての利益創出にあることも異なると点といえるでしょう。

    サステナビリティ経営に取り組む意義

    サステナビリティ経営に取り組む意義は、主体となる企業が、経済的な成功と環境的・社会的責任のバランスを実現することで、長期的な存続と成長を確保しながら、環境や社会へ良い影響を与えることにあります。企業がサステナブルなビジネスモデルを確立することは、企業の信頼性を高め、顧客やステークホルダーとの強固な関係を築くことに貢献します。

    サステナビリティ経営によって期待される効果

    ・ ブランドイメージの向上
    ・ コスト削減
    ・ 市場競争力の強化
    ・ 新市場の開拓
    ・ 優秀な人材の獲得

    ブランドイメージの向上
    環境や社会への貢献活動を行うことで、企業への信頼感などのイメージが向上します。持続可能な素材を使用した製品や、環境保護に関する活動は、消費者に好印象を与え、ブランドの評価を高めます。

    長期的なコスト削減
    エネルギー効率の改善や廃棄物削減などにより、事業コストが削減できます。再生可能エネルギーの利用や廃棄物リサイクルは、長期的に運営コストを下げる効果があります。

    市場競争力の強化
    環境に配慮した製品やサービスを提供することで、新しい顧客層を獲得し、競争優位を築きます。エコラベル商品やサステナブルなサービスは、エコ意識の高い顧客に選ばれやすくなります。

    新市場の開拓
    社会的課題を解決するイノベーションは、新たなビジネスチャンスを生み出します。エネルギーソリューション、バイオベースの素材開発を進めることで、まだ開拓されていない市場にアクセスできます。

    優秀な人材の獲得
    環境的・社会的責任を重視する企業文化は、同じ価値観をもった優秀な人材の獲得につながります。近年は、サステナビリティに関心の高い学生も多く、新卒採用においても効果が期待できます。

    サステナビリティ経営の留意点

    ・ 戦略策定の負荷
    ・ 柔軟な視点の必要性
    ・ 短期的なコスト増加の可能性
    ・ 成果が見えにくい

    サステナビリティ経営は長期的な取り組みであるため、健全で効果的な経営を追求していくために、計画の段階で下記のような留意点を認識しておくことが大切です

    戦略策定の作業負荷
    サステナビリティ経営の戦略は、国内外の法規制、業界・技術の動向、生活者意識などの多様な情報を集め、全体を俯瞰しながら策定されます。こうした作業は経営層や推進担当者にとって相応の負荷となる可能性があります。

    柔軟な視点の必要性
    サステナビリティ経営では、「環境・社会・経済」の観点から、既存事業の常識を捉えなおすことも必要となります。その際、過去の既成概念に縛られず、未来を見据えた柔軟な視点が求められます。

    短期的なコスト増加の可能性
    環境や社会への取り組みでは初期コストがかかる場合があります。例えば、エコフレンドリーな材料の使用や効率的なエネルギー源への切り替えは、短期的にはコスト増につながる可能性があります。

    成果がすぐに見えにくい
    サステナビリティ経営の成果は、すぐに現れにくい場合があります。例えば、自然環境の改善などへの取り組みでは、時間をかけた継続的な活動が求められます。その一方で、サステナビリティ経営を長期に渡り進めていくことは、確実に企業のブランド力や信頼性の向上につながります。

    サステナビリティ経営を成功させるプロセス

    1. サステナブル動向を見据えた課題の特定
    2. 社会や環境への貢献を通じたビジョンの策定
    3. 目標の設定と実行・情報開示

    ここからは、サステナビリティ経営を成功させるための具体的なプロセスを3つのステップで解説します。それぞれのステップで、「上手く進めるポイント」と「注意点」をリストアップしています。サステナビリティ経営を検討・導入する際にお役立てください。

    1. サステナブル関連の動向を考慮した課題の特定

    まず、サステナブル関連の法規制や、業界・技術・生活者意識の動向を把握して、自社の業務と社会・環境へのインパクトを分析し、重要な課題を特定します。このステップでは、社内外の意見を広く収集し、優先課題を決めるプロセスが求められます。

    上手く進めるポイント
    ・ 多角的な情報収集
    ・優先課題の選定
    ・内外部ステークホルダーの関与

    「課題の特定」の段階では、国内外の法規制や業界の動向、ステークホルダーの意見など、社内外の多様な情報を集め、俯瞰できるようにまとめることが大切です。また、収集した情報を分析し、優先すべき課題をしぼっていく際に、多様なステークホルダーを巻き込んでおくことも上手く進めていくポイントになります。

    注意点
    ・ 課題選定の偏り
    ・ 社会の価値観、トレンドの変化
    ・ 社内コミュニケーション

    社会や市場のトレンドは常に変化しているため、定期的に収集した情報を更新し、課題を再評価していきましょう。また、なるべく多くの従業員が課題の特定プロセスに関与し、理解していることが重要です。様々な視点や意見が加わることで、課題選定の偏りを回避できます

    2. 社会や環境への貢献を通じたビジョンの策定

    次に、長期的なビジョンを設定し、将来の目指す姿を明確にします。これは、社会や環境への貢献を通じて自社がどうありたいかを描く作業であり、社内外の多様な意見を反映させることが大切です。具体的なシナリオや戦略を作成し、全社員が共有し理解することが求められます。

    上手く進めるポイント
    ・ 長期的視点、将来世代の視点
    ・ 様々な未来の想定
    ・ 企業理念との整合性

    ここでのポイントは、将来の社会や環境の状況を踏まえた上で、10年後、20年後といった長期的なビジョンを設定することです。この際、将来世代であるサステナビリティ・ネイティブであるZ世代の視点を取り入れることも有効でしょう。またこのビジョンは、達成したい社会的・環境的成果を明確にし、企業が目指すべき方向性を示すため、企業理念との整合性を考慮する必要があります。

    注意点
    ・ 社内リソースの制限
    ・ 企業状況の変化
    ・ 業界全体の変化

    高い理想を掲げつつも、社内リソースの状況も勘案して、現実的に達成可能なビジョンを設定することが重要です。また、企業の状況や業界全体が変化するという前提のもと、ビジョンが時代に合っているかも定期的に見直し、必要に応じて調整することも大切です。

    3. 目標の設定と実行・情報開示

    設定されたビジョンを実現するために、具体的な目標を設定し、それに向けた行動計画を立てます。目標は、現状からの改善点を明確にし、実現可能なものにする必要があります。また、進捗を定期的に評価し、必要に応じて計画を調整する柔軟性も重要です

    上手く進めるポイント
    ・ 期間に応じた目標設定
    ・ 具体的数値を決定
    ・ モニタリング

    ビジョンを達成するためには、短期・中期・長期の具体的な目標を設定することが大切です。その目標には具体的な数値目標や期限が含まれ、実行可能なアクションプランを伴っていることもポイントになります。目標に対する進捗状を定期的にモニタリングし、必要に応じて計画を調整していきます。

    注意点
    ・ 企業活動への支障
    ・ 情報開示
    ・ ステークホルダーへの報告

    設定した目標を無理に達成しようとして、経営に支障が及ばないように注意する必要があります。また、サステナビリティ経営の成果を、目標値と合わせて逐次ステークホルダーに公開していくことが大切です。ステークホルダーの支持を得る上でも情報開示、報告は大きな役割を果たします

    サステナビリティ経営の事例

    サステナビリティ経営はすでに多くの企業で導入されています。サステナビリティ経営の実例とその効果について詳しく見ていきましょう。

    LUSH

    ナチュラルコスメブランドのLUSHは、自社の基金「SLush Fund」を立ち上げ、LUSHの原材料購入費の2%を積み立てて、世界各地でのパーマカルチャーの浸透やコミュニティプロジェクトの運営を支援しています。また、容器回収プログラム「BRING IT BACK」やパッケージフリーの「ネイキッド」商品の導入を通じて、数千トンのプラスチック廃棄物を削減することに成功しました。

    これらの活動は、持続可能な市場の形成や、環境に配慮したビジネスモデルの構築といった事業成長につながっています

    BOSCH

    エンジニアリング・テクノロジー企業のBOSCHは、資源効率化の取り組みとして、MEMS(※1)センサー資材の50%削減、製品カーボンフットプリント資材の使用量を33%削減。また、冷蔵庫に低CO2スチールを使用して製品カーボンフットプリントの33%削減を実現しました。これらは環境改善と事業成長の両立につながっています

    さらに、STEAM教育支援や渋谷区とのS-SAP協定(※2)締結を含む社会貢献活動も実施し、社会的責任をもって、自社の技術革新を推進しています

    ※1:MEMS(MicroElectroMechanical Systus)センサー : 微細な機械的要素、センサー、アクチュエーター、そしてそれらを制御する電子回路を一つのチップ上に統合したデバイス。
    ※2:S-SAP(Shibuya Social Action Partner)協定 : 企業や大学と地方自治体が協力し合って地域社会の課題解決に取り組むための公民連携制度。

    まとめ

    環境・社会・経済の観点からトータルに自社の事業を考えることを通じて、企業の社会的責任と事業成長との両立させる「サステナビリティ経営」。サステナビリティ経営の導入は、企業のブランド力や顧客ロイヤルティの強化につながり、企業の成長戦略に新たな変化をもたらすでしょう

    Do! Solutionsでは、サステナビリティ経営の検討や実現のための意思決定を支援する、いくつかのお役立ちソリューションをご用意しています。

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