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    広告・イベント・販促、その取り組みがブランド価値にどう影響する?マーケティングプロセスの脱炭素化という未来のスタンダード

    最終更新日:2026年10月15日

    広告・イベント・販促、その取り組みがブランド価値にどう影響する?マーケティングプロセスの脱炭素化という未来のスタンダード

    気候変動への対応が世界的な課題となるなか、企業にはGHG(温室効果ガス)排出量の削減やサステナビリティに関する情報開示など、脱炭素化への対応が求められています。その対象はサプライチェーン全体へと広がり、広告やコンテンツ、イベント、キャンペーン、メディア出稿といったマーケティング活動も例外ではありません。では、マーケティングプロセスの脱炭素化を、どう進めればよいのでしょうか。

    本記事では、電通 サステナビリティ・コンサルティング室の竹嶋をモデレーターに、電通グループの井上、電通クリエイティブピクチャーズの青石、電通ライブの松野が登壇。広告・マーケティング業界全体で進む、脱炭素化についての取り組みと、電通グループの具体的な削減策「MIRAI STANDARD SWITCH」を紹介します。

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    なぜマーケティング活動にも脱炭素化が求められるのか

    企業の脱炭素化の取り組みは、情報開示への対応に加え、サプライチェーン全体へと対象が広がっています。こうした変化のなか、なぜマーケティング活動にも脱炭素化が求められているのでしょうか。その背景にある2つの理由について、電通 サステナビリティ・コンサルティング室の竹嶋が解説しました。

    サプライチェーン全体で考える、マーケティングの脱炭素化

    竹嶋:企業の皆さまも、それぞれGX(グリーントランスフォーメーション)に取り組まれていると思います。これからは、有価証券報告書においても、企業の時価総額に応じて段階的にサステナビリティに関する情報開示が義務付けられていくなど、企業には自社の取り組みを把握し、説明できる状態にしておくことが求められています。

    そのためには企業の脱炭素化をサプライチェーン全体で進める必要があります。私たち広告・マーケティング会社が提供する広告やコンテンツ、イベント、キャンペーン、メディア出稿なども、そのサプライチェーンの一部に含まれます。

    企業がサプライチェーン全体でGHG排出量を削減していくためには、こうしたマーケティング領域においても、脱炭素化に取り組んでいく必要があります。

    広告・マーケティングに関わる産業全体で進める脱炭素化

    広告・マーケティング活動の脱炭素化には、広告会社だけでなく、広告を発注・出稿する広告主、制作会社、イベント会社、メディア企業など、各種産業全体で取り組むことが欠かせません。まず重要になるのは、脱炭素化の必要性を共有する「知る」ことと、排出量を可視化する「測る」こと。それぞれの取り組みについて、電通グループの井上、電通クリエイティブピクチャーズの青石、電通ライブの松野が紹介しました。

     「知る・測る・減らす」で、広告・マーケティングの脱炭素化を業界基準へ 

    井上:日本国内の広告活動に伴うGHG排出量は年間約1,500万トン(※)。東京都23区の年間排出量とほぼ等しい規模です。一方、広告・マーケティング活動においては、脱炭素化を進める基盤が十分に整っていないことや、広告・マーケティングに関わる企業全体で自分ごと化する意識にも課題があります。
    ※出典:2025年の日本の広告費に環境省発行の「産業連関表ベースの排出原単位(GLIO:2005年表)「広告」を乗じた概算

    そこで、広告業界団体と広告関連企業で、継続的に協議・検討中ではありますが、脱炭素化を「知る・測る・減らす」の3つのステップで捉えようとしています。必要性を「知る」、GHG排出量を「測る」、具体的な施策で「減らす」。特に「知る」「測る」は、広告活動全体で進める共創の取り組みが重要です。

    脱炭素化の必要性を「知る」

    「知る」については、広告業界全体で取り組みを協議・検討しています。2023年10月に、マーケティング領域の脱炭素化イニシアティブ「Decarbonization Initiative for Marketing(DIM)(※)」をリリースしました。その後、日本広告業協会(JAAA)にも業界全体課題として捉えて脱炭素化の活動にご理解を得ることができ、JAAA会員社でこの取組みに賛同する広告会社とともに業界全体の脱炭素化に向けた協議・検討をしています。
    ※電通グループ、国内広告業界標準の温室効果ガス(GHG)排出量可視化の推進およびGHG削減に向けたマーケティング領域の脱炭素化イニシアティブ「Decarbonization Initiative for Marketing」立ち上げ

    そして「測る」において重要なのが、業界共通の算定基準です。それぞれが異なる基準でGHG排出量を算定していては、同じ仕事でも結果を比較することができません。そこで、第1弾として広告会社、制作会社、イベント会社の3団体が連携し、業界共通のカーボンカリキュレーターの開発を進めています。ここからは、制作・イベントの現場で進む「測る」の具体的な取り組みをご紹介します。

    映像制作のGHG排出量を「測る」

    青石:映像制作領域では、広告映像制作に特化したカーボンカリキュレーター「Carbon Calculator for Content Production(CCCP)」を開発しています。電力使用量や移動、食事、宿泊などの活動量データから、制作プロセス全体のGHG排出量を可視化します。さらに、排出量の多い工程を把握することで、企画段階から制作手法を比較し、効果的な削減策を検討することも可能です。

    イベント制作のGHG排出量を「測る」

    松野:イベント領域では、使用するカーボンカリキュレーターによって、同じイベントでも算定結果に約3倍の差が出るケースがありました。そこで業界内で連携し、「イベントカーボンシミュレーター」の開発・試験運用を進めています。実際の活動量をもとに、事前制作から廃棄までのGHG排出量を可視化。排出量の多い工程を把握し、具体的な削減アクションにつなげることを目指しています。

    「測る」ことで排出量を精緻化し、具体的な削減アクションへ

    竹嶋:例えば、地方でロケを行う映像制作で、制作費全体が1,500万円だったとします。従来の算定方法では、制作費に所定の排出係数を掛けてGHG排出量を推計するため、このケースでは約32.13トンと算定されます。ただし、金額をもとにした推計のため、実際の制作活動に伴う排出量との間に差が生じる場合があります。

    そこでCCCPを活用し、移動や宿泊、撮影、機材、電力など、実際の活動量をもとに排出量を算定すると8.70トンとなり、排出実態をより精緻に把握できます。さらに、排出量の大きい地方への移動やロケを、スタジオで撮影できるバーチャルプロダクションに置き換えることで、3.74トンまで削減できるという試算になります。

    このように、まず実際の活動に即してGHG排出量を「測る」ことで、GHGの排出量を精緻化するとともにどの工程から多く排出されているのかを把握できます。そのうえで、削減効果の大きい工程を見極め、バーチャルプロダクションの活用など、具体的な「減らす」アクションにつなげることができます。

    「減らす」を実践する「MIRAI STANDARD SWITCH」

    GHG排出量を可視化したら、次に必要なのが、具体的な削減アクションへ移すことです。電通グループでは、マーケティングプロセスにおけるさまざまな脱炭素ソリューションを「MIRAI STANDARD SWITCH(ミライ・スタンダード・スイッチ)」として展開しています。その考え方と具体的な取り組みについて、竹嶋が紹介しました。

    マーケティングプロセスに「未来のスタンダード」を

    竹嶋:「MIRAI STANDARD SWITCH」は、未来のスタンダードとなる選択を、今のマーケティング活動に取り入れていくための脱炭素ソリューションです。コンテンツ、イベント・空間、グッズ・キャンペーン、メディア、コミュニケーションなど、幅広い領域でGHG排出量を「減らす」ための選択肢を提供しています。

    本来、商品はもちろん、その魅力を伝える広告やイベントやキャンペーンなどは人の心を動かし、日々の生活を豊かにするものです。だからこそ、生み出される過程も未来にいいものであってほしい、そのためにマーケティングの制作プロセスの未来のスタンダードを作ろうという想いで、「MIRAI STANDARD SWITCH」を作りました。

    制作の現場から、具体的な削減へ

    青石:コンテンツ制作領域では、バーチャルプロダクションや生成AI、再生可能エネルギー100%電力で運営する撮影スタジオなどを活用し、制作プロセスの脱炭素化を進めています。

    バーチャルプロダクションは、スタジオ内の大型LEDウォールに背景を映し出して撮影する手法です。実際のロケ地への移動や大規模な美術セットの制作を減らせるほか、生成AIを背景映像制作に活用することで、制作工程そのものを効率化できます。
    例えば、バーチャルプロダクションと生成AIを組み合わせることで、従来のロケ撮影と比べて約80%のGHG削減が期待できるという試算もあります。

    松野:イベントでは、会場選びから空間づくり、当日の運営まで、それぞれの段階で環境負荷を下げることができます。
    例えば会場選びでは、電通ライブが提供する会場検索プラットフォーム「VENUE LINK」を活用し、イベントの目的や条件に加えて、サステナビリティの観点からも適した会場を検討できます。さらに、空間づくりでは既存の建物や設備、什器などを活用し、運営では環境に配慮したさまざまな工夫を取り入れることで、イベント全体を通じたGHG排出量の削減につなげています。

    このほかグッズ・キャンペーン領域での環境配慮素材の活用や配送方法の見直し、メディア領域での通信量削減など、マーケティングプロセスのさまざまな場面で削減策を展開しています。

    さらに重要なのが、こうした取り組みを「実施して終わり」にしないことです。社内外への発信やPR、広告などを通じて取り組みの価値を伝えることで、脱炭素化を企業やブランドの新たな価値へとつなげていくことも、「MIRAI STANDARD SWITCH」が目指すところです。

    脱炭素化から広がる、マーケティングの新たな可能性

    マーケティングプロセスの脱炭素化は、GHG排出量を減らすだけの取り組みなのでしょうか。ウェビナーの最後には、制作現場の働き方改革や生活者の行動変容や社会の変革、それによる企業のブランド価値向上まで、脱炭素化がもたらす可能性について登壇者が意見を交わしました。

    「減らす」の先にある、ブランドや社会への価値

    青石:コンテンツ制作の脱炭素化は、単にGHG排出量を減らすだけではありません。バーチャルプロダクションの導入などで、長期間の地方ロケなども不要となり、現場の働き方も変えます。

    海外では、CMや映画の中にサステナブルな行動や価値観を自然に取り入れる動きも広がっています。サステナブルな価値観をコンテンツの中で魅力的に発信することは、社会全体への貢献にもつながり、企業のブランド価値向上にも寄与します。

    イベントを、環境への行動変容を生む接点に

    松野:イベントも、多くの人が集まり、ファンや参加者を巻き込むことで大きな熱量が生まれる場です。だからこそ、環境に配慮したアクションを組み込むことには大きな意味があります。

    イベントを企業活動の中で後回しにするのではなく、多くの人に影響を与えられる接点として捉える。そこで生まれる体験を通じて、環境への意識や行動を変えていくことは、企業のブランディングや価値向上にもつながると考えています。

    業界の共創から、脱炭素化の輪を社会へ

    井上:広告業界から脱炭素化の輪を広げていくことができれば、生活者を含めた社会全体の環境意識を高めることにも貢献できます。

    脱炭素化は、一社だけでは解決できない課題です。だからこそ競合関係にある企業も含めて、業界全体で取り組んでいくことが重要です。「MIRAI STANDARD SWITCH」も、完成したものを一方的に提供するのではなく、企業やコンテンツホルダー、広告会社、メディアなど、サプライチェーンに関わる皆さまと一緒につくり、育てていくものだと考えています。

    まずはできることから小さく始めて育てる

    竹嶋:まずは、自社のマーケティング活動がどのような状況にあるのかを把握することから始まります。そのうえで、施策を実施した場合のGHG排出量を事前にシミュレーションし、削減目標やガイドラインを設定して、具体的な削減ソリューションを取り入れていきます。

    そして、取り組んで終わりではなく、その活動が持つ価値を社内外にきちんと伝えていくことも重要です。

    すべてを一度に変える必要はありません。まずは現状を知り、測り、できるところから削減していく。マーケティングプロセスの一つひとつを見直しながら、企業の皆さまと一緒に「MIRAI STANDARD SWITCH」を育てて、社会の脱炭素化の取り組みを進めていきたいと考えています。--

    まとめ|マーケティングプロセスの脱炭素化を、未来のスタンダードへ

    広告やコンテンツ制作、イベント、キャンペーン、メディア出稿なども、企業活動を支えるサプライチェーンの一部です。マーケティング活動もまた、環境負荷を把握し、削減していく対象になりつつあります。

    今回紹介した取り組みに共通するのが、「知る・測る・減らす」という考え方です。脱炭素化の必要性を知り、GHG排出量を測り、その結果をもとに効果的な削減策を選ぶ。このサイクルを業界全体で回していくことが、マーケティングプロセスの脱炭素化につながります。
    そして、脱炭素化がもたらすのはGHG排出量の削減だけではありません。制作現場の働き方や生産性、生活者の行動変容など、新たな価値につながる可能性も見えてきました。

    未来には当たり前になっているかもしれない選択を、今のマーケティング活動に少しずつ取り入れていく。その積み重ねが、これからのマーケティングの「スタンダード」をつくっていくのではないでしょうか。

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