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    AI時代に「筋のいいインサイト」を見つける思考の型 ~人を動かす“隠れたホンネ”はどう育つのか~

    最終更新日:2026年06月15日

    AI時代に「筋のいいインサイト」を見つける思考の型 ~人を動かす“隠れたホンネ”はどう育つのか~

    AIの進化により、誰もが手軽に“それらしい答え”を導き出せる時代になりました。
    マーケティングにおいても、「インサイト」は人間だけの領域ではなくなりつつあります。
    一方で、思わず「そうだったのか!」と人の心を動かす“筋のいいインサイト”は、いまだAIには生み出しきれないとも言われています。

    本記事では、2026年2月19日に開催されたウェビナーより、株式会社電通 マーケティングディレクター・佐藤真木の講演を採録。AI時代だからこそ求められる「人間ならではの思考の型」と、インサイトを育てる具体的なプロセスについて、実践事例を交えながらダイジェストでお届けします。 

    PROFILE

     

    INDEX

    AI時代に問われる「インサイトの価値」

    AIは「それっぽい答え」を無限に生成できる

    AI時代。もうこの言葉を聞かない日はないくらいになってきましたよね。
    それに伴って「ホワイトカラー消滅」といった言葉もよく聞かれるようになりました。
    今回ご参加いただいている方も、マーケティングや企画、事業開発など、いわゆる知的労働に携わる方が多いと思います。その中で、「AI時代に自分たちの仕事はどう変わるのか」ということを考える機会は増えているのではないでしょうか。

    私自身も、この1年くらい、AIを使ってインサイトを見つけられないかという実験をかなり行ってきました。その中で感じたのは、AIは「発見感の薄いインサイト」レベルなら、大量に出すことは非常に得意だ、ということです。

    ネット上にある情報を整理し、「ターゲットはこう考えているのではないか」という“それっぽい答え”は、指示を出せば無限に生成されます。ただ、それを見ても、「なるほどね」とは思うけれど、「そうそう!まさにその通り!」と深く腹落ちするところまでは、なかなか届かない。

    "筋のいい"インサイトとは

    一方で、世の中には、「そうそう!言われてみればまさにその通り!」と人をハッとさせる、“発見感の強いインサイト”があります。私はこれを、「筋のいいインサイト」と呼んでいます。
    例えば、スティーブ・ジョブズがiPhoneを世に出した時、多くの人が、
    「そうそう、こういうものが欲しかったんだよね」と感じましたよね。
    でも、それ以前に、「こういうスマートフォンが欲しい」と明確に言語化できていた人は、そこまで多くなかったと思うんです。つまり、本人も気づいていなかった“隠れた欲望”を、形にすることで可視化した。
    これが、人を動かすインサイトだと思っています。

    AI時代に、人間に求められる役割とは

    AIは、合理的で、平均的で、客観的な答えを出すことには非常に優れています。
    ただ、人間はそうではありません。
    人間は、「なんか引っかかる」「みんなそう言うけど、本当にそうかな」
    「理由は分からないけどモヤモヤする」という、“主観的な違和感”を持てる存在です。

    実は、その小さな違和感の中に、まだ誰も言葉にしていないインサイトの卵が隠れていることがあります。だから今回のテーマとしては、このAI時代に、人間にしか出せない“筋のいいインサイト”をどう育てていくのか。そのための思考の型について、お話しできればと思っています。

    インサイトとは何か—ニーズとの決定的な違い

    インサイトとは「言葉にして自覚できていない欲望」

    まず、「インサイト」という言葉について整理したいと思います。
    マーケティング業界ではよく使われる言葉ですが、実はかなり曖昧に使われているケースも多いんですよね。私は、インサイトを、「人を動かす隠れたホンネ」と定義しています。
    もう少し噛み砕いて言うと、「言葉にして自覚できていない欲望」です。

    人間には、自分で認識している欲望と、自分でもまだ言葉にできていない欲望があります。
    インサイトというのは、後者の“まだ自覚されていない欲望”なんです。

    ニーズとインサイトは何が違うのか

    ここで非常に重要なのが、「ニーズ」と「インサイト」は違う、ということです。実際のビジネスの現場では、この2つがかなり混同されています。例えば、「10km走った後は水が飲みたい」これは本人も分かっていますし、周囲から見ても明らかですよね。つまり、“自覚されている欲望”です。これはニーズです。

    一方、インサイトはもっと深い。本人ですら、「なぜそう感じるのか」「本当は何を求めているのか」をうまく言葉にできていない。でも、何かをきっかけに、「あ、それだったんだ」と急に気づく。その“隠れたホンネ”こそがインサイトなんです。

    人を動かす“隠れた真実”を見つける

    この考え方に近いものとして、私が参考になったのが、ピーター・ティールの『ゼロ・トゥー・ワン』に出てくる「隠れた真実」という言葉でした。
    世の中には、まだ誰も気づいていないけれど、本当は存在している“真実”がある。
    インサイトとは、そうした「人を動かす隠れた真実」を見つけることなんだと思っています。

    人を動かすインサイトの力

    「突然、無性に飲みたくなる」コカ・コーラの発想

    20年ほど前、弊社の先輩が担当したコカ・コーラの事例があります。

    「コーラを飲みたくなる時」という調査では、
     暑い時 
     ハンバーガーを食べる時 
    といった回答が多く出ていました。
    ただ、その担当者は、「本当にそうなのかな?」と違和感を抱いたそうです。

    特に気になったのが、「その他」の回答比率が妙に高かったことでした。
    そこで周囲にヒアリングしてみると、「突然飲みたくなる」「理由はないけど無性に飲みたくなる」という声が多く出てきた。

    そこから、「コカ・コーラって、“突然、無性に、飲みたくなるもの”なんじゃないか?」
    という仮説が生まれました。そして、「ノーリーズン(理由はない)」というキャンペーンにつながっていったんです。

    諸葛孔明は“相手のインサイト”を見抜いていた

    もう一つ有名なのが、三国志の「空城の計」です。兵力のない孔明が、あえて城門を開け放ち、悠然と琴を弾いていた。
    それを見た敵の非常に優秀な軍師である司馬懿は、「これは孔明の罠に違いない」と考え、撤退します。これは、孔明が司馬懿の“隠れたホンネ”を理解していた、ということなんです。

    つまり、「頭のいい人ほど、好都合すぎる状況を疑う」という心理ですね。
    孔明は、人や武器ではなく、“相手のインサイト”を使ってピンチを乗り切ったわけです。

    インサイトは「人海戦術や予算」を超える武器になる

    インサイトの面白さは、人海戦術や予算を超えて、人を動かせることです。
    だからこそ、情報があふれるAI時代においても、「人は本当は何を欲しているのか」
    を見抜く力は、ますます重要になっていくと思っています。

    「筋のいいインサイト」を見つける5つの思考ステップ

    違和感から始まる「出世魚モデル」

    インサイト発見には、再現可能ないくつかの“型”があります。私はこの中の代表的なものを、「出世魚モデル」と呼んでいます。魚が成長段階で名前を変えるように、インサイトも、

     違和感 
     常識
     問い 
     仮説 
     検証

    を経て育っていく。具体的には、

    という5ステップです。

    常識を疑い、“問い”を立てる

    違和感が生まれる時、その裏には必ず「常識」があります。つまり、「なぜ自分はモヤモヤしたんだろう?」を掘っていくと、世の中で“当たり前”とされている価値観にぶつかる。
    そして、その常識に対して、「本当にそうなのか?」と問いを立てたところから、インサイトを探す旅が始まります。

    言語化と検証でインサイトを磨き上げる

    インサイト発見のプロセスで、最も時間がかかるのは「言語化」です。私は、全体の9割くらいは言葉を磨く時間だと思っています。「不安」と「恐怖」、「嫌い」と「ずるい」。2つは似ているようで、実は全然違う。こうした“言葉のズレ”を丁寧に掘り下げることで、人間のホンネの輪郭が見えてきます。

    実践事例:「スマドリバー渋谷」はどう生まれたのか

    「飲めない人は飲み会が嫌い」という常識への違和感

    「スマドリバー渋谷(※)のプロジェクトは、私自身の違和感から始まりました。私はお酒が飲めないんですが、「飲めない人は飲み会もキライ」だと思われていることにモヤモヤがあったんです。実際、調査では、「飲めない人の3分の2が飲み会嫌い」という結果も出ていました。でも、本当に“嫌い”なんだろうか?という違和感があった。

    ※「スマドリパー渋谷」は、お酒を飲める人・飲めない人が隔たりなく楽しめる、新しい“飲み方の多様性”を提案するバー。「飲めない自分のままでいい。」をコンセプトに、誰もが自分らしく過ごせる場づくりを目指している。

    「嫌い」ではなく「ずるい」というホンネ

    チームで対話を重ねる中で、あるメンバーが、「なんか、飲める人ばっかり楽しんで、ずるい!って思うことがあるんですよね」と言ったんです。その瞬間、場が一気に盛り上がりました。つまり、“嫌い”なのではなく、「自分も本当は楽しみたい」という飲めない人が自分で自覚できない欲望が隠れていた。“嫌い”ではなく“ずるい”。インサイトとは、こういう“わずかな言葉のズレ”を見つけることなんだと思います。

    インサイトからコンセプト・体験設計へ

    この「ずるい」というインサイトから、「飲めない人でも飲みの場を楽しめる体験を作れないか」という方向性が見えてきました。
    そこから、
     ノンアル・ローアル100種類以上 
     低い度数での飲み比べ体験 
     度数に頼らない高揚感 
    などのアイデアが生まれていきました。

    筋のいいインサイトが見つかると、企画を闇雲にジャンプさせる(尖らせる)までもなく、本質的に強いアイデアや表現になる。そこが、インサイトの強さだと思っています。

    AI時代にこそ重要な「あなたらしさ」

    人間の価値は「主観」と「違和感」にある

    AIは、合理的で、平均的で、無難な答えを出すことには非常に強い。ただ、人間は違います。人間は、風変わりで、主観的で、ちょっとひねくれた違和感を持てる存在です。

    「なんか引っかかる」「みんなそう言うけど違う気がする」その感覚こそが、人間にしか持てない価値なんだと思います。
    AI時代になるほど、“平均”ではなく、“あなたらしさ”が重要になっていく。

    “あなたらしいインサイト”はどう育つのか

    最後にお伝えしたいのは、インサイトは、「客観的な正解」から生まれるわけではない、ということです。むしろ、
     コンプレックス 
     違和感 
     モヤモヤ 
     好き嫌い 
     個人的体験 
    といった、“あなたらしさ”の中から育っていく。AI時代だからこそ、自分自身の違和感を大事にしてほしい。その違和感を問いに変え、言葉にし、磨き続けることで、AIには見つけられない“筋のいいインサイト”につながっていくのではないかと思っています。

    AI時代に“筋のいいインサイト”を育てる研修プログラムのご案内

    今回ご紹介した、「インサイト発見の思考の型」は、実践形式で学べる研修プログラムとして提供しています。個人のセンスや経験に依存しがちなインサイト発見方法を、「出世魚モデル」をベースにしたフォーマットシートを活用しながら、違和感の発見から言語化・検証までを体系的に習得。講義だけでなく、課題演習や対話型ワークショップを通じて、“聞いて終わり”にならない実践的な学びを目指します。

    私自身がファシリテーターとして伴走しながら、参加者お一人おひとりとにフィードバックを行います。皆さんとの対話を通じて自分では気づきにくい思考のクセや思い込みを客観的に捉え直し、新たな視点や発想を得られる点も、本プログラムの特徴です。

    実際の参加者からは、
     「インサイトの理解が深まった」 
     「他者の発表から新たな発見を得られた」 
     「日常に対する見方が変わった」 
    といった声も寄せられています。

    AI時代において、平均的な答えだけでは差別化が難しくなる中、“人ならではの視点”をどう育てるかは、マーケティングや商品開発、事業企画においてますます重要になっています。チーム全体のマーケティング力や商品開発力を高めたい方は、ぜひ下記までお気軽にご相談ください。

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    属人的な暗黙知やAI/データに頼りがちな「インサイト」探索方法を、書籍『センスのよい考えには「型」がある』(佐藤真木)の内容に沿って、誰もが身につけることができる研修プログラムです。

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