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    NIKKEI BtoBマーケティングアワード2021受賞企業特集|パーソルホールディングスの「愛されるマーケティング」

    最終更新日:2023年06月19日

    INDEX

    パーソルホールディングス株式会社は人材派遣、転職をはじめ、「人と組織」にかかわるサービスを提供する134のグループ会社により構成されています。同社は「愛されるマーケティング」を目指し、グループの持つ幅広いソリューションを横断的に活用しつつ、顧客課題を解決する取り組みを推進しています。この取り組みが評価され、2021年には「NIKKEI BtoBマーケティングアワード(※)」大賞を受賞しました。同社が「愛されるマーケティング」に取り組み始めた背景や、その内容について、グループ営業本部 グループ営業企画部 法人マーケティング推進室の皆さまに、電通B2Bイニシアティブの市川が伺いました。

    ※日本経済新聞社が創設。「NIKKEI BtoBマーケティングアワード」では、新たな時代のマーケティング活動における創造性や新規性、経営へのインパクトなどを基準に審査し、様々な取り組みを表彰している。詳細はこちら

    PROFILE

     
     
     
     
     

    グループ各社の垣根を超えて、お客様課題への最適な提案で「愛される」を実現

    トップを目指すために必要なことは、垣根を壊し強固な連携を生み出すこと

    市川:「愛されるマーケティング」を2017年にスタートされましたが、その背景には何があったのですか?

    繁田:パーソルは国内134のグループ会社、従業員は現在5万人以上(2021年3月末現在)の総合人材サービスを提供するグループです。一方でグループ各社を見ると、それぞれの領域においてトップではないケースも少なくありません。「愛されるマーケティング」の取り組みをスタートした背景には、こうした状況を打開するため、グループ全体で情報連携することにより、一枚岩で勝ちに行こうというストーリーがありました。

    パーソルグループは誇れる営業力、人と組織にまつわるあらゆるサービスを持っています。これらを有機的に結びつけるために社内外の膨大なデータを駆使してお客様の課題を理解し、最適なタイミングで最適なご提案を、グループ各社の垣根を越えて行うことで、大きなシナジー効果が生まれ、かつ「お客様に愛されるマーケティング」が実現できると考えています。

    市川:当時、ビッグデータを活用したBtoBマーケティングのデジタルシフトに積極的な企業は、まだ多くはありませんでした。こうした中、ホールディングカンパニーがグループ会社のマーケティングを支援するという先鋭的な取り組みを実施する上では、多くの課題もあったかと思います。本日は、そのあたりも是非お聞かせいただきたいですね。

    コロナ禍で見えた「お客様に愛される」マーケティングの大切さ

    市川:ここ数年で「愛されるマーケティング」への取り組みを、ますます加速されていますが、どのような要因があったのでしょうか?

    繁田:やはり、2020年春の新型コロナウイルス感染症拡大の影響は大きいです。感染症対策に追われてリモートワークを導入する企業が急速に増えるなど、社会全体に大きな変化が生じる中、当社の営業・マーケティング活動も従来のようには機能していない状況でした。具体的には、「顧客にメールを送信しても開封されない」「電話をしても、そもそも出社していない」といったことが続き、あらゆるファネルのコンバージョンが悪化していました。

    こうした状況を受けて社内で「マーケティング活動において大切なことは何か」と立ち返った際、やはり「お客様に愛されること」を大事にしていくべきだという結論に至り、その取り組みをさらに加速させています。

    加えて、私個人としては「世の中の人材業界に対する“ネガティブな視線”を改善したい」という想いもありました。少子高齢化に伴い、企業における労働力不足が加速する中、人材業界は従来以上にプレゼンスを発揮できると考えています。一方で、私の感覚ですがプッシュ型のセールスが多い人材業界はどちらかというとお客様からネガティブな見られ方をされるケースが多いと思っており、このままでは十分に価値を発揮できないおそれもあります。こうした状況を改善するためにも「お客様に愛されるマーケティング」は不可欠だと考えています。

    グループを跨いだマーケティングのために、MA運用やインサイドセールスの体制も構築

    市川:今回お集まりいただいた法人マーケティング推進室の皆さまは、そのための取り組みの最前線を担っているということですね。どのようなチーム体制を採用しているのでしょうか?

    繁田:法人マーケティング推進室には、「リード獲得」と「その後の案件化」という、大きく2つの役割が求められています。今回集まっている4人のメンバーは主に「案件化」を担っており、グループ会社と連携して情報を整理しつつ、どのファネルの施策がお客様にとって最適か、といった戦略を策定・実行しています。

    その推進にあたっては、子会社であるパーソルプロセス&テクノロジーに一部の業務を委託しており、例えばMAツールの運用については5-6名規模の体制、インサイドセールスについては100名規模の体制を構築しています。

    同時に、顧客情報管理ツールをはじめシステム全般を取りまとめるグループデジタル変革推進本部とも連携を取りつつ、業務を推進しています。

    統合顧客データ基盤システムを構築し、お客様の課題を精緻に把握

    統合顧客データ基盤「DUKE」の開発

    市川:「愛されるマーケティング」について、具体的な取り組みの内容をお伺いできますでしょうか?

    繁田:お客様の課題に合ったソリューションを適切に提案するためには、課題そのものを精緻に把握することが重要です。その実現のためには、グループ各社の顧客情報を統合することが不可欠です。一方で、グループ各社のデータは個社で管理されているため、外からはよく見えません。そこでまず、これらのデータを収集していくことになりました。

    ただ、グループ各社が顧客情報の管理に異なるシステムを活用しているため、データを収集しただけでは一貫性を持たせられず、スムーズに活用できません。こうした課題を解消するため、パーソルホールディングスでは、統合顧客データ基盤「DUKE」というシステムを構築しました。DUKEは、システム上でデータの名寄せを行ってくれます。これにより一貫性を持たせられないという課題を解消しつつ、グループ各社がスムーズにデータを活用できる環境を実現できました。

    市川:DUKEにはどのようなデータが入っているのでしょうか?

    岡村:外部からのデータとして大きいところでは、国税庁やランドスケイプ社のLBCデータ(※)、東京商工リサーチの企業情報を収集しています。その上で内部データとして、グループ各社の名刺情報や、インサイドセールスがヒアリングしたお客様の課題といった情報が統合されています。さらに将来的には、グループ各社の営業部門の取引ログも入れられないかと検討を進めています。
    ※LBC(Linkage Business Code)はランドスケイプ社が構築した全国820万拠点の企業データベース

    統合顧客データを活用して課題を整理し、ソリューションを提案

    市川:具体的に、DUKEをどのようにマーケティングに活用していますか?

    波多江:アンケートやWebアクティビティ情報などの情報を統合する基盤としてDUKEを活用しています。加えて最近では、収集した情報を基にお客様の課題を推定する取り組みも進めているところです。

    例えば「グループ会社のサービスAを購入しているお客様は、別のグループ会社のサービスBを使っている傾向が高い」といった分析を踏まえ、メール施策に活用しています。

    ただ当社の場合、グループ会社のサービスといっても数が多いため、サービス×提案のバリエーションが増え過ぎてしまいます。そこで現状では、お客様の課題を11個に分類しつつ、「この課題分類であれば、このサービスを提案する」といった形でPDCAを回しています。

    ソリューションの知識やBANT条件をしっかり把握することが適切な提案につながる

    市川:統合されたデータを活用する上で、工夫されている点はどのようなところでしょうか?

    鈴木:インサイドセールスについてもメール施策と同様に、分析した情報を基にお客様の課題に合わせたソリューションの提案を行っています。一方で、適切な提案のためには、インサイドセールスのメンバーが、グループ各社のサービスについて、十分な知識を持っている必要があります。そこで、日々インサイドセールスのメンバーに対して、ソリューションの知識をインプットし続ける取り組みを行っています。

    また、また、グループ各社に我々から案件を渡す際、サービス特性のヒアリングはもちろんのこと、どのようなBANT条件(※)であれば営業担当が対応できるか、彼らの営業体制やKPI・ミッションなど、細やかなヒアリングを実施しています。
    ※Budget:予算、Authority:決裁権、Need:必要性、Timeframe:導入時期の4つの条件

    市川:営業担当者との連携を強化する取り組みについては、BtoBマーケティングに積極的な企業でも、1事業部ごとに戦略を練りつつスモールスタートで進めているところが多いです。御社の場合、グループ会社のマーケティングを一手に支援している点で、現代の営業のあり方を変革していこうというチャレンジ精神を感じますね。

    マーケティングは「効率が全て」ではない。組織を動かすためには、遠回りでも地道な活動が不可欠

    グループ会社の営業担当者に説明の場を設けてもらい、全国を行脚

    市川:グループのデータを統合・活用するにあたり、システム面以外で課題となった点はありますか?

    繁田:まず、現状についてお話しすると、DUKEに全グループ会社のデータを統合できているわけではなく、協力したいという要望のあったグループ会社から順番に統合を進めているところです。グループ会社の営業担当者の方からすると、さまざまな努力があって収集した情報を「簡単に共有したくない」との想いも、もちろんあると考えています。

    そうした想いを尊重しつつ、データ統合によるメリットについても知ってもらうためには、遠回りでも地道な活動が必要だと考えています。例えば私たちも、グループ会社に説明の場を設けてもらい、全国の営業マネージャー会を直接回るような取り組みを行っています。

    こうした取り組みの成果として、最近ではグループ会社の方から積極的に「データ連携したい」と声を上げてもらえるようになりました。今後も、グループ各社への丁寧な説明を続けることで、活用できるデータを増やしていくつもりです。

    市川:全国を回られたのですか。多くの企業で課題とされている「営業部門との連携」をグループ各社レベルで推進できる背景には、皆様の地道な努力があったのですね。

    組織を動かすためには、効率の考え方だけではないアナログさも必要

    市川:御社と同様の取り組みを行いたいと考えているホールディングカンパニーのマーケティング担当者の方に、是非アドバイスをお願いします。

    繁田:私たちのチームについては、アドバイスをできるほど一人前になれたつもりもありません。ひとつだけ言えるとすれば「効率だけを追い求めないこと」でしょうか。

    もちろん、マーケティングはPDCAを回しつつ、効率の良い施策を追求するものです。ただ、それを実現するためには、組織を動かすことが不可欠です。そして、組織を動かすためには「効率重視」「楽をしよう」といった考え方だけでは、絶対にうまくいきません

    「統合データ基盤を活用したデータ分析」といったデジタル最前線の取り組みにこそ、前述したように、全国を足で回るようなアナログさが必要だと考えています。

    市川:決してマーケティング部門が主導するということではなく、全国にいるグループ会社の営業部門の目線に立ち、共通認識を持って戦っていくことが重要なんですね。

    「愛されるマーケティング」の実現にむけて

    市川:最後に、法人マーケティング推進室の今後の展望をお聞かせください。

    繁田:今回、「NIKKEI BtoBマーケティングアワード」大賞をいただいたとはいえ、「愛されるマーケティング」の実現は、まだ道半ばの状況です。より高い精度でお客様に愛される提案を行うためには、私たち自身がグループ内のことをさらに深く知らなければなりません

    そのために、今後もDUKEを活用しつつ、社内外からさまざまなデータを収集・蓄積していきたいと考えています。

    市川:本日、「愛されるマーケティング」の取り組みをお聞きし、その裏側には、法人マーケティング推進室の皆様自身が「グループ各社に愛されるマーケティング部門」となるための、ひたむきな努力と真摯な姿勢があることがわかりました。貴重なお話をお聞かせ頂きありがとうございました。

    ※写真撮影時のみ、マスクを外しております。

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