今この記事を読み始めた方の中には、新規事業のアイデア発想に行き詰まり、何か新しいヒントやネタを求めている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
課題や目的を整理し、アイデアを発想するためのフレームワークは世の中にたくさんあります。そうしたものを使ってはみるけど、なんだかピンとくる発見がない。いつも同じようなアイデアしか出てこない……。そんな悩みを抱えている方に、今回はヒントになるお話ができればと思います。
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新規事業アイデアが浮かばない! その原因とは……
今までの延長線上から抜け出せていないのかも
目新しい事業アイデアが思い浮かばない原因はさまざまです。なぜ新規事業を立ち上げなくてはならないのか、その意義自体が「腹落ち」していないのかもしれませんし、漠然と「こんなことがやりたい」と思っていても、それを具体的なアイデアに落とし込めていないのかもしれません。あるいは可能性が高い原因として「アイデア発想の材料となる情報やリソースが、これまでの延長線上から抜け出せていない」ということも考えられます。
インプットが同じだから、アウトプットがコモディティ化する
僕はこれまで携わってきたプロジェクトにおいて、数多くの新規事業開発を経験してきました。国をまたいだ事業や宇宙産業開発などの大規模案件から、スタートアップの事業開発支援まで、取り組む内容はさまざま。そうした経験の中で最近強く感じるのが、新規事業創出のための方法のコモディティ化です。
これまで蓄積してきた自社リソースを前提に、これまで通りの市場にとどまり、みんなが注目するデジタル技術を軸にして新規事業を考える。考える材料が従来と同じままでは、既存の事業や他社が考えることから大きく変わらなくても当然です。
過去の成功体験から一旦離れ、知らない分野を覗いてみよう
新しい情報のインプットで発想を広げる
新規アイデアが思い浮かばない原因が思考のコモディティ化にあるのだとしたら、解決策はシンプルです。それは、新しい材料をインプットすること。自社の成功体験から一旦離れ、自分たちとは関係ないように思える分野に目を向けてみると、新しい発見に必ず出会えます。例えば、以下のような方法でインプットを広げてみてください。
方法1:異なる業界の新規事業開発事例を探してみる
事業を考えるとき、まっさきに競合他社の動向を調べるのではないでしょうか。それはもちろん必要なことですが、新たな市場の開拓にはつながりづらいかもしれません。業界や国の枠組みを外し、話題になっている最新事業になるべく幅広く目を向けることをおすすめします。本当に単純なことですが、少し意識するだけでもバイアスが外れ、ぐっと視野が広がります。
方法2:社外リソースを積極的に活用する
現代の社会課題や環境問題は、内容が日々進化し、複雑化しています。それらに対応するためには、自分たち自身も進化が必要ですし、さらにはこれまでのような“自前主義”では立ち向かえなくなっています。他社や行政、社外有識者との連携は、アイデアや可能性を広げることはもちろん、その後の協業体制を構築する意味でも非常に有効です。
方法3:あえてデジタル技術以外に目を向けてみる
DXが叫ばれ続け、AIがますます進化する今、デジタル技術は当然無視できません。最近の新規事業開発のアイデアセッションでインプットされる情報も、個人の生活や社会のデジタル化を念頭に置いたものがほとんどです。でも、みんなが同じデジタル技術やデータをインプットしてアイデアを発想していたら、必然的にアウトプットも似通ったものになってしまいます。
……と言っても、じゃあデジタル以外にどんな領域があるの? と悩んでしまいますよね。僕がおすすめしたいのは「生物圏(=バイオスフィア)」です。
アイデア発想に向け、いま一番の注目は「バイオ」&「ゲノム」!
デジタル情報だけでは世界の進化に追いつけない
バイオスフィアは私たちの世界の大半を占めているにもかかわらず、これまでデータ化が進んでこなかったため、ビジネス課題の解決手段としてもあまり活用されていませんでした。僕は学生時代からずっとデジタル領域を専門にしてきましたが、社会・環境問題に向き合ううちに「デジタル技術だけでは未来の課題を解決できない」と危機感を抱くようになりました。
そこで2016年ごろからバイオテクノロジーやゲノム技術に興味を持ち、海外に行ってバイオ産業の最前線を視察しました。その当時から海外ではゲノム・バイオ技術を使ったスタートアップもどんどん現れており、とても大きな可能性を感じたのです。
突飛な発想も現実になる、それがゲノム・バイオ技術のおもしろさ
今、ゲノム・バイオ技術は世界中で急速に進展しています。アレルギーを引き起こさない卵の開発や高GABAトマトの商品化など、みなさんもニュースで見かけたことがあるのではないでしょうか?味を良くするだけでなく、食べられなかった食材を食べられるようにしたり、食材の持つ力を効率よく高めたりと、変えようがないと思われていた“性質”までも変えられることがゲノム・バイオ技術の新しさです。
さらにゲノム・バイオ技術が面白いのは、こうした農業分野だけにとどまらず、例えば「人工微生物を使って二酸化炭素だらけの大気を酸素と窒素に変え、火星に移住する」とか、「人間のDNAにデータを記憶させ後世まで受け継ぐ」といった突拍子もないアイデアが本気で研究されていることです。
ゲノム技術を知れば知るほど、「こんなことができるかも? あんなことも可能かも!」とイマジネーションが広がる。ちょうど子どもが、「もし超能力があったら何をしたい?」と考えるようなものですね。これこそがゲノム領域に触れる最大のメリット。既存の枠組みを外し、発想や思考を広げるための、とても大きな刺激になるのです。
この「ゲノム思考」を使った新規事業の考え方についてはこちらの記事でより詳しく紹介しているので、興味のある方はぜひあわせて読んでみてください。
「新規事業開発の未来 ~アイデアの枠を解き放つ「ゲノム思考」とは?~」
バックキャスト型のアプローチで、アイデアをビジネス化
「つくりたい未来」を描くことは、中長期スパンの事業開発において特に重要
新しい情報をインプットして発想が刺激されたら、きっとおのずとアイデアが湧き上がってくることでしょう。とくにゲノム技術のような未知の可能性を持つ分野に出会うと、「つくりたい未来はつくれる!」というポジティブな確信が生まれます。この「つくりたい未来」のイメージを持つことが、実は新規事業開発——とくに中長期スパンでの事業開発をする際に、非常に重要なんです。
事業開発の進め方には、現在から未来を予測しながら進んでいく「フォアキャスト」と、あるべき未来を描きそこから今やるべきことを逆算していく「バックキャスト」の2つがあります。「フォアキャスト」は今ある情報をもとに積み上げて考えていく、蓋然性を重視した進め方なので、数年先をゴールにした比較的短期での新規事業立ち上げにはよいでしょう。
一方「バックキャスト」は、長期的な未来のゴールを設定し、そこから何が求められるかを逆算して考えていく進め方です。企業が中長期的に生き延びるための新規事業を考えるなら、この逆算型のアプローチが不可欠。つまり、中長期での新規事業開発に向けたアイデア創出においては、ゲノム技術のような新情報をインプットして「つくりたい未来」をイメージし、そこからバックキャストで計画を練っていくことが、とても有効なのです。
事業化への筋道も明確になる
「つくりたい未来」を明確に描ければ、いつまでに何をすべきかが具体的になり、事業化に向けた道筋がクリアになります。アイデア発想の次の段階の問題に「アイデアを発想したものの、どうビジネス化したらいいのかわからない」という壁がありますが、闇雲にアイデアの発想に取り掛かるのではなく、最初から「どういう未来を描きたいのか」という視点を持っておくと、アイデアだけが宙ぶらりんになることも避けられるでしょう。
新しい知識と視座を手に入れて、枠にとらわれない新規事業開発を
アイディエーション支援をアウトソーシングするのも一つの手
新規事業のアイデアを発想することは決して簡単なことではありませんが、ちょっとした新しい情報のインプットで、発想力は一気に広がります。自分たちだけで新しい視座を手に入れるのが難しければ、外部の力をアウトソーシングするのも一つの手でしょう。新しい視座を得るだけでなく、開発プロセス自体の改革につながることもあります。
電通でも、僕が中心になって提供しているゲノム思考を使ったアイディエーションサービス「ゲノムシンキング」や、つくりたい未来を可視化しバックキャストで事業を構想する「Future Craft Process」など、新規事業開発のアイディエーションをサポートするソリューションを提供しています。興味のある方は、下記のリンクもぜひご覧になってみてください。
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関連ソリューション
つくりたい未来を可視化、バックキャストで事業を構想する「Future Craft Process」
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→未来を可視化し、未来の事業をつくるプログラム「Future Craft Process by 未来事業創研」