
徹底した「ファン理解」をもとに、新しいファンマーケティングを支援する電通。新ソリューション「ファンAI(アイ)リサーチ ブランド」についてご紹介した前編に続き、後編ではIPファンダムにアプローチするもう一つのソリューション「ファンAI(アイ)リサーチ 推し活」について詳しく掘り下げます。前回のメンバー(植田・廣田・新城・徳山)に加え、AI開発を担当した若手メンバー中島・吉田も登場。ソリューションにかける、総勢6名の熱い思いをお届けします!
(前編はこちら)ファンを力に企業グロースを!【前編】~ヒントはブランドファンの“物語”にある~
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一次的な効果にとどまらない、ファンダムが持つ力とは?
それでは後半は、IP・コンテンツの「ファンダム」に着目した「ファンAIリサーチ 推し活」についてお聞きしていきたいと思います。
マーケティングにおけるIPやコンテンツの起用と言えば、コラボ商品などのタイアップ企画をまっ先に思い浮かべますが、このソリューションで想定しているのもそうしたマーケティング戦略でしょうか?
新城:確かにIPコラボやタイアップ企画では、注目を集めやすい話題の人やフォロワー数が多いインフルエンサーを起用し、「数」を狙っていくパターンが主流です。ただ、そこには単純な数だけで測れない、大きな「ファンダムの力」があることを肌感覚として感じていました。それを解像度高く知ることで、もっと違う形でマーケティングに活かせないかと考えたことが「ファンAIリサーチ 推し活」の開発の背景です。

数だけじゃない「ファンダムの力」とは、具体的にどんなものでしょうか?
新城:ファンダムの方々は、当然ですが「推し」に対する強い愛と熱量を持っています。だから、推しに感じている魅力と、コラボ商品の魅力がうまく合致したとき、一般消費者よりも大きな盛り上がり方をしてくれる。昨今のSNSでは、広告を打った後の初期反応でいかに盛り上がれるかが大きなカギになるので、そこでファンダムの好意的なリアクションを獲得できれば周辺のマス層にも価値を届けることができます。
反応が大きい分、波及効果が高いということですね。
新城:はい。そしてもう一つ重要な力があって、それは企業側が推しの魅力を引き立てる企画を展開すると、企業に対して「わかってくれてありがとう!」と強い感謝を示してくれるという点です。企業にとって大きなエンゲージメント獲得につながる力を持っているということなので、それをうまく引き出すことができれば、一時的な売上効果だけではなく長期的な顧客獲得につなげることができます。
推しへの愛をきっかけに、企業や商品のファンになってもらう、ということでしょうか?
植田:推しのIPに対する愛を、企業への愛に循環させるイメージですね。私たちはこれを「ファンサーキュレートマーケティング」と呼んでいます。ただ、ここにはとても注意が必要で、ファンダムの望むことと企業側の伝えたいことがうまく掛け合わされると大きな効果が見込めますが、逆にそこをうまくやらないと、炎上にもなりかねないリスクがあります。いろいろなタイアップ事例を見ていく中でそこに気づいたことは、ソリューション開発の大きなヒントになりました。

新城:ファンダムはとても繊細にIPのことを応援しているので、企業側がIPのことを深く理解していないとすぐに気づかれてしまうんです。単なる販促のためのコラボなのか、本当にIPを理解しようとしているのかも含めて見られています。ファンダムと同じ目線をもち、ファンダムといっしょにIPを盛り上げていく意識を起点におくことが大事だと考えています。
中途半端なコラボは通用しない! 根本にある「欲求」の理解を
大きな力を持ちながら、繊細で敏感なファンダム。確かに、軽い気持ちで利用するのはとても危険ですし、そもそもファンに失礼ですね。
新城:とはいえ、じゃあ推しの魅力を最大限生かした広告を制作します、推しの夢を実現する施策を実施します、とファンが喜ぶことだけをしても、それで本当に伝えたかった商品の価値がちゃんと届くのかどうかはシビアに考えなくてはいけません。製品側が持っているコアの価値と、ファンがIPに対して感じているコアの価値が重なるところを体験として落としこんでいくことが、ファンダムをターゲットにしたマーケティングではとても重要になると考えています。

そんなファンダムの気持ちやIPの価値を理解し、商品価値との接点を探っていくために活用できるのが、この「ファンAIリサーチ 推し活」ということですね。まず概要を教えてください。
中島:SNSや動画配信サービスに投稿された公開コメントなどのデータをAIが解析して、ファンの"推し"に対する感情や行動の背景をスピーディかつ高精度に分析することができるツールです。大きな特徴としては、電通が独自開発したファンダム解析モデル「ファンダム根本欲求曼荼羅」を搭載していることです。


「ファンダム根本欲求曼荼羅」とはどういったものですか?
新城:ソリューションを開発する前に、まずは自分たちがファンダムをしっかり理解するために、推し活をしている人たち数十名にみっちり話を聞いてみたんです。アイドル、アニメ、スポーツ、芸人、Youtuberとジャンルを幅広く設けて、普段どんなことをしているかという表層的なアクションから、その時の感情や背後にある欲求まで深く掘り下げました。そのデプスインタビューの結果をもとに、推しに対して求める欲求や、推し活をすることで満たしたい欲求を分類して体系化したものが「ファンダム根本欲求曼荼羅」です。
⇒ こちらのeBookで「ファンダム根本欲求曼荼羅」について紹介しております
「ファンAIリサーチ 推し活」では、この曼荼羅をベースにしてファンダムやIPの分析をしていきます。ただ、実際には複数の欲求を同時に併せ持っていたりもするので、AIに搭載していくにあたっては「いかにファンの思いとずれないように分析するか」が大変でしたね。
一般的なAIには不可能な、クイックかつ踏み込んだ分析
AIの開発について、もう少し詳しくお聞かせください。ファンの思いとのズレをなくすために、具体的にどういった工夫をされているのでしょうか?
中島:前編の「ファンAIリサーチ ブランド」でもお話がありましたが、AIを使った分析ツールは、キーワードベースで欲求を捉えるのではなく「文脈」でしっかり欲求を捉えられるという特徴があります。ただ、どうやって文脈を読み取るかをAIに細かく指示しないと、かえって解釈が広がりすぎてしまいます。
たとえば同じ「好き」という感情でも、ロールモデルとして憧れているのか、恋愛対象として見ているのかをAIが判断できるようにするには、その欲求が顕著に現れている言葉が何なのかをしっかり探って定義に落とし込んでいく必要がありました。

吉田:コメントを分析する前段階の、「どんな動画のコメントを分析対象にするか」という判断の部分にも、さまざまな工夫が入っています。具体的なことは明かせませんが、ショート動画と長尺動画では集まる声の傾向が異なりますし、文字数によってもそこに現れる熱量が変わってきます。そうした条件をかなり細かくフィルタリングしていきましたね。

ただ曼荼羅をそのままAIに学習させているだけでなく、ここまで細かく定義設計をされているんですね! 一般的なAIを使うのとでは、リサーチの深みがまったく異なることが想像できます。
吉田:UIにもこだわっていて、検索ボックスにIPの名前を入れたら短時間で分析結果を提示することができます。
新城: 「クイックにIPとファンダムを知る」ことに重きを置いているこのソリューションだからこそ、UIにおいては、常に流れが変わるファンダムの「旬を逃さない体験」にこだわりました。従来型のリサーチ依頼だったら数日~数週間かかる分析を瞬時に行えることは、ご利用いただく大きメリットになると思います。
新たな顧客や戦略を見出すヒントとして活用してほしい
「ファンAIリサーチ 推し活」は、どんな企業さまにご活用いただきたいと考えていますか?
植田:ファンダムや推し活の力に気づいている企業さまはすでにたくさんいらっしゃると思いますが、ファンダムの気持ちを理解しないまま、瞬間的な購買の後押しを中心に考えてしまうことが、我々電通側の自戒もこめてあるのではと思います。せっかく大きな予算を投下してタイアップするのですから、長期的な資産としての自社ファン育成につなげる視点をもって、ぜひ新しいファンダムアプローチに活用してほしいですね。
新城: タレントを起用しているけれど大々的なテレビCMを打つほどの予算はない、という場合にもおすすめです。ファンダムの心理や行動を把握することで、マス広告以外の効果的な戦略を立てるヒントが見つかると思います。
廣田:少し違う角度からの活用アイデアだと、Z世代やグローバルターゲットの攻略に使うという手もありますね。IPを起点に、今まで理解が及んでいなかったターゲット層のインサイトを深く知り、関係性の構築に役立てられると思います。

ファン、企業、IP、みんながハッピーになるマーケティングのために
「ファンAIリサーチ ブランド」と「ファンAIリサーチ 推し活」、前後編にわたりたっぷりお話を聞かせていただきありがとうございました。最後に、電通として今後「ファンと企業」の関係づくりのどのように支援していきたいか、みなさんの抱負をお聞かせください。
植田:やはり一番大事なことは、企業がファンと同じ目線に立つことだと思います。クライアントさまと一緒にファンや顧客の方の話を実際に聞きに行くと、「(顧客のことを)把握していたつもりでも、実際に話すと全然違った」とおっしゃる担当者さまがよくいらっしゃいます。「ファンの声に耳を傾ける」というプロセスへのハードルを下げるためにも、こうしたAIソリューションをさらに広げていければと思います。
新城:これら二つのAIリサーチツールは、ファンやファンダムに対する新しい攻略法のひとつになります。なお、現在AIリサーチツールとは別に、AIを使ったプランニングツールも開発しているので、これからさらにファンダムマーケティングを発展させていきたいと思います。
徳山:そのためにも、今あるAIのテクニカルな制約をできる限りなくし、分析とアウトプットの精度を高めていけたらと思います。
今後AIの学習が進めば、ソリューションもますます進化していきそうですね! 今日のお話をお聞きして、ファンと向き合うマーケティングに新しい風が吹いているなと強く感じました。
吉田:「人を理解すること」はまさに電通の大きな強みであると同時に、今のAI時代においてAIがまだまだ不足している部分でもあります。だからこそ、電通が培ってきた生活者理解やプランニングの知見をAIに実装しながら、より人間が幸せになるマーケティングのためにAIを使いこなしていきたいですね。
中島:私は大学時代、推し活が人に与える心理的な影響について研究していました。推し活やファン活動と自己肯定感の関係など、自分が関心を持って学んできたテーマを、今回の仕事にもつなげることができ、とても嬉しく思っています。今後も、ファン心理に関する知見を活かして、クライアント支援に貢献していけたらと思います。
廣田:企業さま側から考えても、幸せなファンを持つことや、そのファンと向き合うことは、この上なく嬉しいことですよね。その意味で、実はこれはとてもハッピーなマーケティング領域。すでにファンマーケティングを取り入れているクライアントさまも多いとは思いますが、電通だからこそできる、幸せを増幅させる新たなチャンスを掘り起こせる、そんなご支援を加速させていきたいです!




