ビジネス環境の変化が激しい現代、企業や事業が社会にとって必要とされる存在であり続けるにはどうしたらよいのか、すべての経営者やリーダーの方が悩み、日々奮闘されています。
そうした中、これまでコミュニケーションや広告の分野で捉えられがちだった「ブランド」や「ブランディング」の考え方が今、「事業変革」のドライバーとして非常に重要になっているということを、多くの企業リーダーの方が感じ始めています。
事業変革を目指すリーダーの方々が、今だからこそ知っておきたいブランディングの考え方とは? 電通独自の調査結果をもとに、シリーズでじっくりご紹介します。
第1回は、事業変革に関する調査から浮かび上がった企業の課題と取り組み状況について、企業のビジネス変革支援に取り組む電通ビジネス・トランスフォーメーション局(BX局)の伊神と、電通コンサルティング取締役の田中が解説します。
PROFILE
INDEX
調査から浮き彫りになった、企業の変革への意思
事業環境が変化する今、企業から寄せられる相談とは
この数年、私たちが所属する電通BX局と電通コンサルティングには、社内外の事業環境変化に戸惑いながらも対応を試みる企業からのご相談が増えています。その内容は、例えば次のようなものです。
「市場の変化が激しく、既存事業の変革や新規事業の構築の必要を痛感している」
「変革が必要だが、事業のありたき未来像が描けない」
「未来像に向かい、どのように変えていくべきか分からない」
「パーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定したものの、アクションが定着化せずビジネス成果につながらない」
こうしたご相談から私たちが強く感じていたのは、事業変革に対する企業の強い想い。そして、それにお応えできるソリューションの必要性でした。
約8割もの企業が、事業変革の必要性を感じている
こうした認識のもと、電通では、事業変革への実際の取り組み状況や企業の課題感を把握すべく独自調査(※)を実施。一般企業(社員100名以上の企業規模)の現場から経営層まで2,000人の方を対象に、事業変革を取り巻く課題感や取り組み状況をお聞きしました。
※「企業の事業変革に関する電通独自調査」 調査方法:Web調査 サンプル数:2000ss 調査期間:2024年10月31日(木)~ 11月5日(火)
その結果、「事業変革の必要性を感じている」という経営者が8割もいるという実態が明らかになりました。ここからは気になる調査の中身を、詳しくご紹介します。
すでに動き出している企業が多数。期待する成果とは
変革を求める企業の約7割が、具体的な取り組みを実行中
当調査によると、事業の成長に向けて「事業変革が必要だ」と感じている企業は77.1%にも上っています。特に、先に述べたように経営層では81.8%もの方が変革の必要性を強く感じており、その意識は現場よりもさらに高くなっています。
さらに、事業変革の必要性を感じている企業のうち、すでに何らかの取り組みを始めている企業は7割近くに上っています。二の足を踏んでいる場合ではない企業の状況が伝わる結果となりました。
財務面の成長と、それを下支えする従業員の生産性・創造性・満足度向上を期待
こうした変革の先に、企業はどのような成果を期待しているのでしょうか。
調査では30項目以上の選択肢を提示して期待することを伺ったところ、その上位3つとして「売上の強化」や「市場成果の向上」「市場における自社のランキングの維持や向上」といった財務面の成長が挙がりました。「事業変革を確かなビジネス成果につなげること」への期待が高いことが伺えます。
さらにそれらに次いで、「社員の働き方の生産性や創造性の強化」や「従業員満足度の増加」「優秀な社員の採用数の増加」といった企業内部の成長の側面が挙げられており、この点は特に経営層の期待が、現場の期待を上回っています。
事業変革を通じて、財務面の成長とともに、それを下支えする従業員の生産性・創造性・満足度向上を期待としているという、経営者の意識が感じられます。
期待が高まる一方、成果とのギャップも浮き彫りに
ところがこれらの期待に対し、取り組みを通じて手応えが実感できているかと言えばそうとも限らないのが企業の現実のようです。調査からは、期待と実際の成果の間のギャップも明らかになっています。
具体的には、売上や市場シェアの維持・向上に加えて、「魅力的なビジネスや製品サービスの新規開発」では、期待と成果のギャップが大きい(期待されているが成果を出すのが難しい)と感じられている傾向がみられます。
また、「社員の働き方の生産性や創造性の強化」「従業員満足度の増加」などのインナー向け施策も、期待されているが成果を出しづらい(見えづらい)と感じられている様子が伺えます。
取り組んではいるものの、求めるほどの成果につながらず、新たな戦略を求めている。そんな企業の姿が浮き彫りになりました。
事業の課題解決に、「ブランディング」の力が有効
具体的にどんな課題をクリアしていくべきか?
さらに当調査では、企業が事業変革を進めることで、どういった課題をクリアしていきたいのかも明らかにしています。
企業が抱えている課題や展望では、
・自分たちならではの新たな価値が提供できる事業を創出したい
・顧客や社員の新しい行動を習慣化させ、ビジネス成長につなげたい
・パーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を活かした事業変革や新たな事業構築を目指したい
が30項目以上の選択肢の中でトップ3に挙がっています。
それに加えて、経営層からは「既存事業の変革や新たな事業の構築」「周年を機に、未来に向けた事業成長の機会にしたい」といった具体的な展望も高いポイントを得ていました。
戦略に必要なのは、「ブランディング」の力
これらの調査結果を踏まえると、事業変革に向けて戦略を考える際の重要ポイントは、次のようになります。
・自社ならではのアイデンティティやパーパスを活かした事業を創出し
・顧客や社員に対して行動を習慣化させることで
・事業成長の機会創出につなげていく
・以上をふまえた“事業戦略”を打ち立てる
そしてこれらのポイントを全て実践していくことは、まさにこのブログシリーズのメインテーマである「事業変革のためのブランディング」を考え、実践していくことそのものだと言えます。
事業戦略×ブランディングを両輪で回し、成長の駆動力に
経営視座から見た、広義のブランディングを
事業変革におけるブランディングとは、企業や製品のイメージ訴求を刷新して発信するといった、いわゆるキャンペーン型のブランディングとは異なります。
事業として目指すべき価値の定義から、ビジネス設計、実行までを、確固たるコンセプトとストーリーに基づいて行うこと。アウター発信だけでなくマーケティング全般を取り扱い、さらにインナー施策も行い、行動を習慣化させて継続的な成長の機会創出を目指していくこと。つまり「ブランド戦略と事業戦略を常に両輪で回しながら、ビジネス成果と組織成長につなげていくこと」が、事業変革におけるブランディングの本質になります。
そこで第2回は、調査を基に「事業変革のためのブランディング」の中身をより詳しく紐解き、具体的に何を行えばよいのか、実施するうえで何が留意点となるかなどをお伝えします。成功する事業変革とは何か、そしてブランド戦略と事業戦略を両輪で回すとはどういうことなのかを知る上での示唆をお伝えできると思います。ぜひ引き続き、第2回ブログをご覧ください。(近日リリース予定)