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    AISASからSEAMSへ!「情報回遊」時代のマーケティングとは

    最終更新日:2023年06月19日

    AISASからSEAMSへ!「情報回遊」時代のマーケティングとは

    本記事に「遭遇」していただき、ありがとうございます。ご覧いただいている皆様は、自社のブランドや商品、サービスを消費者に届けるために、日々マーケティング活動に取り組まれていらっしゃる方々だと思います。

    昨今、「カスタマージャーニーを描いてみたが、その思惑通りに消費者が動いてくれない」というマーケターの声をよく耳にします。スマホの普及、テクノロジーの進化、ビッグデータの活用など、消費者を取り巻く環境は大きく変化しました。その中で、消費者の情報入手における行動習慣もこれまでとは変わってきています。

    この変化を捉えて、私たちは、マーケターの方々が今後のマーケティング活動に必要な視点やソリューションを考える糸口となる、新たな消費者購買行動のフレームを構築しました。名付けて、新・購買行動モデル「SEAMS®(シームズ)」です。

    電通が新たに提唱する購買行動モデル「SEAMS®」について、関 智一(せき ともかず)が解説します。

    INDEX

    情報回遊時代の到来

    1億総SNS時代へ

    2023年に行った電通の独自調査によると、15歳から79歳の日本人のうち既に95%もの方がスマートフォンを保有しています。さらに、スマートフォンの普及と比例するように、SNSの利用率も高まっています。同じ調査では、Instagram、Facebook、TikTok、Twitter、YouTubeのうちいずれかを利用している方は、なんと85%にも達しています。

    電通 「消費者行動に関する調査」

    まさに、個人が容易に情報を収集できる時代になっています。
    スマートフォンというメディアを誰もが持つことにより、誰もがいつどこでも、その時欲しい情報を手に入れることができます。さらに、スマホの普及とともにSNSも影響力のあるメディアとなっており、企業にとって生活者との大切な接点になっています。

    このような変化は、消費者の購買行動にどのような変化をもたらすのでしょうか?
    それを探るために、これまでマーケティングの領域で提唱されてきた「消費者の購買行動モデル」が、時代の変化の中でどのように変遷してきたのかを振り返ってみたいと思います。

    これまでの購買行動モデル「AIDMA」と「AISAS」

    消費者の購買行動モデルの原型ともいえるのは、1920年代にアメリカで提唱され、マーケティングの教科書にも載っている「AIDMA」です。「認知~行動」までをモデル化した、非常にスタンダードなもので、ご存じの方も多いと思います。

    そののち、インターネットが普及し、ネットの利用により情報量が爆発的に増加した2000年代に、新たなモデルが登場しました。2004年に電通が提唱した「AISAS」です。

    AISASモデルは、それ以前のAIDMAと比較すると、インターネット上での「Search(検索)」によって「情報をより取得しやすくなった」こと、そしてユーザー間での「Share(共有)」によって「自発的に情報を拡散するようになった」ことが大きく異なっています。
    2つのS(Search/Share)によって、消費者はまず自ら情報を取得しに行き、さらに情報を拡散・共有するようになった、というのがAIDMAに代わり、このモデルが生まれた背景です。

    情報が拡散され、共有されやすくなった状況をつくる契機となったのが、ブログやSNSなどのCGM(Consumer Generated Media)です

    CGMが広く利用されるようになると、このメディアが人々のコミュニケーションや購買行動に大きく影響力を持つようになりました。それにより、消費者は、広告に代表される企業からの一方的なメッセージではなく、インフルエンサーやKOL(Key Opinion Leader)といった第三者による声を、商品やサービスの選択のための判断基準とするようになりました。

    ちなみに、この2つのモデルで変わらなかった共通点もあります。それは、購買行動は「Attention(知る/認知する)」、「Interest(気になる)」から始まるということです。まずは商品やブランドの「認知」を獲得することで、「誰でも知っている」という状態とすることを重視する点は同じです。
    特にAISASでは、ブランド名や商品名などを、検索をする際のキーワードとして設定してもらうことが購買行動につながるため、ブランド名や商品名を認知させて検索までたどり着かせることのできるターゲットをいかにして増やすかが重要です。

    「AIDMA」と「AISAS」の共通点からわかることは、これまでの購買行動モデルでは、認知を獲得しないと購買を促進するためのコミュニケーションの起点を作りづらい、ということです

    テクノロジーによる情報収集行動の進化 ~情報回遊時代がやってきた~

    そして、これがさらに変わってきたというのが本記事の主題です。

    若年層を中心にSNSの閲覧時間が増え、SNSが可処分時間の多くを占める重要なコンタクトポイントになる中で、常時ネット接続する、デジタルメディアが情報収集の起点となる世界が生まれています。

    ご存じの通り、すでにInstagramのストーリーズ、TikTok、YouTubeのショート縦型動画の影響力は、既存のSNSのタイムライン投稿や長尺コンテンツに匹敵、あるいは上回っています。

    さらに、テクノロジーの進化により、SNSに接触した人が、そこでその人に最適化された情報や、リッチなコンテンツに出会うということが起きています。検索によって自分の欲しいものを“探す”までもなく「自分に合った/欲しい商品に“出会う”」という、「情報回遊」ともいえる、新たな購買行動の様式が生まれているのです

    私たちは大きな変化に直面しています。これをどう捉えていけばよいでしょうか。ここからは、AISASの時代からさらに進化した購買行動、「情報回遊」についてご説明します。

    「情報回遊」で変わる購買行動 ~情報検索と情報回遊~

    消費者の「左脳的行動」と「右脳的行動」

    世の中で「左脳派」「右脳派」という話題が上がることがあります。論理的に正しさを導く思考は左脳、感覚的に良いものを判断する思考は右脳・・・このような分類は、テクノロジーの変化を踏まえた、昨今のオンライン上の行動にも当てはまります。

    オンライン上での消費者の情報収集行動は、「目的の有無」で異なっています。目的がある場合は左脳的な行動、すなわち「情報を自ら検索して目的にたどり着く」、目的がない場合は「いろいろな情報源を回遊して情報に遭遇する」という違いです。ここでは、左脳的行動を「情報検索」、右脳的行動を「情報回遊」としています。

    「情報検索」は目的である商品に「興味」があるから起きる行動で、消費者は検索を通じて情報を吟味して購買を決定します。一方、SNSを中心に情報を回遊しながら、全く知らない商品と出会い、そこで一気に好きになるというのが「情報回遊」です。

    「情報回遊」が起点となる購買行動では、全く知らない商品との「遭遇」による“一目惚れ”が起きます。化粧品やファッション商品の購買ではなんとなくイメージを掴みやすいと思いますが、この現象が高価格帯の商材でも起きています。

    右脳派が増えてきたというのは言い過ぎですが、右脳的にSNS上をザッピングする行動が増え、消費者は右脳と左脳を使い分けて行動しているといえるでしょう。

    「効率購買」から「偶発購買」へ

    情報収集の仕方だけでなく、オンライン上の「購買行動」においても、目的の有無によっての違いが出ています。

    情報を検索して、目的に対して正しい情報を1秒でも早く・1円でも安く探そうという「効率購買」と、目的無しに楽しいコトや新しいモノはないかと情報を回遊した結果として引き起こされる「偶発購買」という違いです。「効率購買」はもちろんですが、思わず「偶発購買をしてしまった」という経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。マーケティングにおいてはどちらも重要ですが、偶発的に出会って生まれる購買があることは念頭に置いておく必要があります。

    これまで売上や事業の成長を優先課題とする企業の方々からのご相談では、ニーズが顕在化した顧客層の効率購買の最大化を求められるケースが多かったのですが、これからは消費者の情報回遊に合わせて「偶発購買」の可能性を高める、という視点でのコミュニケーションも加えて、打ち手をチューニングすることが大切になっています。

    これまでは、情報を検索させるためにTVやネットを横断して認知を獲得するマスプロダクト型のコミュニケーションが主流でしたが、これからは消費者の情報回遊行動の導線上に自社の情報を配置することで「偶発購買」を喚起することが重要となっています。そのために、消費者の購買行動を喚起するための主戦場をスマホと捉え、そこでマーケティングを完結させるということも起きています。すでにそうした事例は出てきており、特に最近のバズワードになっている「D2C」プロダクトは、こうしたコミュニケーションがあてはまりやすいケースといえます。
    ※D2C:Direct to Consumer。メーカーが直接販売チャネルを持ち、ユニークな体験を提供する、主に特定層向けのビジネス。自社チャネルを中心に展開し、人起点の口コミ・評判で「世界観」への共感・信頼を生み出し、自発的なレコメンドが促されることが多い。

    「比較買い」から「衝動買い」へ

    購買という観点では、「情報検索」行動は「比較買い」にたどり着きやすく、「情報回遊」行動は「衝動買い」にたどり着きやすいという傾向があります。

    「情報検索」行動では、消費者はすでに商品を知っている状態でより詳しい情報を検索するため、他のブランドや他の商品と比較しながら購買に至ることが多くなります。一方の「情報回遊」行動では、商品を全く知らない状態でSNS上での他の人の投稿を目にすることで、その影響を受けた「人」が起点となった指名買いが起きます。そして、投稿への接触から購買までのリードタイムが非常に短いというのが特徴です。

    筆者が最近買ったアクセサリーは、つい最近まで知らなかったブランドですが、好きなKOLの投稿を見た後に友人が使っているのを見て、即購入してしまいました。この行動を振り返ると、「人を起点としている」、「スマートフォンで完結している」、「購買チャネルがブランドのECサイトである」という3つの点が特徴的でした。

    米国での研究によると、「比較買い」よりも「衝動買い」の方が、購入者の満足度が高いという傾向があるようです。満足度を高めるために、「衝動買い」を生み出すことをゴールにコミュニケーションをすることは、有効な手となっているといえます。
    ※出典:バリー・シュワルツ著『なぜ選ぶたびに後悔するのか』(武田ランダムハウスジャパン)

    変化を捉えた、新たな消費者購買行動モデルの必要性

    消費者がスマートフォンをベースに目的なくコンテンツをザッピングするうちに、自分に合う情報を入手するようになった今日。私たちには、デジタルメディア上の「回遊」から始まる新たな消費者購買行動を的確に捉える、新たなマーケティングのモデルが必要になっています。

    そこで電通では、新たな購買行動モデルを開発し、そのモデルを「SEAMS®(シームズ)」と名付けました。

    AISASモデルが、比較買いを生み出す検索、つまりSearchを前提としたコミュニケーションを説明可能にしたのと同じように、「SEAMS®(シームズ)」は、衝動買いを生み出す回遊、つまりサーフィンを前提としたコミュニケーションを説明可能にしたものです。次章で詳しくご説明していきましょう。

    新たな消費者購買行動モデル「SEAMS®(シームズ)」

    「SEAMS®(シームズ)」とは ~ 衝動買いを生み出す5つのステップ

    「SEAMS®」は、「情報回遊」=サーフィンによる消費者の衝動買い行動に対応した、新たな時代の購買行動モデルです。消費者が情報探索から購買、そして情報共有にまでどのように至るのかを、5つのステップで説明しています。

    では、「SEAMS®」モデルの詳細を、この5つのステップに沿ってご説明しましょう。

    「Surf:回遊」から「Encounter:遭遇」へ

    ひと昔前にも「ネットサーフィン」という言葉がありました。しかし、その実態は変わってきています。
    当時はインターネット上でwebサイトを検索したり、CGMに紛れ込むリンクを辿ったりして、次々とサイトを閲覧して回ることを指していましたが、SEAMS®モデルにおけるサーフィンとは特定のSNS上で自分に合った情報・コンテンツを眺め続けることを指します。

    そのような行動が主流となる背景として最もインパクトを与えているのが、レコメンドのアルゴリズムの向上です。レコメンドの精度が上がることで、偶然に出会う情報の質は向上します。その人に合った情報だけが流れてくるので、コンテンツを閲覧し続ける行動へとつながります。
    サーフィンに例えれば、まさにいい波に乗っている状態です。しかも、閲覧時間が増えれば増えるほどデータが蓄積し、レコメンドの精度が向上していくという点でも、時間をかけることで上達していくサーフィンと似たものを感じます。

    なんとなく楽しいコトや新しいモノはないか、漠然とした意識でSNSやコミュニティ等を目的無く回遊する中で、全く知らない商品の気になる投稿と偶発的に遭遇して一気に強い興味を持つ、というようなことがおこるのです。

    「Encounter:遭遇」から「受容:Accept」へ

    偶発的に遭遇した投稿に強い興味を持つ際にポイントになるのは、「あの人」が語っているという投稿の主体です。
    情報回遊時に、全く知らない商品の気になる投稿と偶発的に遭遇して一目惚れした際に、「あの人」が語っているからという人起点の信頼が裏付けとなって商品を受容し、衝動買いをする。人起点の信頼があるからこそ、ブランドや商品への関与が急激に高まり、購買にまで至るのです

    「衝動買い」という言葉も、SEAMS®モデルではこれまで使われていたものとは意味合いが異なります。これまでのリアルでの衝動買いとは異なり、スマートフォンではいつでも買えるにもかかわらず一目惚れによって衝動買いするということが起きているのです。

    「受容:Accept」から「高揚:Motivation」へ

    衝動買いは、ある目的に対して同じカテゴリの他の商品やサービスと比較検討された結果での買い物ではないので、ある意味ユーザーにとってはリスクとなります。

    ただ、だからこそワクワクして購入したその商品やブランドを手にした際に、期待通り、あるいは期待以上だった時には、強い「瞬間的高揚感」が訪れます。さらに、オリジナルでリッチな体験や、ブランドの一員である限定感が得られれば、それは「持続的高揚感」にもつながります

    この高揚感、つまりモチベーションについては、先ほど触れたD2Cブランドで最も顕著にあらわれます。D2Cブランドは生産数が限られていることも多いので、特にこの高揚が強くなる傾向にあります。アクセサリーやファッション、化粧品領域などを中心に、意図的に生産数を限定するという手法が取り入れられているのはこのような理由からです。

    「高揚:Motivation」から「共有:Share」へ

    SEAMS®モデルにおける最後のステップが、共有です。AISASのモデルでもShareというステップがありますが、もこちらも意味合いが少し異なります。

    今、SNSはセルフブランディングの場になっているともいわれ、投稿する人が投稿対象に対して強くモチベーションを感じるものしか共有拡散されづらい状態になっています。何かあったら、何でもすぐ投稿するという行動は期待しづらいのが現状です。

    逆に、だからこそ、共有される情報の価値は以前より高まっています。そして、投稿する人が商品コミュニティや親しい知人に対して、自発的に長期間、価値ある情報を共有する現在は、共感や信頼の醸成に理想的な状態と言えるのです。

    SEAMS®から見える、これからのコミュニケーション

    AISASは広く消費者の認知を獲得して、興味を抱かせ、検索してもらうモデルでした。これはマスプロダクトとして定番づくりを行う際に有効なコミュニケーションの方法と言えます。

    一方、今回提唱したSEAMS®は、情報回遊を起点として、消費者のモチベーションを高めていくことで衝動買いや共有を生み出すモデルです。これはコミュニティにおける「熱狂づくり」に有効なコミュニケーションの方法です。スマホでのブランドや商品との出会いで「熱いファン」を作り出すことや、CGMやインフルエンサーの活用でECサイトの売上アップにつなげることが期待できます。

    これからの企業は、このふたつのモデルのバランスを見極めて、最適なコミュニケーションを行っていくことが求められるでしょう。

    あなたの企業/ブランドでも「SEAMS®」を始めませんか

    電通のSEAMS®ソリューション

    今、あなたの商品やサービスには、新しい購買行動に適したコミュニケーション戦略や施策の開発が求められていると思います。
    その課題を解決するために、電通グループでは「SEAMS®」の各ステップに応じた幅広いソリューションをご用意しています

    電通グループならではの幅広いソリューション

    SEAMS®ソリューションは、クライアントの業種にあわせて理想の顧客体験を設計するコンサルティングサービスから、顧客セグメントごとのKPIスコアを最大化する最適なコミュニケーション/PDCAの構築まで、SEAMS®全体をカバーするトータル支援サービスです

    カスタマージャーニー全体を可視化・改善するだけでなく、SEAMS®のステップごとの課題にも対応します。
    例えば電通のオリジナルソリューション「ULVA」。これはSEAMS®で最も重要な「高揚:Motivation」のステップに対応し、ソーシャルコマースの実装や、ファンコミュニティの形成、UGC(ユーザーが作ったコンテンツ)を自社ECに反映するしくみなど、いかに消費者の自発的な購買や2度目の購買を作れるかをゴールとしたソリューションです。ご興味のある方は、ぜひこちらのリンクをご覧ください。

    UGCを活用してEC売上を向上!「ULVA(ウルバ)」|ソリューション

    その他のステップについても、SNSやインフルエンサー活用のご相談については、電通プロモーションプラスが、またデジタル上の売場となるEC関連の改善・ご相談については電通グループのCCI(CARTA COMMUNICATIONS)が丁寧にサポートさせていただきます。随時ご相談を承っておりますので、当サイトにお気軽にお問い合わせください。

    詳細はeBookで。個別のご相談もぜひお気軽に!

    今回のブログシリーズでは、SEAMS®モデルの詳細や「ULVA」に関する事例、電通グループがご提供する具体的なサポート内容についても紹介してまいります。もっと早く知りたい、興味があるという方は、SEAMS®モデルの概要をまとめたeBookを無料配布しておりますので、ぜひ下記よりダウンロードしてみてください。

    情報回遊時代の購買行動モデル「SEAMS®」ダウンロード|eBook

    描いたカスタマージャーニー通りに顧客を動かそうとするマーケティング発想は、陳腐化していく時代なのかもしれません。

    本記事に「遭遇」した皆様には、SEAMS®モデルを活用いただくことで、皆様のマーケティング活動への「モチベーション」が向上し新たなビジネスの成長へとつなげるチャレンジを、是非ご一緒させてください!

    PROFILE

     

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    詳しくはこちらをチェック!
    情報回遊時代の購買行動モデル SEAMS
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