今、販促キャンペーンで話題になっている人気のソリューションをご存じでしょうか。その名も「SCAN DA CAN(スキャン ダ カン)」。「SCAN DA CAN」とは、AIを用いて販促キャンペーンの応募率を向上させつつ、コスト削減やデータ活用を実現するという、一挙両得で画期的な販促ソリューションです。
人気の秘密は、独自に開発された購買証明の方法。従来のレシートやQRコードを使った方法とは異なり、缶を撮影するだけで簡単に応募が完了し、ユーザー体験が向上します。また、リアルタイムの購買データが収集できるだけでなく、デジタル化によって蓄積されたデータが、次のマーケティング施策にも活用できます。
日本国内ではすでに大手飲料メーカーに次々と導入され、継続率100%という高評価を得ているこの新しいソリューションは、なぜ好評なのか。また今後の企業の販促活動をどのように変革するのでしょうか。「SCAN DA CAN」の開発チーム中心メンバー3名が、ソリューションプランナー・アートディレクター・データサイエンティストというそれぞれの専門領域の視点から、開発の経緯から選ばれ続ける理由、そして今後の可能性について語りました。
PROFILE
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組織横断で集結したチームが開発
まず、皆さんの現在のお仕事内容と、「SCAN DA CAN」の開発における役割について教えてください。
平川:私の現在の仕事は、大きく3つに分けられます。1つ目はデータクリーンルームの開発および導入支援、2つ目はIoTデータを活用したソリューション開発、そして3つ目が、「SCAN DA CAN」を含めた販促領域のソリューション開発です。
「SCAN DA CAN」に関しては、開発とセールスのリードを担当しています。チームのメンバーが非常に優秀で、メンバーの意見や想い、クライアントからのフィードバックを吸い上げて、「SCAN DA CAN」に実装するまでをマネジメントする、ということくらいしかしていません(笑)。
大川:私は電通のBXCC(Business Transformation Creative Center)という部署に所属しています。現在の仕事は、広告やクリエイティブ制作が全体の6~7割を占めていますが、それ以外にも企業のビジョンやブランド作り、事業開発など、幅広く手がけています。電通や電通グループ内のプロジェクトにももっと関わりたいと思い、全体の2割くらいをその活動に割けるよう調整しています。
「SCAN DA CAN」チームでは、開発チームにユーザー目線を意識した提案をすることが私の役割です。また、類似するサービスとの差別化を明確にし、社内外で伝わりやすくするためのプレゼンテーション資料の作成も担当しました。
鈴木:私の主な仕事は、電通デジタルや電通グループのプロダクト開発全般で、「SCAN DA CAN」もその一つです。現在特に力を入れているのは、電通デジタルが提供する「∞AI」シリーズのAI部分の開発です。電通デジタルでは、弊社CAIO(Chief AI Officer)の山本覚が構想するアイデアを具体化し、プログラムに落とし込み、実装する仕事もしています。
さらに、「AIとグローバル」をテーマとして掲げる今年は、モンゴルでの活動も増えてきています。今年から電通データアーティストモンゴル(DDAM)にも所属し、現地の若いスタッフをサポートしながら、モンゴル拠点でのプロジェクトを進めていく予定で、英語に加えてモンゴル語も勉強中です。
「SCAN DA CAN」の開発では、AIを使った購買証明エンジンの開発を担当しています。クライアントやチームからの「こんな機能が欲しい」「こう売り出したい」といったリクエストを実現するために、設計や開発チームのマネジメントを担当しています。
なるほど。「SCAN DA CAN」チームは、クライアントニーズに沿って機動的に対応する組織横断型プロジェクトで運営されているのですね。設計・開発からマーケティングやクライアントへのセールスまで、機能的に役割分担されていて、活動的で楽しそうなチームだと感じました。
ユーザーが写真を撮るだけでAIが個体判定する「SCAN DA CAN」
「SCAN DA CAN」というのは、どのようなソリューションなのでしょうか?
平川:「SCAN DA CAN」は、AI判定モデルを実装した購買証明ソリューションです。お客様は、缶のフタを開けて缶を撮影するだけでキャンペーンへの応募が完了します。缶や容器特有の個体値をAIが判定することで、キャンペーンを実施した企業は、ユニーク判定やブランド判定をリアルタイムで行なえるようになります。
レシートやシールを使う従来の購買証明方法と比較して、「SCAN DA CAN」にはどのような特徴がありますか?
平川:最大の特徴は「手軽で簡単、そして楽しい」という点です。従来の応募方法は、応募する作業自体に楽しさを感じることは難しかったと思います。「SCAN DA CAN」は、缶を撮影するというユニークな体験を通じて楽しさを提供しています。また、一度開発したAIモデルを次のキャンペーンにも流用できるという汎用性も強みです。さらに、缶を撮影したタイミングのデータをCRM(顧客関係管理)に活用することで、次のマーケティング施策に役立てられる点も重要な特徴です。
メーカーにとっての魅力は、やはりコストの低さでしょうか?
平川:そうですね。AIモデルは流用できるので、2回目以降のコストが低いことも大きな魅力の一つですが、それに加えて顧客体験やデータ活用の可能性も評価されています。たとえば、撮影時には、ゲーム、サウンドロゴ、アニメーションなどにより、お客さまに自然にブランド体験を楽しんでもらえる仕組みになっています。
また、現在のところ、採用していただいたすべてのクライアントが引き続き利用してくださっており、継続率が100%となっております。コストの削減に加え、クリエイティブな工夫によってユーザーの楽しさを高めることで、クライアントからも高く評価されているのではないかと思います。
クリエイティビティの発揮と汎用性
「SCAN DA CAN」の開発において、もっとも重要視した点は何ですか?
平川:特に重視したのは、「クリエイティビティの発揮」と「汎用性」です。まず、クリエイティビティの発揮についてですが、缶や容器を撮影するという体験は非常にユニークであり、その楽しさを最大限に引き出せるように設計しました。
次に、汎用性についてですが、「SCAN DA CAN」を特定のキャンペーンにとどめず、さまざまなシーンで活用できるソリューションにすることを目指しています。缶や容器だけでなく、食卓やライブ会場など、さまざまな場面で応用できる可能性と柔軟性を持たせています。
大川さんは平川さんから、「飲用する瞬間にクリエイティビティを発揮して、お客様を感動させてほしい」と依頼されたとのことですが?
大川:そんなに重々しい言い方ではなかったですよ(笑)。「SCAN DA CAN」は自分にとって子どものころからなじみがある「ヤマザキ春のパンまつり」のような、楽しみながらポイントを集める体験を再現できるのではないかと考えました。たとえばローディング画面を工夫したり、ミニゲームを追加したりすることで、単なるポイントプログラムを超えた新しい価値を生み出せると思っています。
サウンド制作も担当されたのですよね。
大川:サウンドは非常に効果的な要素です。私は「明治プロビオヨーグルト LG21」のCM、GR、WEB、店頭、新聞などコミュニケーション全般に携わっていたのですが、その際に「SCAN DA CAN」の開発とCMのサウンドロゴの制作時期が重なり、自然な形で組み込むことができました。音は視覚的なロゴ以上に記憶に残りやすく、ブランドとの結びつきを強化します。
商品を味わった体験をサウンドロゴによって繰り返し想起することで、ブランドへの愛着につながるということですね。
大川:そうですね。たとえば、毎朝飲むコーヒーの香りで気分が上がるように、そうした小さな喜びが積み重なることで、その商品が生活の一部として欠かせない存在になっていくんです。こうした習慣が続くことで、ブランドへの愛着や帰属意識が自然と高まっていくのだと思います。
AI購買証明で難しかったこと
「AIで購買証明を行う」という仕組みは、どなたが発想されたのでしょうか?
鈴木:飲料メーカーのご担当者と電通のメンバーとでざっくばらんに話すスタイルの会議で出てきたアイデアです。そのご担当者から、電通を通じて、「先端テクノロジーを活用し、新しい体験を提供できるデジタル版購買証明が実現できないか」と相談がありました。「なんとか実現できそうだ」と感じて動き始め、その結果生まれたのが「SCAN DA CAN」です。
開発の中で特に難しかったことは何ですか?
鈴木:一番苦労したのは、AIの精度向上です。一つひとつの缶を完全に識別できる購買証明を目指すには、AIに高い精度が求められます。最新のAI技術を使えば精度を高められますが、そうすると「SCAN DA CAN」を使用できるスマートフォン端末が限られるなどの問題が出てきます。精度の向上と使いやすさのバランスをとるのが大変でした。
クライアント企業からの反応はいかがですか?
鈴木:「SCAN DA CANを採用したことで、応募数が増えた」といった評価の言葉をいただいています。他には、QRコード応募やシール貼付方式とは異なり、飲んでいるタイミングで撮影することで、購買行動や消費タイミングをリアルタイムで把握できることが好評です。商品によって消費される時間帯が異なるというデータが取得できて、メーカーにとっても新しい知見が得られたと評価されています。
仕事で大切にしている価値
皆さんが仕事を進めるうえで大切にしていることを教えてください。
平川:私が大切にしているのは「すべてを自分ごと化する」という意識です。もちろん、メンバーはそれぞれその分野のプロフェッショナルですので、各自の役割を全うしています。役割は分担しますが責任は分散せず、「SCAN DA CAN」の開発から生活者の方に楽しんでいただくその瞬間まで、リーダーとしての責任は自分が取るという覚悟で取り組んでいます。
リーダーとしてしっかり責任感を持つことで、メンバーが心理的安全性を感じてのびのびと仕事に従事できるようになり、最終的にはすばらしいプロダクトを作り出すことができると信じています。
大川:私は、仕事を単なる作業にしないことですね。ユーザーの体験設計という仕事をする身として、大事なのは一人の人間として多くの人とどう関わるかを考える「コミュニケーション」だと捉えています。ただ商品やサービスを提供し、お金のやりとりをするのではなく、人と人との対話やインタラクションを通じて新しい価値を生み出していく。チームやクライアントだけでなく、最終的なユーザー一人ひとりを尊重しながら、期待や兆しを生み出せるような表現を常に意識しています。
鈴木:ユーザーやクライアントにメリットを感じてもらえるものを開発する、そしてその開発過程を自分から進んで楽しむことです。私はAIによる広告の自動生成ツールも複数担当していますが、AIを使うことで人間が本当にやりたいこと、それに伴う喜びや楽しみをサポートすることを意識しています。たとえば、バナーの自動生成では、AIがクリエイターの発想や想像の楽しみを奪ってしまったり、本当に表現したい部分を邪魔したりしないように配慮しています。
今後の展望
クライアントやお客様にとって、「SCAN DA CAN」はどのような新たな価値をもたらしたのでしょうか?
平川:クライアントにとっては、ブランド体験を通じてキャンペーン参加者の好意度が向上したという成果が得られています。実際にアンケートでもその効果が確認されており、応募数の増加といった具体的な実績も出ています。
一方、お客様にとっては、楽しんで応募できる体験が新しい価値です。特に「缶を撮影するだけで応募できる」という手軽さは好評で、楽しさが好意度にもつながっています。
今後、このソリューションをどのように成長させたいと考えていますか?
平川:今後は、データを活用して、ユーザーが不快に感じないコミュニケーションをさらに強化したいと考えています。缶の分野では、すでにアサヒグループ様、キリン様、サントリー様といった国内飲料大手企業に導入いただきましたが、さらなる広がりを目指します。
最近では、他社からもAI購買証明に類したソリューションが出てきています。それらに負けない圧倒的なサービスを提供するため、AIの即時性や精度向上、キャンペーン設計の改善に取り組んでいます。そして、容器以外の新たな分野や、さらにはグローバル展開も進めていきたいです。すでにタイや中国では展開を始めています。
大川:グローバル各国の顧客体験については、正直言って、わからない部分も多いです。ただ、現地の人たちと直接話して一緒に作っていければいいですよね。「これが日本のやり方だ」というのをただ押し付けるのではなく、意図をしっかり伝えながら進めるべきだと思います。新しい視点が得られるのも楽しみです。
平川さんから鈴木さんへの期待はどのようなものがありますか?
平川:たくさんありますよ(笑)。一つは「∞AI」とのブリッジです。「SCAN DA CAN」が進化するためには、他のソリューションとの連携が重要になってきます。たとえば、お客さまとのコミュニケーション対応をチャット上でリアルタイムに解決する仕組みなどです。また、缶や容器以外の分野への展開も期待しています。
鈴木:全部やりますよ(笑)。もともと構想していたこととも一致しているので、今年はそれを具体的に進めたいです。他のソリューションとも連携し、単なる販促ツールの枠を超えて、ユーザー体験をより深く改善するような形にしていきたいですね。
期待が高まりますね。ありがとうございました。
販促キャンペーンに課題をお持ちの方や、AI購買証明による販促ソリューション「SCAN DA CAN」に興味がある方、あるいはこの開発メンバーとの意見交換などお気軽にご相談ください。