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採用広報とは?メリット、手法、進め方、4つの成功ポイント

作成者: D-sol|May 24, 2024 1:00:00 AM

人的資本経営への取り組みなど、企業を取り巻く経営環境が大きく変化する中、優秀な“人財”の確保は喫緊の課題です。採用市場の「売り手市場」化は進み、人財獲得競争はより激しくなっています。そのため、自社の魅力や事業変革の内容を効果的に発信し、採用ターゲットに訴求する採用広報活動の重要性が高まっています。

この記事では「採用広報を成功に導くチェックポイント」について、Z世代と言われる新卒採用や第二新卒を対象とした人財採用のコンサルティングを行っている電通「採用ブランディングエキスパート」の岩邊が解説していきます。

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採用広報とは?

採用広報とは、自社が必要とする人財を獲得することを目的に、求職者に向けて自社の企業情報を発信する取り組みです。一般的には、求職者や求職(転職)潜在層に向けて、募集要項、業務内容、企業理念、さらには職場の雰囲気や現場の声などを広報活動を通じて発信し、就職先・転職先として検討や行動を促します。

採用広報で発信する情報は、ターゲットに応募を促す情報だけではありません。採用のミスマッチや入社後のギャップを生じさせないよう、企業目線ではなく、求職者が求めている情報が何かを押さえ、彼らの状況や心情に寄り添った情報を発信することも求められます。

若年層の新規労働人口が減少していることもあり、今や採用市場は売り手市場です。売り手市場になったことで、企業は「選ぶ側」から「選ばれる側」になりました。選ばれるためには、まず自社のことを認知・理解してもらうことが必要です。その意味でも様々な業界で採用広報に注目が集まっています。

「人的資本経営」によって見直しが進む採用広報

「人的資本経営」の重要性の高まりを背景に、各企業は人財への投資を積極的に行っています。「人的資本経営」とは人財を資本として捉え、従業員の能力を最大限に引き出す環境を整えることで中長期的に企業価値を向上させる経営のあり方です。その効果を高めるために、各社は自社の経営戦略を実行する重要な機能として人財戦略を捉え直しています。

人的資本経営の考え方が広まる中で、採用広報にも新たな役割が期待されています。採用広報は、「事業の視点と人財の視点の両方から戦略を考え実行する機能」として捉え直されています。人事採用担当者は、的確な採用戦略のもとに採用広報を展開することが求められており、企業経営の重要な役割を担う者として期待が高まっています。

採用広報に取り組む意義・メリット

採用広報に取り組む意義・メリットには様々なものがありますが、重要なのは次の3つです。

企業の認知度を向上させる

採用広報は、企業の認知度を高める効果的な手段です。自社の情報を発信することで、求職希望者のみならず、将来的に就職や転職を考える可能性のある潜在層にもアプローチすることができます。企業の事業認知と就職意向の間には強い相関があることが分かっており、事業認知が上がれば就職意向は高まることが期待できます。

採用ミスマッチを防ぐ

求職者と企業の間にある認識やイメージの差を埋め、企業への理解度や入社意思の納得性を高めることができます。採用広報によって、求職者は入社前に「自分が働く場所としての企業」をよく理解できるようになり、入社後のギャップが生じにくくなります。「思っていたのとは違った」という理由で早期に辞めてしまうことを防ぎ、社員の定着率を高めることに繋がります。

人財採用におけるナレッジを社内に蓄積する

採用広報への取り組みは、企業が求職者や潜在層についてのナレッジを蓄積することにつながります
戦略的に取り組むことで、社にとって適切な人財像の解像度が回を重ねるごとに上がっていき、人財戦略の精度が高まります。また、求職者のニーズにマッチした情報発信や、最適な媒体選択が可能になり、活動全体の効率化やコストの最適化にも繋がります。

採用広報 手法の潮流

採用広報の手法にも大きな変化が起きています。近年、学生の就職活動に関する情報収集活動では、検索サービスやSNSを通じて気になる企業のサイトに直接アクセスして必要な情報を得る傾向が強まっています。その潮流から、以下の取り組みを強化することが重要だと考えられます。

自社サイト(オウンドメディア)の活用

自社のコーポレートサイトや採用情報に特化した採用サイトの活用は不可欠です。「自社の情報のみを届けられる」「自由度が高く効果的に届けられる」ため、企業の魅力を正しく理解したエントリーが得られやすくなります。

コンテンツメディアプラットフォームの活用

現在では、企業がnoteやWantedlyなどのプラットフォームを活用し、自社の採用サイトの役割を持たせることが可能になっています。プラットフォーム内にいるユーザーがコンテンツを拡散してくれる可能性があることが大きな魅力です。利用コストが必要になりますが、定型のフォーマットが用意されているため立ち上げが容易で、手軽に情報発信できるのもメリットです。

SNSの活用

企業に直接関わりのない第三者が発信するSNSはメッセージの拡散力が特徴で、企業のコンテンツや評判が第三者を通じて広まることが期待できます。SNS単体でなく、他のメディアやコンテンツとあわせて活用すると効果的です。

広告・メディア掲載・イベント出展

広告や就職情報サイトは、掲載コストがかかりますが、情報を広く届ける有効な手段です。 生活者との直接の接点を作ることが難しいBtoB企業などや、まだ知名度が低い、自社に情報発信できるサイトや媒体がない状況では、求職者との接点創出に役立ちます。 また、対面コミュニケーションによってより直接メッセージが伝えられるという点で、展示会や合同説明会といったイベントも有効です。

採用広報の基本的な進め方

採用広報の基本手順は以下のようになります。

採用広報のターゲット像を決める

自社が抱えている課題を踏まえて「自社が必要とする人財像」を設定します。人財像を設定することで、どのようなコンセプトで情報発信するかを考えていくための基盤をつくります。

ターゲットの調査・分析

次に、設定したターゲットを理解するために調査・分析を行います。ターゲットの特徴や思考・行動を把握するには社内外への調査が効果的です。デスクで考えるだけでなく、内定者へのインタビュー、社内のハイパフォーマー(=優れたスキルやこれまでの経験から、高い生産性や確実な成果を残す人財)へのインタビュー、社外へのアンケート調査など定性・定量調査を駆使してターゲットを明確化します。

発信する内容や手法を決めて発信する

ターゲットに適したコンテンツの内容を定め、どのような手法・媒体を通じて情報発信するか決めます。この時に、採用課題に沿って考えることが大切です

まず発信する内容について考えてみましょう。例えば「エントリー数を増やす」ことが課題である場合は、ターゲットへの接触機会を増やし認知向上を図る、また内容も自社のミッションやビジョン、事業に対する想いをターゲットにとって理解や共感を得られやすい形にして伝えることが考えられます。

発信する手法はどのように考えればいいのでしょうか。「エントリー数を増やす」ことが課題である場合は、就職情報サイトや企業説明会などアクションを促す機会を増やすことが効果的かもしれません。一方、採用の「ミスマッチ低減」を目指すことが課題である場合は、若手社員を紹介するなど自社のリアルな情報をオウンドメディアやSNSを通じて発信することが考えられるでしょう。

採用広報を成功に導く4つのチェックポイント

採用広報担当者の方にお悩みを伺うと、その背景に自社の姿勢や事業変革の取り組みが採用ターゲットに伝わっていないという事象がよく見られます。その原因は「自社の採用活動」と「ターゲットのインサイト」とのズレにあるのではと私たちは考えています。

この"ズレ"に陥らないために、採用担当者が気を付けるべきポイントは、大きく4つあります。採用広報の戦略を成功させるポイントになりますので、是非、現状をチェックしてみてください

① 経営戦略を見据えてターゲット(=人財要件)を明確に定義できているか

求める人材像は、経営戦略のもとで明確に定義されているでしょうか。また、それに基づいて採用戦略は行われているでしょうか。経営戦略を見据えた人財要件についてどこまで解像度を上げるかが、採用広報を成功させる最も重要なポイントだと言っても過言ではありません

② 採用広報の戦略が自社の視点に偏っていないか

採用広報の戦略が、自社の視点に偏ってつくられてはいないでしょうか。ターゲット人財が何を考え行動しているか、その意識や行動を軽視すると、自社の存在意義や価値をうまく受け取ってもらえず、思うような成果につながらない場合が生じます。特に若者の意識や行動が大きく変化している昨今では、若者ターゲットのインサイト(洞察)から考えていく「マーケティングの視点」が、自社の採用広報の活動を見直す有効な視点になっています

③ 若者が「自分ごととして」共感や信頼を感じるメッセージを語れているか

求職者である若者が「ここなら自分は活躍できそうだ」「自分が目指す理想像に近づけるかもしれない」と感じられるメッセージを発信できているでしょうか。あらゆる情報をすぐ検索して調べられる現代では、絵空事ではない、ファクト(事実)のあるメッセージを伝えていかなければ、ターゲットにリアルな自分ごととして捉えてもらうことはできません。自社の未来のビジョンとファクトを、若者の「自分ごと」として適切に語れるかどうかは大切なポイントになります

④ 採用広報が「点」の施策にとどまっていないか

4つ目のポイントは施策全体にまつわる話です。採用活動は、ともすれば単発な施策になりがちですが、採用したい人財は果たして「点」のコミュニケーションで動いてくれるでしょうか。求職者の心理や行動はそのフェーズごとに変化します。その変化を理解して、点ではなく繋がった線のような一貫したコミュニケーションを行うことは、大切なポイントになります

これら4つのチェックポイントは、自社がターゲット人財から"選ばれる存在"さらには "選ばれ続ける存在"になるために大切なポイントです。企業の採用広報活動には、こうした視点を取り入れた適切な戦略が求められています。

若者基点の「採用ブランディング」へ

採用広報を成功に導くためには、若者を中心とした、自社が求める人財が何を考えているかを基点に、そのインサイトから自社を理解して、彼らの「心が動く」戦略を構築してコミュニケーションを設計することが大切です

自社の「企業価値」や「ありたき姿」の意義を、若者の自分ごととして伝えることができれば、求める人財を採用できる可能性が高まり、さらには「自社で働く」ことにおける企業の独自価値を形成することができるでしょう。

いま、人財採用には、このようなマーケティングの手法を活用した、『若者基点の採用ブランディング』が求められています

次回は、私たちが考える「採用ブランディング」について、その考え方や取り組み方法、うまく進めるコツなどをご紹介しつつお伝えします。

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