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高校生人財の獲得に効く採用ブランディングとは?「3つの心理」が成功のカギ

作成者: D-sol|Apr 22, 2025 4:58:12 AM

昨今、企業の高校生採用の需要が高まり、2025年3月卒業予定者の求人倍率は3.91倍という超売り手市場となっています。特に製造業では世代交代による人財確保が急務となる中、どうすれば優秀な高校生人財を獲得できるのでしょうか。

人財採用に向けた「採用ブランディング」に関するこのブログシリーズ。これまで、「採用広報の課題と解決策」や「採用ブランディングの進め方」、また「Z世代の採用ポイント」などをご紹介し、過熱する人財獲得競争を勝ち抜いていくための情報をお届けしてきました。今回は、慢性的な人手不足を背景に、現場作業を伴う業種の企業などを中心にニーズが急増している「高校生人財」の採用活動のポイントについて、電通の人財採用コンサルティングチーム「採用ブランディングエキスパート」の岩邊駿が語ります。

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INDEX

求人倍率は約4倍。超売り手市場における「今どき」高校生の価値観

高校生の就職活動は、大学生の就職活動とは異なる点が多いと思いますが、まずその違いから教えてください。

高校生・高専生の就職活動は、約9割が学校斡旋による就職で、高校3年生の4月から就職活動がスタートします。大学生のように企業と直接コンタクトをとる機会は限られており、学校での説明会、職場訪問、教員との面談等を通じて就職先を選定していくのが一般的なプロセスです。接点が限られていること、直接的なアプローチが制限されていることが、大学生採用との大きな違いであり、採用活動を難しくしています

高校生採用は、いま「超売り手市場」です。2025年3月卒業予定の高校生に対する有効求人倍率は全体で3.91倍と高い水準になっており、特に工業高校では製造業を中心に非常に高い倍率になっている場合も。こうした背景には、団塊の世代などの労働生産人口のボリュームゾーンの退職があり、特に製造現場では50〜60代の技術者の世代交代が進み、次世代のものづくりを支える人材確保が急務となっていることが挙げられます。

「今どき」の高校生たちの価値観や、就職に対する考え方についても教えてください。

まず、家庭環境や教育環境の変化により、親子関係が大きく変わってきています。かつての「服従・垂直」な関係から「相談・並行」へと変わり、上から教えてもらうよりも、「相談相手のような親子関係」を築いている家族が増えてきているのです。

また、今の若者は「反抗しない子どもたち」とも言われています。親子関係が上下関係でなくなり、一方的な指示ではなく、一緒に考えてくれる大人を求める傾向があります。

情報収集の方法にも特徴があります。高校生に「求人票をしっかり読みますか?」と聞くと、「字が多くて専門用語も多くて理解しづらい」という声があがりました。
彼らにとって主流の情報収集経路は、求人票・Web・学校内の広告などですが、日々の生活での情報行動と同様に、文字情報よりも動画などの映像情報の方が好まれているようです。たとえば、私たちの調査では、ある企業の採用Webサイトについて、「VRで360度工場見学ができるコンテンツがとても印象に残り、もっとも理解が深まった」という意見がありました。このように、高校生には、感情や視覚に訴えかける「右脳的なアプローチ」が効果的だといえます。

高校生採用で押さえておくべき重要な「3つの心理」とは?

高校生を採用しようとする際に、どういったことに留意すべきでしょうか。

高校生採用に取り組む上で、まず最初に押さえておきたいのが、
 ・高校生本人 
 ・保護者
 ・高校教員
の「3つの心理」を理解しておくことです。高校生の就活については周囲の人々からの影響が大きく、本人の視点以上に保護者と先生の視点も意識して情報やブランドの設計をする必要があります。

具体的にどういった点が重要なのでしょうか。

まず求職者である高校生は、当然ながら「社員として働く」という経験が初めてです。17~18歳とまだ若い彼らは、ハラスメントなど職場の人間関係や給与面、業務が難しくてついていけないのではないかといった点を中心にいろいろなことで不安を感じやすい。こうした高校生特有の心理を理解した採用戦略が必要だと思います。

先ほども述べた「文字情報よりも映像情報からの情報に親しんでいる」という高校生の特徴と共に考え合わせると、先輩社員へのインタビュー動画や「バーチャル工場見学」といった視覚に訴えるコンテンツで情報提供することは、高校生の理解や安心感を得るために効果的と言えるでしょう。

続いて保護者の心理ですが、保護者は高卒で就職するということについて「再就職や転職が難しいのでは」と考える傾向があるようです。それゆえ、「長く働ける、安定しているところを選ぶのがいい」というアドバイスをする親御さんが多い。そんな親心をくみ取って、企業側も意識的に職場の「安心」や「安定」を示すファクト情報をしっかり伝えることはとても重要だといえるでしょう。

3つ目の、教員の心理ですが、先生方は、教育的観点からの思いを持って就職対応に臨んでいる方が多くいらっしゃいます。なので、待遇や給与といった条件面だけではなく「この就職が本人のどういう成長につながるのか」や「社会にどう貢献できるのか」を理解した上で企業のことを説明したいという思いに寄り添えることが大切です。

実際の調査でも、「単に求人票を送りつけるだけの企業ではなく、その会社で働くことで生徒たちがどんな人財に成長できるのか、日本経済に貢献する人財に育つことができるのかを説明してくれる企業の方が、生徒や親御さんに対して説明がしやすい」という声を聞きました。

特に進路指導の先生方は、自分が推薦した企業で生徒が将来どうなるかという責任も感じています。「この就職先で数年後にキャリアの壁に直面しないか」「業界の先行きは安定しているか」など、生徒自身が気づかない将来のリスクまで考えて、生徒に寄り添っていることが多いのです。企業側はこうした教員の視点も考慮した情報提供を意識することが重要です。

高校生採用につながる採用ブランディング。肝は「従業員エンゲージメント」

ここまでの話を踏まえて、高校生採用を成功させるために具体的にどのようなアプローチが効果的なのでしょうか。

高校生採用を成功させるためには、求職者が「憧れ」を感じ、従業員が「誇り」を持てる企業としての採用ブランディングが何より重要です。つまり、高校生や保護者、教員に向けた外部への発信と、実際に働いている従業員のエンゲージメント向上の両方に取り組む必要があるのです。

なぜ高校生の採用に「従業員のエンゲージメント向上」が関係するのか教えてください。

高校生採用において、求職者と企業の接点が限られていることは既にお話したとおりですが、特に製造現場のような「中に入らないと何をしているかが見えにくい」職場では、就労経験のない高校生が働くイメージを具体的に描くことが難しい。そのため、実際に働いている従業員の姿勢や雰囲気が、高校生の企業選びに大きな影響を与えるのです。

従業員エンゲージメントとは、従業員が企業の目指す姿・方向性を理解・共感し、貢献したいと思う意識の度合いを指しますが、 近年、この低下が課題になっている企業も多いようです。「会社の方向性や自分の作業の意味が見えない」「自分の仕事が社会にどう貢献しているかの実感が持てない」「個人作業が多くチームワークの実感が薄い」といった従業員の意識がエンゲージメント低下の要因になっています。

実際に社員が生き生きと働いていなければ、いくら本社が素晴らしい採用コンテンツを作っても、高校生や保護者、教員に「ここで働きたい」「ここなら安心して送り出せる」と思ってもらうことは難しいでしょう。特に全国展開する企業では、本社と現場の距離が離れがちで、現場の従業員が「会社が行っている採用活動は自分には関係ない」という意識になりやすいという問題もあります。

だからこそ、求職者の「働くことへの憧れづくり」と、社員の「働くことへの誇りづくり」を両輪で進めることが必要なのです。社員自身が自分の仕事に誇りを持ち、会社の価値観に共感していれば、それが先輩社員からの口コミや周囲の評判として高校生・保護者・教員に伝わり、採用にもつながるというわけです。採用活動を現場の社員が「自分ごと」として捉えられるよう巻き込んでいくことが、高校生採用成功のカギと言えるでしょう。

例えば、どんなことをすればいいのでしょうか。具体的な例があれば教えてください。

ある会社の事例では、複数の製造拠点で横断的に活用できる採用ツールとして、各拠点で働く現場社員が主役となる「職場紹介ムービー」を制作しました。それまで各拠点では、手書きのポスターを学校に貼る程度の活動しかできていなかったそうですが、この取り組みによって会社全体のブランドメッセージを踏まえつつ、現場の社員自身が自分の言葉で仕事の魅力を語る動画を作ることができました。

この動画は高校生への説明会でも活用できる採用ツールとなりましたが、何より出演した社員自身が「自分たちの仕事が会社や社会でどう役立っているのか」を改めて考え、発信する機会になったのです。「本社が言っているだけ」ではなく、現場社員が自ら発信することで、エンゲージメント向上と採用活動の充実を同時に実現できた例だと思います。

そのほかに重要なポイントはありますか。

業界全体のイメージ向上に取り組むことも効果的です。
例えば、世代交代で人手不足に危機感がある建設業界では、バブル期の1980年代に付いた建設業界の「3K」(きつい、汚い、危険)という先入観を払拭すべく、2015年に国土交通省が「新3K」(給与がいい、休暇がとれる、希望が持てる)を提唱し、業界のイメージ向上や環境改善の実態周知に努めています。

建設業界大手企業では、事業の将来性や従業員の活躍の場を訴求する広告などのコミュニケーションを行い、それらは業界の認知や好意の獲得とともに、自社の採用の両面への貢献が期待できます。

電通の「採用ブランディング by HR for Growth」

高校生採用を成功させるには、求職者・保護者・教員の3つの視点を理解し、現場社員のエンゲージメント向上と採用活動を両輪で進める採用ブランディングが効果的です。

こうした取り組みを支援する私たち「採用ブランディングエキスパート」は、Z世代をはじめとする現在の高校生や大学生、若手社会人の採用に関するブランディングをサポートするコンサルティングチームです。広告業務で培った若者インサイトの把握を専門とするアカウントプランナーや、実際に人事経験のあるコンサルタントなど、多様な経歴を持つメンバーが連携して、企業の人材獲得をサポートしています。

私たちには、高校生採用に向けた採用ブランディングの実績が多数あります。本ブログでご紹介した内容についてご関心がある方は、お気軽にお問い合わせください。

また、採用にお悩みの企業の皆様に向けて、「採用ブランディング by HR for Growth」サービスをご提供しておりますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせいただけると幸いです。詳しい資料を無料進呈しておりますので、ご関心のある方、ご希望の方は、eBookをぜひダウンロードしてみてください。

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