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    Z世代のポジティブな価値観が、サステナビリティ経営を変える力に!

    最終更新日:2023年10月26日

    Z世代のポジティブな価値観が、サステナビリティ経営を変える力に!

    ここ数年、頻繁に耳にするようになった「Z世代」というキーワード。1990年代半ばから2010年ごろまでに生まれた層を指し、デジタル化や情報化が進む中で育ってきたことから、これまでの世代とは大きく異なる新しい価値観を持つと言われています。

    一方、昨今の企業経営において大きな課題となっているのが「サステナビリティ経営」。環境・社会・経済、すべてにおいて持続可能なビジネスを達成することが求められ、これまでとは違う視点や発想でのビジネス推進が求められています。

    Z世代とサステナビリティ経営。この二つをかけ合わせたら、企業を変える大きな力になるかもしれない——。そんな気づきから生まれたソリューションが、今回取り上げる電通の「REVERSE CONSULTING for SUSTAINABILITY」(リバース・コンサルティング・フォー・サステナビリティ)です。一体どのような狙いや効果があるのでしょうか。ソリューションを担当する、電通 サステナビリティコンサルティング室の田中理絵に、編集部が取材しました。

    PROFILE

     

    INDEX

    企業にじわじわ広がる“サステナブル疲れ”とは

    サステナビリティへの意識・関心が高まり、企業もさまざまな取り組みを加速させていますが、世間では「サステナブル疲れ」という言葉も出始めています。サステナビリティ経営において、企業はどういった課題に直面しているのでしょうか。

    よく言われる「サステナブル疲れ」は、世の中にあふれるSDGsアピールに若者が辟易しているといった文脈で使われています。でも若者だけでなく、企業の中にも、ある種の“疲れ”が出てきていますね。サステナビリティ経営の推進が社会的にも必須になる中、次々と情報開示ルールが変わり、担当者が社内外の情報とりまとめに疲れている現状があると思います

    その理由として一番大きいのは、サステナビリティが中途半端な“やらされ仕事”になってしまっていること。世界的な流れとして取り組まなければならない、でも登るべき階段が不確実かつ不透明で、“やって当たり前”なので努力しても褒められない。加えて、大きな投資やコストがかかる中で、事業成長につながるナラティブ(文脈・物語)も求められる……逃げ場のない戦いを強いられる感覚になりますよね。

    これには既視感があって、まさにDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進のときと同じです。それまでシステムやデータのことは専門部署に任せておけばよかったのに、全部署・全社員で向き合わなくてはならなくなった、という状況がありました。正解が見えない中で部門を横断した取り組みを進めるのは言うまでもなく大変ですし、「現状のやり方を変えてください」と言われたときの戸惑いも、DXとSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)に共通する課題だと思います。

    そしてどちらの場合も、「やらされ仕事だから、このくらいやれば怒られないかな」というマインドで立ち向かうと、うまくいかない。「いっそ変革するならとことんやろう!」と前向きな企業は、従業員の士気も高く、結果を残していらっしゃいます。

    そうした課題の一つの打開策として、電通ではZ世代との共創型ソリューション「REVERSE CONSULTING for SUSTAINABILITY」を展開しています。詳細は後半でお聞きしますが、そもそもこのサービスの開発に至ったきっかけは何だったのでしょうか。

    電通グループにはサステナビリティに関するリサーチやソリューション開発を行う「電通Team SDGs」という横断組織があり、Z世代のインサイトを用いたソリューション開発を行う「NEW STANDARD社」と一緒に何かできないかと考えていました。その中で、「Z世代をターゲットにしたマーケティングはたくさんあるのに、Z世代の視点を将来世代の視点として企業経営に取り入れるという発想は日本ではまだ黎明期」と気づいたんです。Z世代は「サスティナビリティネイティブ」と呼ばれるほど、サステナビリティが当たり前になっている世代です。これは大きな可能性があるだろうと、「REVERSE CONSULTING for SUSTAINABILITY」の提供に乗り出しました。

    今までの延長線上から脱するために、新たな視点を!

    サステナビリティを軸に考えると、確かにZ世代と企業がぐっと結びつきそうな予感がしますね。サステナビリティ経営にZ世代の視点を取り入れていく意義を、田中さんは具体的にどう捉えていますか?

    第一に、今までの延長線上で物事を考えないということが大きいです。サステナビリティは「従来のやり方を新しい方へシフトさせないと、将来までもたない」ということがスタート地点です。ちょっとした改善で済むレベルではない、ということです。

    その点、グローバルな情報化社会の中で育ったZ世代には、これまでの商習慣やバイアスに縛られない柔軟な発想を持っている人がたくさんいます。「今のままでは未来は良くならない」とわかっている世代ですから。

    今のままでは未来は良くならない…。厳しいですが、現状認識として必要ですね。

    これは本当に重要なことで、私たちはどうしても将来のリスクを低く見積もってしまうんです。よくサステナビリティが進まないことを非難する台詞として「将来世代が不利益を被るのは明らかなのに、なぜ現役世代の利益を優先するのか」というのがありますよね。これ、自分自身もピンとこなかったのですが、先日大阪大学の安田洋祐教授とご一緒したときに、行動経済学を用いてすごくわかりやすい説明をしていただきました。

    例えば「今すぐ無条件で100万円がもらえます。もし、じゃんけんをして勝ったら200万円になります。ただし負けたら1円ももらえません」と言われたら、どうしますか?

    じゃんけんをせず100万円もらいます(即答)。

    ですよね。多くの人はリスクを回避し、目の前の確実な利益を選びます。では質問を変えて「今すぐ無条件で100万円支払わなくてはなりません。もしあなたがじゃんけんに勝ったら回避できます。でも負けたら200万円支払います」となったらどうします?

    うーん! 悩ましいですが……交渉の余地がないなら、じゃんけんします!

    そう答える人が大多数なのだそうです。この先200万円取られるかもしれないけど、「何とかなる可能性もあるだろう」と将来リスクを低く見積もって、リスク回避のための投資を渋るのです。地球の未来についても同じことで、「技術が発展して解決されるだろう」などと考え、何とかなるかもしれない方に賭け、リスク愛好家になってしまう。サステナビリティや環境問題に関するルールや法規制が厳しいのは、将来の200万円の損失を回避するために今100万円を投資するという行動を、ほとんどの国や企業がとらないからなんです

    もう1つ、私個人が腹落ちしたことがありまして。以前、交渉術のロールプレイングゲームに参加したときのことです。私の役は、大学卒業を控えた子どもが二人いる50代の男性。各年代の代表者と10年後の年金問題を話し合うのですが、最初はみんな自分が損をしないように、縮小するパイ(=年金)を取り合うためのギスギスした話し合いをするんです。でも、だんだん全員が「あれ?若い世代が海外に出てしまえば、全員終わりだ。年金の交渉自体に意味がない」と気づき始めて…

    自分の損得だけでなく、未来のリスクの本質が見えたんですね。

    まさに、そうです。そこで、発想がガラッと変わって、若い人が日本に居続けたくなるには何をすればいいかを考えるように議論がシフトしていきました。パイを取り合うのではなく“増やす”発想になったことで、具体的なアクションが考えやすくなり、議論自体も一気に楽しくなりましたね。

    この場合はロールプレイングの形式でしたが、こうした思考の切り替えを起こすためには、何らかの形で自分とは違う立場の視点を取り入れることが必要だと体感できました。同様に、サステナビリティ経営においても、これまでとは違う未来の在り方、Z世代の視点というフィルターを使ってみるのは有効だということも見えてきたのです。

    「楽しいからやる」「まずは自分が幸せに」そんなマインドセットでいい

    先ほど「Z世代は従来の価値観やバイアスに縛られない」というお話がありましたが、その他にもZ世代ならではの視点として、田中さんが注目している特徴はありますか?

    先ほどのリスクの話に絡めて言うなら、「全方位リスク回避型」で、あらゆることでリスクを想定し、行動していることですね。若いからといって未来を楽観的に捉えているわけではなく、むしろシビアに考えています。ヘルスコンシャスや自己投資への意欲の高さに見られるように、「人は壊れてしまうこともある、いつまでも今の暮らしが続くとは限らない、じゃあ今どうするべきか」という思考がとても鍛えられている。Z世代ならではのこうした“サバイバル思考”は、今後サステナビリティの時代を企業が生き抜くために参考にできそうです。

    それから私が個人的にも影響を受けているのは、Z世代が持つ「自分の幸せを軸にした主体性」です。ただ必要だからと考えて動くのではなく、「自分が楽しいからやる・自分が良いと思う未来にたどり着きたいからやる」という人が多い。自己犠牲的な社会貢献ではなく、自分の幸せは他人の幸せにつながっていることを信じて、自分がやりたいからやっているのであり、義務感でやらされているわけではないというところに、こだわりがあります。

    サステナビリティネイティブのZ世代

    Z世代は堅実なサステナビリティ

    電通が行ったZ世代の意識調査結果。
    義務感にとらわれない社会貢献意識や、堅実さが垣間見られる。
    ※出典:電通・電通総研サステナブルライフスタイル意識調査2023より
     日本の回答データを抜粋(1000人に調査、うちZ世代18~26歳は144人)

    確かに自分の意志を最優先に動いているなと、若い世代を見ているととても感じます。

    もちろん、「社会的に正しいことをしたい・人の役に立ちたい」という想いも強く持っている世代なので、決して自己中心的とか、人に迷惑をかけても自分を貫くような勝手な人というわけでもありません。でも大義のために自己犠牲を払ってまではやらないし、時間やアイデアを大人に搾取されることにも非常に敏感です。

    特に日本の大企業では顕著ですが、どうしても「“みんな”の期待に応えるため、8割方の支持を得たいし、少数の2割の人からもできるだけ責められないように努力する」という意識が強くなり、本質的な目的を見失ってしまうことがあります。でもZ世代を中心にそうした考えも変わり始めていて、「みんなから愛されなくても、わかってくれる人はいる。たとえ失敗しても、目指すものはブレさせたくない」というマインドセットを持つ人がとても増えていると感じています。

    究極的には「自分が幸せじゃないと、人を幸せにできない」ということですが、サステナブルに何かを続けていくには至極まっとうなスタンスですよね。Z世代のフィルターを通して事業の在り方を見つめ直すことで、人間らしい感覚を取り戻せる可能性もあると思います。

    対話から出口戦略、そして実行へと軌道に乗せる「REVERSE CONSULTING for SUSTAINABILITY」とは

    サステナビリティ経営になぜZ世代の価値観が“効く”のか、これまでのお話でよく分かりました。ではここからは「REVERSE CONSULTING for SUSTAINABILITY」のサービス詳細について、簡単にご紹介いただけますか。

    簡単に言うと、Z世代の視点を活かして得られた新たな知見を、企業の事業推進や情報発信に活かし、さらに組織変革やDEI等の推進にもつなげていく支援サービスです。

    具体的には、勉強会やリサーチが中心の「①リバース・ラーニング」、経営層とZ世代の対話セッションを実施する「②リバース・トーク」、事業やサービスのアイデアを発想する「③リバース・セッション」、そして企業の枠を超えた多様な人たちと合同で行う「④リバース・フォーラム」という4つの入り口を用意しています。これを必ず順番にやっていくというわけではなく、企業様の課題や目的に合わせて内容をアレンジしながら進めていきます。

    REVERSE CONSULTING for SUSTAINABILITY

    最近、企業の間で上司から部下へを逆転して、若手社員がメンターになり、先輩社員や上司に助言をするリバースメンタリングという手法が注目されています。「REVERSE CONSULTING for SUSTAINABILITY」もそこに絡めた名前かと思いますが、企業内で実施するリバースメンタリングとの大きな違いはなんでしょうか?

    若い世代のアドバイスをベテランや先輩が活用する、という部分は同じですが、メンタリングにとどまらず、しっかりアウトプットへとアジャイル(※)で動かしていくという点です。リバースという言葉はコンサルティングにも掛けていて、従来の「計画してから実行」ではなく、「実行から得ることを計画に反映する」という意味も込められています。
    ※短期間で実行とレビューを繰り返す、柔軟な進め方のこと

    このサービスには、冒頭でお話しした電通Team SDGsと NEW STANDARD社以外にも、若者インサイトを得意とする「電通若者研究部(電通ワカモン)」や、電通デジタルのデジタルネイティブによるコンサルティングチーム「YNGpot.™(ヤングポット)」、電通プロモーションプラス「若者消費ラボ」が参加していて、Z世代が大事にしていることを日頃から読み解いて企画しているチームで構成されています

    そうした経験値をもったメンバーが、企業の経営層やZ世代とともに俯瞰して未来を捉え、事業や組織を考え、テストしたことをまた幅広い施策につなげていく。入口と出口の幅の広さは、電通グループならではの強みがあります。サステナビリティ経営の企画はもちろん、新規事業開発やサービス開発、マーケティング、インナーブランディングや社内教育など多様な目的に対応することができます。

    オフィスで若手を呼んだランチ会などを実施して、なるほど最近の価値観はそうなのか~…で終わってしまうのは“企業あるある”ですよね。出口へつなげてくれるのは非常に頼もしいです!

    すでにリバースメンタリングを取り入れている企業もたくさんあると思いますが、中には「そうはいってもベテランが一方的に話をして終わる」「若手からいい意見が出てもどう活かせばいいかわからないし、若手がプロジェクトリードをするのは荷が重そう」と悩んでいる方々もいらっしゃるはずです。私たちのようなサステナビリティとZ世代の両方の知見を持つ外部の人間が入ることで、そうした分断を超えて、次につなげていけると思います。

    また、一般的なコンサルティングのイメージとして、データや計画に重きが置かれ、実行フェーズの寄り添いが弱い印象もあるかと思います。それに対して私たちは、実行フェーズにおいてもテストや検討を繰り返し、それこそサステナブルに企画を回していく姿勢で取り組みます。実際にどこまでサポートさせていただくかはケースバイケースになりますが、少なくともテストサイクルが軌道に乗るまではしっかりサポートしていきます。

    「若手の声を経営に活かそう」とはずっと前から叫ばれ続けていますが、挑戦しつつも上手く実践できていない企業は本当に多いと思います。「REVERSE CONSULTING for SUSTAINABILITY」は、そうした企業の大きなヒントになりそうですね。本日はたっぷりとお話いただき、ありがとうございました!

    【「Z世代×サステナビリティ経営」相談会を随時開催中】
    サステナビリティ経営や新規事業開発などにお悩みの企業様を対象に、個別の相談会を随時開催しています。Z世代の価値観に可能性を感じた企業様、サステナビリティ経営の新しいアイデアやヒントをお探しの企業様など、今回の記事に興味を持たれた方はぜひ一度ご相談ください。

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