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    どうすれば現場は、ビジョンの実現に向けて動くのか? ~従業員エンゲージメントを全社視点で考えてみる~

    最終更新日:2023年06月19日

    どうすれば現場は、ビジョンの実現に向けて動くのか? ~従業員エンゲージメントを全社視点で考えてみる~

    INDEX

    「事件は現場で起こっている」

    以前大ヒットしたある映画のワンシーンにそんなフレーズがありましたが、現在、多くの日本企業が「VUCA(※)」と呼ばれる不透明な外部環境、そしてデジタル化、グローバル化によるゲームチェンジの中、生き残りをかけて自社の構造改革に着手しています。
    そして、その最前線で指揮を執るミドルマネジメントの皆様は、経営層から打ち出されたビジョンと、日々の現場業務の狭間で奮闘されているかと思います。

    この連載では、コーポレートブランディングを専門領域とする筆者が、現場をエンパワーメントし、全社を変革に導く要となるミドルマネジメントの皆様に向けて、少しでもお役に立つ知見を提供できればと考えています。

    ※=VUCA
    Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、 Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をとった造語

    日本企業を襲う、「ビジョンを作っても現場が動かない問題」

    新事業開発によるイノベーションの創出、事業領域の選択と集中、SDGs、ESGへの取り組みに対する社会的要請への対応、持株会社化によるグループ再編など、抜本的な改革に迫られる日本企業。その多くが、中期経営計画、あるいは長期ビジョンを策定し、変革の途上にあります。

    しかし、最近多くのクライアントから相談をいただくのが、「経営層と現場の意識に乖離があり、思うように変革が進まない」という悩みです。

    ・新たなビジョンに向けての従業員の意識改革が進まない
    ・部門間の縦割りによって連携が進まず、変革のスピードが鈍い
    ・既存事業の存在感が大きく、業態変革のブレーキとなっている
    ・ベテラン従業員と中堅、若手従業員の意識にギャップがある
    ・従業員のモチベーション低下、人材流出が課題となっている

    といった課題意識が共通して挙げられています。
    一言でいうと、「ビジョンをつくっても現場が動かない」というお悩みです。

    そして、そこにコロナ禍が追い打ちをかけました。

    リモートワークの常態化が新たなワークスタイルを生み出すきっかけになった一方で、従業員の一体感や帰属意識の低下が課題となっています。

    リモートワークは成果重視の人事評価やジョブ型の採用方針とは相性が良い一方で、リアルの場での接点の減少は組織へのロイヤルティ低下を引き起こす要因となります。OJTを中心に人材育成を推進してきた多くの日本企業にとっては、若手や中途入社の従業員の育成、企業文化の伝承にも困難を抱えることになりました。

    ニューノーマル時代における生き残りに向けて、「企業文化を維持、強化しながら変革を推進する」という難題に、多くの日本企業が直面しているといえるでしょう。

    今、脚光を浴びる「従業員エンゲージメント」

    そのような環境の中、数年前から「従業員エンゲージメント」に関心が高まっています。

    人手不足の深刻化や高度専門人材の獲得競争の激化に伴い、「働きたい、働き続けたい企業であること」が競争力強化に向けての喫緊の課題となったのです。それに伴い、多くの企業では、事業変革の一方で、従業員エンゲージメントを向上させるための施策も推進されています。

    日本社会においては「働き方改革」と相まってクローズアップされてきた概念であることから、残業時間の削減や有給休暇の取得促進といった労働環境の改善、人材やワークスタイルの多様性への配慮、あるいは充実した研修や福利厚生制度など、主に人事領域における課題として捉えられる傾向にあります。

    また、従業員エンゲージメントが語られるとき、その多くは企業に対する愛着や仕事に対するモチベーションの向上とほぼ同義であるように見受けられます。

    つまり、従業員のロイヤルティを維持、強化させるための「コスト」であり、事業変革とは切り離されて考えられているのではないでしょうか。その視点でいる限り、従業員エンゲージメントは人事領域の課題であり、他の部門はあまり当事者意識を持つことはありません。

    従業員エンゲージメント向上は、人事だけの課題ではない

    しかし、コーポレートブランディングの視点から考えると、従業員エンゲージメントは、もっと多面的な視点から考えるべき課題であると言えます。

    例えば、最前線で顧客に対応する従業員にとっては、「自社の認知度が低いこと」「自社の競争優位性が認識されていないこと」は、愛社精神を損なう非常に大きなストレス要因になります。顧客だけでなく、家族や知人からも自社が認知されていないことも、少なからず自社への誇りに影響を及ぼします。

    「自社の認知を高めるためにもっと広告コミュニケーションを積極的に展開してほしい」という声が現場の従業員から上がることもしばしばあります。このようなケースにおいては、営業部門、商品開発部門、マーケティング部門、広報・宣伝部門も、従業員エンゲージメント向上に重要な役割を担うと言えます。

    また、近年はSDGs、ESGへの取り組みに対する対応も、その企業に対する評価に大きな影響を及ぼすようになってきています。

    各種の社会貢献活動をはじめ、持続可能な社会づくりに向けた有意義な取り組みが社会に広く認知されていることは、その企業に勤める従業員の誇りにもつながります。特に、若い世代になるほど、社会課題解決に向けた企業の姿勢やアクションが、働く企業を選ぶ際の重要な評価ポイントになり始めています。

    その意味においてはCSR活動を担当する部門、調達、生産に携わる部門の取り組みも、従業員エンゲージメントに大きな影響を及ぼすのです。

    つまり、従業員エンゲージメントとは決して人事部門だけの課題ではなく、全社的な視点で取り組むべきテーマであると言えます。そして、「事業成長やブランド力強化と、従業員エンゲージメント向上を“両立させるアクション”を見つけ出す」ことではじめて、経営層が掲げたビジョンに沿って、現場が能動的に動くための企業文化変革を推進できると考えています。

    企業文化変革の手段としてのコーポレートブランディング

    従業員エンゲージメントを全社的な視点で考える際に最も重要なポイントは、「企業のビジョンと、従業員一人ひとりのモチベーションが同じ方向を向いていること」であると考えます。つまり、「経営と現場が同じ志のもとに一つになること」がその本質なのです。

    そのための変革手法として有効なのがコーポレートブランディングです。
    下記は、コーポレートブランディングの基本構造を示した「ブランドスパイラル」です。

    コーポレートブランディングとは、

    インターナルコミュニケーションによる企業文化変革
    ・企業理念をはじめとする自社のアイデンティティ、および経営ビジョンを組織の隅々まで浸透させる
    エクスターナルコミュニケーションによる良好なレピュテーションの形成
    ・従業員が自社のアイデンティティを自分ゴト化し、日々の業務の中で顧客を始めとするステークホルダーに対して行動・実践する
    ・自社のアイデンティティ、経営ビジョンを広報・広告等の手段で発信する

    の両輪によって推進されます。自社のアイデンティティおよびビジョンを全社的な視点でマネジメントする一連のプロセス、それがコーポレートブランディングなのです。

    そのためにまず行うべきことは、自社の変革に向けての緊急度、重要度の高い課題を全社的な視点で抽出したうえで、「現場を動かすトリガーとなる施策」をどこから始めるかを特定することです。

    今、多くの日本企業の課題となっている「ビジョンをつくっても現場が動かない問題」。
    次回は、自社において変革に向けての壁となっている課題をどのように見つけ出すか、そのための電通オリジナルの視点についてご紹介していきます。

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