みなさんは「Z世代」という言葉をご存じでしょうか。「Z世代」は主に「1990年半ば〜2010年代生まれの世代」を指し、企業のマーケティングにおいて、世界的に注目されているターゲット層です。
Z世代は世界で人口の1/3を占めるようになったとされ、2031年までにZ世代の収入が世界の1/4以上に達するとの見方もあります。
こうした数の面だけでなく、Z世代はデジタルネイティブ、スマホネイティブなどと呼ばれ新たな価値観を持った世代としても注目されています。
つまり量的にも質的にも、これからのマーケティングでのターゲットの中心を担うのがZ世代です。
アメリカでは、大統領選挙においてZ世代の意見や動向が注目されるなど、政治の面でもZ世代の影響力が注目されています。
そんな「Z世代」にどうアプローチしていくべきか。電通のプランナーが日本の「若者」の動向や生態について専門的に研究する社内横断組織、私たち「電通若者研究部」が持つ知見をご紹介します。
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世界で注目されるZ世代。一方で、日本ではまだまだその実態が見えていないようです。それはなぜでしょうか?
日本で「少子化」という言葉が使われはじめたのは1997年のこと。子どもの数が高齢者人口よりも少なくなったのがこの年で、1997年以降、日本は少子化国家となりました。
そんな1997年生まれの子供は、現在24歳。近年世界で注目されているZ世代の定義が「1990年半ば〜2010年代生まれの世代」だとすると、まさに日本はZ世代から少子化がはじまった国と言えます。
こちらの図をご覧ください。
この表は日本の年代別人口構成比です。Z世代にあたる20~24歳が631万人なのに対して、45~49歳は966万人。1.5倍以上の差がついていることがわかります。
日本は他国に比べてZ世代が少ない国。世界と比較してZ世代の実態が見えにくい国であるといえます。
日本ではZ世代が少数派なのです。彼らはまず数の面で軽視されるため、マーケティング上では購買ターゲットの対象になりにくく、日本では「お金を持っているシニア」に注目が集まりがちです。
こうしたZ世代軽視の傾向は政治の面でより顕著です。投票率の低さも相まって、Z世代を軽視した政策がまかり通ってしまいがちです。
しかし、世界がZ世代に注目する中、日本だけがZ世代を軽視するとしたら、それは世界標準から徐々に離れて行く兆候とも言えるのではないでしょうか。
日本のマーケットだけを見ている企業はZ世代を軽視してもいいとお考えになるかもしれません。しかしこれから先少なくとも、グローバル市場での戦いに挑む企業ならばZ世代を無視するわけにはいかないのです。
グローバル市場での戦いに挑むためには、Z世代を重要なターゲットとして認識し、向き合うことを、まず日本のマーケットで理解した上で臨まなければいけません。
また、後述しますが、日本のマーケットの未来を見ていく上でも、Z世代は重要な存在です。
わたしたち電通若者研究部は、日本のZ世代が何を考え、どのように行動しているか、その実態を追いかけ続けています。大学生を中心に2万人の調査パネルを活用し、定点で定量調査を実施しています。
また月に1度現役大学生20〜30人と、彼らを取り巻く環境や状況の変化から「半歩先の未来」を予測するワークショップを実施しています。
このパートではそんな調査の一部を通じて、Z世代の価値観や行動についてご紹介します。
図1は2021年9月時点でのZ世代のメディア接触状況を表しています。データは電通若者研究部が運営する大学サークルアプリ「サークルアップ」で毎月200人の現役大学生を対象にした調査結果に基づいています。
※出典: 電通若者研究部 流行調査アンケート2021 9月度『最近1週間で接触したメディア (MA)』抜粋
ご覧いただくと分かる通り、かつて「4マス(4大マスメディア)」と言われたテレビ・新聞・雑誌・ラジオの中でTOP10に残っているのはテレビのみ。そのテレビでさえ、YouTubeよりも低い接触状況となっています。
Z世代の中では「とりあえずテレビ」ではなく「とりあえずYouTube」という状況なのです。
彼らは「YouTubeでテレビコンテンツを観る」という行動をとることも多いため、メディアやマーケティングに関わる業界では、「メディアありき」ではなく、「コンテンツありき」の調査手法へ移行することも検討されています。
こうした状況を見るだけでも、Z世代の感覚はこれまでの常識と根本的に違うことがわかります。
またこのデータでは、Z世代の動向と世の中の動向が密接に関係していることもうかがえます。例えば、緊急事態宣言や外出自粛と連動して増えるのがAmazonプライムやNetflixなどの動画配信サービスへの接触者数の多さです。
本調査は月に一度の定点で実施しており、このデータを2021年9月時点と他の月とで比較してみると、大学生にとって「外出自粛の夏休み」を支えていたのがこうしたサービスだったことがわかります。
加えてZ世代の特徴として、彼らの間でこの数年で徐々に復権しているメディアがあることにも触れておきたいと思います。それは4マス媒体の1つ「ラジオ」です。
ラジオと言えばこれまで4マス媒体の中では必ずしも重視されるメディアとは言えませんでした。広告費で言えばテレビ→新聞→雑誌→ラジオの順が定番でしたが、少なくともZ世代の中ではテレビに次ぐメディアパワーを持っています。
この背景には、radikoをはじめとするネットラジオが普及したことや、ラジオの持つ「ながらメディア」という特性が、タイムパフォーマンスを重視するZ世代の価値観にハマったことがあります。
これまでラジオはシニア向けのメディアとして位置づけられてきましたが、若者向けのデジタルメディアへと変化しているのです。
これらのデータ1つ1つをみても、これまでの常識とZ世代の常識はかなり異なっていることがお分かりいただけると思います。
これからのマーケティングにおいて「Z世代の常識」は不可欠なのです。
電通若者研究部では、こうしたZ世代の現在を調査すると同時に、彼らと共に「未来予測ワークショップ」を行っています。
「未来予測ワークショップ」とは、Z世代の大学生が「次に来る○○のカタチ」というお題で、身の回りの事象から考えられる「半歩先の未来」を1枚のレポートにし、そのレポートを20〜30枚集めて、電通若者研究部のプランナーと共に未来予測を行なうというワークショップです。
電通若者研究部では、このワークショップを月に1回開催。数年間、継続して実施してきました。
例えば2021年5月は「次に来る【ニュース】のカタチ」というテーマ設定でワークショップを実施。ディスカッションの中で見えてきたのは、Z世代が感じる「最適化へのジレンマ」でした。
レポートの1つにこんなものがありました。「他人のYouTubeのおすすめ欄を擬似体験できるサービスがある」ということを対象に、「今後は自分にだけ最適化される情報から逃れようとする流れになるのではないか」ということを予測したレポートです。
これまでマスメディアだけが情報を握っていた時代から、インターネットの誕生で誰もが情報を発信できるようになりました。その結果、情報洪水に陥った世の中で発達してきたのがインターネットでの「最適化」の機能です。
自分の関心に関係ない情報を削ぎ落として、自分に関係ある情報だけを受け取る、そんな最適化の進化が顕著になったのが近年の社会でした。しかしこのレポートからは、一部のZ世代に、その最適化を嫌がる兆候がみられます。
半歩先の未来には、最適化の概念がまた変わっているのかもしれません。
このように、Z世代の感じるモノ、コトに耳を傾けると、未来を示唆する手がかりを得ることができます。Z世代は、マーケティングにおいて「明日の方向を照らし出す灯台」のような役割も果たしてくれるのです。
電通若者研究部では、Z世代を含めた若者に関するお悩みやご相談にお答えしております。
採用に関する課題には「採用ブランディング by HR for Growth」などのソリューションでご支援させていただいております。
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