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DX、新規事業開発、組織改革…企業変革成功のカギは「企業文化」にあり

作成者: D-sol|Jun 3, 2025 9:24:08 AM

ここ数年、新規事業開発やDX、組織改革などを通じて、「企業変革」に取り組む企業が増えています。しかし、その多くが、「変革の取り組みが全社に広がらない」「継続しない」「定着しない」といった悩みを抱えています。この課題を解決するカギとして、私たちが注目しているのが「企業文化」です

企業文化とは、企業の基盤をなす「OS」のようなもの。電通が独自に実施した調査では、経営層だけでなく、多くの従業員も自社の企業文化に対して課題を感じていることがわかりました。今回は、その調査結果を踏まえながら、なぜ今「企業文化」が大切なのかを、企業文化の変革支援に従事している電通のビジネス・トランスフォーメーション局の石井がご紹介します。

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INDEX

「変わりたいのに、変われない!」企業変革は難しい

「時代の変化」「DX推進」…企業が“変わりたい”理由

まず、なぜ「企業変革」に取り組むのか、というところから見ていきます。
私たち電通が、企業変革に取り組んでいる企業(従業員数51人以上)に勤務する全国20~59歳の800人を対象に行った調査(※)では、自社が企業変革に取り組む理由として、「時代の変化に合わせて変革したいから」が47.8%と最も多く、次いで「DXを推進することになったから」が30.9%という結果でした。

この結果からは、テクノロジーの進化や社会環境の変化が加速し、市場そのものの構造が大きく変わる中で、それに対応するために多くの企業が企業変革を進めようとしていることが読み取れます。
※出典:株式会社電通「企業変革のための企業文化に関する従業員意識調査」(調査期間:2024年4月25日~4月30日)

成果を実感できないケースが増加

しかし一方で、その動きが「広がらない」「継続しない」「定着しない」といった経営層のお悩みもよく耳にします。

例えば、「新しいパーパスは従業員に認知されているが、実務での変化が感じられない」「新しいシステムや制度を導入しても社員の利用が進まない」「変革が一過性のムーブメントに終わっていて、続かない」など……。せっかく予算や時間をかけてさまざまな取り組みを進めても、成果を実感できていないケースが多いようです。また、経営層や一部の部門が熱心に改革に取り組んでも、それがなかなか全社に広がらず、結果的に現場で新しい事業が育っていない、稼ぐ力が変わらないことなども大きな課題となっています。

変革成功のカギは「企業文化」

相談を受ける中で見えてきた、根本的な課題

私たちは、こうした数々のお悩みに耳を傾ける中で、多くの企業で変革が表面的なものにとどまってしまうのには、何か根本的な課題があるのではないかと考えるようになりました。

お話を詳しく伺っていくと、お悩みの深い企業ほど、長年まじめに目の前の仕事に向き合ってこられた社員がたくさんいて、多くの方々が「その努力があったからこそ、企業は現在の姿にまで成長している」という強い想いを持っていると感じます。それゆえ、「なぜ今までのやり方ではダメなのか」「急にチャレンジと言われてもどうしていいかわからない」「これまでの歴史や実績に誇りを持っているから、変わりたくない」といったように、従来のやり方に強いこだわりを持ちつつ、会社が変わってしまうことに対する戸惑いを感じている様子がうかがえます

こうした根本的な課題を解決するには、どうすればいいのでしょうか?そのカギを握っているのが「企業文化」です。

企業文化は“企業のOS”

「企業文化」とは、企業と従業員の間で共有される価値観や行動規範で、いわば企業の基盤となる「OS」のようなものです。このOSが古ければ、そこにいくら最新のアプリをインストールしたとしても、ベストなパフォーマンスは発揮できません。例えば、新しいシステムを導入したとしても、そもそも「新しいことにチャレンジしよう」という職場風土や社員の意識が醸成されていなければ、変革は進まないでしょう。そこで、新しい変革に取り組む前に、まずはOSである企業文化そのもののアップデートが必要だと考えます。

独自調査から見る「企業文化」の重要性

多くのビジネスパーソンが企業文化の重要性を感じている

実際に、経営層や従業員を問わず、多くのビジネスパーソンが企業文化の重要性を感じていることが、調査で明らかになっています。

「企業変革の推進において、企業文化は重要である」と回答した経営層は95.1%。また、変革を行っている企業に勤める従業員のうち、「企業文化に課題がある」と感じている層も64.0%にのぼることがわかりました。

経営層も企業文化の重要性を実感

特に経営層は、企業文化の影響力を強く実感しているようです。調査の中でも、以下のようなコメントが寄せられました。

「組織文化や行動指針をベースにして、従業員に自律的に業務を遂行してもらう必要がある」(製造業・アパレル A社)
「変革を担う者が企業文化を理解して、企業文化が変革のエンジンになりうるアクションプランの策定が必要」(サービス・飲食業 B社)
「変革の真のゴールと企業の文化が結びつくことが重要」(メーカー・消費財 C社)
「会社の文化を変えるのは容易ではなく、戦略的かつ用意周到な計画に則って進めていく以外ない」(インフラ・建設業 D社)

こうした声からも、企業文化は単なる職場の雰囲気や慣習ではなく、企業変革と不可分の「戦略要素」であると捉えている経営層が多いことがわかります

「企業文化」のあり方が、変革の成果を左右する

こうした点について、企業文化を支える従業員の側はどう捉えているでしょうか。

調査では「企業変革の成果を実感できている」と答えた従業員の78.7%が、その要因に「企業文化が影響している」と回答しています。逆に、「成果を実感できていない」と感じている層の65.8%も、その理由に企業文化の影響を挙げました。つまり、経営層と同様に従業員もまた、変革がうまくいく場合も、うまくいかない場合も、その背後には企業文化が関係していると感じているのです。 トップダウンとボトムアップがかみ合った企業文化の在り方が変革の成果を左右すると言えます。

従業員のエンゲージメントが変革を加速させる

さらに、「所属する企業で働いていることに誇りを持っている」という従業員の57.7%が、「企業変革の成果を実感している」と回答しました。これは、「誇りを持っていない」「どちらともいえない」という層の21.7%と比べて、3倍近い数値になっています。

つまり、経営者にとっても従業員にとっても、企業変革と企業文化は不可分の関係であること、加えて、従業員のエンゲージメントが高いほど、企業変革の成果を実感しやすいということが示唆されています。会社に対する愛着や誇りがあるからこそ、企業変革に共感が生まれ、前向きな取り組みにもつながっていくと考えられます

▼ 解説動画も公開中!(約20分)
変革成功のカギは『企業文化』-事業成長のための企業文化変革を支援する「Culture For Growth プログラム」のご紹介

企業文化を「変化に強い文化」に進化させるには

「意識」「行動」「仕組み」の連動で企業文化は変えることができる

企業文化は、長い年月をかけて培われ、従業員の意識の奥深くに根付いているものです。だからこそ、一度定着した文化は「変えるのが難しい」と思われるかもしれません。しかし私たちは、「企業文化は変えることができる」と考えています。

変えるためのポイントは、企業文化の重要な要素である、従業員の「意識」「行動」、そしてそれを支える「仕組み」、この3つを連動して見直すことです。「意識」が変わっても「行動」に移らなければ意味がなく、また「行動」が変わっても、それを支える評価制度や組織の「仕組み」が伴わなければ、企業文化は変わらず、企業変革は定着しません。この「三位一体」のアプローチこそが、企業文化を進化させるカギとなります。

求められるのは、「自分ごと化」させる仕掛けづくり

ひとつ、具体例をあげてご説明します。近年、多くの企業が「パーパス」や「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」を策定していますが、それが従業員の行動につながらないという課題をよく耳にします。その背景には、こうした理念が現場の業務とかけ離れた“遠い存在”として捉えられていることがあるのではないでしょうか。

だからこそ、実際に「行動」につなげるには、理念を「自分ごと化」させる仕掛けが必要です。パーパスが日常の業務とどう結びつくのかを言語化・可視化し、従業員が自分の言葉で語れるようにする。あるいは、同僚とともに語り合う場を設けることで、個々の解釈を広げていく。こうした“翻訳”と“対話”が、理念と行動の距離を縮めるカギとなります。

さらに、そうして芽生えた「意識」と「行動」を組織全体で支えるためには、制度の整備も欠かせません。自律的に考え、動く従業員の存在を可視化し、その姿勢を正しく評価できるようにする。評価制度や人事制度、表彰、あるいは新たな挑戦を後押しする仕組みなど、日常の延長線上で文化が続くように設計することが重要です

チェンジマネジメントとの違いは「ボトムアップとの融合」

ここで、変革のアプローチとして注目される「チェンジマネジメント」との違いについても触れておきましょう。

チェンジマネジメントは、どちらかといえば、制度や施策をトップダウンで導入し、管理的に組織を動かしていくのに適した手法です。特にトップ主導でスピーディーに成果を出すには効果的であり、欧米型の組織では馴染みやすいアプローチと言われています。

一方、企業文化の変革は、トップダウンと合わせ、ボトムアップの考え方も取り入れることで実現します。特に従業員の自律性が重視されるため、社員が「自ら考え行動する」ための土壌を整え、その行動を支える制度設計や評価の仕組みを設けていくわけです。このプロセスでは、現場を支えるミドルマネジメント層の役割も非常に重要です。彼らが長期的な視点で部下の成長を促し、自律性を引き出すことが、変革の浸透力を大きく左右します。文化を変えることは、個人の内側からの変化を引き出すことでもあるからこそ、こうした共創的なアプローチが必要になるといえるでしょう。

“残す文化”と“変える文化”の見極めを

企業文化を変えるといっても、すべてを否定し、新しく塗り替える必要はありません。大切なのは、これまで積み重ねてきた文化の中から、「残すべきもの」と「アップデートすべきもの」を見極めることです

企業文化は、歴史や実績とともに形成されてきた組織の財産でもあります。それが今の強みになっている部分もあるでしょう。また、従業員の中には、従来のやり方に誇りや愛着を持つ人も多いはずです。だからこそ、一律に「変えよう」とするのではなく、良い文化は伸ばし、改善すべき文化は刷新していく、その見極めが重要です

以上をまとめると、
「意識」「行動」「仕組み」を連動させる
自分ごと化させる仕掛けをつくる
トップダウンとボトムアップを融合する
残す文化と変える文化を見極める
このような取り組みによって、「変化に強い文化」に進化させることができます。

「Culture For Growth プログラム」で、企業文化を構造的にアップデートする

「Culture For Growth プログラム」とは

そうした企業文化の変革を支援するために、私たちが開発したソリューションが「Culture For Growth プログラム(カルチャー フォー グロース プログラム)」です。企業の成長を駆動させる基盤として「企業文化」の変革と構築を支援するプログラムで、企業文化を「意識」「行動」「仕組み」から捉え、理想的な企業文化の実現に向けた総合的な支援をご提供します。

本プログラムの特長は、電通オリジナルの「企業文化変革マップ」を用いて、企業文化を形成する7つの要因と12のサブ要因を可視化できること。そこから、これまで漠然としたものとされがちだった企業文化を構造的に捉え、定量的な測定とマネジメントを可能にします。詳細は、ぜひ下記概要説明資料または解説動画にてご確認ください。


企業文化の形成要因を分析する「企業文化変革マップ」

企業文化は成長のドライバーになる

不確実性の高まる時代において、組織が持続的に成長し、変化に対応していくためには、企業文化のアップデートが欠かせません。長年、企業に根付いてきた文化は、ときに改革のブレーキになってしまうこともありますが、うまくアップデートされればゴールへと向かうドライバーにもなりえるからです

変わり続ける時代の中でこそ、自分たちの文化と向き合い、しなやかに進化する力が問われているのではないでしょうか。何から手をつければいいかわからない、自社の企業文化がうまく捉えきれないなど、お悩みを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。

▼ 石井による解説動画もご用意しております。ぜひ合わせてご確認ください。(約20分)
変革成功のカギは『企業文化』-事業成長のための企業文化変革を支援する「Culture For Growth プログラム」のご紹介