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      Always onマーケティングの課題と解決~日本とアメリカのデータ活用最前線

      マーケティング分野におけるデータ活用は、複雑化の一途をたどっています。AIや機械学習などの技術がコモディティ化してより高度なデータ分析、データ活用が可能になる一方で、担当者に求められる職能も変化しています。データドリブンマーケティングの視点から日米の企業の現状をひもとき、次の一手を打つために必要な人材、職能について、電通クロスブレイン代表取締役社長の川邊忠利と同取締役の佐藤洋行が解説しました。
      以下に、Do!Solutions編集部がセッションの内容をまとめます。

      「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」概要はこちら

      クライアントと代理店の協力体制構築が、成果につながる

      川邊:テクノロジーの進化に伴い、消費者の情報収集の行動は大きく変わってきています。自分のほしい情報を能動的に取りにいく行動が一般化しました。一人ひとりがほしい情報は当然異なりますし、そのタイミングも異なります。

      これを受けて、「Always onマーケティング」というコンセプトが注目されるようになりました。消費者一人ひとりに対して最適なタイミングで最適な情報を提供することで、企業と消費者の関係を良くしていくというのが、そのコンセプトです。

      消費者行動の変化 Always-onマーケティングの必要性

      Always onマーケティングを実行するために必要なデータ取得、分析の環境、それを活用した施策を実行する環境も、テクノロジーの進化に伴って発達してきています。事業の目的に合わせて最適なツールを選び、使い続けていくことが重要だと感じていますが、マーケティングテクノロジーのカオスマップを見るとそれは容易ではありません。

      データ取得・利用環境の進化

      サードパーティクッキーに代わるアイデンティティの模索

      川邊:消費者保護の観点からGDPR(General Data Protection Regulation/EU一般データ保護規則)やCCPA(California Consumer Privacy Act/カリフォルニア州消費者プライバシー法)といった法整備も進んでいます。これらに対応すべく、テックジャイアントと呼ばれるような企業は、積極的に消費者保護に取り組んでいます。

      中でもマーケティングに大きな影響を与えるのが、サードパーティクッキー(他社から提供されるクッキー情報)が使えなくなることでしょう。サードパーティクッキーが使えなくなると、既存のアドテクでこれまでと同様の価値を提供するのは難しくなります。このような状況の中、アメリカではサードパーティクッキーに代わる次のマーケティングのキーが何になるのかという点に注目が集まっています。

      マーケティングのキーをアイデンティティと呼ぶのですが、それはこれまでにも移り変わってきました。たとえば、ひと昔前には1to1マーケティングに住所やメールアドレスが使われました。そこにサードパーティクッキーが加わり、マーケティング施策の可能性が飛躍的に大きくなったという経緯があります。そして今、多くのクライアント企業は、PII(Personally Identifiable Information/個人を特定できる情報)を積極的に収集しようと、顧客情報とファーストパーティクッキー(自社で取得したクッキー情報)を掛け合わせるなどの動きを見せています。

      サードパーティクッキーの次のキー ; Identity

      ここで、クライアント企業には大きく2つの可能性が生まれています。ひとつはウォールド・ガーデンと呼ばれるもので、GoogleやFacebookなどのエコシステムを活用してマーケティング活動をする手法です。もう一方には、同様のエコシステムを自社で構築するという選択肢があります。

      ウォールド・ガーデンか自社エコシステム構築か

      川邊:GoogleやFacebook、Amazonなどの企業は膨大な顧客を抱え、積極的に情報収集と管理を行っています。それぞれのプラットフォームでは、ターゲティングやキャンペーン管理をより円滑に行うための、クリーンルームと呼ばれる環境も提供されています。

      ターゲティングの高度化や速やかなキャンペーン実施が可能になる一方で、ウォールド・ガーデンに依存することへの懸念も。ウォールド・ガーデンの中で起きていることが見えにくいことや、アイデンティティを自社で管理できないことなどが、将来に向けた不安要素として挙げられています。

      ブランドにとっての分岐点

      ウォールド・ガーデンへの依存を避ける手段として、自社でエコシステムを構築することを選ぶ企業もあります。自社でPIIを取得し、さらに自前のファーストパーティクッキーやパートナー企業のファーストパーティクッキーを連携させる仕組みを作る取り組みも行われています。自社のエコシステムを構築することで、顧客理解を深めることができる、市場に出回っているさまざまなデータを自社の顧客データ基盤に連携させることができるなどの利点が生まれます。

      さらに、自社のエコシステムとウォールド・ガーデンのエコシステムを、顧客のPIIをキーにして連携させる企業も出てきました。これにより、自社のエコシステムに加えて、ウォールド・ガーデンでもマーケティング施策を打つことが可能になります。

      環境を構築できても使いこなせる人材がいなければ無意味

      川邊:環境が整っただけで効果的なマーケティング施策を打てるようになるわけではありません。その先に必要なものとして、今大企業が注目しているのが、データ分析人材です。データを意味あるものとして扱える人材を積極的に採用し、そうした人材を核としてデータドリブンマーケティングの専門部署を作ろうと動いているのです。

      データドリブンマーケティングの専門部署をもつことによって、組織の中で分断され、サイロ化したデータを一元的に管理できるようになります。結果として、整合性のとれた顧客体験の設計が可能になります。

      データ分析人材の獲得競争

      そうした動きが見られる中、アメリカで起こっているのはデータ分析人材の獲得競争です。データ分析人材の求人数は1年で37%増え、職能の人気ランキングは3位に上昇、賃金も14%上がりました。67%の企業が、データ分析人材の採用数を増やしていると答えています。ここ数年、広告代理店のインハウス化という流れがありましたが、データドリブンマーケティングという広い視点でも、インハウス化が進んでいるのがアメリカの現状です。

      日米で進む技術革新はクラウドの進化に支えられている

      佐藤:アメリカと同様に、日本でも顧客体験の進化は起きています。チャネル横断での顧客体験が当然のものとなり、情報収集の仕方も変わりました。若い世代では、検索するのではなく、SNSのタイムラインで自分好みの情報を得る人が増えました。一方でSNSの使い方に慣れていない世代では、インターネットではまだ検索が主流ですし、TVや新聞も一定の役割を維持していて、世代によって情報収集の仕方が異なっています。

      このような状況に対して企業は、DMP(データマネジメントプラットフォーム)やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)に顧客のデータを集約しようとしています。データが集約されれば、BI(ビジネスインテリジェンス)やアドテク、CRMの各領域で共通の顧客セグメントを作り、チャネルをまたいでセグメントごとに一貫性のある顧客体験を提供できるからです。

      データ収集基盤を支えるテクノロジーの進化はめざましく、とくに昨今のクラウドサービスの成長には目を見張るものがあります。昔だったら扱えなかったような大量のデータを集計したり、そこから必要なデータを抽出したりできるようになりました。機械学習さえもクラウドサービスとして利用可能で、そのために必要な高性能なコンピュータも仮想マシンとして安価に調達できます。

      ブレインパッドでのOMO(Online Merges with Offline/オンラインとオフラインの統合)の取り組みを例に、データ活用の実態を紹介しましょう。店舗ではID-POSデータを収集しており、Webサイトから閲覧ログを収集しています。これらを組み合わせて分析することで、ユーザーごとに響くキーワードや興味のある商品を分析して、店舗にあるタブレット端末に表示します。店員はその情報を見て、来店した顧客にどの商品をお勧めすればいいか考えるヒントを得ます。

      【事例】 店舗接客でのデータ活用

      ※株式会社ブレインパッドのマッチングエンジン「Conomi(コノミ)」を活用した事例

      データサイエンティスト人材の不足は日米共通の課題

      佐藤:技術が発展するとともに、マーケティングの取り組みがコモディティ化するという現象も起きています。レコメンデーション、カートの最適化、お気に入りリストや注文履歴からの再注文などは、どれもかつてECサイトの利便性についての差別化要因でしたが、いまではほとんどのサイトが備える、当たり前の機能になりました。技術が発展し、簡単に利用できるようになったことで、マーケティングの取り組みがコモディティ化し、差別化が難しくなってしまったのです。

      今、話題のAI関連技術についても、同じことが言えます。AIや機械学習もクラウドサービスで簡単に扱えるようになっています。開発の段階を過ぎて実装の段階に移り始めており、技術そのものよりも、それをマーケティングの現場にどのように応用していくかという企画力が問われます。

      こちらもブレインパッドの案件から一例を見てみましょう。ブレインパッドではオンラインゲームの開発において、ゲームバランスの調整にAIを活用しました。かつては人間がたくさんプレイしてみてパラメータを調整していましたが、それをAIに置き換えたのです。単純作業であること、操作が有限であること、結果が得点や数値データとして明確であることなど、AIが活きる要因が揃っていました。

      【例】 ゲームバランス調整の自動化

      ※引用:株式会社ブレインパッドの「+AI(プラスエーアイ)」Webサイト

      この事例のようにAIを活用できる機会を見つけたとしても、実装が容易ではないという現状もあります。アメリカ同様、必要な人材が不足しているためです。データサイエンティスト協会のアンケートでは、過去1年に目標としていた人数のデータサイエンスを「確保できた」と回答した企業は、17%に過ぎません。「どちらかといえば確保できた」という企業を合わせても、半数に満たないのが現実です。

      「できるようになる」と「実行できる」の間に大きな溝

      佐藤:DMPやCDPにさまざまなデータを集約して顧客基点のデータ分析を行い、セグメントを共有したり一貫性のある顧客体験を提供したりできるようになったことは、先ほどお話しした通りです。しかし、できるようになったことと、実際にできているかどうかは別の話です。両者の間には大きな壁があります。

      必要な環境を用意できている企業のうち、すべてのデータを一元的に分析し、一貫性のある顧客体験に向けて一丸となって動けている企業は、それほど多くないと考えています。多くの企業は、アドテクはアドテクで、CRMはCRMで個別にPDCAサイクルが回っているという現実に直面しているのではないでしょうか。アメリカでも似たような状況があります。

      マーケティングデータ活用の現状

      そのような状況が起こるのも致し方ないことかと思います。というのも、マーケティングテクノロジーの高度化、複雑化が背景にあるからです。広範な分野で非常にたくさんのツールが生み出され、成熟してきました。専門家とパートナーになって進めることになりますが、専門家の助けがあってもすべてを理解するのは困難です。

      クライアントをハブにしたパートナー連携が生む落とし穴

      佐藤:データ分析に長けた人材が不足していることで、単純な見落としも起こります。私自身がマーケティングの現場で経験した中から、わかりやすい事例を紹介しましょう。

      ある通販サイトで年代別の会員数を分析したところ、50代がもっとも多く、そこを中心に両裾が広がっているきれいなグラフが描かれました。このようなグラフを見ると「50代を中心に支持されている」と受け取ってしまいがちです。しかし、私は疑義を呈しました。

      実は、日本の人口統計では40代と60代にピークがあり、50代は落ち込んでいるのです。これを知っていれば、50代がもっとも多いのはおかしいとわかります。訴求方法や顧客へのアプローチになんらかの偏りがあるのではないかと考えるきっかけを、見落とすところだったのです。

      このような見落としが起こるのは、クライアント企業をハブにしていくつものパートナーがつながっているからではないかと考えます。データ分析はデータ分析のパートナーと、マーケティングはマーケティングのパートナーと、それぞれ個別にやりとりしていると、マーケティングの現場で見落としがあっても、データ分析の専門家からのチェック機能がはたらかないのです。

      データ分析と活用の壁

      根本的解決に必要なのは、自社での人材採用育成

      川邊:これまで見てきたような課題の解決に向けて最も重要なのは、クライアント企業がマーケティング・データアナリストを自社で採用し、育成することです。マーケティング・データアナリストとは、マーケティングに明るいだけではなく、データ分析環境の設計、構築や、正しいデータ分析手法の選択ができる人材を指します。

      短期的に十分な数の人材を採用育成するのは、なかなか難しいでしょう。外部のパートナーやベンダーと協業しながら、実際の業務を行いつつ、必要なスキルや知見を吸収して人材育成のベースを築くところから始める必要があります。

      もうひとつ重要なポイントとして、データ分析とデータ活用をスムーズに連携できる体制の構築が挙げられます。データドリブンマーケティング・プランナー、マーケティング・データアナリスト、マーケティング・テクノロジーエキスパート、マーケティング・データエンジニアの4つの職能をもつ人材が、事業目標に向けて連携しなければなりません。

      データ分析とデータ活用の連携のための体制

      データドリブンマーケティング・プランナーは、事業成長につながる戦略や施策の立案、効果検証を行います。マーケティング・データアナリストは、マーケティングに精通し、かつデータを正しく分析して施策立案に貢献します。マーケティング・テクノロジーエキスパートはCRMやMAなどのツールを使って実際の消費者とコミュニケーションを行う立場です。マーケティング・データエンジニアは、セキュアで柔軟なデータ分析環境をつくるなど、他のメンバーの職能を下から支える役割を担います。

      4つの異なる職能のメンバーが1つのチームになって、事業目標やブランドアイデンティティ、価値観などを共有することで、より大きな成果に繋がっていくのではないでしょうか。

      外部パートナーの支援は人材不足を補う選択肢のひとつ

      川邊:電通クロスブレインには、先ほど挙げた4つの職能をもつメンバーが揃っています。

      サービス体制は大きく2つあり、ひとつはデータドリブンマーケティング・プランナーとマーケティング・データアナリストが中心となって、データ分析から施策の立案を支援するサービスです。もうひとつは、テクノロジーエキスパートやマーケティング・データエンジニアが中心となって、データの蓄積、分析に必要な環境構築やツールの設定、運用を支援するマーケティングテクノロジー活用サービスです。

      状況に合わせて常駐、リモートを組みあわせ、最適なパターンでサービスを提供いたします。データドリブンマーケティングや、マーケティングにおけるデータ活用でお悩みがあれば、ぜひご相談ください。

      Webinar Report

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