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      DXに必要な4つの視点を提言!個人が主役の時代を見据えた「クリエーティビティが拓くブランドの未来」とは

      デジタルの進化により、人々の価値観が変容している昨今。ブランドはDXのビジョンをどう描けばいいのか、そして変革をドライブさせるために必要なものは何なのか-。こうした考察のヒントにしていただくため、これまで記憶に残る数々のブランド体験を創造してきた電通デジタルのエグゼクティブクリエーティブディレクター佐久間崇(さくま・たかし)が、できるだけ柔らかく、その本質や原理原則をもとに「クリエーティビティが拓くブランドの未来」を紐解きました。
      以下に、Do!Solutions編集部がセッションの内容をまとめます。

      「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」概要はこちら

      「People」「Purpose」「Creativity」「Data/Tech」の4つの視点がブランドのDXに必要

      クリエーティブディレクターとして、かねてより企業のブランディング立案に取り組む佐久間は、これまでの実体験をもとに、クリエーティブの未来を占う本質について、次のように話します。

      佐久間:最近は、マーケティングの世界で重要だとされてきた『生活者にとって所有する意味』が薄れ、使用価値に重きが置かれています。つまりモノではなくコトを重視した、体験重視の消費行動に、消費者の価値観が移行していると言えます。

      それを踏まえたうえで、企業がDXを推進する前に、まずは本質に立ち返る必要があると指摘します。

      佐久間:デジタルツールを導入することが目的になりがちです。手段の目的化になってしまうのは、もったいないと感じます。そうではなく、改めて自分たちのビジネス、自分たちの製品、そして自分たちのブランドが、未来に向けてトランスフォームしていく意味を理解し、腹に落としたうえで、DXを考えていくことが必要だと思っています。

      さらに、DXを実現するためには「4つの視点」が求められると続けます。ウェビナーのハイライトは次の通りです。

      1. People ターゲットや顧客の視点

      佐久間:デジタルシフトにより、働き方やライフスタイルが変わるなか、とりわけコロナ禍を契機にこれまでの当たり前がずっと続くものではないと、骨身に染みた人が多いと思います。すでに、生き方の選択肢は多様化の一途を辿る時代に突入しています。

      これまでのように、「マスメディアがさまざまな物語を提供し、幸せな世界を作っていく」という流れは継承されると思いますが、これからは人々がさらに自分ならではの物語や、生き方を模索しながら生きていく時代になると感じます。

      そのとき、ブランドの役割はどうあるべきでしょうか。元来ブランドといえば“高級”や“憧れ”などのイメージが強く、そのブランドの輝きを個人が享受あるいは拝借していました。しかし、一人ひとりが主役になる時代に、ブランドの姿勢や役割に求められるのは、「いかにその人のライフを輝かせることができるか」になると思います。

      今勢いのあるブランドの多くは舞台(=プラットフォーム)の役割を担っています。それ以外でも演出家や敏腕マネージャーになる、もしくは名脇役、はたまた敵役やライバルのような存在になるブランドがあっても面白いかもしれません。それぞれのブランドがどのように個人をプロデュースしていけるかを考える、発想の転換が求められるはずです。

      「カスタマーサクセス」の本質的な部分には、「個人の人生を輝かせる、成功に導く」という意味が含まれていると思います。まずは、その意識を持つことがこれからの未来に向けて、DXを進める大前提になるでしょう。

      2.Purpose 目的を明確にする視点

      佐久間:ブランドが展開している事業は、そもそも何を目的としているのかを考え直すことが大切です。事業の目的に関してはよく議論されるポイントですが、「何を、何のためにするのか」を突き詰めることはが、おざなりになりがちです。例えとして、ごみ収集の仕事を挙げてみたいと思います。

      「ごみ収集車の仕事を募集している」とします。そのときに、「何のためにする仕事なのだろう」と目的の視点から考え、より上位概念で「街を美しくする仕事」だと捉えることで、興味を持つ人が増えるかもしれません。真のPurposeを整理して、その仕事の本質をどう浮き彫りにすることが重要です。

      さらに深掘りすると、ごみ収集車の仕事は、街を美しくする手段の一つだということに気づくかと思います。他にも、地域のコミュニケーションを豊かにすること、活性化すること、環境に配慮することなども「街を美しくする」ことにカテゴライズでき、その気づきから事業の拡張可能性が生まれてきます。こうした可能性を見出せることが、Purposeを規定する一番のメリットです。

      これまでは、商品の存在を知ってもらうための手段として広告があり、販促や商品をプロモートするためにPRがあり、実際に届ける手段として販売がありました。つまり、企業活動のすべてが「モノを売ること」を中心に置き、その他は手段というかたちでした。

      しかし、たとえば資生堂さまで展開した「表情プロジェクト」では、シワ改善化粧品をなぜ開発したのかという根本に立ち返り、「人の美しい表情を解放する」という目的を設定しました。それに基づいて、広告も表情解放を促していくための手段という上位概念で制作。また、商品を売ることは、「人の美しい表情を解放する」ために行っているアクションだと位置づけました。

      商品ではなくPurposeを真ん中に置いた瞬間に、企業活動のすべてはPurposeのための手段だったと気づき、必然的にサービス化していきます。そういう時代だからこそ、改めてPurposeの実現を真ん中に置き、そのための手段を再発明・再解釈することがDXの本質的な姿ではないかと捉えています。

      そのためには、まず自分たちの事業や商品が生まれた背景や、それを作った意思、存在意義をもう一度探ってみることが大切です。そこに必ず、事業化やサービス化、体験化のヒントがあるはずです。

      3. Creativity サービスやプロダクトの視点

      佐久間:Purposeを規定したうえで、どのようにサービスやプロダクトを生み出していくのか。そのときにポイントになるのが、クリエーティビティを解放することです。ただ、アートしかり、クリエーティビティは非常に難しいイメージを持たれるかもしれません。

      しかし、大事にしていただきたいのは、どちらかというと「子どもみたいな発想」です。「これ、良くない?」「これ面白くない?」という無邪気な感覚、これは誰しも持っていると思いますが、これこそがクリエーティビティだと思います。

      WalkmanやiMacなどの歴史的イノベーションは、大体「これ、良くない?」というところから生まれているはずで、なかなか侮れない感覚です。たとえば「表情プロジェクト」のスタートも、「笑顔の写真じゃなくて、すました写真って寂しいよね」「笑った表情って素敵だし、すました無表情よりも表情があふれる世界の方が、関係性が豊かでいいよね」という極めてシンプルな感覚から広がりました。

      表情プロジェクト

      個人の直感やひらめき、頭の中にモヤモヤと浮かぶイメージが「クリエーティブに考える」はじまりです。しかし、そういうことをビジネスの場では出さない傾向が強いです。ただ一人ひとりのセンスを信じていくというのが、クリエーティブ思想だと思います。

      あるいは何か変だと思う感覚や違和感を飲み込むのではなく、少し解きほぐして掘り下げていくこともクリエーティブ思想の一つです。まずは直観やひらめき、イメージ、センスをどんどん解放して、常識を疑い言語化していくこと。すべての人が持っているこうした感覚を解放することで、多様化の時代にマッチする新しいクリエーティブなサービスやプロダクトにつながると思います。

      もう一つ、森永製菓さまの「母校に in ゼリー」というキャンペーンの例を挙げたいと思います。このキャンペーンは、母校の部活動にデジタルプラットフォームを活用して差し入れができるというものです。全国約5000校のデータベースがプラットフォームにあり、地図や名前で検索して、さらに自分が所属していた部活動を選択すると投票ができます。票が集まったら、抽選でinゼリーが送られる仕組みです。

      このはじまりは、僕の中で「差し入れって何かいい言葉だな」という感覚が芽生えたことに端を発しています。差し入れは、物を渡すだけの行為かもしれませんが、気持ちの交換が生まれることに面白さを感じました。英語では差し入れの訳がないそうですが、相手を思いやるカルチャーだと伝えると一発で理解できるようです。では、アナログ的な差し入れのカルチャーをデジタルに置き換えたらどうなるのだろうと、考えを深めていきました。

      クリエーティブアイデアが人々に受け入れられるかどうかを評価するうえで、僕が大事にしているのは「ハッとして、グッとくる」かどうかです。ハッとするとは、驚きや発見がある、いわゆるびっくりマークがつく状態です。

      クリエーティブアイデアを評価する

      ただ、ハッとするだけでは、一発屋で終わってしまいかねません。そこでグッとくる要素が必要です。「なんか共感できる」「なるほどね」と腑に落ちる、いわゆるハートマークをつけたくなる状態です。びっくりマークとハートマークをつけたくなるクリエーティブアイデアが、新しさと普遍性を兼ね備えたものになるのではないかと思っています。

      4. Data/Tech 実現方法の視点

      佐久間:クリエーティビティを解放して新しいサービスやプロダクトを実現し、さらにフィットさせ続けていくために、データの役割があると思っています。たとえば、「データを集めたけれど、どう活用していいか分からない」という話はとてもよく聞く話です。これは典型的な「手段の目的化」だと思います。

      そうではなく、常識をひっくり返すようなイノベーティブなサービスやプロダクトの創出を現実のものにするために、データが存在すると思った方がいい、と僕は考えます。もちろんデータドリブンはまったく否定しません。しかしデータに精通していない場合においては、やりたいことを実現するためにどんな手段があるかを考えてからデータを活用する、という順番の方が適しているのではないでしょうか。

      ここで、シリコンバレー発のシューズブランド「allbirds」の事例をご紹介したいと思います。世界中にシューズやスニーカーのブランドがある中で、「allbirds」はD2Cのシューズブランドとして話題になっています。このブランドは「世界で最も快適なシューズ」を謳っているのですが、創業者はサッカーのニュージーランド代表出身ということもあって、サスティナブルな素材でのモノづくりを基本にしています。

      米シリコンバレー発のD2Cシューズブランド

      ニュージーランドは羊毛産業がありますが、実は靴には使われていないことに気づいたそうです。他にもサトウキビなど、肌にも地球にも快適なサスティナブルな素材を用いてシューズを作っているところがポイントです。さらに、データによって素材調達から商品廃棄までのプロセスにおけるCO2排出量を“見える化”しています。

      また、ユーザーと直接やり取りをしているD2Cならではの点として、実店舗プラスECをグローバルに展開。顧客データ管理や在庫調整を瞬時にできることから、購入の快適性の追求を常に行っているところも特徴的です。細かいプロダクトリニューアルは難しいものですが、ユーザーのフィードバックをもとに、アプリのアップデートのような感覚で行われています。この背景にはデータの存在があるわけですが、環境改善やユーザーの快適性向上のために、データを上手く活用していることが分かります。

      履き心地や機能性も大事ですが、それらを満たす商品がたくさんある世界において、「自分がサスティナブルな靴を選んで履くこと」が快適でかっこいいという価値を提供している点が、このブランドの新しく、現代的な部分だと思います。これは、まさにパーパスドリブンであり、プロダクトはサスティナブルな社会を実現するための手段と捉えているからこそ、共感を生んでいるのだと思います。

      個人起点のアイデアがブランドの未来を創る

      最後に、主役となる個人のライフを輝かせるために、ブランドが果たす役割を追求すること。これこそが、ブランドの未来を切り拓くために必要なことだと考察しました。

      佐久間:個人がより活躍できる時代に、その個人をどのように支えていけるのか、という問いから考えてもいいと思います。ただ、どこから考えはじめたとしても、いいアイデアというのは必ず説明ができて、さらに上乗せができるものです。その繰り返しによってブランドがより輝き、人に親しまれ、必要とされ、尊敬されるのだと思います。

      Webinar Report

      Tポイントの大規模購買データ活用事例から「日用消費財のデュアルファネルマーケティング」を考える

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      消費者が商品を「すでに使っている」「知っている」ことの多い日用消費財では、企業はリピーターの獲得が重要になります。そのためには、消費者の購買データをどのように活用したら良いのでしょうか。CCCマーケティングがもつTポイントの大規模購買データから、どのように「わかるデータからできるデータへ」活用できるのか、実例を交えながら解説します。

      Google×PDM®で広がる「データテクノロジー×クリエーティビティ」の可能性

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      Googleが所有しているデジタルトランスフォーメーション技術と、そこに電通のPDM®を掛け合わせることによって起こるシナジーについて解説します。データテクノロジーとクリエーティブの関係はどうあるべきか、実際に取り組むためには何から始めたらいいのか、米国の事例なども合わせて紹介します。

      外食産業はどう変わる? 外食・小売・メーカーにおけるモバイルオーダー事例

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      DXを制するものがマーケットを制する!消費財メーカーとリテールによる競争と共創

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      消費財メーカーにおいて、流通再販モデルから、流通小売と競争&共創するモデルへと変革が進んでいます。背景として、米国でどのような変革が起きているのか、大手小売会社であるウォルマートとAmazon、そして消費財メーカーのNIKEの例から解説します。では、消費財メーカーDXの成功確率を高めるためにはどうすれば良いのか?国内事例も合わせて紹介します。

      電通的マーケティングDX、その先にある世界 -これまでの歩みと現在地、そしてこれから-

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      DXに必要な4つの視点を提言!個人が主役の時代を見据えた「クリエーティビティが拓くブランドの未来」とは

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      デジタルの進化により人々の価値観が変容している昨今において、企業やブランドはDXのビジョンをどう描けばいいのでしょうか?通デジタルのエグゼクティブクリエーティブディレクター佐久間崇(さくま・たかし)が、その本質や原理原則をもとに「クリエーティビティが拓くブランドの未来」について紐解きます。

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