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      B2Bマーケティングはなぜ難しい? 失敗と成功を知り尽くすプロが注目する「アクロスPDM」とは

      人によるセールスマーケティングから、マス領域への拡張が進むB2B領域。変貌を遂げているB2Bマーケティングを成功させるための手法、思考法、落とし穴への注意点をお伝えしたのが、こちらのセッション「B2BにおけるPDM®活用『A×PDM®(アクロスPDM)』へのトライ」です。

      登壇したのは、法人向けクラウド名刺管理サービスを展開するSansan株式会社で、マス~デジタルプロモーションの戦略・実行に加え、データ基盤・計測環境の構築に従事する、マーケティング部リードジェネレーショングループ アシスタントマネジャーの北川裕彬(きたがわ・ひろあき)氏。そして、ともにB2Bマーケティングを担ってきた、株式会社電通第2統合ソリューション局のストラテジスト衣川高史(きぬがわ・たかし)です。

      「思うような結果を出せず、悩んだ」という両名がブレイクスルーを生み出し、結果を出すに至った手法をあまさず公開。ABMとPDM®をかけあわせた「アクロスPDM」の使い方、コロナ禍中のB2Bマーケティングへの提言も必見です。

      以下に、Do!Solutions編集部がセッションの内容をまとめます。

      「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」概要はこちら

      マーケターを混乱させる「B2Bならではの課題」を電通の「P2Cフレーム」で克服

      「それさぁ、早く言ってよ〜」のユーモラスなCMでおなじみの法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan(サンサン)」。これを運営するSansan株式会社では、“出会いからイノベーションを生み出す”というミッションを掲げ、人と人との出会いからビジネスを後押しし、イノベーションを生み出すということに向き合い続けています。

      そのSansan社のマーケティング部に所属する北川氏と、電通の衣川は、これまで協業により2Bマーケティングに取り組んできました。

      しかし、「最初はなかなか目線が合わなかった」と振り返る両名。電通側が行う提案に対し、「クオリティは高かった」としながらも、Sansan社は「何が悪いのかわからないが、ピンとこない」ことに悩んだと言います。

      目線が合わなかった日々

      衣川:目線がなかなか合わなかった原因は、「B2B特有のファネル構造の理解がずれていた」ことが原因でした。我々電通チームが分析して示唆を届けようとした考え方は、ひとりのファネルを深めるために何をすべきか。いわばBtoCっぽかったのですね。しかし、実際の現場では、1社につきひとりの担当者だけではなく、決裁者なども登場しながら成約へ進みます。情報収集を求めている担当者と、意思決定をしている決裁者では、求める情報に違いがある。ひとりのファネルを考慮した戦略では不足だったのです。

      “1社 複数人” が登場する意思決定までのフロー

      そこで、電通チームはアプローチの方法をイチから見直しました。行ったことはたったひとつ。衣川は「SansanオリジナルのP2Cを策定したのです。ここがブレイクスルーの起点となりました」と回想します。

      この「P2C(Pass To Contract)」とは電通が行う手法のひとつで、ユーザーがサービスを知ってから成約に至るまでの態度変容フローを定め、フローを深化させるための現課題を明確にし、「何を目的に」「何を実施し」「何で判断するか」を一枚で表現したものです。

      SansanオリジナルのP2Cフレーム

      衣川:簡単に説明すると、まずターゲット企業の事業規模や職種を明らかにして、どんな課題を解決するかを規定します。フェーズごとに登場人物が異なるので、そこも明確にしながら、理想の状態になるようアプローチを設計するのです。Sansanの場合は「値引きなしの成約」が理想でしたから、そこから逆算しました。

      このP2Cフレームは、いわばコミュニケーションのための地図。どんな施策が出てきたとしても、この一枚にあてはめることで、「自動的に実施する目的は?」「何の課題を解決する?」「期待する効果は?」「どんなKPIで判断する?」といったことが一目で整理できます。

      北川:このP2Cを作る際は、主にSansan社内に蓄積していたナレッジを活用しました。各部署がこれまでお客さまと交わしてきたやりとりから、「業種ごとに決裁者の感じている業務課題に対して我々はどんな強みがあるか、どうすれば思い出してもらえるか」をマーケの視点で再整理しました。以降は、このP2CがプランニングとPDCAのよりどころとなりました。

      また、電通との足並みがそろわなかった時期、Sansan社側でも課題の再整理に着手していました。そこで浮かび上がった課題はふたつあったと北川氏は振り返ります。

      北川:ひとつ目は、我々Sansanが、電通のもつPeople Driven Marketing®/PDM®(※)という強力な武器の強みを引き出せていなかったこと。ふたつ目は、TVCMがリードや商談にほとんど効いていなかったこと。そこで、あらためて次のような希望を具体的にして、電通とすりあわせました。
      ※多様なデータをもとに“人“を基点としたマーケティングを設計・実行する電通グループ独自のフレームワーク。

      - 希望1:People Driven Marketing®/PDM®を活用しながら、各ファネル(アッパー・ミドル・ローワー)へのコミュニケーションを一気通貫で設計してほしい。
      - 希望2:それらをデータドリブンに連携し、評価できる仕組みを作りたい。
      - 希望3:それを実行するために必要な各ステークホルダーをディレクションしてほしい。

      ここで希望を正確に把握できた電通は、Sansan専用「P2Cフレーム」を策定。アプローチ法を大きく変更しました。その具体策について、衣川は次のように説明します。

      衣川:電通で独自に保有するインターネット結線TV視聴データと、マクロミルのデータを統合し、「TVの接触FR」と「意識変化」を分析。そのデータに基づきながら広告のバイイングを行なってきました。従来の方法でもバイイング効率は良かったのです。ただ、Sansanが再整理された希望をみると、期待されているKPIの一部を満たさないことが発覚。そこで、事業にむすびつけるために今までの広告の買い方、番組の選び方そのものを見直しました。

      取り組みの変化

      そもそもTVCMは、ユーザーの属性によって効果性や指標のリフトに必要なFRが異なるはず。そう考えた衣川は、接触者を5つのクラスターにわけて分析。すると、10から20回のフリークエンシーでもまったく上がらない層と、5から6回程度で一気にリフトする層があることを発見したと言います。

      そこで、効率的にリフトが見られる層で、かつSansanがアプローチしたいターゲット群の視聴ログを可視化し、バイイングを実施。その結果は次の通りでした。

      取り組みの変化

      衣川:これはうれしかったですね!タープコストは引き続き安価なまま、サービス認知率遷移が上がりました。純粋想起は118%、利用意向は110%。久々の対目標達成でした。

      Sansanがあらためて整理した希望に沿って、電通はP2Cフレームを作成しました。しかし、Sansan社内にはそれに基づく各種プロモーションを正しく計測・評価できるデータ基盤や計測環境が整っていなかった、と北川氏は振り返ります。

      北川:そこで、改善のために、広告パフォーマンスやアクセスログ、自社MA/CRMデータをBigQuery(ビッグクエリ)で統合しました。結果、デジタル上のコンバージョンだけではなく、その先にあるリード・商談・成約というところまで評価できるようになったのです。

      複数の施策を行った際も、それらを横断した統合評価が可能となりました。これからデータ分析や施策に活用し、PDCAを回すところだといいます。

      北川:注意点としては、マーケター側の観点からだと、見える範囲のみの整理になってしまいがち。その先にある事業全体を見据えた上で、マーケターとして何ができるのか、逆算的に考える必要があると思います。

      B2Bでミドルファネルを確実に成約させるアイデア

      Sansanから「認知」と「刈り取り」の分断も指摘されていた電通は、リードや商談につなげるための統合プランニングにも乗り出しました。このときに活用したのもSansan専用のP2Cだったと衣川は振り返ります。

      衣川:P2Cフレームをみたとき、「課題が潜在している状態」と「課題の顕在化」の間が気になりました。ここは今まで顧客側で自然発生的に変わるものだと思っていたので、バラバラのKPIだったのです。そこで“ミドル施策”として、潜在的な課題をどうやって顕在化させるかを考えはじめました。

      ポイントは、理想から逆算すること。企業規模や職種、役職などさまざまな個性をもつターゲットが抱える課題をどのように顕在化させれば、理想的な“Sansanの想起”になるのかを考えながら設計したとのこと。

      取り組みの変化

      衣川:とはいえ、自然発生的に「テレビを見ました」「ミドル施策に触れました」というだけでは成功とは言えません。そこで、現在は「People Driven Marketing®/PDM®」や「STADIA(スタジア)」(※)などのデータを使いながら、刈り取りにまでつなげる導線をつくっています。こちらは11月末にレビューする予定です。
      ※テレビの実視聴ログに基づく、デジタル広告配信・効果検証の統合マーケティングプラットフォームのこと。

      北川:課題を顕在化させるフェーズでミドル施策を打つということで、実際に効率的にできるテーマや媒体はどこかという見極めを特に丁寧に行いました。タイアップという形で、媒体の特性を生かしながらターゲットに刺す。そうしたコンテンツへの落とし込みも、時間をかけて実施したかなと思います。このあたりが一番難しかったですね。

      B2Bの商談化率を予測する新モデル構築へのチャレンジ

      ここまではアッパーとミドルに対する施策を紹介してきましたが、現在はローワーファネルを狙い撃つ施策も走っていると衣川は話します。

      衣川:顧客獲得に関わる軸は3つあります。まず、シナリオを描いた“ターゲット”を獲得できているか(質)。そして、リードの“量”を狙って増やせているか(量)。それらは商談につながっているか(質)。この質と量をコントロールすることは非常に難しいものです。広告媒体だけのパワーでは決してなし得ないでしょう。そこでトライしたいと思っているのが、過去のCRMデータやサイト行動ログからの商談化率予測です。

      取り組みの変化

      過去のCRMデータやサイトの行動ログなどを活用して学習モデルを作り、一人ひとりの確率を「Predict-Opportunity(プレディクト・オポチュニティ)スコア」として予測。これから未来に発生するサイト広告からのセッションに対して予測商談化率を出し、媒体最適化に活用するという仕組みとのこと。いまはまだ実現していないものの、こうしたモデルの開発も視野に入れていくといいます。

      B2Bマーケティングに効く「アクロスPDM」で顧客の“顔”を浮き彫りにする

      さて、こうした経験を通じて知見を得てきた両名が、現在注目しているのが、「アクロスPDM(A×PDM®)」だと言います。「アクロスPDM」とは、B2Bのセオリーである「Account Based Marketing(ABM)」と「People Driven Marketing®(PDM®)」をかけあわせた手法のこと。顧客を「企業軸」と「人軸」の両方でとらえてコミュニケーションするために使われます。

      衣川:B2Bとして本当にやるべきマーケってなんだろう?People Driven Marketing®/PDM®をどう進化させるべきか?B2BのセオリーであるABMをかけあわせてうまくワークできないか?といったことを考えた結論が、「アクロスPDM」です。

      アクロスPDMの考え方を示すのが「3×3のダブルマトリクス」(下図)。赤い軸は、企業を起点とした捕捉(ABM)。青い軸が、個人を起点とした捕捉(PDM®)です。空欄になっている9つのセルは、企業を主語としたときの顧客のステータスを示すもの。たとえば、「契約がない会社で、かつはじめてのリードになった人」などです。

      理想形に向けたこれからの取り組み

      衣川:6つの空欄は、顧客の顔つき、つまり“個性”を言語化して落とすためのものです。ABMとPDM®をクロスさせて考えることが、これからB2Bのマーケティングの中で重要だと思っています。

      ただし、「企業」と言っても企業規模・業種・エリアによって、また「個人」にも職種や役職・興味や関心・課題によって、それぞれ刺さる情報は変わります。

      衣川:実際、我々がつまずいたのもここでした。ターゲット像をざっくり捉えるのではなく、顧客のタイプを細かく分類し、どんな登場人物がいるかを考えながら戦略を設計すると成功につなげやすいと感じました。

      これからも「アクロスPDM」で顧客に最適なシナリオを設計する

      最後に、両名がwithコロナ時代において、この「アクロスPDM」をうまく駆動させるための5つの要素について語ってくれました。

      1.アノニマスを含む顧客(個人)を可視化し、それを活用していく仕組み

      北川:Sansanを例にして言えば、電通のPDM®とSansanの1stPartyDataをつなぎ、過去のデータをもとに学習できるようにしたいですね。たとえば、リードじゃない人であってもサイトの回遊ログから業務課題を推測するなど、可視化しながら活用できるといいですね。

      衣川:今後は、顔のわからない顧客のデータも可視化して活用することが必要になるはずです。

      2.オンライン、オフラインの両接点で顧客(企業/個人)データを収集する仕組み

      北川:Sansanもオフラインの文化である名刺をオンラインでも交換できるようにしています。そうして得られたデータはフィールドセールスやCRMに使える形で格納しておくことが大切ですね。

      衣川:コロナによってリモートワークが加速したように、今後は顧客と事業者の接点がオフとオンの両側で発生し続けることになるでしょうね。

      3.顧客(企業)データを利活用可能な状態にする仕組み

      北川:企業が保有する顧客データの約40%は、データの重複や誤りによって活用できない状態だという調査データがあるのです。衝撃ですよね。弊社にはAI技術を使って名刺を軸に社内のデータを正規化・統合できるサービス「Sansan Data Hub」もあります。

      衣川:企業データが整っていないからこそ正確なマーケができない、評価ができないというのはもったいない話。利活用が可能で格納する仕組みを取り入れる必要があると思います。

      4. 未リードからリード、商談、成約、顧客育成まで一気通貫で捕捉するデータ基盤

      北川:デジタル上のコンバージョンだけではなく、その先にあるリード・商談・成約というところまで評価できるようになるなどのメリットがありました。

      衣川:これは、広告パフォーマンスやアクセスログ、自社MA/CRMデータをBigQuery(ビッグクエリ)で統合するなど、Sansan社が行なった策が該当しますね。

      5. 上記の仕組みを使いながら顧客(企業/個人)に合わせたシナリオ設計の精緻化

      北川:PDCAを効率よく回すためにも、P2CやアクロスPDMに基づいたシナリオづくりが重要だと感じています。B2Cではなく、B2Bならではのファネル構造があるというところに、今後もしっかり目をむけて取り組んでいきたいです。

      衣川:1回作ったものを、さらに「企業」軸と「個人」軸でさらに作り、ブラッシュアップし続けるという戦略レベルのPDCAが大切だと思いますね。

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