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サーキュラーコミュニティ実現に向け、電通はサイクラーズとともに歩み始める

作成者: D-sol|Mar 17, 2021 11:23:38 AM

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DXはもはや、単なるバズワードではありません。
各業界のリーダー企業はその意味を理解し、本質的なトランスフォーメーションに向けて動いています。旧態依然のイメージを持たれがちな産業廃棄物処理業界においても、その例外ではありません。B2Bリサイクル市場の創出など新たな取り組みを進め、SDGsにおいては電通の重要なパートナーであるサイクラーズ株式会社の代表取締役、福田 隆氏に、電通の藤田 雄一郎が話を伺いました。

PROFILE

 
 

サイクラーズが展開するB2Bリサイクルプラットフォーム「ReSACO(リサコ)」とは

「ReSACO」は企業向けフリマアプリとして着想を得て誕生

藤田:まず、サイクラーズのグループ企業であるトライシクル株式会社が展開するReSACOというサービスについて、ご紹介いただけますか?

福田:ReSACOは、ひとことで言えば企業向けのフリーマーケットです。オフィス家具などを簡単に見積もって、簡単に売却できます。電子契約の機能までついていて、企業がモノを売却、譲渡するときに必要なものが揃っているのが特徴です。法律を遵守しつつ、適正価格で売却できます。中古品として買い手がつかなかったものについては、サイクラーズに資源として売却することもできます。

藤田:スマートフォンから簡単にAIを使った価格査定ができるなど、手軽なだけではなく適正価格でのリサイクルを進めるところも先進的ですよね。

背景には国土が狭く焼却率が高い、そのうえ海外依存度も高い日本のごみ処理事情

藤田:中古オフィス家具業者ではなく、サイクラーズがこのようなプラットフォームを開発した理由を教えてください。

福田:ReSACO開発の背景にあるのは、日本独特のごみ処理事情です。日本は国土が狭く、ごみを埋める場所を十分に確保できないため、焼却処分が基本となっています。世界の焼却炉の、実に7割が日本で稼動しています。資源リサイクルにおいては、プラスチックごみの処理を海外に大きく依存しているという課題を抱えています。

藤田:ごみ処理を海外に委託していたということですか?

福田:いえ、かつては中国が世界のプラスチックごみを買い取り、中国国内で再生プラスチックとして使っていたのです。

しかしいまや中国も巨大消費国家となり、自国内でプラスチックの循環サイクルを回せるようになりました。一方日本はさまざまな製品の生産拠点の海外移転を進めた結果、国内のリサイクルプラスチック需要が落ち込んでいます。他の資源も似たような状況で、国内でリサイクルしようにも需要がないという状況なのです。

藤田:国内で循環サイクルを回せない廃棄物が増えたということですね。つまり、廃棄物自体を減らしていかなければならないと。

福田:そういうことです。まだ使えるものは中古品として、そうでないものは資源として、できる限り再利用して循環させる必要があります。そのためのプラットフォームがReSACOなのです。

「メルカリ」と出会い、これこそリサイクル事業者がやるべきことと直感

福田:ReSACO開発のインスピレーションを与えてくれたのは、個人間フリマアプリの「メルカリ」でした。最初にメルカリを見たときの衝撃は大きかったですね。これこそリサイクル事業者がやるべきことだと思いました。

リサイクル事業者に持ち込まれたものは、まだ使えそうなものであっても資源としてしか処理できません。しかし企業が利用できるフリマアプリがあれば、まだ使えるものは中古品としてもう一度活用してもらえます。どうしても使えないものだけを資源としてリサイクルすることで廃棄されるものを減らすことができます。使えるものはできる限り再利用してごみを削減する、サーキュラーエコノミー(循環型市場)を推進していくことが目的です。

藤田:中古品としての活用と資源としての活用の両方に対応できるサイクラーズだからこそ、できるサービスだったのですね。

「ReSACO」展開のハードルとなった認知度アップの壁を、電通の協力で突破

「いいものを作れば売れる」時代はとっくに終わっていた

福田:いまでこそReSACOは多くの企業に使ってもらえるプラットフォームに成長しましたが、ここまでの道のりは平坦ではありませんでした。

ReSACOの仕組みやアプリ自体はよくできており、ローンチから2年経ったいまでもB2Bリサイクルプラットフォームとしては先端を行っていると自負しています。それでもReSACOアプリのダウンロード数はなかなか伸びませんでした。そもそもReSACOの存在をほとんどの人は知らないのです。

藤田:何もアピールしなければ、どんなにいいものでもあまたあるサービスに埋もれてしまいます。どんなに良くできていても、存在を知ってもらえなければ良さもわかってもらえません。

福田:そうですよね。「いいものを作れば売れる」という時代ではないということがよくわかりました。同時に、ReSACOの良さをアピールして世の中に知ってもらうということの難しさも思い知りました。

メディア露出の重要性を理解したものの、効果がわかりやすい広告は見つからなかった

福田:次第に注目されるようになったのは、メディアへの露出がきっかけでした。リサイクル事業者の新しい取り組みとして、テレビ番組などで取り上げてもらえたのです。リサイクル業界でテレビ取材を受けるような人は少ないので、一度取り上げられると他の番組からも声をかけてもらえるようになりました。

テレビ番組で取り上げられると一気にReSACOのダウンロード数が伸びて、メディアに露出することの重要性を実感しました。取材してもらうのを待つだけではなく、Web広告なども掲載しました。しかしこちらは効果がわかりにくかったというのが正直なところです。どうして大きな効果を得られないのか、どう改善すればいいのかと相談してみましたが深掘りしてもらえず、対応は中途半端なものでした。

藤田:その頃はまだ電通ではお手伝いしておらず、他の制作会社さんとおつきあいしていたと伺っています。

福田:電通はもっと大きな企業が広告を依頼する会社だという思い込みがあり、他のパートナーさんにお願いしていました。

藤田:電通は大企業の広告ばかり作っていると思い込んでいらっしゃる方は多いけれど、実際には中小企業やスタートアップ企業のクライアントさんも多いんですよ。

電通からの提案でテレビ向けの動画を作成、効果と費用対効果を実感

藤田:電通からご提案したのは、経営者が自社のサービスとそれを支える理念を語る「Leadersイズム」(※)という放送枠でした。提案を受けたときの印象はどうでしたか?
※テレビ東京系「カンブリア宮殿」放送前の午後9時54分より放送。テレビ放映は3分ですが、HPでは5分のインタビューを公開しています。詳しくはこちら

福田:短期間に何度も使えるというほどではありませんが、想像していたよりもずっとリーズナブルで、小規模事業者でも頼れるコスト感でした。
もうひとつ印象に残っているのは、スタッフの優秀さですね。ディスカッションしていると、突っ込んだいい質問が多くて。話をしているうちに自分の頭も整理される感覚がありました。打ち合わせの段階から、これはいい動画を作れそうだという感触をつかみました。

藤田:「Leadersイズム」放送の後にも、ブランドムービーの制作をお手伝いしました。動画の効果を実感したということでしょうか?

福田:テレビで放送することによる認知度アップの効果はもちろんですが、作って1回放送して終わりではなく、後々に活用できる点に魅力を感じました。「Leadersイズム」で作った動画は、サイクラーズ株式会社のWebサイトでも使っています。

ブランドムービーも、地上波で放送する3分バージョンと、自由に使える7分バージョンの2種類を作ってもらいました。こちらは、サイクラーズのYouTubeチャネルで公開しています。

サイクラーズは顧客であるだけではなく、電通式SDGsを推進するための大事なパートナー

リサイクル業界は環境負荷低減のために最新技術を駆使する先駆的な世界

福田:「Leadersイズム」やブランドムービーを通じて、サイクラーズだけではなくリサイクル業界全体のイメージアップを図りたいと考えています。欧州ではリサイクル業界は環境にやさしい技術を次々に取り入れる先駆的な取り組みをしていて、市場からも数千億円の投資がなされています。一方日本の産業廃棄物処理業者は、かつて一部の業者が行っていた不法投棄などの影響から、あまりいいイメージがありません。色々なベンチャーキャピタルと話をしましたが、決め手に欠くというのが正直なところです。

しかし電通は、早い段階でサイクラーズに、リサイクル業界にコミットしてくれました。その点もとても感謝しています。

藤田:サーキュラーエコノミーの実現は、日本人全員が向き合わなければならない事業だと思います。

サーキュラーエコノミーとテクノロジーの融合を示した図

福田氏は、「欧州を中心に世界的に進んでいる循環型経済社会モデルであるサーキュラーエコノミーを実現するには効率化、情報の高度化が必要になります。サイクラーズグループでは、IT、物流、加工技術などあらゆるテクノロジーを駆使することでサーキュラーエコノミーを実現すべく活動しています。」と話してくださった。

サイクラーズは、電通が新しい時代を生き抜くために欠かせないパートナー

藤田:電通はこれまで数多くの広告を作って、モノを売るお手伝いをしてきました。しかしこれからは、売った後のことにも電通として責任を持たなければならないと考えています。

モノを売って、その先のことにも責任を持つ、電通としてのSDGsってなんだろう?と考えたとき、福田さんが提唱するサーキュラーエコノミーに向けて、ともに歩むべきだと思いました。サイクラーズは電通にとって顧客であるだけではなく、SDGs目標達成に向けてともに歩むパートナーでもあるのです。

福田:大量に消費して、大量に廃棄する時代はもうおしまいですね。これからは再利用、資源としてのリサイクルなど、さまざまな方法で無駄なく使うサーキュラーエコノミーの実現に向けて着実に進んでいかなければなりません。ぜひ、お互いの強みを活かしながら歩んでいきましょう。

※マスク着用にて取材を行いました。写真撮影時のみ、外しております。