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      前提を覆した「1万人への自由回答調査」~「令和 若者が望む未来調査」が浮き彫りにしたリアルな若者像 ~[後編]

      電通 未来予測支援ラボが実施した「令和 若者が望む未来調査2019」。同調査は、1万人への自由回答調査を出発点にすることで、前提や思い込みを取り払ったリアルな若者像を浮き彫りにしています。

      後編では、その自由回答調査にスポットを当て、印象的な回答とともに特徴的なポイントをご紹介。また「令和 若者が望む未来調査2019」の有効活用法にも言及します。

      前編はこちら

      PROFILE

       

      そもそも“前提”が間違えているのかも

      「令和 若者が望む未来調査2019」を実施することになったきっかけは?

      市原:よくネットで「若者の●●離れ」みたいなことがいわれますが、それが実際の若者たちの姿と、ずれがあるのではないかと感じていました。上の世代である私たちの価値観や行動原理が彼らと違っていて、そもそもの立地点がずれているのではないかなと。そんな思いが出発点となりました。

      そこで一度、仮説のない状態で調査をしてみようと考えたのです。通常マーケティング会社が行う多くの調査では、はじめに何らかの仮説を作ってそれを元に質問していくのですが、そもそも自分たちの考え方自体が古い可能性があるのだから、その前の段階から調べるべきだろうと。そうして実施されたのが、15~29歳の男女1万人を対象に自由回答形式で答えてもらった2019年6月の第1回目調査でした。

      いざ1万人に調査してみて、いかがでしたか。

      市原:回答のテーマを絞っていないために自分の就職の話から地球環境、世界平和、社会保障、少子化のことまで本当に幅広い意見や不安などを把握できました。

      それと前編でお話した通り、いろいろと驚かされました。たとえば個人主義が進んでいるだろうと思ったらそうではなかったり、テクノロジーの進化を手放しでは歓迎していなかったり、意外と安定性を求めていたり。結局そんなふうに驚いたことって、こちらが勝手に抱いていた思い込みの部分なんですよね。さまざまな思い込みをつぶしてもらったという点では、まさに目的を果たせたなと思います。

      定量調査では得られない生々しい言葉

      その後、結果をどんなふうにまとめていきましたか。

      市原:得られた自由回答を形態素分析というもので品詞に分解し、それを使ってクラスター分析やコレスポンデンス分析などの統計解析を行いました。その後、最後は人の目で見て集約していきました。膨大な量の言葉とにらめっこする時期が、2ヶ月くらいありましたね。

      印象的なコメントはどんなものがありましたか。

      市原:たとえば、

      「非正規雇用を見捨てる社会になって欲しくない。自分は現在非正規雇用で、将来の不安が日々募るばかりです。非正規雇用の保障のなさに絶望しています」

      というコメントです。非正規雇用を強い言葉で否定していて、なかなかこういう心情の吐露みたいなものは通常の定量調査では出ないだろうなと感じました。自由に語ってくださいという調査でこそ出てきた切実な言葉だと思います。

      同じく非正規雇用に関しては、

      「非正規ばかりの社会で、若い人たちにチャンスがほとんどない社会は嫌だ」

      というのもありました。私の中では、若者たちは「非正規で飛び込んででも、チャンスをつかんでやる!」みたいに考えている人も多くいるだろうという先入観があったので、非正規雇用に対する回答の多くはネガディブなもので、非正規雇用はチャンスにもならないとまで思っていることが心に響きました。

      それと理想の人間関係を語るうえで、全般的に非常に多くみられたものが、結婚に関する記述です。体感的には半分くらいはそうだったかなと思います。男女ともに多くの人が、結婚して子どもをもうけて家庭を持つという未来を「なりたい自分」として、なによりも結婚が当たり前のものではなく、「理想」としてあげられていたのです。これは、結婚という非常に密な人間関係を求めているともいえます。ここでも「若者は自分の個人的な成功がありきで、結婚だ、家庭だとはあまり言わないのでは?」という固定概念が覆されました。

      理想を深く語ることで、課題が浮き彫りに

      市原:あとは「●●すべき」という形で、自分を縛っているようなコメントもよく見受けられました。たとえば、

      「頑張れば頑張るだけ認められる社会。もちろん結果が伴わないといけないし、自分が働いた結果であるべき」

      「昔からあるというというだけで残る風習や伝統もなくすべき」

      とかですね。こうしたコメントからは、どこか柔軟性のなさや、理想が叶えられない時に気持ちを切り替えられない危うさを感じました。そういう意味では真面目な人が多いのだろうなとも思います。

      またテクノロジーに関して、なって欲しくない社会という意味のコメントで、

      「AIに頼りすぎている社会。 今現在でも人間にできるようなこともロボットに頼っているから。人間にしかできないことだってあるし、人がするからこそ味が出たり親しみをもてたり、コミュニケーションがとれることもあると思う」

      といった声もありました。テクノロジーの話をきっかけとして彼らの価値観が浮き彫りになっていて、こういうのも自由回答だからこその産物だろうなと思います。

      課題を語るコメントも多く、それも空気感を伝わりやすくしているのかなと感じました。

      市原:今回の調査では自分と社会の理想像を聞いていますが、理想を深く語ってもらうことで、いま抱えている課題も浮かび上がってくるという構造なのでしょうね。調査前は、10年後の理想の話を聞いているので、将来に向けての理想やビジョンを語る話が断然多くなると思っていたので、その部分でも予想を裏切られました。

      若者が対象のプロジェクトの「基礎資料」に

      こうした1万人分の生のコメントをアーカイブし、それを統計分析した「令和 若者が望む未来調査2019」は、特にどんなところで有効活用できそうですか。

      市原:やはり若者にアプローチした調査なので、まずは若者をターゲットとした事業の「基礎資料」としてご活用いただけるかなと思います。当調査により、今の若者の意識や空気感を把握したうえで、プロジェクトを始めていただければなと。たとえば商品・サービスの位置づけやコンセプト、作り方の検証・見直しの参考にしていただいたりですね。SNSをどう活用していくかのプランニングにも有用だと思います。

      また人事・労務の分野でも活用していただけるかなと。たとえば若者を組織の歯車としてではなく、仲間として心の交流をはかれるような新しい人事・労務を、当調査から感じられた若者像をベースにしながら考えていただくとかですね。特に今はウィズコロナの新しい働き方が求められ、組織のあり方そのものが見直されるタイミングでもあります。情報伝達やガバナンスといった機能面を担うだけではない組織のあり方を、模索するいい機会だと思います。

      あるいは行政の方にも当調査を見ていただけたら嬉しいですね。若者は補償のなさや雇用の現状をこんなふうに憂いたり、絶望していますよと、気づきになるかと思います。行政を含めクライアントには、案件に則したコメントを抽出してご紹介することも可能です。そんなふうに1万人分の声をうまく活用し、事業を行う方々に生きた声を届けられればと考えています。

      思い込みにとらわれずに構想を生み出す

      同調査を手掛けた電通 未来予測支援ラボとは、どんな組織ですか。

      市原:2018年に正式発足した社内横断組織で、「未来はこうなるかもしれない」というビジョンメイクを行いながら、企業が未来を考える際の支援をしています。たとえば未来のシナリオやキーワードの開発、ブランディングや新商品開発における課題解決を目的としたワークショップ運営、事業計画やアクションプランのサポートなどです。メンバーにはテクノロジーからメディアトレンド、SDGsまでさまざまな知見を持つ社員が在籍しています。

      電通 未来予測支援ラボ http://dentsu-fsl.jp/

      未来予測ラボ

      今回の調査を通して得られた知見を、今後どう活かしていきたいですか。

      市原:今回の調査では、未来の理想を語ってもらうことで、同時に当事者が抱える課題もいろいろ見えてきました。この先さまざまな事業構想をするうえで、このようにビジョンを語ることで、課題も明確にするというアプローチはかなり使えるなと感じています。

      そして、その際には、思い込みや前提条件にとらわれないことが重要になります。まさに、そういったバイアスを取り外して内側に迫ったのが、今回の調査です。毎回この規模で調査を行うのは現実的ではないかもしれませんが、こうしたあり方を今後、事業構想や未来の構想といった場面でどんどん活かしていきたいと思っています。

      ※当記事は6月9日時点の情報を元に記事を執筆しております。

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