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      キメツケの刃/Withコロナ SNSが作り出す「新しい日常」#3

      こんにちは、バズ・アナリストの谷内です。
      コロナ禍で始まった「新しい日常」とSNSとの関わりについての雑感シリーズ、第3回目です。
      よろしかったら、お付き合いください。(前回分はこちらです

      キメツケの刃
      (Withコロナ SNSが作り出す「新しい日常」#3)

      私は日々、バズを見て暮している。
      バズウォッチを始めた2016年からずっとだ。
      そうしていると、多彩な「炎上」に出くわす。
       だれそれの不倫
       だれそれの失言
       だれそれの不祥事
       新商品への疑念…
      いろんな出来事が、炎上の「火元」になる。
      たいていは「ボヤ」程度でおさまる。毎日たくさんのボヤだらけ。
      けれど、時々「炎上」に発展してしまう事案も起きる。
      そんな炎上を通じて感じる共通項は、「キメツケ」の力だ。
      「これは非常にけしからんことだ!」とか「これは絶対に許せない!」とか、なぜかみんなの評価が一極集中する局面、キメツケに向かう局面というものがあって、いったんそこに陥ると抜け出すのはとても難しくなる。
      評価がまだ揺れている局面では炎上は起きにくい。しかし、それが何かの拍子でキメツケに傾くと、炎上はやって来る。

      たとえば、「1,600円のお弁当問題」だ。
      ある公人が、「ランチ会食で1,600円の弁当を頼んでいた」ということで問題にされたことがあった。「高すぎる!」と。

      さて、みなさんにとって「お弁当の値段」とは、いくらが適正だろうか?
       500円?
       1,000円?
       5,000円?
      私はよく、19:30すぎに近くのスーパーでお弁当を買う。半額のシールが貼られたそれは275円のことが多い。3割引きシールで妥協し385円で買うことも多い。新幹線で出張する時には860円のシュウマイ弁当をチョイスしセレブ気分を味わうこともある。
      そんな私にとって、1,000円超のお弁当というのは確かに高額だ。しかし…。

      これが「5,000円の弁当」だったら、文句なく「高すぎ!」とキメツケられる。だが、経験的に言って「1,600円!? うーん、まぁそんな時もあるかも…」と思えなくもない微妙さだ。小奇麗なレストランに入ってメニューを見た瞬間、「どの料理も2~4千円台!?」と驚き、やむを得ず2千円のランチを頼んだことがあった。
      だから「1,600円のお弁当」はギリだ。高いとは決めつけられないギリギリのラインだ。

      実際、多くの人が同様に感じたのだろう。このケースでは炎上には至らなかった。
      この程度のボヤが日常的に起きている。この程度では、ネットは荒れない。
      でももし同じ公人が、翌月にも「2,800円のカツカレー」を頼み、翌々月には「3,900円の鰻重弁当」をオーダーしていたとなったら事態はどうなるだろう?
      きっと評価はバランスを失い始める。「一般市民と感覚がズレている!」とか「国民感情をまるでわかっていない!」とか多くの声が上がりだす。
      しかもランチのあとで「1,500円のプディング」を追加オーダーしていたと知れたら…。
      「高いランチを頼む〇〇さん」というキメツケは、どんどん強まる。
      そしていったんキメツケが定まってしまうと、たとえ「1,200円のお弁当」で済ませたとしても、「まだ高い!」「我が家なんて一日1,200円あれば3食分でもお釣りが来るのに!」等、なにかにつけ非難の矛先が向けられる対象となってしまう。

      きっとみんな、鬼退治したくなるのだと思う。
      「みんなで庶民の金銭感覚を失った〇〇さんを、こらしめてやろう!」という思いで、ツイートは増える。心を燃やすほどの義憤を感じる人たちによって、炎上は始まる。

      「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
      むかし流行ったビートたけしさんのギャグだ。
      たぶん、最初に赤信号を渡ろうとするのは「義憤に燃える」人だ。でも、彼らのあとに続くのは「みんなが渡ってるから私も!」という人だろう。キメツケが増すほどに、追随する人が増える。みんなで渡っているから大丈夫という感覚は、強烈な安心感をもたらす。そして、その安心感が故に「過激化」も起きやすくなる。

      たとえば、話題のアニメ映画があったとする。その評価が好きと嫌いで拮抗していると、自分が感想を書き込む際も慎重になる。たしかに「自分は苦手だった」としても、どこかで「あの作品をもの凄く評価している人もいるんだから、私にはちょっと合わなかったってことなのかなぁ…」ぐらいに遠慮しながらつぶやいたりする。
      しかし、それがレビューサイトで「5点満点中、★評価=0.7点」ぐらいに酷評されているとなると、自分の評価もつい「お金と時間を返して欲しいレベル!」「これは今年度の駄作of the year!」と書き込めてしまう。
      より大げさな言葉で、「盛る」「ディスる」に乗っかっていく感じ。

      私たちはネット上で、自分の意見を発する時、他人の意見や反応をよく気にしている。
      「好きか、嫌いか」
      「認めるか、認めないか」
      「Aか、Bか」
      「左か、右か」
      スタンス表明。それはネットを動かす基本力学だ。でも、スタンスを決めて発言するのは本来覚悟がいること。だから、私たちは用心深く、他人の意見や反応を気にしながら発言している。
      空気を読むのが日常だから、「叩いてもよい」という炎上に敏感になるのかもしれない。
      世の中を正したいという思いは重要だが、時に暴走し、私刑のような、粛清のような攻撃へ発展する。過熱しすぎてもブレーキが効かないことも多い。

      そういえば、バズや炎上について私が痛切に感じていることがある。
      “どっちでもいい”と感じている人はカウントされない」という構造だ。
      考えてみれば当たり前のことだが、“どっちでもいい”人というのは、その事案についてめったに発言はしない。
      「1,600円の弁当をどう思うか」
      まず、これに対し「高い!」と思う人が書き込む。
      次に「いやいや、そうとも言い切れないぞ」と思う人が、反論的に書き込む。
      だが、“どうでもいい”と思った人は、たぶん、書き込まない。

      多数決で何かや、誰かを決めるのが、選挙というシステムだ。
      その選挙には、ちゃんと「投票率」や「無効票」というスコアがある。
      そもそも選挙への関心が低かったり、選ぶべき候補者がいない場合、「投票率」や「無効票」として計測される。
      だが、ネットにはそれがない。
      だから、ネットでの言説は「関心のある人だけ」によって展開され、その中だけで「炎上」が起こったようにされる。ごく一部の賛同者しかいないのに、「炎上」とされるケースもある。

      私はなるべく、“どうでもいい”側の傍観者としてバズを眺めるようにしている。
      ― その炎上は、本当に民意と呼べるほどの「規模」か?
      ― その炎上は、「特定の人たち」によってのみ生成されたものではないか?
      私が毎日、バズばかりを見て暮しているからかもしれない。
      だんだんバズウォッチのスコアを通じて、「本当の炎上」と「炎上モドキ」が見分けられるようになってきた。
      「キメツケの刃」は、発言する人を強くする。次第次第に、発言はキツくなる。
      「悪いことをする自体が悪ではなく、悪いことをするように人にそそのかすことこそ、 “本当の悪”」という説がある。
      鬼は、人の心に住み着く。
      鬼退治したいと願う心は正義であっても、みんなで赤信号を渡る内に、だんだん鬼は住みやすくなるのかもしれない。

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