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    フェイク 炎上は、なぜ増える?/Withコロナ SNSが作り出す「新しい日常」#4

    最終更新日:2023年06月19日

    こんにちは、バズ・アナリストの谷内です。
    コロナ禍で始まった「新しい日常」とSNSについての雑感シリーズ、第4回目です。
    よろしかったら、お付き合いください。(前回分はこちらです

    フェイク炎上は、なぜ増える?
    (Withコロナ SNSが作り出す「新しい日常」#4)

    タブロイド紙が好きだ。
    スポーツ新聞や夕刊紙の1面の見出しにデカデカと
     「政府、ついにUFOの存在を公認」
    となっていて、
    思わず手に取って、折り返しを開くと
     「へ!?」
    となっているあのパターンに、人間の逞しさを感じずにいられない。

    「なんて小ズルいやり方なんだ!」
    と腹立たしく思うのに、何度も引っ掛かるのはなぜだろう?
    自分の胸に手を当てて、「そんなタイトルを見たくなる自分の未熟さ」を痛感させられる。
    しかし、そんな経験を一日に何度も繰り返す未来がやって来るとは思ってもいなかった。

    20年程前までは、そんな「小ズルいやり方」は、タブロイド紙お得意の手法だった。
    駅の売店に並ぶ見出しを通りすがりに眺めるとき、「おっ!?」と思う頻度はせいぜい一日一回程度のこと。しかも、煽情的な週刊誌や「とんでも系」の雑誌を愛読している人でない限り、それらは怪しげな情報源として、少し疑ってかかるのが当たり前だった。
    もちろん、テレビも今よりは大らかだったから、今よりは煽情的なものが多かった気がする。でも、どこかで線引きはされていたように思う。
    「怪しい系の情報」と「信頼できる系の情報」は、どこかで分けられていた。

    いま私は、大手や各種のポータルサイトをよく見る。ニュース系のアプリもよく利用する。まとめ系サイトも好きだし、コンシェルジュ系のサイトも好きだ。
    毎日とっかえひっかえ、いろいろなサイトやアプリにアクセスし情報を得ている。その合間にSNSやYouTubeもアクセスし、食事中にはテレビを観て、仕事中にはラジオも聞く。
    しかし、さすがに「まとめ系サイト」にアクセスする時は、少し用心する。
    「だまされないぞ!」と身構える気持ち半分、「なにか面白ネタ記事ないかな?」とワクワクする気持ち半分。かつてタブロイド紙に感じていた「わかっちゃいるけど、やめられない」的な悦楽と、それは似ている。

    ところが、そんなタブロイド紙世代の私にとって「んん???」と思うことがある。
    大手のポータルサイトやアプリで、「まとめ系サイト」や「タブロイド紙系サイト」からの記事転載がゴチャマゼになっている点だ。
    ひとつのポータルサイトの中にズラーっと見出しが並び、
     ・大手新聞社や通信社を元記事とする転載
     ・タブロイド紙系を元記事とする転載
     ・まとめ系を元記事とする転載
    がゴチャマゼになっている。
    よく言えばワンストップ。幅広いソースの記事が見られるので便利。だが、「まとめ系サイト」は「まとめ系サイト」で愛読している私からすると、大手ポータルサイトを見てるのに
    「あれ? このネタ記事、まとめ系で見たやつじゃん!?」
    とこんがらがる。
    もちろん、記事の出典元としてちゃんとそのクレジットは入れられている。だが、そこまで注意しないで読むことも多い。
    「政府、消費税値上げを検討か」
    という大手新聞社からの記事掲載に続いて
    「カップ麺を500倍上手くする激旨アレンジレシピ」
    が載っていると出典元確認の概念は緩んできて
    「政府、ついにUFOの存在を公認」
    の記事に妙な信憑性が漂ってしまう。

    私は、このゴチャマゼ構造が「炎上」量産の一因になっていると読んでいる。
    なぜなら、「炎上」事例をネットワーク分析していると、驚くほどよくこの大手ポータルサイトがハブになった拡散構造に出くわすからだ。
    「○○のCMに非難殺到で、大炎上中!?」
    などの記事は、もともとタブロイド紙系サイト発であることが多い。
    しかし、タブロイド紙系サイト自体から記事が広がることは稀。では「拡散の中心はどこか?」と探っていくと、大手ポータルサイトが巨大なハブとなっていることが多い。もちろん、元記事のタブロイド紙系サイトも見られているが、アクセス数の大きさがまるで違う。
    つまり、ほとんどの人は大手ポータルサイト経由で「タブロイド紙系の記事」を知り、信憑性も感じる構造となっている。だからリツイート等の拡散行為にも積極的で、周りに「こんな記事あったよ!」と広めてしまうのだろう。
    大手のポータルサイト群は、便利な分、そういうリスクもはらんでいるように思う。

    「アフィリエイト」と呼ばれる仕組みがある。
    簡単にいうと「アクセスされた回数の多さに応じて、支払われる金額が増える広告運用の仕組み」だ。10回しかアクセスされない記事よりも、1万回アクセスされる記事の方が支払われる代金が高くなる。
    たぶん、そんなアフィリエイト手法の弊害もあるのだろう。
    「たくさんアクセスしてもらえるよう、もっと記事タイトルや記事内容をキャッチーにしよう」とか「もっと過激なものにしよう」と、アオリ度を強める傾向がある。
    YouTubeでもキャッチーさは重要。「思わず再生したくなるサムネイル」にしないと、再生数は伸びない。
    結果、私たちは毎日、たくさんのアオリに囲まれながら暮らしている。

    だから、鈍感にもなったかもしれない。
    普通の刺激や、オチがよくわからない曖昧さや、長すぎるコンテンツ等はなるべく回避し、もっと短時間で、明快で、強烈なコンテンツを選択的に嗜好するようになっている。
    気がつくと毎日、タブロイド紙的な刺激を追い求め、スマホ中毒になりながらも、刹那的に楽しませてくれる情報を欲している――。

    もっともネット上や「まとめ系サイト」でも「端正な記事」に出くわすことは意外と多い。YouTuberであっても「見たい人だけご自由にどうぞ」的な格調高い動画も存在している。
    どこまでもゴチャマゼなのがネット本来の世界。
    その中から何を好み、何を選び取るかは「本人次第の問題」とされる。しかし、そのことに私は「んん???」と思う。

    タブロイド系サイトの記事によって、「炎上発生!」は日常的に起きている。
    さらに、その情報は大手ポータルサイトによって「増幅」されてしまうことが多い。
    よほど注意深く情報を見極められる個人でない限り、乗せられてしまうのもやむを得ないのが今の構造ではないだろうか。
    しかも「炎上発生!」記事が、実はフェイクものだったり(バズを調べても、そんな炎上は存在してない)、個人のSNSが元ネタとなり炎上と断定される記事も「まとめ系サイト」等ではしょっちゅう散見される。
    (そして残念ながら、炎上が誤情報と判明しても、訂正記事が出るケースはレア)

    「フェイクニュース」というワードが世に広まってから数年が経ったけれど、「フェイク炎上」のようなバズは年々増えている。「炎上発生!?」というのはかつての「UFO出現!?」のようにとてもアオリワードとして有用らしい。

    だが、それはもう「構造として見える」段階に来ている。
    どんなアカウントの人や組織が、どう発信したのか?
    それが、どういった人たちの中で広まって、どう急拡散することになったのか?
    そのアカウントの人たちや組織とは、過去にどんなことを語っていた人たちなのか?
    だんだん見える時代になった。今後、バズはもっと見える化されていく。
    事実に基づいて、客観的に、バズをウォッチしていこう。

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