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未来を拓く「ブレイクスルー」のために、今、「新規事業開発担当者」がすべきことは~「未来の暮らしを創る事業開発プログラム」~ 

作成者: D-sol|May 12, 2021 12:30:00 AM

INDEX

今、新規事業や新商品開発を担当される方は「変化に対応する新しい事業や商品を開発せよ」というミッションを与えられて、改めて「何から着手すべきか悩ましい」などと感じられることも多いのではないでしょうか。

さらに、単に「新しい」ということにとどまらず「次の本業にしていけるような大きな事業、商品を考えよ」とのミッションが与えられている場合も多々あるでしょう。
そのようなミッションを与えられた担当者が、今、すべきことは何なのでしょうか?

1. 今、新たな「生業」が求められている

「ビジネスの環境が大きく変わろうとしている」―そう感じられる機会が最近ますます増えています。業界の壁、更に国境さえも越えて、予想もしていなかった新たな競争相手がプレイヤーとして参入してくることが当たり前になっています。より厳しくなる競争環境の中で業績を維持・発展することのできる企業の在り方が問われ、新たな事業や商品の開発は必須になっています。

例えばこの十数年で、スマホは筆記具・腕時計・スケジュール帳・カメラ…マスメディアに至る多様な商品やサービスの市場、様々な企業の「本業」を飲み込みつつあります。
一方で、「新たな本業」への転換に成功した企業も多々あります。例えば玩具メーカーからゲーム・テクノロジー業域への転換、音響機器から電子部品業域への転換に成功された企業などは、未来に向けた産業の転換をうまく味方につけたケースと言えるでしょう。

そして、新型コロナはオンライン化という大きな変化を更に加速させたと言われています。会議も買い物も事務手続きもオンラインに吸収されてしまう未来が、今や現実味を帯びてきているのです。コロナ禍の中、オンラインの領域で、そして新型コロナの感染を回避できるような様々な対人サービスの工夫や新事業などの領域でも様々なチャレンジが急速に進み、2021年の内にも、ニューノーマルに対応したビジネスの成功事例が出現してくることが予測されます。

変化することが常態となる社会においては、企業は従来の事業の継続のみに留まることは危険であり、新規事業開発などの「新たな挑戦」に打って出ること、そして単に新しいだけではなく、「生業」=「次の収益の柱」になる大きな事業や商品の構想と計画の開発が必須になっています。

「生業(なりわい)」とは、辞書的に言えば「暮らしを立てるための仕事」のことを指しますが、ここでは企業・組織において「企業・組織経営のための収益を支える事業」の意味で用いています。新規事業の開発を担当される方には、企業が明日を生きるための、次の時代の収益の柱となるような事業や商品を開発することが求められているのではないでしょうか。

2. 「生業」=大きな事業開発の難しさ

では、「生業」=「柱となる事業」を見出すためには、どのような視点が必要となるのでしょうか。チャンスはどこにあるのか、自分の担う仕事の中でどんなアプローチをとっていけばいいのか。その手がかりはどこにあるのでしょうか。

そもそも「次代の『生業』となるような新規事業の構想や計画」はどう進めればよいのでしょうか。事業開発や商品開発に携わる方の中には、ロジカルな事業計画策定のプロセスを思い浮かべる方も多いでしょう。例えば、「事業環境分析・事業計画策定」を行う際、SWOT(企業の強み‐弱み‐機会‐脅威を分析)、3C(自社:company、競合:competitor、市場・顧客:customer )分析などを駆使し、市場性・成長性・競争優位性などを見極める方法論があります。

しかし、次代を担う事業や商品を開発する上でこのアプローチでは限界があります。
まず、近年とみに言われている「生活者視点、暮らしに基づいたアイデア発想」がこのアプローチには欠けていることです。現状と異なる「ブレイクスルー」となるアイデアを生み出し育てるには、ロジカルなプロセスだけでは十分ではない…このことは、直観的にご理解いただけるかと思います。

またSWOT、3C分析などは現時点の市場を想定したフレームです。次の時代の「生業」に関わる2030年代の「強み」や「競合」等を見出すためには、これらのフレームと別の方法や考え方が必要になります。既存のビジネスフレームは、現時点での事業環境を取り扱う限りにおいて有効でしたが、このままでは“未来の”事業環境は扱えないのです。
更に加えるなら“未来の”「生活者視点、暮らしに基づいたアイデア発想」も必要です。

変化が常態化する今、「新規事業開発」は多くの企業に必須であるにも関わらず、既存の「新規事業開発」の方法論が使いにくいという困難に直面しているのです。

3. ブレイクスルーの視点: 「生活者視点のアイデア」×「ロジカル」×「未来創造」がブレイクスルーを生み出す

「生業」=「次の本業」を開発し、実現するカギは、「生活者視点、暮らしに基づいたアイデア発想」と「ロジカルな事業計画策定のプロセス」とを両立させ、更に
現時点とは異なる「未来の視点」から「ブレイクスルー」を探すことにあります。

これを実現するには、下記の図のように
・左側の「生活者視点と未来予測を基にした“未来”アイディエーション」のアイデア発想力と、
・右側の「経営視点に立った“未来”コンサルティング」の事業環境分析・事業計画策定力の、二つの並走・両立が必要であり、
これにより「ブレイクスルー」を実現できると私たちは考えています。

※アイディエーション:新しいアイデアを創造すること

「生活者視点と未来予測を基にした“未来”アイディエーション」の領域には、
「未来潮流の整理」・「未来の暮らし構想」・「未来ビジネスアイデア」が含まれます。
「経営視点に立った“未来”コンサルティング」の領域には、
「未来経営環境分析」・「未来の市場評価」・「事業計画」が含まれます。

現在のような変化のスピードが速い時代の「新規事業開発」では、このような二方面の異なったアプローチが、ブレイクスルーを見出すには必要なのです。

4. 『柔らかい発想の”未来創造』と『“ロジカル・緻密な”事業構想』を両立するステップ

私たちは、このような【STEP1】~【STEP6】のプロセスにて「生活者視点を基にした“未来”アイディエーション」と「経営視点に立った“未来”コンサルティング」の「2つのアプローチ」を「補完・統合」することが実現性の高いビジネス開発を行うために必要だと考えています。

2つのアプローチ

「生活者視点と未来予測を基にした“未来”アイディエーション」
生活者インサイトや自由なアイデア発想など『“柔らかい発想”』を導くアプローチ
・社会・産業の未来トレンドを踏まえつつ、生活者・社会視点でのインサイト、未来の生
活イメージとニーズを発想するアプローチです。

「経営視点に立った“未来”コンサルティング」
ロジカルで緻密な『”事業構想”策定』を導くアプローチ
・戦略コンサルティングファームの技術やツールにより、未来に向けて発想されたアイデアを現実的な構想の形に作り上げ、そして実現に至るまでサポートします。
未来目標を論理的に評価する枠組みと方法論を駆使するアプローチです。

補完と統合のプロセス

・ビジネスの成功に向けての計画を策定するためには、この2つのアプローチを交互に補完・統合することで、一本の骨太な戦略ストーリーを描くことが必要です。

わたしたちは、このようなプロセスを経て、次の「生業」となりえる大きな事業・商品を開発することを「未来の暮らしを創る事業開発」と名付けています。

5. 未来に関わることは、企業の中の「限られた人」だけの課題ではない

「未来の暮らしを創る事業開発」は、10年後の事業を見据える経営トップや経営企画部など、企業の中でも限られた方の課題だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、新商品開発や新規事業開発などで5年後のことを考える立場の人は、その商品や事業が10年後も利益を出し続けるために、10年後の消費者や技術、社会の未来予測を考えざるを得ないのです。

更に、この変化が常態になった時代にあってはそれらの部署の方に限らず、企業活動に関わるすべての方々に10年先の変化を先取りして考え、行動する態度がこれからは求められるようになるのではないでしょうか。

変化が起きてから慌てて対応するのではなく、変化を見越して、チャンスに変えていく。
時代に即した業態に転換し、新しい「生業」にシフトできた企業も、そのような態度により成功されたのではないかと考えます。

6. 実践に向けた課題

電通の未来予測ラボと、電通グループのコンサルティングファームである電通コンサルティングは、すべての新規事業開発や商品開発をお考えの経営者・事業担当者に向けて、生活者視点と未来予測を基にしたアイディエーションと、経営視点に立った事業立案の2つのアプローチを、バトンタッチではなく一本の紐を織りなすように交互に補完・統合する体制をつくり、サービスとして提供しています。

これを実践することは、一見簡単そうですが様々な課題も存在しています。次回は、実践の前提となる視点「バックキャスト」の課題と成功確度を上げる方法をご紹介いたします。

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